ハイスクールD×D ~とある三雄の物語~   作:無颯

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今回は殆ど原作沿いです。アイエール側でも動くのは数人ですが、メインはやはり“あの2人”ですかね…。


では、本編をどうぞ。


それぞれ裏で動いているようですよ?

教会側との接触から少し日が経った頃、1人の男が街中を歩いていた。

 

 

「…流石にこんな街中にはいねえか」

 

 

不良にしか見えないオレンジ髪が特徴の青年―――黒崎一護である。だがその場に居るのは彼1人ではなく、彼の隣を或る人物が一緒に歩いている。その人物とは……

 

 

「何故オレがこんな事に付き合わなければならない?」

 

 

「悪ぃな、キャロル。雪菜と紗矢華は他の部活の助っ人に行っちまったし、響達は…今回の事にあまり関わらせたくねえんだよ」

 

 

金色の髪をおさげに結っている少女―――キャロル・マールス・ディーンハイムだ。どうやら2人共学校帰りらしく、一護はカバンを持ち、キャロルはランドセルを背負っている…。

 

 

「あんな者達と再度接触しなければならないとは…難儀だな、貴様も」

 

 

「…ま、頼まれた以上はそれなりにしねえとな」

 

 

そう、現在一護達は昨日接触した聖剣使い―――ゼノヴィアとイリナを探していた。

 

 

「つっても、あんな見るからに不審な連中がこんな所でうろついてる訳……」

 

 

そして一護が何かを言おうとしたのだが…ある光景を見た瞬間に固まった。何故なら…

 

 

「これの何処が聖ペトロの絵なんだ!? 明らかに違うだろう!?」

 

 

「そんなことないわ! これはきっと、『この絵を買いなさい』という主の思し召しよ!!」

 

 

「だがその絵を勝ったお蔭で、こちらの資金が完全に尽きてしまったのだぞ!?」

 

 

まさに自分達が探していた白いローブ姿の2人の少女が、一枚の絵を巡って往来で言い争いをしていたのだから…。心なしか周囲の人間も、彼女達を怪訝そうな表情を浮かべながら見ている。

 

 

「どうやら予想以上の馬鹿共だったようだな…。それで、一体どうするつもりだ?」

 

 

「…はぁ…」

 

 

キャロルが呆れ混じりに尋ねる中、一護は溜め息を吐きながらゼノヴィア達の下へ近寄っていく。

 

 

「こうなったら、どこかの異教徒を脅して調達する?」

 

 

「そうだな。まずは仏門の者達でも…」

 

 

そして物騒な会話を始めた2人に対し、一護はこう話し掛ける。

 

 

「往来で何て話をしてんだよ…」

 

 

「ッ…!?」

 

 

「あなたは…!!」

 

 

「よう」

 

 

2人は会話に夢中だったのか、あからさまに驚きつつもすぐに警戒し始めた。

 

 

「この前は自己紹介してなかったな。俺は黒崎一護。宜しくな。で、こっちにいるのが…」

 

 

「…キャロル・マールス・ディーンハイムだ」

 

 

一護が憮然とした様子のキャロルも含めて軽く挨拶をすると…

 

 

「アイエール副総帥の1人と“終焉の錬金術師”が、我々に何の用だ…?」

 

 

「! 自己紹介するまでも無かったみてえだな…。少し話があんだよ。とりあえずそこら辺のファミレスにでも入って、軽く“飯”でも…」

 

 

「「付き合おう(付き合うわ)ッ!!」」

 

 

「うおっ!?」

 

 

一護の口から“飯”という単語が出た瞬間、警戒心を完全に遠くの彼方へと吹っ飛ばしたゼノヴィアとイリナ…。

 

 

パシッ!!×2

 

 

「何をしている! 早く行くぞッ!!」

 

 

「そうよ! 善は急げって言うでしょッ!!」

 

 

「いや、絶対使う場面が違うだろ!? つーか引っ張んじゃねえ!! 聞いてんのかッ!?」

 

 

そして一護はゼノヴィアとイリナに凄まじい勢いで引っ張られていってしまった。すると、それを見ていたキャロルは…

 

 

「はぁ…本当に馬鹿げている…」

 

 

この日一番の溜め息混じりの呟きをしながら、そんな3人の後をゆっくり追っていった…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

そんなこんなでファミレスにやってきた一護達だが、話が始まる様子は一切無かった。何故なら…

 

 

「旨い! 日本の食事は旨いぞ!!」

 

 

「うんうん! これが故郷の味よ!!」

 

 

ゼノヴィアとイリナが入って早々、凄まじい速さで店のメニューを片っ端から頼んで食べ始めたのだ。そのためテーブルには皿やプレートが堆(うずたか)く積み上げられている。

 

 

(おいおい、お前等教会の人間だよな? 欲求丸出しにも程があるだろ…)

 

 

これには一護も若干顔を引きつらせる他無い…。ちなみにその隣にいるキャロルは我関せずといった様子で本を読んでいる…。

 

 

カチャンッ!

 

 

「ふぅ…まさか新興組織の副総帥に食事を恵んでもらうことになるとはな」

 

 

「俺もまさか聖剣使いに飯を奢ることになるなんて思ってもみねえよ。しかも万札が飛ぶ程食いやがって…」

 

 

「ごちそうさまでした。心優しき人々へ慈悲を、アーメン♪」

 

 

最後の料理を食べ終えたゼノヴィアと、十字を切りながら御決まりの言葉を口にするイリナ。すると…

 

 

「さて、そろそろ本題に入ろうか…。我々に接触してきた理由は何だ?」

 

 

ここでゼノヴィアが真剣な表情で尋ねてきたのだ。それに対し、

 

 

「伝えておきたい事があってな…。多分その内、お前等の所にイッセーが訪ねてくる」

 

 

「? イッセー君が?」

 

 

「何故赤龍帝が接触してくる? まさか再度手合わせでもするつもりか?」

 

 

2人が話の内容に疑問を感じていると、そこへ今まで関わろうとしてこなかったキャロルが入ってきた。

 

 

「恐らく協力を申し出るつもりだろう」

 

 

「? 協力?」

 

 

「どうやら奴は心底あの魔剣使いの力になりたいらしい」

 

 

「! なるほど、そういうことか…。で、そちらは我々にどんな対応を望んでいる?」

 

 

キャロルの話を聞き、若干皮肉げに尋ねるゼノヴィア。だが、それに対して一護は…

 

 

「特にねえよ。どうするかはお前等に任せる」

 

 

「! 何…?」

 

 

思わぬ返答にゼノヴィアが訝しむ中、一護は話を続ける。

 

 

「確かに俺もあいつのことは仲間だと思ってる。けど余程の事が起きねえ限り、今回の件に首を突っ込むことはねえよ」

 

 

「堕天使が暴れ回ろうと、オレの知ったことではない…。もっとも、鬱陶しいと感じれば消しに行くがな」

 

 

「ッ! け、消すって、相手は堕天使の幹部なんだけど…」

 

 

「知らん。そんなもの、そこら辺にいる鴉(カラス)共と変わらんだろう」

 

 

「………」

 

 

キャロルの発言に顔を引きつらせるイリナ。正体を多少知っているとはいえ、10歳程の見た目に似つかわしくない内容である以上、ある意味当然の反応と言えるだろう…。すると、

 

 

「それなら何故先程の情報を私達に伝えた? 態々そんなことをする必要はそちらに無いと思うが…」

 

 

「! あー…実は俺達の方にもイッセーと同じことを考えてる奴等がいてな。そいつを一番伝えたかったんだよ」

 

 

「…今回の件には介入しないんじゃなかったのか?」

 

 

「俺達全体としてはな。けど、そいつ等はどうしても黙ってられねえみたいなんだよ。だからさっきも言ったように、どうするかはお前等に任せる。断りたければキッパリ断ってくれ」

 

 

「? あなたは組織のナンバー2なんでしょ? あなたが止めればいいんじゃ…」

 

 

イリナの問い掛けに対し、一護はこう言葉を返した…。

 

 

「俺達は確かに色々あって“アイエール”っつう組織を語ってるが…実際俺や当麻やリクオと響達の間には、上下関係みてえなモンなんて何1つ無え。むしろ俺達は響達に力を貸してもらってるくらいだ…。あいつ等の意思を曲げる権限なんざ、俺には端(はな)から無えよ」

 

 

「…実際には上下関係の存在しない組織か。夢物語のようにしか聞こえないな」

 

 

「ま、そりゃそうだろうな…。実際に中に居ねえと、そいつは絶対に分かんねえよ」

 

 

「……………」

 

 

その言葉を聞いて、何処か複雑な表情を浮かべるゼノヴィア。と、ここで、

 

 

「とにかく話は以上だ。手間を取らせて悪かったな。こいつはその迷惑料として…」

 

 

「改めてこの心優しき人に慈悲を、アーメン!」

 

 

「いくら何でも早過ぎだろ…」

 

 

テーブルに置かれた一万円札を凄まじい速さで受け取るイリナに対し、再び顔を引きつらせる一護。やはり目の前の少女の身分と行動のズレに困惑するしかないようである…。

 

 

「それとイッセー達には今回の事を伏せといてくれ。色々と面倒なことになっちまうだろうからな」

 

 

「承知した。資金提供には感謝する。ありがとう」

 

 

「気にしなくて構わねえよ。こっちから頼んだことだしな」

 

 

そして一護はキャロルと共に席を外し、そのまま店を後にすると、その道中…

 

 

「やはり甘いな。奴等を止める事など、貴様の力を以てすれば実に容易いというのに…」

 

 

「…甘いことは否定しねえよ。けどあいつ等が動きたがる気持ちも分かるし、本当は動きたい連中が他にも居るからな…」

 

 

キャロルの言葉に対し、何とも言い難い表情を浮かべながら返す一護…。

 

 

「この前の頼みはやってくれたか?」

 

 

「…ああ。もっとも、どうするかは“あいつ等”の気分次第だが…」

 

 

「それでも構わねえ。引き続き頼むよう伝えといてくれ」

 

 

「…何をそこまで不安視している? あの程度の堕天使であれば、奴等でも十分事足りるだろう?」

 

 

すると、それに対して一護は……

 

 

「予感がしてるだけだ…。どうにも気味の悪い予感がな…」

 

 

厳しい表情と口調で、そう呟くのだった…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

それからしばらくして……

 

 

「なぁ…俺は居なくたっていいだろ? 無敵の戦車(ルーク)が加わったんだしさぁ…」

 

 

「戦力は多い方がいいんだよ。本当は当麻やユウキちゃん達にも加わってもらいたかったけど…」

 

 

「…私達の勝手な行動に、眷属じゃないリクオ先輩達を巻き込むのは気が引けます」

 

 

「いや、俺なんかオカ研の人間ですらないんだけど!?」

 

 

先程一護とキャロルが通っていた街中を、3人の人物が歩いていた。1人はグレモリー眷属の兵士(ポーン)の少年──兵藤一誠。1人は同じグレモリー眷属の戦車の少女──塔城小猫。そして最後の1人は駒王学園生徒会メンバーの1人で、シトリー眷属の兵士である少年──匙元士郎である。3人は一護達の予想通り、裕斗のためにゼノヴィアとイリナの2人を探していた…。もっとも、匙に関しては全く乗り気では無いようだが…。

 

 

「つっても、そう簡単には見つからないよな」

 

 

「…そうですね。やはりもう少し協力者がいれば…」

 

 

と、その時だった…。

 

 

 

 

「そんなことだろうと思ったデース…!」

 

 

「考えてた通りだったね、“切ちゃん”」

 

 

『ッ…!?』

 

 

そんな声を聞いて一誠達が振り返ると、そこにいたのは…

 

 

「し、調ちゃん!? それに切歌ちゃん!?」

 

 

「そうデース!」

 

 

「ブイ…」

 

 

金髪ショートカットの少女──暁切歌と、黒髪ツインテールの少女──月読調の2人だった。切歌は相変わらずの快活さで、調は表情こそ変えないもののVサインで挨拶をする。

 

 

「…どうしてあなた達がここに?」

 

 

「勿論、皆さんを“尾けてた”からデス!」

 

 

「! つ、尾けてた…!?」

 

 

切歌の発言にイッセーが驚いていると、調が話し始める。

 

 

「あなたがあの魔剣使いの人のために動くのは、何となく想像が付いてた。だから…」

 

 

「ずっと行動を監視していたデスよ!」

 

 

「ぜ、全然気付かなかった…」

 

 

「…私もです」

 

 

と、ここで、

 

 

「ところで、そこにいるのは誰デスか?」

 

 

「この前会ったばかりだよ、切ちゃん。名前は確か……“サギ”さんだっけ?」

 

 

「誰が“サギ”だッ!! 匙だよ! 匙元士郎!! “会ったばかり”って言ったのは何だったんだよ!?」

 

 

若干置いてきぼり状態だった匙は、調の天然気味な間違いに思わずツッコミを入れる…。

 

 

「…私達の行動を監視していたと言ってましたよね? ということは、これから私達がやろうとしている事も当然…」

 

 

「知ってる…」

 

 

「! も、もしかして、俺達を止めにきたとか…?」

 

 

小猫の問い掛けに対する調の言葉を聞いて、イッセーは表情を引きつらせた。年齢的には自身よりも2つ下の華奢な少女達だが、彼女達が格上の実力者であることはイッセーの頭にもある程度入っている。本当に止めに来たのであれば、ここで確実にイッセーの行動は終わりを迎えたであろう。だが…

 

 

「止めるのが目的なら、あなたが行動しようとした時点ですぐに止めてる…」

 

 

「私達の目的は、むしろその逆デース!」

 

 

「っ! ってことは、協力しに来てくれたのか!?」

 

 

「はぁッ!!?」

 

 

イッセーが期待の混じった表情を浮かべる一方、匙は驚愕を露わにし始めた。どうやらこちらは、止めに来ることを期待していたようである…。

 

 

「先に言っておくけど、これはお兄ちゃん達の命令じゃない。あくまで私達の意思でやってること…」

 

 

「というより、本当はどちらかというと関わっちゃいけないらしいんデスけどね」

 

 

「…では、何故私達に協力を?」

 

 

小猫がそう尋ねてきたのに対して、調と切歌は今までと違う表情を浮かべつつ…こう答える…。

 

 

「私達にとって、他人事ではないからデスよ…」

 

 

「だから放っておくことなんて出来ない。だって、私達も…」

 

 

「? 調ちゃん? 切歌ちゃん?」

 

 

そんな2人の様子に違和感のようなものを感じるイッセー。しかし…

 

 

「と、とにかく、あの聖剣を持ってる2人を探してるんデスよね!? それなら早速再開デース!」

 

 

「! お、おうッ!!」

 

 

「おい、これ絶対俺必要ないだろ!? 十分過ぎる戦力だろ!?」

 

 

「レッツゴー、デース!」

 

 

「おー…」

 

 

「何でだァァァァァァァッ…!!??」

 

 

切歌が瞬時にテンションを切り替えたことで、その違和感も自然と消え、再びゼノヴィア達を探し始めた。匙の空しい叫び声が木霊しているのは…多分気のせいではない。そして…

 

 

「………」

 

 

小猫はそんな様子に違和感を感じながらも、彼等の後を付いていくのだった…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

結論から言うと、イッセーや調達はゼノヴィアとイリナをあっさりと発見した。2人はまだファミレスに残っていたらしく、それを偶然見つけたのである。そして現在、イッセー達はボックス席でゼノヴィアやイリナと向かい合って座っている…。

 

 

「それで、話というのは何だ?」

 

 

「あんた等、エクスカリバーを破壊するためにこの国へ来たんだよな?」

 

 

「ええ。それはこの前説明した通りよ」

 

 

すると、イッセーは早速ゼノヴィアとイリナに本題を告げた…。

 

 

「エクスカリバーの破壊に協力したい」

 

 

「…彼等の言った通りか(ボソッ)」

 

 

「…? 何か言いましたか?」

 

 

「いや、こちらの話だ。気にしないでくれ」

 

 

イッセーの発言に対するゼノヴィアの反応を見て、ふと尋ねる小猫。しかし、ゼノヴィアはそう返し…

 

 

「それより、具体的な内容を聞かせて欲しい」

 

 

「! あ、ああ、実は…」

 

 

イッセーに詳細の説明を求めた。それを受けたイッセーは、協力するに当たっての意思などを説明した上で、小猫や匙と共に頭を下げる。その結果…

 

 

「そうだな。1本くらいならいいだろう」

 

 

「! 本当か!?」

 

 

「ちょっと、ゼノヴィア! いいの!? 相手はイッセー君とはいえ、悪魔なのよ!?」

 

 

ゼノヴィアの出した返答は、まさかの承諾だった。これには思わずイリナも慌てて問い掛ける。

 

 

「相手は堕天使の幹部の1人、コカビエルだ。正直言って、奴との戦闘と聖剣3本の回収を両方こなすのは辛い。奥の手を使ったとしても、任務を終え無事に帰って来れる確率は3割程度だろう」

 

 

「それでも高い確率だと、私達は覚悟を決めてこの国へ来た筈よ?」

 

 

「そうだな…。上にも“任務を遂行してこい”と送り出された。自己犠牲にも等しい…」

 

 

「それこそ、私達信徒の本懐じゃない」

 

 

「私の信仰は柔軟でね。私あっての信仰…。いつでも最善の結果を求めたいのさ」

 

 

「! あなたね! 前から思っていたけど、信仰心が微妙におかしいわ!!」

 

 

「変わっていることは否定しないよ。だが、任務を遂行して無事帰ることこそが、本当の信仰だと私は信じている。生きなければ信仰できないし、主のために戦えないだろう…。違うか?」

 

 

「…違わないわ。でも…!」

 

 

「それに、この協力を受け入れるメリットは十分にある筈だ。何しろ赤龍帝である君の幼馴染みよりも重要の存在が、そこにいるからな」

 

 

ここでゼノヴィアがそう言いながら目を向けたのは…イッセーとゼノヴィア達の間を取るように座っている、調と切歌の2人だった。

 

 

「こうして一緒にやってきたということは、君達も同じ目的で来たと解釈していいだろうか?」

 

 

「構わない…」

 

 

「ここにはそのつもりで来たデス!」

 

 

ゼノヴィアの問い掛けに対し、調と切歌はハッキリと答える。すると、

 

 

「どうしてあなた達が関わろうとするの? やっぱりそこにいるイッセー君達みたいに、あの木場君のため?」

 

 

「別にそういう訳じゃない。でも…」

 

 

「私達にも私達なりの理由があるってだけの話デス。具体的には言えないデスけど…」

 

 

続くイリナの問い掛けに対しては、やや言いにくそうな様子でそう返した。

 

 

「理由に関しては特に詮索するつもりはない。いずれにせよ赤龍帝に加え、あの“七星の歌姫(プレアデス・ディーヴァ)”の内の2人が協力してくれるなら、こちらとしては予想を遥かに越えた戦力強化になる…。実際、上は“ドラゴンの力を借りるな”とも、“アイエールの者達と協力するな”とも言わなかっただろう?」

 

 

「た、確かにそうだけど…いくらなんでも屁理屈過ぎるわよ! やっぱり貴女の信仰心は変だわ!!」

 

 

「変で結構。しかしイリナ、君も彼等との協力が得策なことくらい理解している筈だ。しかも、彼は君の幼馴染みだろう? ならここは1つ、彼等を信じてみようじゃないか」

 

 

ゼノヴィアからそう言われたイリナは、少々複雑な表情を浮かべながらも反論してこなかった。それはすなわち、暗に了承の意を示しているということになる…。

 

 

「…交渉成立のようですね」

 

 

「オーケー。俺はドラゴンの力を貸す。それじゃあ、今回の俺達のパートナーを呼んでいいか?」

 

 

そしてイッセーはすぐさま携帯を取り出し、誰かに連絡を取り始めた。それを見て…

 

 

「調、今の“パートナー”って…(ボソッ)」

 

 

「うん…どう考えても“あの人”のことだよ(ボソッ)」

 

 

調と切歌はその相手に関して、大体の予想を付けていた…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

それからしばらくして、場所を近くの公園へと移したイッセーと調達は、そこで“ある人物”と会っていた。それは…

 

 

「…話は分かったよ」

 

 

先日から姿を見せなくなっていた裕斗である。どうやらイッセーからの呼び出しに対して、素直に応じたらしい。

 

 

「正直言って、エクスカリバーの使い手に聖剣の破壊を承認されるのは遺憾だけどね」

 

 

「随分な言い様だな? そちらが“はぐれ”だったら、問答無用で斬り捨てている所だ」

 

 

「お、おいおい!」

 

 

「こんな所で喧嘩しないで欲しいデス!」

 

 

いきなり裕斗とゼノヴィアが一触即発な雰囲気を醸し出しているのを見て、慌てて止めに入るイッセーと切歌。すると、

 

 

「やっぱり、“聖剣計画”のことで恨みを持っているのね? エクスカリバーと…教会に…」

 

 

「当然だよ」

 

 

イリナの問い掛けに対し、裕斗は冷たい声色で即答した…。

 

 

「でもね、木場君。あの計画のお蔭で聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だからこそ、私やゼノヴィアみたいに聖剣と呼応できる使い手が誕生したの」

 

 

「だが計画失敗と断じて、被験者のほぼ全員を始末することが許されると思っているのか?」

 

 

裕斗は憎悪の籠った眼差しを、イリナに向けながら尋ねた。だがその際、調と切歌が厳しい表情を浮かべていたことには誰も気付いていない…。と、ここで、

 

 

「その件については、我々教会側でも最大級に嫌悪されている。処分を決定した当時の責任者は、信仰に問題があるとして異端の烙印を押された。今では堕天使側の住人だ」

 

 

「堕天使側に…? その者の名は?」

 

 

「バルパー・ガリレイ…“皆殺しの大司教”と呼ばれた男だ」

 

 

ゼノヴィアから出た人物の名を聞いて、何かを考え始める裕斗…。

 

 

「…堕天使を追えば、その男に辿り着くのか」

 

 

「恐らくな。そしてあちらには君の情報通り、あの男…フリード・セルゼンも付いている」

 

 

「フリード・セルゼン。元ヴァチカン法王庁直属の秡魔師(エクソシスト)。13歳で秡魔師になった天才…。悪魔や魔獣を次々と滅していく功績は大きかったわ」

 

 

「だが、奴はあまりにもやり過ぎた。同胞すら手に掛けたのだからね。フリードには信仰心なんてモノは最初から無かった。あったのはバケモノへの敵対意識と殺意、そして異常なまでの戦闘執着。異端に掛けられるのも時間の問題だった…。まさか処理班の始末し損ねたツケが、ここで我々に回ってくるとはね」

 

 

更に再びあの狂気染みた秡魔師──フリード・セルゼンについても話が及ぶと、ゼノヴィアは忌々しげにそう言った。

 

 

「まあ、いい。とにかく共同戦線については承諾させてもらう。具体的な行動に関しては、こちらから改めて伝えよう」

 

 

その後互いの連絡方法に関して軽く確認を取ると、ゼノヴィアとイリナは去っていった。イッセーや切歌達はその2人を見送った所で、思わず大きく息を吐く。すると…

 

 

「イッセー君、どうしてこんなことを…?」

 

 

裕斗が複雑な表情を浮かべながら尋ねてきた。それに対し、イッセーは…

 

 

「ま、仲間だし、眷属だしさ。それにお前には助けられたこともあったからな。借りを返すって訳じゃないけど、今回はお前の力になろうと思ったんだよ」

 

 

「…部長に迷惑が掛かるから…それもあるんだよね?」

 

 

「勿論。あのまま暴走されたら部長が悲しむ。まあ、俺が今回独断で決めたことも部長に迷惑掛けてるんだろうけど…お前が“はぐれ”になるよりマシだろ? 結果オーライになっちまったが、教会の関係者との協力態勢も取れたし…」

 

 

若干ぎこちなさがあるものの、自身の行動の理由について答えた。

 

 

「それに、眷属じゃないのに協力しに来てくれた娘達もいるしな」

 

 

「…!」

 

 

続けてイッセーがそう言うと、裕斗はすぐに或る少女達に目を向ける。それは…言うまでもなく調と切歌の2人だった。

 

 

「調ちゃん、切歌ちゃん…どうして君達まで?」

 

 

「! べ、別にそっちのためって訳じゃないデスよ? ただ…」

 

 

「あなたの気持ちも、少しだけ分かるような気がするから…」

 

 

「え…?」

 

 

調の口から出た言葉に、思わず反応を見せる裕斗。だが…

 

 

「と、とにかく私達はただそうしたいからしてるだけデース…!!」

 

 

またしても切歌がはぐらかすように声を上げたことで、再び有耶無耶となってしまった。と、そこへ…

 

 

「…裕斗先輩。私は、先輩がいなくなるのは……寂しいです…」

 

 

そんな言葉を口にしたのは小猫だった。その表情には僅かではあるものの、確かな寂しさが現れている…。そして小猫は裕斗の下へ近寄っていき…

 

 

ギュッ…

 

 

「…お手伝いします…。だから…いなくならないで……」

 

 

「……!」

 

 

自分の服を小さく掴みながら訴えてくる小猫の姿に、裕斗もついに今までの険しい雰囲気を霧散させた…。

 

 

「ははは、まいったね。無関係な筈の調ちゃんや切歌ちゃんに心配されて、小猫ちゃんにもそんなことを言われたら、僕も無茶できないよ…。分かった。今回は皆の好意に甘えさせてもらおうかな。イッセー君のお蔭で真の敵も分かったからね。でも、やるからには絶対にエクスカリバーを倒す」

 

 

「よし!! 俺らエクスカリバー破壊団結成だッ!! 頑張って奪われたエクスカリバーと、フリードのクソ野郎をぶっ飛ばそうぜ!!」

 

 

そして裕斗の言葉に小猫が小さく微笑む中、イッセーは拳を突き上げながら宣言した。すると…

 

 

「あの…俺も?」

 

 

今まで完全に置いてきぼり状態だった匙が、かなり気まずそうな様子で尋ねてきた。

 

 

「つーか、結構俺って蚊帳の外なんだけどさ…。結局、木場とエクスカリバーにどんな関係があるんだ?」

 

 

そう、言うまでもなくこの男は一番重要な部分についての情報を持っていないのである。そのため…

 

 

「…少し、話そうか」

 

 

木場は自らの過去を匙に話し始めた…。

 

 

 

☆☆

 

 

 

それから数分後…

 

 

「き、木場ぁッ!! 俺はなぁ! 今非常にお前に同情しているッ! ああ、酷い話さ!! その施設の指導者やエクスカリバーに恨みを持つ理由も分かる!! 分かるぞッ!!」

 

 

裕斗の話を聞いた匙は現在、この上なく号泣しながら声を上げていた…。

 

 

「俺はイケメンのお前が正直イケすかなかったが、そういう理由なら別だ! 俺も協力するぞ!! ああ、やってやるさ!! 会長の扱(しご)きも敢えて受けよう!! それよりもまずは俺達でエクスカリバーの撃破だ!! 俺も頑張るからさ! お前も頑張って生きろよ!? 絶対に救ってくれたリアス部長を裏切るな!!」

 

 

個人的な感情が所々に入っているものの、そこには裕斗に対する確かな同情の念が含まれている。一言で表現するならば、“非常に思いやりと情熱の籠った言葉”だった…。

 

 

「よし、良い機会だ!! ちょっと俺の話も聞いてくれッ! 共同戦線を張るなら俺のことも知っておいてくれよ!!」

 

 

次の発言が飛び出すまでは……。

 

 

「俺の目標は、ソーナ会長と“できちゃった結婚”をすることだ!!」

 

 

その瞬間、場の空気が一気に微妙な…というより、冷たい雰囲気へと変わる。しかし、そんな中で逆らうように違う反応を見せる者がいた…。

 

 

パシッ!

 

 

「聞け、匙! 俺の目標は部長の乳を揉み…そして吸うことだッ!!」

 

 

同じ兵士(ポーン)の少年──兵藤一誠である…。

 

 

「兵藤ッ! お前、分かっているのか? それが一体どれほどの難易度なのかを…!」

 

 

「分かってるさ。けど、無理じゃねえッ!! 匙、俺達は上級悪魔のおっぱいに…ご主人様のおっぱいに触れられるんだよッ!!」

 

 

そしてそこから始まったのは、兵士同士の2人の少年による互いの野望の話だった。と言っても、その内容はどうしようもない程下品なものだが…。

 

 

「あははは…」

 

 

「な、何をいきなり話し出してるデスか、この人達は…?」

 

 

「…最低です」

 

 

その光景に裕斗が苦笑いを浮かべ、切歌と小猫はそれぞれドン引きしていたり、いつも通りの辛辣な言葉を口にしていた。と、その時…

 

 

「ねぇ、切ちゃん」

 

 

「! どうしたデスか、調?」

 

 

「…“できちゃった結婚”って、何?」

 

 

「ッ!!? な、何デス、と…!?」

 

 

調の口から出た爆弾級の問い掛けに、思わず硬直する切歌。そう、調は基本的には常識を兼ね備えた少女なのだが、その一方で恋愛等に関する知識については極端に知らないのである。故に“何が”出来ちゃうのかに関しても、彼女は一切理解していない…。

 

 

「……(ジーッ)」

 

 

「ッ! え、えっと、それはデスねー…/////」

 

 

「…それって、私とお兄ちゃんも出来る?」

 

 

「ふぇっ//////!!??」

 

 

何とかはぐらかそうとする切歌だったが、調から更に巨大な爆弾を投下されたことで一気に顔を真っ赤にしてしまう。

 

 

「ししし、調ッ///!? いきなり何を言い出すデスかッ////!!?? そ、そんなことしたら…///」

 

 

「? どうなるの…?」

 

 

「ッ////!!! デ、デーーーーーースッ//////!!!!!」

 

 

そして切歌は、調の純粋過ぎる質問と自らの想像により限界を迎え、渾身の叫び声を上げながら走り去ってしまった…。

 

 

「? どうしたんだろう、切ちゃん…?」

 

 

「えっと…」

 

 

「…とりあえず、あなたのせいなのは間違いないと思います」

 

 

裕斗が困惑の笑みを浮かべる中、首を傾げる調に対して呆れ混じりにそう伝える小猫。一方…

 

 

「匙! 俺達は“1人”じゃダメな兵士なのかもしれない!! だが、2人なら違うッ! 2人なら飛べる!! 2人なら戦える!! 2人ならやれる!! 2人ならいつか“できちゃった結婚”も出来るかもしれない!! ご主人様とエッチしようぜッ!!!」

 

 

「うん…うんッ…!!」

 

 

こちらでは兵士2人が互いに目を輝かせながら、更に意気投合している…。

 

 

「ねぇ、小猫ちゃん」

 

 

「…何ですか、裕斗先輩?」

 

 

「…これで本当に大丈夫なのかな…?」

 

 

「……さぁ…?」

 

 

こうして、エクスカリバー破壊軍団(命名=イッセー)がここに結成(?)されたのだった…。

 

 

 

 

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