SI -Second Irregular-   作:リンク切り

9 / 42
決着

 

 

 

 

 

「いや、それは表だぞ?」

「へ?」

「だから、そっち側は表だ。」

「そ、そうなんですの・・・・?」

「ああ。10円玉は、この建物、平等院鳳凰堂って言うんだけどな?それが描かれている方が表なんだ。」

 

手と膝を床につき、先程まで項垂れていたセシリア・オルコットの近くまで歩む。そしてトスした10円玉を掴んで上向きの面、表の方を彼女に向ける。

 

「現在の日本の貨幣には、国が決めた正式な裏表は存在しない。だが、便宜上裏と表を決める必要がある。一々10の面だとか建物の面なんて言ってられないからな。それが貨幣に関わる人間、詳しく言えば造幣局の従業員とかだと尚更だ。

それで裏表が決められた。まあ、決められたって言ってもさっきも言った通り正式なものではないけどな。

その決められた区別の仕方は、お金の価値、つまり『10』と書かれてあるかどうかということじゃない。事実5円玉だけは、5円と書いてあるほうが表だからな。他の貨幣はそっち側が裏だ。」

 

もっと昔の貨幣には、発行と同時に明確な裏表があったようだが。ちなみに、この10円玉の形になったのは1951年、昭和26年からだ。

 

「区別の仕方は年号・・・・・つまり、製造年にある。」

 

彼女に向けていた面を裏返して、10と書いてあるほう、裏面を見せる。

 

「一般的には、この年号が書いてある方が裏となっている。その逆が表だ。つまり、賭けに勝ったのは俺じゃなくてお前ってわけだ。

動画は消しておいてやろう。賭けは絶対遵守と言う約束だからな。」

 

ピッピッとスマホを操作し、件の動画をセシリア・オルコットに見せながら消す。

にやり、と俺の口は弧を描いた。その事に彼女は畏怖を覚える。

そして、威圧と共に飛びっきりの皮肉を放つ。

 

「あ、あ・・・・・・」

「ま、これからは足元すくわれないように気をつける事だ。

良かったな、運の神様に()()()()。」

 

決まった。そしてうまいこと言った。10円玉をポケットに押し込み、自分の席へと戻る。

10円でも重要な資産だからな、最低限の生活は保証されているが無くすわけには行かない。

周りの空気が微妙な事になっているのは何故だろうな、全くわからないね。分からないと言ったら分からない。

 

「話はもういいのか?」

「ああ。悪いな、長引かせて。もういいぜ。」

「・・・・では、クラス代表の話に戻るぞ。織斑とオルコット、乃至は、ISでの試合を行ってもらう。水掛け論になられても困るからな。

勝負は来週の月曜日、第三アリーナで行う。3人は、それまでに準備をしておくように。」

「あ、ああ!」

「目に物見せて差し上げますわ!」

「・・・・・・」

 

ちらりとセシリア・オルコットを一瞥すると、キッと睨んでくれた。

折角長い話をしてやったのに、わかってんのか?アイツは。

 

「では、休憩時間に入る。

授業の開始は、10分後の35分だ。他のクラスは授業中だからあまり大きな声を出すなよ。」

 

織斑千冬の言葉を合図に、立ち上がったり腕を伸ばしたりし始める生徒。ちなみにセシリア・オルコットは不機嫌さを隠そうともせず、ツカツカと教室の外へ出て行った。ちらほらと会話も聞こえてくる。一つ一つの会話を聞き取ると、やはり俺の話が多く(どこかの誰ぞが、「今日のお菓子何にする?」なんて関係の無い事を話してたりはするが。)、あまり好意的なものは少なかった。あんな賭けをさせたんだから当たり前か。中に数人、「漣夏くんの奴隷げへげへ」なんて言っている奴がいるが、これは放置でいいだろう。

織斑千冬の登場の時から気になってはいたが、やはりこのクラスにはマゾヒストがいるようだ。

 

「言い忘れていたが乃至、話がある。放課後私の部屋に来い。」

「・・・・・ああ、わかった。」

 

いつの間にか近くへ寄って来ていた織斑千冬が、俺に声をかける。

その後黒板(黒板と言うよりディスプレイと言った方が適切か?)の方へ近づき、寄りかかった。

 

「それにしても漣夏。俺もちょっと、いやかなりイラッとしたけど、流石にあれはやりすぎじゃないか?」

「そうか?でも、あれくらいしないとわからないだろ、ああいう奴は。」

「いや、そうだとしてもさ・・・・・

途中から可哀想だっただろ。裏になったらどうするつもりだったんだよ?」

「どうするもこうするもない、賭けの内容には絶対遵守だからな。あ、悪かったな、スマホ借りてて。返すよ。」

「あ、ありがとう・・・・」

「じゃあ漣夏は!裏だったら、あいつを奴隷にしてたって言うのかよ!?」

 

セシリア・オルコットよろしく机をバンッと叩いて立ち上がる一夏。そして視線が俺たちへと集まる。

どうやって周りの注目を集めようかと考えていたが、それを考える必要はなかったようだ。

 

「大声を出すなよ一夏。それと、裏になることは有り得なかった。絶対にな。」

「何でだよ!?」

「俺が表を狙ってトスしたからだ。」

「それでm・・・・え、狙った?」

「ああ、そうだ。」

「・・・・・・コイントスって、狙って表裏を出せるもんなのか?」

「できるぞ。ただし、風速、障害物、床の質感、弾きあげる時の力、角度。その他全ての関係する変数を理解し、実行できるならだがな。」

「じゃあ無理だろ。」

「ああ、無理だ。だが、不可能じゃない。」

「・・・・・何が違うんだよ?」

「不可能というのは絶対に出来ない事を言う。だが、無理と言うのは違う。無理には3つの意味があってだな・・・・」

 

まず1つ、と、人差し指を一本立て、昔読んだ辞典の内容を思い浮かべる。

 

「『物事の理屈に合わないこと。また、そのさま。』これが一夏の言いたかった意味だろ?そして2つ目、これが重要だ。」

 

中指を立て、指を2本に増やす。

 

「『行うことが難しく、できそうもないこと。』俺が言ってるのはこっちの意味だ。

不可能と無理の違いは、完全に出来ないことと、困難だが一抹の期待くらいは残っているという所にある。3つ目の意味はどうでもいい。」

「つまり、コイントスで狙った面を出すことは難しいけど出来なくはないってことか?」

「そういう事だ。と言っても、俺以外にできる奴はいないだろうけど。

普通のコイントスなら、コインを落としてから相手に裏か表のどちらに賭けるかを聞く。俺が最初に聞いたのは、イカサマする為だったという事だ。」

「・・・・でも、ミスして裏が出る可能性もあるだろ?」

「そうかもな。ただ、そんな事が起きるのは天文学的な確率より低いだろうがな。

もし裏だったとしても、セシリア・オルコットは10円玉の裏表が逆だと思ってたみたいだったから何も言わなければ裏を表だと喜んだと思うがな。」

「まあ・・・・そうか。」

 

「なになに?乃至くん、わざと負けたの?」

「えっ、どういうことどういうこと?」

「漣夏くん、オルコットさんが勝つように、表を出したんだって!」

「そうなの!?」

「奴隷・・・・・・」

ふう、悪者だと思われなくて良かった。奴に教育する変わりに、周りから悪いように思われたんじゃ割に合わな過ぎるからな。

 

「・・・・・漣夏って凄いんだな、教科書もすぐに覚えてたし・・・・」

「何を今更。俺にできないことは無いぜ。」

 

 

 

 

「そろそろ席へ着け。授業を始めるぞ。」

 

織斑千冬が教壇に立ち、生徒を着席させる。やはりこう見てみると、なかなか様になってるな。

 

「そう言えば織斑。お前のISだが、準備までに時間がかかるぞ。」

「へ?」

「お前の機体は訓練機ではなく、学園が専用機を用意するそうだ。」

 

「専用機!?1年のこの時期に!?」

「それって、政府からの支援を受けるってこと・・・・?」

「いいな、私も早く専用機欲しい!」

そう言えば、この専用機が出来たから更識簪に嫌われたんだったか。

自分は何もしてないのに女子から嫌われるとは、(あわ)れ一夏。

途中で制作を打ち切った倉持技研は、三流もいいところだ。俺は好かない。

 

「それを聞いて安心しましたわ!」

 

ビシッと一夏に指を()し、高慢な態度で腕を組むセシリア・オルコット。いつ席を立ったんだ。

 

「クラス代表の決定戦。私と貴方々(あなたがた)では勝負は見えてますけど、流石に(わたくし)は専用機、貴方は訓練機ではフェアじゃありませんもの。」

「さっき漣夏も言っていたが、その専用機っての、そんなに凄いのか?」

「世界にISコアは467機しかないんだ。つまり、全世界でISは、最大で467機しか存在しない。」

「そう!専用機を持つ者は、ほんの極々僅か。全人類60億の中でもエリート中のエリートなのですわ!」

「467機!?たった・・・?」

「そうだ。だが、467機全てが専用機になる訳じゃない。IS学園には訓練機があるったりする。だから実際、専用機持ちは467人より少ないんだ。このセシリア・オルコットはその中の1人って訳だ。それと、お前もな一夏。」

「あ、ああ・・・・・

でも、何で467機しかないんだ?それだと、絶対数が少なくて困るんじゃないか?」

「ま、それも(もっと)もな意見だ。だが、実はISコアは増やすことは出来ないんだ。」

「増やすことができないって、どういうことだ?」

「それについては、私が説明するね。」

 

俺の後ろから席を立ち、説明役を買って出てくれたのは鷹月静寐。彼女は一夏の前まで来ると、説明を始めた。

 

「ISの中心に使われている『コア』という技術は、一切開示(かいじ)されて無いの。現在世界中にあるISは、僅か467機。そのすべてのコアは、篠ノ之束博士が作成したものなのよ。」

「ISのコアって、完全なブラックボックスなんだって。」

「篠ノ之博士以外は、誰もコアを作れないのよ。」

「でも、博士はコアを一定数以上作ることを拒絶しているの。国家、企業、組織機関では、割り振られたコアを使って研究、開発を行うしかない状況なんだよ。」

 

鷹月静寐を皮切りに、次々とリレーのように説明大会が始まった。彼女も、セリフを取られて苦笑していた。

 

「本来ならIS専用機は国家及び企業に所属する人間にしか与えられることはない。だが、お前の場合は男の操縦者としてのデータ収集を行うため、専用機が用意される。理解できたか?」

「な、なんとなく、なら・・・・・」

「ヤハハハ!分からないことがあれば、俺が教えてやるからなんでも聞けよ?」

「おう、サンキュー。」

「先生にも、聞いていいんですよ?」

「はい、わかりました!」




前から思ってたけど、なんかもう完全に豆知識披露会みたいな状況になって来てるような来てないような.....
何にせよ、やっとアニメ1話目が終わった感じ.....なのかな?
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。