SI -Second Irregular- 作:リンク切り
俺は今、とある寮の部屋の前に立っていた。
山田真耶教諭に先程元いた俺の部屋の鍵を取り替えてもらったのだが、その部屋だ。
しかし、こんなところが俺の部屋とはな・・・・
俺は、先ほどの会話を思い出す。
「じゃあ、俺と漣夏は同じ部屋なんですね?」
「あ、いいえ、それが違うんです。」
「えっ?まさか、また女子と同室なんですか・・・・?」
やつれた顔で一夏が尋ねる。
そんなに嫌だったのか?
・・・・・いや、篠ノ之箒意外と同室だったらどうしよう、って事か。
まあ、その心配はないだろうけどな。
俺の方はいい加減自分用のちゃんとしたベッドが欲しかったし願ったり叶ったりなのだが。
まあ、あの2人と別部屋になると考えると少し寂しい気もしなくはないが。
「違いますよ。織斑くんには、少しの間1人で部屋を使ってもらいます。」
「はあ、そうなんですか・・・・」
ん?
じゃあ、俺はどこで寝泊まりすればいいんだ?
「じゃあ、漣夏の部屋はどうなるんですか?」
「乃至君は、2年生の先輩と同室です。」
2年生で、主要人物と言えば・・・・
うん。
俺は考えることを放棄して、鍵を使って部屋へと入った。
ガチャ
「おかえりなさい!お風呂にする?ご飯にする?それとも、わ・・・・」
バタン
痴女が出た。
俺は咄嗟に条件反射で扉を閉めた。
やっぱりか、そんな予感は何と無くしてたんだよ。
お前の出番はまだ先だろ。
・・・・・よし、無視して一夏の部屋に匿ってもらおう。
1日くらいなら別にバレたりしないだろうし、一夏も多分許してくれる。
「ちょっと!お姉さんを無視してどこへ行くつもりー!?」
俺は扉に紐をくくりつけて少し細工をし、その場を離れた。
ちょっとやそっとじゃ外れない簡易な足止めだ。
ドアの向こうから聞こえる声は、聞かなかったことにした。
『漣夏さま。先程のIS学園現生徒会長更識刀奈の水着エプロン姿を動画として保存しました。ファイル名に名前をつけますか?』
『やめろ、変な気を効かせるな。今すぐにゴミ箱へダストシュートしておけ。』
『仰せのままに。』
黒狐とは、最近秘匿回線と同じ要領で脳内会話ができる事がわかった。
これではテスト中とかでもカンニングし放題だな。
そんなことはするまでもないのだが。
『ん?つかなんでお前が更識楯無の本名を知っってるんだ?』
『私は、他のISコアの人格の皆さんとお話しする事ができるのです。他にも、自分の意思でインターネットに接続をすることもできますので。』
『へえ。意外に便利だな。これからは辞書としても使って良いか?』
『勿論でございます。』
ふむ、よくできた
「あれ、何で一夏の部屋の前に篠ノ之箒がいるんだ?」
俺が一夏の部屋へと突撃しようとしたら、篠ノ之箒が一夏の部屋の扉を塞いでいた。
俺は気づかれないように背後へと回る。
「どうしたんだよ、改まって。」
「その、来月の学年別個人別トーナメントの話だが・・・・」
モジモジと体をしならせて先を言うのをためらう篠ノ之箒。
これじゃ、本当にトイレに行くのを我慢しているみたいだ。
ちなみに、説明しておくと、だ。
学年別個人トーナメントとは、IS学園全校生徒強制参加のIS対決だ。
一学年から三学年までが別々に行われ、学年最強を決めるトーナメント戦になっている。
ストーリーでは2人ペアで行われることになったが、元々は1人で挑まなければならないイベントだ。
ペア参加と決まるのは、まだ先のことなのだが。
「ああ、そのトーナメント戦がどうかしたのか?」
「わ、私が優勝したら・・・・・付き合ってもらう!」
結局アニメ通りか。
この言い方だと、一夏は勘違いしてしまう。
だが、俺が念を押すのも野暮だろうなあ。
「ねえ、聞いた?」
「うん、篠ノ之さん大胆!」
「これは、大ニュースだ!」
廊下の端にいた、布仏本音含めたモブ3人グループがコソコソと話を広げる。
まあ、こっちも放置で大丈夫だろう。
人の口に戸は立てられなぬ、なんて言うし。
篠ノ之箒の一世一代の宣言に、一夏はボケーっと答えた。
「え?ああ、まあ、いいけど。」
「本当か!?言質はとったからな!?」
「わかったわかった。」
騒ぎ出す篠ノ之箒に、あははと一夏は苦笑する。
一夏は、そんなに買いたいものがあるんだな、くらいのことを考えているに違いない。
「で、ではな。」
言うことは言った、と篠ノ之箒は一夏へと別れを告げる。
が、篠ノ之箒の後ろには俺がいる。
「うわぁぁあああっ!!??」
「どうした?そんな幽霊見たかのような表情晒して。」
「お、漣夏!なんか用か?」
「ああ、ちょっとな。」
一夏と軽く会話を交わすと、俺は篠ノ之箒に引きずられて部屋のドアから離される。
「ど、どこから聞いていた!?」
「確か、『来月の学年別トーナメントの話だが』ってところだったか?」
「さ、最初からではないかっ!?」
俺が正直に応えると、顔を真っ赤にさせてて頭を抱える篠ノ之箒。
まあ、こんな反応を楽しむだけなら、楽しくはあるな。
「まあ、安心しろ。別に言いふらしたり邪魔したりはしない。」
「・・・ほ、本当だろうな?」
「勿論。でも、わかっているんだろうな?」
「?何がだ?」
「学年別トーナメントで優勝するってことは、一夏は勿論俺にも勝たなきゃいけないんだぜ?」
「・・・、わかっている。だが、私とて負けるわけにもいかない。」
「ヤハハ、良いね。楽しみにしてるぜ、篠ノ之箒サンよ。」
流石に優勝はできないだろうが、準優勝、あるいは準々優勝まで漕ぎ着ける事が出来れば名前呼びしても良いかもしれないな。
だがしかし、このトーナメントも途中で邪魔が入る。
言わずもがな、ラウラ・ボーデヴィッヒのVTCシステムだ。
だが、一つ楽しみが増えたな。
篠ノ之箒の、今後の成長に期待だ。
「はい、皆さんお静かに。」
翌日。
パチパチと手を叩いて生徒を落ち着かせる山田真耶教諭。
今日は何故か、普段よりも教室が妙に騒ついていた。
それだけではまだ完全に静かになっていなかったのだが、織斑千冬の一喝により水を打ったように静かになった。
「よし。山田先生、続きを。」
「は、はい。えっと、今日は、転校生を紹介します。では、入って来てください。」
「はい・・・・っ!」
ついに来たか。
やっと第三章に入ったな。
正直、思っていたよりも長かった。
一年一組の扉がスススと自動で開く。
勿論、そこにいたのはブロンドの美少女、じゃない、美少年だった。
そうだな、どうやって接しようか。
初めから事情を知っている風を装って(実際に知っているのだが)近づくか。
あるいは、わかってる上で騙されてやるか。
それとも、反応を見てからかうのも面白そうだ。
勿論、男装のことをバラされたくなければ、みたいなことを言って脅迫してみるのも一つの手ではある。
ああ、安心してくれよ、これはとても健全な物語だからな。
あっても、
まあ、これは流れに身を任せてその時の気分で決めちまうか。
「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。皆さん、よろしくお願いします。」
男の制服を着た、花澤・・・・げふんげふん!!
シャルルデュノアがふんわりイケメンオーラで自己紹介をする。
俺にはどう見ても女にしか見えなかったが。
他の生徒は違ったらしい。
完全に男と信じきっている反応がクラスメイトたちから漏れた。
「あの、僕、こちらに同じ境遇の方がいると聞いて、本国より転入を・・・・」
「「「キャー!!!」」」
女性陣から黄色い声が上がる。
俺達男組はいつものことかと驚かなかったが、ここに来るのが初めてな貴公子様はビクッと肩を跳ねさせて驚いた。
「男、男よ!」
「しかも美形!守ってあげたくなる系の!」
「織斑君、乃至君、そして、デュノア君!黒色と銀色と金色の美少年がクラスに揃ったわ!」
「私、一組で良かった〜!!」
生徒たちは、思い思いに叫びだす。
これは収集つかなくなるな。
「騒ぐな、静かにしろ!」
やはり、織斑千冬の声で話し声がピタリと止まる。
その姿はまるで精錬された兵士のようだ。
「今日の一時限の実習は、グラウンドで二組と合同の操縦訓練をする。各人は、すぐに着替えて第二グラウンドへ集合。」
よし、実習か。
この時間は、怒られない程度にISを起動させる事ができる。
俺からしたら一番楽しい授業なのだ。
「それと織斑、乃至。2人でデュノアの面倒を見てやれ。男子同士だ、色々と教えてやってくれ。」
「は、はい!」
急に呼ばれた一夏は、慌てて元気な返事をする。
こいつ、全部俺たちに任せるつもりだな。
まあいい、俺も一夏に全部任せるからな。
しかし、とりあえず一つ確認しておかなければならない事がある。
俺は、無言で織斑千冬の目を見つめた。
すると俺のアイコンタクトに気づいた織斑千冬は小さく頷いた。
つまりは、そういうことだろう。
察しが良くて助かる、と、両人は互いに同じことを思った。
「では、解散!遅れるなよ。」
織斑千冬がショートホームルームを終わらせる。
その合図とともに、女子たちは思い思いに話し始めた。
「はじめまして。君達が、噂の乃至君と織斑君?僕は・・・」
「ああ、悪いけど、自己紹介とかは後にしてくれ。」
「へ?」
「俺たちがいると、女子が着替えられないだろ?」
織斑千冬に言われた通り、率先してシャルルデュノアへ説明する一夏。
よし、男装少女のシャルル・デュノア君のお世話は取り敢えず一夏に投げれば良いか。
俺は美味しいところだけもらえればそれで良いし。
「じゃあ、一夏はそのパツキン君をアリーナの更衣室まで連れてってやれ。俺はいつも通り直接グラウンドへ出るから。」
「ぱ、パツキン・・・・!?」
「おう、任せとけ!また後でな!」
面倒ごとを押し付けられた一夏は、良い笑顔で答えた。
やっぱり、純粋に男子が増えた事が嬉しいんだろうな。
ちなみに俺は一夏の同性愛者疑惑を否定する事ができない。
俺には正直関係のない事だが。
「あれ、乃至君は一緒じゃないの?」
「ああ、アイツはISスーツを着ないからな・・・・」
俺は一夏達が遠ざかっていくのを横目で見ながら、第二グラウンドへと向かった。
確か、この後一夏は転校生を一目見ようと構内を歩き回っている他学年の生徒に追い回される羽目になる。
遅刻しないようになー、一夏。
一夏とシャルル・デュノアは、ギリギリ授業開始には間に合った。