SI -Second Irregular- 作:リンク切り
なんという事でしょう。
これまで読み専やってました。
面白い作品がいっぱい。
五反田兄妹
部屋に、ボタンを押すカチャカチャという音が響く。
テレビからは射撃の効果音が聞こえてくる。
「お前達以外、全員女子か。さぞかし良い思いをしてるんだなー?」
俺から見て、向かって左にいるバンダナを巻いた長髪の赤髪が呟く。
このシスコンの名前は、五反田弾。
この五反田食堂を切り盛りする五反田夫婦の息子で、一夏とツインテールの中学からの悪友だそうだ。
俺はさっき知り合ったばっかりではあるが。
「してねえっつの!」
そう言い返すのは、我らが織斑一夏君だ。
一夏の操る白騎士のHPバーが残り少なく負けそうになっているため、少し語尾が上がる。
俺達がやっているのは、ISをテーマにした格闘ゲームだ。
今戦っているのは一夏とロン毛君だが、俺も少し前にやらせてもらっている。
それにしても接続コントローラーがアケコンとは、年季入ってるな。
近年稀に見るぞ。
最近のハードについてくるコントローラーは、ほとんどが持ち上げて使うタイプだ。
アケコンがついて来る据え置きの家庭用ゲーム機のハードは、十年ほど前にデュノア社が発売した「Perfect Specificity Computer」、通称
ちなみに、今一夏達が使っているハードもそれである。
・・・・ん?
デュノア社?
「嘘をつくな嘘を。お前のメール見てる限りじゃ、ただの楽園じゃねーか。」
「文章で見るのと、実際に体験するのとじゃ全然違うんだってば・・・・・あっ!」
五反田弾の操るラファールの
左側の画面にWIN、右側の画面にはLOSEと表示が出る。
「くっ、ダメだったか・・・・・」
「じゃ、これで最弱は一夏だな。」
「そうなるな。」
「く、くっそ・・・・・」
俺達が一夏へ畳み掛けると、一夏は地へと顔を伏せた。
その格好は、敗者にはお似合いだ。
「んで、本当のところどうなんだよ?IS学園。漣夏君もやっぱり居づらいのか?」
「君付けはやめろ馬鹿野郎。どうしても何か敬称を付けたいなら様と付けろ。」
「ははーっ!漣夏様の学園生活は良好なのでしょうか!?」
「まあまあだ。俺は別に性別の偏りなんて気にしていないしな。」
「なるほど・・・・・貴重なご意見ありがとうございます!!!」
今度は、赤髪ロン毛が土下座をして頭を地に伏せる。
俺はベッドの上に足を組んで腰掛けているから、殿とその家来のように見えなかなか様になっている。
五反田弾と入れ替わりに、一夏が顔を上げた。
やっと復活したか一夏。
「お前ら何やってるんだよ・・・・・」
呆れたようにそうは言うが、お前も格好はほとんど同じだったからな。
「それにしても、やっぱり羨ましいぜ。女子校に2人だけだろ?招待券とかねーの?」
「ねえよ馬鹿。」
「ほら、千冬さんに頼んで。見学とかだけでもさ?」
「無理だろうな、国家レベルの機密事項とかありそうだし。」
「あー、やっぱり駄目か。残念だな、一夏の受難を久しぶりに見てやろうと思ってたのに。」
「お前なあ・・・・・」
突然、パァン!と部屋の扉が内側へと開かれる。
扉の先の廊下にいたのは、五反田蘭。
この長髪の妹にして、五反田家の一人娘だ。
妹も同じくしてバンダナを巻いた赤い長髪を持っている。
「お兄、今からお昼ご飯作るから。適当に作っていい・・・・・・って、一夏さん!?」
「あ、蘭!久しぶり。邪魔してるぜ。」
片手を上げてニコニコと笑いかける一夏。
その瞬間一夏スマイルが炸裂し、その場の女子の全員の顔を上気させる。
「あ、い、いやあ、その・・・・・・えっと、き、来てたんですか・・・・・?」
例に漏れずに顔を赤くさせた五反田蘭は、しどろもどろになりながらも一夏へ問いかけた。
ラフな格好をしているのを気にしてか、扉に身を隠してゴソゴソと何かをしている。
「おう。今日はちょっと外出。家の様子見に来るついでに、ちょっと寄ってみた。」
「そ、そうなんですか・・・・」
身だしなみを整えるのは諦めたのか、壁からちらりと顔だけをのぞかせる五反田蘭。
その姿は、初めて会った時の苹果を彷彿とさせた。
「んで?俺を無視して楽しいかお前ら。俺にも早く紹介しろ。」
「え?ああ、悪い悪い。こちら、弾の妹の五反田 蘭。で、蘭。そこのベッドに腰掛けてるのは、IS学園の友達の乃至 漣夏だ。」
一夏が紹介した後、五反田蘭は俺がいる事に今初めて気づいたかのようにびくりと肩を跳ね上げた。
「れ、漣夏様!?」
漣夏様、ねえ。
数分前に同じような奴に同じような呼ばれ方をされたような気がするな。
「お前ら兄妹は本当に仲いいな。テレパシーでも使えるのか?」
「違う違う。俺は様付けで呼んだのは初めてだし。」
「じゃ、何で様付け?」
ちらっと五反田蘭を一瞥すれば、
「えっと、学校でも先輩たちのこと、話題になってて・・・・・・一夏さんなら、気のいい頼れるお兄さん。で、漣夏さんは、俺様主義な王子様タイプだって。」
「だから、様?」
「はい。皆がそう呼んでいるので、ついうっかりとそのまま口から出てしまって・・・・・。」
「ははっ、漣夏の方は殆ど合ってるな!」
イケメンスマイルで笑いながら言う一夏。
「何だと負け犬野郎。お前も優男な所は、言われた通りだろうが。」
「ま、負け犬・・・・・」
また落ち込み始める一夏を尻目に、俺は五反田蘭へと話しかける。
「俺も一夏と同じように
「は、はい!わかりました、漣夏さん!」
ツインテールとまではいかないものの、元気な声で返事をする五反田蘭。
「蘭。ノックの事はまあいいとしても、せめてドアは手を使って空けろよ。はしたない女だと思われ・・・・・」
言い切る前にギロっと、殺気のこもった視線が向けられる。
それに気づいた五反田弾は、サーっと顔を青くした。
「な・ん・で・言・わ・な・い・の・よッ!?」
「え、えっと、悪い、言ってなかったか?」
「聞いてない!」
「そうか、そりゃあ悪かった。アハ、アハハハハ・・・・・」
乾いた笑い声を上げる長髪。
その隣で、そのやり取りを見ながら不思議そうに首を傾げる一夏。
「そ、それよりも、何か用があったんじゃないのか?蘭。」
「あ、えっと、これからお昼ご飯を作るんですけど・・・・・一夏さんたちも食べていきますか?」
「え?今日って定休日じゃないのか?この食堂。」
一夏の言う通りこの家に入る前に、家の前に定休日の看板が置かれていた。
だからこそ、こんな大音量でゲームを出来ているのだが。
「あ、えっと。お父さんとお母さんは用事でちょっといないんですけど、数人分くらいなら私が作れるので。」
「ああ、なるほど。でも、作ってもらうのは蘭に悪いし。」
「食べて行ってくれないか?一夏。蘭の奴、お前に食べさせるためにいっぱい練習を・・・・・」
「お兄!!」
「なんでもない!なんでもない!」
再び殺気の目を向けられた五反田弾は、参ったというように両手を上げる。
女尊男卑の、この世界の縮図を見ているようだ。
まあ、本人達が楽しそうだから良いが。
「うーん、そうか。なら、食っていこうかな。」
「本当ですか!?」
「おう。蘭の料理も久しぶりに食べてみたいしな。」
パッと顔を綻ばし、笑顔を見せる五反田蘭。
こういう事を誰にでもさらっと言うから、後々唐変木なんて呼ばれるんだ。
そして一夏が急に俺の方を向き、問いかける。
「漣夏も食っていくんだろ?」
「え?ああ、一夏が俺の分の食事代を持ってくれるならここで食べてもいいけど。」
「・・・・・わかったよ。それでいいから、ここで昼飯にしよう。」
「じゃ、決まりだな。」
渋々としょうがないなといった様子で首肯する一夏に、俺はニヤッと笑いかけた。
元々、一夏には奢らせるつもりだったし丁度いい。
相変わらず俺の収入は、こっちの世界に来てから一銭たりとも無い。
朝食をIS学園で食べてきはしたのだが、昼食はどうしようもない。
がしかし、それを聞いていた五反田兄妹から制止が入った。
「あっ、お代はいいですよ。私が食べてもらいたいだけなので。」
「そうだぜ。今日は定休日だから、別に食事を売ってるわけじゃないからな。」
ぐっとサムズアップする五反田弾に、仏を見たかのように感謝する一夏。
「そっか。サンキュー、弾、蘭!」
「おう、気にすんな。」
「そうですよ。お兄もたまにはいいこと言うんだから。」
「たまにか・・・・・」
「そうそう。たまにたまに。」
ほっとして、五反田蘭の冗談に笑う一夏。
一夏の財布も、心もとないんだろうな。
IS学園に入学してからというものの、バイトなんかする余裕も無かったし。
そうなると食費はどこから出てるんだ?
貯めていたバイト時代の貯金か、あるいはお小遣いでももらっているのか。
「じゃあ、作って来ますね。」
「おう、行ってらっしゃい。」
「はい!それで、何かオーダーはありますか?」
一夏はうーん、と少し考えて
「じゃあ、和食の定食を頼むよ。」
「俺は食べやすい物を2人前くれ。」
「俺はなんでもいいぜ。」
それぞれそう答えた。
「じゃあ、和食定食を私含めて四つ分、一つは2人前で。作ってきますね!」
五反田蘭はそう言い残して、らんらんと気分よく部屋を出ていった。
「蘭、全部まとめていったな。」
「そうだな。」
「流石、料亭の娘って感じだ。」
腕を組んで関心する一夏。
おお、やったな五反田蘭。
一夏の好感度アップだ。
「食べやすいって言うのは、喉を通りやすいっていう意味じゃなかったんだが。まあ別になんでもいいんだけどさ。」
「それよりも漣夏、いくらただだからって、ちょっとは遠慮してくれよな。」
「俺はかなり遠慮したつもりだったんだが?」
「漣夏、かなりの大食漢でさ。2人前でも少なめなんだよ。」
「2人前で少なめって、普段どれだけ食べてるんだよ・・・・・」
「この前、ツインテール・・・・・じゃない、凰鈴音には腹にブラックホールがあるって言われたな。」
「はは、鈴の奴、それは流石に言い過ぎだろ。」
「いや、本当にそれくらいだぞ?弾も見ればわかる。」
「・・・・・マジで?」
「マジマジ。マジのマジ。」
「一夏にここまで言わせるその胃袋、1度は見てみたいな・・・・・。」
「やめておけ。」
食べ放題や大食い大会なんて物には、流石に申し訳なくて行くことが出来ない。
「って言うか、漣夏も鈴と知り合いだったんだな。」
「ん?ああ、IS学園に転校して来てからだけどな、付き合いは。」
「なるほどな。」
「んー、でも、鈴が転校してきてくれて助かったぜ。周りが女子だらけだから、本当に話せるやつが少なくてさ。」
「ふーん・・・・・。鈴か。鈴ねえ。」
五反田弾が口角を上げて意味深げに呟く。
「それよりも、俺に感謝しろ一夏。」
「え?何でだ?」
「馬鹿。俺がいなかったら、本当にIS学園に男はお前一人だけだったんだぞ?」
「その節はお世話になりました!」
「よろしい。」
恭しく俺に頭を下げる一夏。
「でも、生徒ほぼ女子だぞ?ハーレムだろ。」
「ハーレムって・・・・弾、お前なあ。」
「まあでも確かに、男友達いた方が楽しそうだけどな。何人か、数人いた方がさ。」
「お前も来るか?IS学園。」
「まあ出来るなら、行ってみたいよな。」
「弾はわからないんだよ、結構ストレス溜まったりするぞ?」
「一夏。お前、ストレスなんて単語知ってたんだな・・・・」
「何だよ?」
「数年の付き合いだけど、お前はストレスとは無縁の人間だと思ってたぜ・・・・・」
「俺だってストレスくらい溜まるよ。」
苦笑しながら呟く一夏。
五反田弾の言うこともわからなくもないがな。
一夏は友人になら何されてもヘラヘラしてるイメージだったんだが。
「そんな事より、続けようぜ。このゲーム。うんとハンデをつけてやるからさ。リベンジマッチって事で。」
「おっ、いいぜ!次は負けないからな、二人とも!」
「一夏。お前は結構ブランクが長かったし、腕が落ちてるみたいだから俺もハンデを付けようか?」
「いらねえよ。俺は、俺の全力で弾。お前を打ちのめす!」
「良いねえ。じゃ、一夏。お前が敗北したら、何か1個、俺たちの言うことをひとつ聞いてもらおうか。」
「おう、いいぜ!」
一夏は誘導しやすい。
俺と五反田弾は、同時に口の端を吊り上げた。
「じゃ、まずは一夏対五反田弾戦だな。」
「よし!負けないぜ、弾!」
「おうよ!かかってこい一夏!」
第三章の開始ですよ。
二章の最終話をもう1話書くつもりでいたのですが、なんだか文字数がなかなか進まないので飛ばしました。
いつか、ひょっこりと投稿するかもしれません。
読みにくくなってしまいますね、申し訳ないです。
今回の話は5000字いったので、私は満足です。
オリジナルで出してみたデュノア社が発売しているPSC、名前の元ネタはプレ〇テとフ〇ミコンですね。
なのにモデルは、だぶりゅーあいあいです。
アレってそろそろ発売から10年みたいですね。
めでたい。
そして最近Uが欲しい。
イカ....
ちなみに、もう少し五反田食堂でのお話が続く予定です。
あと2話くらいですかね。
3章の前に2.5章みたいな感じで五反田兄妹の章を追加しても面白そうだと思いました。
しないけどね。