ハイスクールD×D ~とある三雄の物語~   作:無颯

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大変御無沙汰しております。無颯です。

約1年半ぶりの投稿になってしまい、申し訳ありません。

シンフォギアメンバーの戦闘回です。では、どうぞ。




女を怒らせるのは愚の骨頂

コカビエルのカミングアウトから少し遡り…とある異空間に、1人の少女が足を踏み入れていた…と言いたい所だったが…

 

 

「えっと…」

 

 

その少女──立花響は大いに混乱していた。何故なら…

 

 

「何で一緒にいるんだろうね、私達?」

 

 

「それはこっちの台詞だ! 別々に別れたんじゃなかったのかよ!? 」

 

 

雪音クリスを始め、先程覚悟を決めて別れた筈の少女6人が、自分の周りにいたのだ。

 

 

「ど、どうなってるデスか? 一兄は一緒じゃないみたいデスけど…」

 

 

「私達がバラバラになった方が、向こうにとって都合が良い筈…。向こうのミス…?」

 

 

「だとしたら、あいつ等見かけによらず凄い間抜けデース…!」

 

 

調の推測を聞いた切歌は若干小馬鹿にしたような口調でそう言った。しかし、そこへ待ったを掛ける者達がいた…。

 

 

「構えなさい、二人共」

 

 

「立花、雪音、お前達も集中しろ。これは恐らく…」

 

 

「ッ! 皆、離れてッ!!」

 

 

ここにいる7人の中での年上組である、マリアと翼の2人である。すると、未来が何かに気付いて声を上げた、次の瞬間、

 

 

ドガアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!

 

 

響達の居た場所で突如爆発が発生したのだ。言うまでもなくその場は一瞬にして土煙に覆われ、響達の姿を確認することが出来なくなってしまった…。と、そこへ、

 

 

「ヒャッハーッ! 中々派手な狼煙じゃねえか!!」

 

 

「でもちょっと強過ぎじゃないかしら? あんなの普通の人間なら間違いなく木端微塵になるレベルよ? 特に私の狙ってる娘(こ)は一番脆そうだったし…」

 

 

「そんな馬鹿なことしないよ。ちゃんと程良くボロボロになるような威力にしたからな。じゃないと…“楽しみ”が無くなっちゃうじゃん?」

 

 

「“楽しみ”という表現はいけませんよ? これから我等が行うのは、“主の救いの代行”です…。ああッ! やはり『 幼気(いたいけ)な少女達に救いを与えよ』という主の御声が聞こえてきます…!!」

 

 

いきなり出現した魔方陣から姿を見せたのは、件の元研究員の“ビジネスパートナー”である7人の男達だった。会話をしているのは無駄にテンションの高いヤンキー風の男―――ヴェイガー、女性的な口調が特徴の男―――ボブ、子供っぽい口調で話す少年―――アステル、神父を思わせる風貌の小太りな男―――ヴィストの4人である…。

 

 

「…………」

 

 

「“この程度で死ぬようであれば、それまでの者達ということ”…それだけの話だ」

 

 

「…いや、どうやらそれはないようだ」

 

 

依然として言葉を発しない痩躯の男―――グリーズがいる中、燕尾服を纏った冷静な男―――ヨキに対してそう言うリーダー格の屈強な男―――ゲイズ…。すると、

 

 

『…!!』

 

 

ゲイズ達に向かって“千ノ落涙”と“α式 百輪廻”による剣と鋸の雨が殺到し始めたのだ。ゲイズ達はそれに気付き、すぐさま回避行動を取るが…

 

 

「こいつもくれてやるよッ!!」

 

 

そんな声と共に、今度は“MEGA DEATH PARTY”による大量の小型ミサイルの雨が上空から降り注いできた。それに対し、

 

 

「ハッ! 無駄無駄無駄ァァァッ!!!」

 

 

ヴェイガーが真っ先に反応し、“或るモノ”を使ってそのミサイル群を全て破壊した。その“或るモノ”とは……ヴェイガーの周りを浮遊している、20機のビットらしき物体である…。と、ここで、

 

 

「私達を動揺させて、不意打ちで一気に倒そうとするなんて…随分と汚い真似をしてくれるわね?」

 

 

「フッ、ここは戦場だぞ? 立ち上げれば勝者であり、倒れるのであれば敗者…それだけの話ではないか?」

 

 

憤りを垣間見せるマリアに対し、気にする様子もなく僅かに笑みを浮かべるゲイズ…。すると、

 

 

「どうして…」

 

 

「あァ?」

 

 

「どうして、そんなに楽しそうなんですか…? どうしてこんな時に、笑っていられるんですかッ!!?」

 

 

「…ハッ…」

 

 

響が悲しみと怒りの混ざった様子で、そう問い掛けたのだ。そしてその問い掛けに対し、ヴェイガーが鼻で笑いながら、代表するかのように言い放つ…。

 

 

「楽しいに決まってんだろ? 特にテメエ等みてえな…苦しめがいのある小娘(ガキ)共を痛めつけるのはなァッ!!!!」

 

 

『ッ!!?』

 

 

ヴェイガーが複数のビットを束ねてレーザー砲を放つと、それが開戦の合図となった。

 

 

「あの英雄紛いの女は私の獲物だ。貴様は…」

 

 

「ハッ、好きにしろッ! 俺が狙ってんのはテメエだ、ミサイル女ァァァァァァァァッ!!!」

 

 

「ッ! 勝手に変な仇名で呼ぶんじゃねえ、このヤンキー野郎がッ!!」

 

 

「クリスちゃん…ッ!?」

 

 

「貴様の相手は私だと言っている…」

 

 

ドゴッ!!

 

 

ヴェイガーに向かっていくクリスを見て、咄嗟に声を上げようとする響。だがその前にリーダー格の男――ゲイズが現れ、上段蹴りで吹き飛ばした…。

 

 

「立花ッ!!」

 

 

「クリス先輩ッ!!」

 

 

「余所見してる暇があるなら、今度こそ吹き飛んじゃいなよッ!!」

 

 

『ッ…!!』

 

 

翼と切歌が声を上げる中、子供っぽい口調が特徴の少年――アステルが手榴弾を投げ込んだことで、完全に“乱戦”の様相を呈し始める。土煙の中から響とクリス以外の5人が姿を見せると、そんな彼女達へ残りの5人の男達がそれぞれ迫って来た。

 

 

「殺ッ!!」

 

 

「! はあッ!!」

 

 

翼には燕尾服を身に纏った男―――ヨキが…

 

 

「哀れな少女に救いをッ!!」

 

 

「ッ! くっ…!!」

 

 

マリアには神父風の小太りな男―――ヴィストが…

 

 

「ッ…!」

 

 

「フフッ、さあ、楽しみましょう?」

 

 

調には女性的な口調が特徴の男―――ボブが…

 

 

「調ッ…! ッ!?」

 

 

「余所見するなって言ってるだろッ!! お前の遊び相手は僕だよッ!!」

 

 

「! お前と遊んでる暇なんて無いデスよッ!! さっさと倒すデスッ!!」

 

 

「ハッ、やれるもんならやってみなッ!!」

 

 

切歌には子供っぽい口調の少年―――アステルが…

 

 

「……………」

 

 

(ッ…! 何なの、この人…?)

 

 

そして未来には一切言葉を発さない陰鬱そうな男―――グリーズが、それぞれ相対する形となった…。

 

 

──翼side──

 

 

「その腕…やはり拙僧の相手にはお前が適任のようだ」

 

 

「…防人として、貴様のような下郎(げろう)を放っておく訳にはいかない。貴様はあまりにも…“血に飢え過ぎている”…」

 

 

「…! フフッ、そうか。そこまで見抜いているか。いやはや、全く…」

 

 

燕尾服を纏った男―――ヨキの放つ異様な雰囲気を感じ取り、真剣な表情で自らの剣を構える翼。すると、それに対してヨキは…

 

 

「傷の付けがいがあるなぁ…」

 

 

「ッ……!!」

 

 

「キエエエエエエエエエイッ!!!」

 

 

寒気を感じさせるような笑みを浮かべ、奇声と共に翼と得物による激しい応酬を始めた。ヨキの持っている得物は所々錆付いている細長い錫杖。その切っ先は鋭く尖っている上に……何故か赤黒く変色していた…。

 

 

「ッ…!! はあッ!!」

 

 

「ヌッ…!! キエエイッ!!!」

 

 

先端の異様な変色に気付いた翼は咄嗟に跳躍をして距離を取り、“蒼ノ一閃”を放つが、ヨキは渾身の一突きでその攻撃を霧散させた…。

 

 

「どうやら気付いたようだな…。そうだ、拙僧はこの切っ先を以て数多の命を断ってきた…。“女の命”をな”…」

 

 

「ッ…!」

 

 

「その瞬間はまさに“快感”の一言に尽きる程、極上のモノだった…。いやはや全く、甲高い女の悲鳴と共に命が潰(つい)える瞬間というのは、何故にあれほど極上なのだろうか…!」

 

 

「“極上”、”だと…? そんな歪み切った感覚の為に命を奪ってきたというのかッ!! 貴様はどこまで狂っているッ!!!」

 

 

「フッ、お前の理解を得ようなどとは端から思っていない。何故なら…お前もその感覚を味わうための生贄に過ぎないのだからなぁッ!!」

 

 

そしてヨキは再び翼と激しく得物の打ち合いを始めた…。

 

 

──調&切歌side──

 

 

一方、こちらでは…

 

 

「チッ!! ちょこまか動き回ってないで、いい加減当たれよ!! このデス女ッ!!」

 

 

「当たれと言われて当たる奴が何処にいるデスかッ!! あと勝手に変な仇名を付けるなデスッ!!」

 

 

「切ちゃん!」

 

 

「あら、余所見してる暇があるのかしら?」

 

 

「ッ…!!」

 

 

切歌と調が子供っぽい口調で話す少年―――アステルと、女性的な口調が特徴的な男―――ボブの2人とそれぞれ戦闘を繰り広げていた。

 

 

「おい何してんだよ、“オカマ親爺”!! いい加減あの鋸女を倒せよッ!!」

 

 

「あら、別に少しくらい遊んだっていいじゃない。私の好みにドンピシャなのよ、あの娘。だからもうちょっと遊ばしてくれないかしら? そうね…せめてこの鞭の一発で、可愛い悲鳴の1つでも聞かないと、ね…」

 

 

「……(ビクッ!!)」

 

 

“オカマ親爺”と呼ばれたボブの発言を聞いた瞬間、言葉では言い表せない危機感を感じて思わず切歌の後ろに隠れる調…。

 

 

「お前は絶対に調に近付くなデス…!」

 

 

「あら、すっかり嫌われちゃったみたい。ま、別に嫌われようと関係ないのよねぇ…。こっちが捕まえちゃえばいい話だし…ねぇッ!!」

 

 

自身のパートナーの様子を見た切歌が憤りを露わにしても尚、気味の悪い笑みを浮かべながら再び迫るボブ…。一方更に別の場所では…

 

 

──マリア&クリスside──

 

 

「はあああッ!!」

 

 

マリアが神父風の男―――ヴィストを短剣状態の自らの神器“アガートラーム”を使って攻め立てるが、ヴィストはモーニングスターという特殊な得物を駆使しながらマリアの攻撃をいなしていた…。

 

 

「フフフッ、実に素晴らしい! その勇ましくも華麗な立ち居振る舞いはまさに“聖女”そのもの…! ああっ、やはり私の目に狂いは無かった! 貴女は間違いなく真っ先に救わなければならない存在…!!」

 

 

(っ…! どうやら随分面倒な相手に目を付けられたみたいね…)

 

 

何処からどう見ても狂った様子のヴィストを見て、心底嫌そうな表情を浮かべるマリア。と、そこへ、

 

 

「さっさとくたばれや、このミサイル女アアアアアアアッ!!!」

 

 

マリアの近くで轟音と共に土煙が上がったかと思うと…

 

 

「チッ! しつけえんだよ、あのヤンキー野郎ッ…!」

 

 

その土煙の中から銀髪が目を引く少女──雪音クリスが姿を現した…。

 

 

「! つってる間に、合流しちまったみたいだな」

 

 

「ええ。それにしても、貴女も随分面倒な男を相手にしてるみたいね。私の相手とはタイプが大分違うようだけど…」

 

 

「ハッ、何なら相手を交換するか?」

 

 

「遠慮しておくわ。面倒の度合いは差が無いようだし、何より…ッ!」

 

 

「救済執行ッ!!」

 

 

マリアはクリスと軽口を言い合っていた所で、神父風の男の攻撃に気付き、アガートラームで受け止める。そしてクリスも…

 

 

「! オラアアアアッ!!!」

 

 

「っ! チッ…!!」

 

 

自らの背後から複数のビットが忍び寄っていることに気付き、振り向き様に“BILLION MAIDEN”を放った。これにはビットを操っていたヤンキー風の男―――ヴェイガーも思わず舌打ちをし、すぐさまビットを一度後退させる。

 

 

「戦いの相性で考えれば、今の組み合わせが恐らく最善よ」

 

 

「…みたいだな。そうと決まったら…さっさとぶっ潰す!!」

 

 

マリアの言葉に同意し、引き続きヴェイガーと相対することを決断するクリス…。

 

 

「おい、何だよ似非(えせ)神父!! さっさとあの高飛車そうな女に“救い”って奴を与えるんじゃなかったのか!? あァッ!?」

 

 

「ええ、勿論ですとも。ですが焦りは禁物です。“救い”は慎重かつ確実に行わなければなりませんからねぇ…」

 

 

「チッ、そうかよ…。まあ、そっちはそっちで勝手に救いでもなんでもやってろ。こっちはこっちで、絶望させてやっからよォッ!!」

 

 

そしてヴェイガーが全てのビットによる一斉掃射を行ったことにより、大爆発が起こった…。

 

 

──響&未来side──

 

 

「オンナアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

「くぅぅッ…!!!」

 

 

裕に30センチはあるであろう長く鋭い鉤爪の一撃を何とか受け止める未来。彼女が相手をしているのは、先程まで一切言葉を話さなかった陰鬱そうな男―――グリーズ。だがその様子は一変し、現在は狂気に満ちた奇声を上げている…。

 

 

「ッ! やああッ!!」

 

 

未来は力を込めて攻撃をいなし、扇型の自らの神器“神獣鏡(シェンショウジン)”の先端からビームを複数放つが、グリーズは素早い動きで躱していく。

 

 

「シャアアアアアアアアッ…!!!」

 

 

そしてグリーズが蛇を連想させる奇声を上げながら再び未来に迫ろうとした、その時、

 

 

「おおりゃああああああああッ!!!」

 

 

何かが凄まじい勢いでグリーズと衝突し、まとめて吹き飛ばしたのだ。彼と衝突したモノの正体は…

 

 

「…クククッ、面白い…!」

 

 

7人の男達のリーダー的存在の男──―ゲイズである。そして先程雄叫びと共にゲイズを吹き飛ばしたのは…

 

 

「未来ッ!!」

 

 

「! 響!!」

 

 

ベージュのショートカットが目を引く少女―――立花響だった。響はすぐさま未来の下へ駆け寄ると同時に、彼女の前に立って拳を構える。

 

 

「ジャマヲ…スルナッ…!」

 

 

「それはすまなかったな…。安心しろ。もう邪魔をするつもりはない」

 

 

苛立ちを露わにするグリーズに対し、淡々とした口調で返すゲイズ…。

 

 

「貴様には失望したぞ、英雄紛いの女。貴様の拳は…実に軽い」

 

 

「…!」

 

 

何事も無く立ち上がりつつゲイズがそう言うと、響は僅かに反応を見せる。そして、

 

 

「“嬲り甲斐のある女がいる”というあの男の話に乗ってみれば、この程度とは…。どうやらさっさと終わらせて、“あの男”と殺(や)り合った方が良さそうだな」

 

 

「! “あの男”…?」

 

 

「貴様等が心底慕っている、あの“オレンジ髪の男”に決まっているだろう」

 

 

「「……!!」」

 

 

ゲイズの口から出た“オレンジ髪の男”という言葉に、響だけでなく未来も大きく反応する。それは言うまでもなく…一護のことを指していた…。

 

 

 

―――各side 終了―――

 

 

 

「素晴らしいッ! 拙僧とここまで打ち合うことができるとは…さぞかし命を断った瞬間は極上であろうなぁッ!!」

 

 

「黙れッ!! 貴様のような外道に命を差し出す気など、毛頭無いッ!!」

 

 

「フッ、外道か! 拙僧が外道というなら、お前達は何故“拙僧以上の外道”に付き従っているッ!?」

 

 

「ッ!? 貴様以上の外道だと…? 一体誰のことを言っているッ!!」

 

 

「決まっているだろう。あの“黒崎一護”という小僧のことだッ!!」

 

 

「ッ…!!」

 

 

自身の相手―――ヨキの放った言葉に反応する翼。すると、

 

 

「一兄が“外道”って、どういうことデスかッ!!」

 

 

「ハッ! そのままの意味だよッ!! デス女ッ!!」

 

 

「…許さない…!」

 

 

「あら、その怒った顔も中々魅力的ねぇ…」

 

 

翼の近くで戦っていた切歌と調が、アステルとボブに対してそれぞれ怒りを露にしていた。まるで、アステルとボブがヨキと同じような発言をしたかのように…。更に、

 

 

「何も知らねえ奴が、好き勝手なこと言ってんじゃねえッ!!」

 

 

「おうおう、怒り心頭ってかッ!? 大層あの小僧(ガキ)にご執心みてえじゃねえか! だが判るんだよ! あの小僧(ガキ)に媚びり付いた血の匂いがなァッ!!」

 

 

「っ! その口を、今すぐ閉じなさいッ!!」

 

 

「いやはや、これは実に哀しい! 貴女の心は完全にあのような“薄汚れた存在”に囚われてしまっているのですねぇッ! ですが! 何を言おうと、これだけは確信を持って貴女にお伝えすることができますッ!」

 

 

クリスとマリアもヴェイガーとヴィストに激昂していた。しかし、ヴェイガーとヴィストも含め、男達6人はクリス達7人が慕う青年―――黒崎一護への罵倒をやめることはなかった。そして……奇(く)しくもここで、男達は全く同じ主旨の発言を言い放つ…。

 

 

『あの男(あいつ)(彼)は、善人面した“ただの人殺し”だ(よ)(なんだよッ!!)(なんですよッ!!)』

 

 

その一言を聞いた瞬間、響達の頭の中に“或る記憶”がフラッシュバックする…。

 

 

【汚すんじゃねえ…。その腐った欲のために、コイツ等の歌をこれ以上汚すんじゃねえッ…!!】

 

 

それは1人の少年の姿…。

 

 

【誓ったんだよ…。この手をどんだけ血で汚そうが“護る”って”、俺の魂に誓ったんだッ!!!】

 

 

響達の歌と…響達自身を護るために戦う、強くて優しい少年の姿だった…。そして、

 

 

「キケケケケケケッ!! シネエエエエエエエエエエエッ!!」

 

 

グリーズがその一言を言い放つと同時に、男達はそれぞれ渾身の一撃を繰り出した。ゲイズは右拳から極大の衝撃波を響に叩き込み、ヨキは最大限のエネルギーを込めた錫杖を翼に打ち込む。ヴェイガーは20機のビットのビームを収束させた極大のビームをクリスに放ち、ヴィストは巨大化させたモーニングスターをマリアに叩き込む。ボブは鞭を素早く振るうことによる無数の衝撃波を調に放ち、アステルは最大級の威力を持つ爆弾を切歌に向かって放り投げる。そしてグリーズは鉤爪から十字型の斬撃を未来に向かって放つ。その結果…

 

 

ズガアアアアアアアアアアアアアアアアンッ…!!!!

 

 

空間内の7か所から凄まじい轟音がそれぞれ響き渡り、一帯が土煙に覆われた…。

 

 

「あら、これは本当にやり過ぎちゃったわね…」

 

 

「ハッ! 五体満足なら良いんだろ? 最悪死んでても使い道の一つや二つはあるだろ」

 

 

「別に死んでてもいいけどね。あのデス女、何かウザかったし…」

 

 

「これで命を落としたというのであれば、それが主の望む彼女への救いということ…。ああ! どうかあの哀れな少女に最大の救いを与えたまえ…!」

 

 

「手応えあり。くくっ! これだから女を殺すのはやめられん…」

 

 

「オンナッ! オンナァッ…!」

 

 

それぞれが放った一撃による手応えを感じて、思い思いの言葉を口にするボブ、ヴェイガー、アステル、ヴィスト、グリーズ、ヨキの6人…。

 

 

「話は後にしろ。生死の判別を先にするぞ。場合によっては…適当に楽しめそうだからな…」

 

 

そんな6人をゲイズは軽く注意しつつ…実に醜悪な笑みを浮かべながら、自分達が“倒したであろう”少女達の下へ”向かおうとした…と、その時、

 

 

「ガフッ!?!?」

 

 

『ッ!?!?』

 

 

ゲイズの腹部に強烈な右拳の一撃が突き刺さり、思い切り吹き飛ばしたのだ。突然のことに驚きを露わにしつつも、咄嗟にその一撃を放った拳の持ち主へ攻撃しようとするヨキ達6人。しかし…

 

 

「ぐおっ…!?」

 

 

ヨキは隣を瞬時に通り過ぎた“或る人物”に、右の肩口を斬られ…

 

 

「ギッ…!?!?」

 

 

アステルも背後から迫ってきた“或る人物”に、左腹部を深く斬られた…。

 

 

「ゴホッ!?!?」

 

 

ヴィストは“或る人物”から頭部に回し蹴りを喰らい…

 

 

「ギィィィィッ…!?」

 

 

グリーズは前方から飛んできた細い紫色の光線に腹部を貫かれた。そして…

 

 

「なっ!?」

 

 

ヴェイガーは反撃用に展開した5基のビットを、赤いエネルギー矢によって全て破壊され…

 

 

「ギィヤアアアアアアアアアッ!?!?!?」

 

 

ボブは“或る人物”よって…通り過ぎ様に左腕を二の腕の辺りからバッサリと斬り落とされた…。言うまでもなく、彼等をこのような目に合わせることが出来るのは、この空間内でたった7人しかいない。それは…

 

 

『………………』

 

 

立花響、風鳴翼、雪音クリス、小日向未来、マリア・カデンツァヴナ・イヴ、月読調、暁切歌の7人である…。

 

 

「イデェ…イデェッ…!!」

 

 

「チッ、どうやら見かけによらず、結構しぶといみてえだなぁッ…!」

 

 

「イテテッ、これはちょっと油断しちゃったかな? よし、確実に殺そう…」

 

 

「救済を拒まれるとは、実に宜しくない…。これは少々罰が必要なようですねぇ…!」

 

 

「手応えはあったのだが…まあ、いい。殺し損ねたのであれば、再び殺すだけのこと…」

 

 

「くくっ、どうやら過小評価をしてしまっていたようだな。確かにこれは嬲り甲斐がある…。素晴らしい! 素晴らしいぞ、“英雄紛いの女”ぁぁぁぁぁぁッ!!!」

 

 

自分達が倒したと思っていた少女達の姿を見て、怒りや苛立ち、狂喜など、それぞれ反応を見せるボブ以外の6人の男達…と、次の瞬間、

 

 

 

 

「黙ってください」

 

 

『ッ…!?!?!?』

 

 

響のそんな一言が響き渡ると、ゲイズ達の各々の反応は一気に消え去った。その理由は普段の彼女達からは一切想像することが出来ない…冷徹なオーラを響達が纏っていたからである。そのオーラの正体は……紛れもない“殺気”であった…。そして、

 

 

「翼さん」

 

 

「…ええ」

 

 

「クリスちゃん」

 

 

「…おう」

 

 

「マリアさん」

 

 

「…ええ」

 

 

「調ちゃん」

 

 

「…はい」

 

 

「切歌ちゃん」

 

 

「…はいデス」

 

 

「未来」

 

 

「…うん」

 

 

響は恐ろしい程落ち着いた様子で翼達に1人1人声を掛け…こう口にした…。

 

 

 

 

 

「終わらせよう」

 

 

『…ええ(うん)(ああ)(はい)(はいデス)』

 

 

その言葉に対し、響と同じように酷く冷たい様子で頷く翼達6人…。と、ここで、

 

 

「ふざけんじゃないわよ…。よくもこの私の腕を……」

 

 

呪詛のような言葉を呟いたのは、調の鋸によって左腕を斬り落とされた男―――ボブ…。

 

 

「この、小娘共がアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

つい先程までの余裕のある女口調から一転して、怒りを前面に押し出しながら響達へと突っ込み始めたのだ。その速さはこれまでとは比べ物にならない程で、彼の本気を表していた。しかし…ボブの本気が響達に届くことはなかった。何故なら…

 

 

「絶対に許さない…」

 

 

「ア……」

 

 

ボブは調のヨーヨー型に変形させた神器によって張り巡らされた“高エネルギー線の網”に触れていたのだから…。その技の名は、“終β式・縛戒斬鋼”…。

 

 

「消えて…」

 

 

調が小さく呟いた瞬間、ボブの全身から夥しい量の鮮血が噴出する。その場に倒れ伏し、ピクリとも動かない…。彼の命が絶たれた証拠だった…。

 

 

「ッ…! おいおい、一体どういう風の吹き回しだよ、テメエ等…」

 

 

「ハッ、今更本気モードって奴? どうやら“アイツ”を馬鹿にしたのが結構効いたみたい…」

 

 

その一部始終を見て、動揺を見せながらそんな言葉を口にするヴェイガーとアステル…。と、次の瞬間、

 

 

「……へ……?」

 

 

「もう黙るデスよ、お前…」

 

 

アステルは自らの身に起きた出来事が分からなかったが、いつの間にか自身の後ろに居る切歌の一言を聞いて理解した…。切歌の放った技、“対鎌・螺Pぅn痛ェる”によって…自らの胴体が真横に真っ二つに斬られていることに…。

 

 

ブシュウウウウウウウウウウウウッ…!!!

 

 

『ッ…!?!?!?』

 

 

「!! 散れッ…!!!」

 

 

至近距離で起きた2人目の仲間の死を真に当たりにし、ゲイズの一声を聞いて咄嗟にその場を散り散りに離れるヴェイガー達4人。すると、それを見た響、翼、クリス、マリア、未来の5人は一瞬でその場から姿を消し、各々の相手へと迫る…。

 

 

 

――――ヨキ VS 翼 side――――

 

 

「先程は仕損じたが…今度こそ、已(い)ねやアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 

自身に迫ってきた翼を見て、得物である錫杖を片手に突っ込むヨキ。それに対し…

 

 

「散る覚悟は…出来ているな…?」

 

 

翼はヨキに聞こえない程の小さな声で呟くと、どこからともなく双剣を取り出し、柄を繋ぎ合わせて“双刃刀”へと変形させる。加えて灼熱の炎を刀に纏わせるその技の名は……“風輪火山”…。

 

 

「クククッ! さあ、早く極上の悲鳴を上げ…」

 

 

すれ違い様に翼を仕留めたと思ったヨキは、狂気に満ちた笑みを浮かべてそう言おうとした…。と、次の瞬間、

 

 

ゴオオオオオオオオオオオオオオオッ…!!!!

 

 

「キエエエエエエエエエエエエエエエエイッ…!?!?!?」

 

 

ヨキの身体に斜め一文字の切り口が現れ、そこから発生した炎はあっという間に彼の身体を覆い尽くす。そして…

 

 

「防人の剣…その身で味わいながら消え失せよ…」

 

 

翼の一言と共に、ヨキの身体は業火に焼かれて消失した……。

 

 

 

――――勝者 風鳴翼――――

 

 

 

――――雪音クリス vs ヴェイガー―――――

 

 

「チッ…! 何なんだよ…どうなってんだよコイツはッ!?」

 

 

ヴェイガーは先程までの余裕をかなぐり捨て、必死に或る人物から距離を捨てようとしていた。その人物とは…

 

 

「いつまで逃げてるつもりだよ?」

 

 

「ッ! オラァッ!!」

 

 

一切表情を変えずにヴェイガーの後を追う少女――――雪音クリスである。背後から聞こえてきた彼女の声に反応し、咄嗟に数基のビットを操って攻撃を繰り出すヴェイガー。それに対し、クリスはビットから放たれたビームの雨をいとも簡単に避け、弓型に変形させた神器から複数の赤いエネルギー矢を放つ。ヴェイガーはすぐさまビットを破壊されないように操作するのだが、蛇のように不規則な動きを見せるエネルギー矢は回避しようとするビットを追跡し…破壊する。この光景は決して初めてのモノではない。何しろ20基ほど有ったはずのヴェイガーのビットの数は、既に半分以下になっていた…。

 

 

「どうだ? 散々ナメて掛かってた女に追い詰められてく気分は?」

 

 

「ッ!! っざけんじゃねえぞッ!! このクソアマがああああああああああッ!!」

 

 

クリスの冷え切った声での一言を聞いて、怒りが頂点に達したヴェイガー。残りのビットの発射口を全てクリスに向け、一気に照射する。

 

 

「ッ!!?」

 

 

「外さねえ…」

 

 

しかしヴェイガーの目に入ってきたのは、既に迎撃態勢を整えているクリスの姿だった。スナイパーライフル型に変形させた神器から放たれたレーザーは途中で一気に拡散する。その技の名は…“SPREAD ZEPPELIN”…。

 

 

「ギヤアアアアアアアアアアアッ!!??」

 

 

放たれたレーザーはヴェイガーの放ったビットを全て破壊するだけでなく、彼の足や腕にも命中し、そこから大量の血が噴き出した。あまりの痛みに思わず絶叫するヴェイガー…。

 

 

「ガ…ガァッ…こ、この、クソ小娘(ガキ)ガアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

それでも痛みを無理矢理堪え、クリスへの怒りを露わにしながら前方へ視線を向けた。すると、そんなヴェイガーの目に入ってきたのは…

 

 

「………」

 

 

「ッ…!!??」

 

 

自身の目の前に立ち、自身の額に小型拳銃型に変形させた神器を突き付けている、クリスの姿だった。そして…

 

 

「閻魔様によろしくな…」

 

 

「ク、クソッタレ…が…」

 

 

そのやり取りの直後、一発の銃声が響き渡り、ヴェイガーは仰向けに倒れる…。そこからヴェイガーが動くことは無かった…。

 

 

「…助太刀に行く必要は…無さそうだな…」

 

 

そう呟きながら、永遠に動かなくなったヴェイガーに背を向けて歩き出すクリス…。その姿は、すぐに壊れてしまいそうな程、儚いモノだった…。

 

 

───勝者 雪音クリス───

 

 

───マリア・カデンツァヴナ・イヴ vs ヴィスト───

 

 

「ハァッ…ハァッ…ハァッ…」

 

 

「どう? さっきまで“救済”なんて言葉の下に殺そうとした女に追い詰められてる気分は…?」

 

 

片膝を着きながら満身創痍の様子のヴィストに対し、まるで見下すような冷たい視線を向けるマリア。この光景を見て、どちらが圧倒的優位に立っているか分からない者はいないだろう…。

 

 

「ふざけるな…救済を受ける、分際でエエエエエエエエエエエエッ!!!」

 

 

マリアの冷たい視線に怒りを露わにしたヴィストは、これまでの敬語口調をかなぐり捨てて激昂した。モーニングスターのような得物を振り回しながら、猛烈なラッシュを見せる。しかし…マリアはそれを最小限度の動きで悠々と躱していく…。

 

 

「それが貴方の本性ね…。“救済”なんて大層な言葉を口にしながら、本当は自分より弱い女を見下して痛め付け、支配する…。貴方が救いたいのは、自分なのよね?」

 

 

「黙れ黙れ黙れッ!! 全てを見透かしたような目で、私を見るなアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

ヴィストはマリアの言葉を聞いて更に冷静さを失い、得物を怒りのままに振り回す。そこにいるのは神父の皮を被った凶悪な存在などではなく…ただの腐った感情を露わにする、哀れな1人の男だった…。

 

 

「貴方の方こそ黙りなさい…。何も知らずにあの子を“善人面した人殺し”と吐き捨てる“外道”と…これ以上話す気は無いわ…」

 

 

「ッ!!? この…クソ女アアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

怒りの頂点を迎えたヴィストは得物を再び巨大化させて振り下ろした。辺りに響き渡る轟音と立ち込める土煙。しかし…

 

 

「悪を切り裂く聖剣…受けてみよ…!」

 

 

「ッ!!??」

 

 

そんな言葉が聞こえてきた方にヴィストが目を向けてみると、そこには…空中に飛び上がっているマリアの姿があった。そしてその頭上には、まるで巨大な発射口のように円状に展開する複数の短剣型の神器があり…その中心には超高密度のエネルギーが蓄積されている。その技の名は…“NEMESIS HAMMER”…。

 

 

「しゅ、主よオオオオオオオオオオオオオオオオッ…!!???」

 

 

ヴィストの絶望の叫び声の直後に発射される、極大の純白のレーザー光線。それはヴィストを丸ごと飲み込み…その姿を跡形も無く消し飛ばした…。

 

 

「貴方が救われることは永遠に無いでしょうね…。地獄の奥底で、悔い続けなさい…」

 

 

先程までヴィストが立っていた場所を一瞥したマリアは、冷え切った声で呟きながらその場所に背を向ける。その姿は清らかで美しいものの…何処か小さかった…。

 

 

───勝者 マリア・カデンツァヴナ・イヴ───

 

 

───小日向未来 vs グリーズ───

 

 

「オンナッ! オンナアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

 

グリーズは何度目か分からない突貫を行う。しかし…

 

 

「ギィヤアアアアアアアアアアアアッ!???」

 

 

それは再び無駄に終わり、吹き飛ばされた場所でのたうち回った。その理由は…

 

 

「…………」

 

 

大量のミラーデバイスを駆使した未来の全方位をカバーする攻撃の前に、為す術が無いのである。にもかかわらず、

 

 

「オンナアアッ…オンナアアッ…」

 

 

グリーズは怨念のように同じ単語を呟きながら、夥(おびただ)しい血を流す身体に鞭を打って再び立ち上がる。その姿は…最早人間という存在から大きくかけ離れていた…。すると、

 

 

「どうして…? どうしてそんなに、女の人を傷付けようとするの? どうしてそんなに、女の人にこだわるの?」

 

 

未来はグリーズにそう問い掛ける…。感情を一切感じさせない表情を浮かべながら…。

 

 

「オンナノチ、キレイ…オトコノチ、キタナイ…ダカラ、オンナコロス。キレイナノヲミタイ…ダカラ、オンナガ、イイイイイイイイイイッ!!!」

 

 

その姿は、紛れもなく“化け物”そのものであった。普通の少女であれば、恐怖のあまり発狂なり失神なりしてしまうレベルであった。しかし、そんな姿でまたしても突貫してくるグリーズに対し、未来は…

 

 

「そっか…あなた、壊れてるんだね」

 

 

「ッ!!!???(ピタッ!!)」

 

 

その瞬間、猛スピードで突貫していた筈のグリーズの動きは止まった。いや、本能的に止まらざるを得なかったのだ…。ハイライトの消えた瞳で笑みを見せる未来の姿を見た瞬間に…。

 

 

「嫌いだよね? そんな壊れた自分…本当は、消えて無くなりたいよね…?」

 

 

「ア…アアッ…」

 

 

「大丈夫…私が、“消してあげる”から…」

 

 

「ッ!!?? ア…アアアアアアアアアアアアッ!?!?」

 

 

その一言を耳にした直後、グリーズは180度転回して未来から逃げ出した。そう、逃げ出したのだ。先程まで未来を殺そうと躍起になっていた筈のグリーズが…。

 

 

「もう遅いよ…」

 

 

「ッ!!?? ギィッ!!??」

 

 

それを見た未来は逃げ出したグリーズに向かい、大量のミラーデバイスを一気に飛ばすと、ミラーデバイスから放たれた複数のビーム光線が幾つかグリーズに命中し、動きを止める。その瞬間、彼の運命が決定した…。

 

 

「じゃあね…」

 

 

「ッ!!? イ、イヤダ…シニタクナイイイイイイイイイイイッ!!!!」

 

 

それがグリーズの最後の言葉だった。いつの間にか円状に展開したミラーデバイスから一斉に中心に向かってビームを放つ“煉獄”が発動し…グリーズは跡形も無く消滅した…。

 

 

「皆を…響や一護さんを傷付けようとする存在なんていらない。そんなもの…全部私が消してあげる…」

 

 

そう呟く未来に、いつもの“陽だまり”のような穏やかで優しい雰囲気は微塵も無い。そこに居たのは…自分の大切なモノを護るためであれば全てを消し飛ばす…“最恐の少女”だった…。

 

 

───勝者 小日向未来───

 

 

───立花響 vs ゲイズ───

 

 

「ハハハハハッ、素晴らしい…素晴らしいぞ!! もっとだ! もっと私を楽しませろオオオオッ!!」

 

 

「…………」

 

 

1人の男と1人の少女が、凄まじいスピードで格闘戦を繰り広げる。大きく違うのは、男の方が高揚しているにもかかわらず、少女の方は全く口を開かないこと。そして…男は明らかに大量のダメージを負っているにもかかわらず、少女は殆どダメージを受けていない点である。

 

 

「オオオオッ!!!」

 

 

パシッ!!

 

 

「グホアッ!!?」

 

 

その男──ゲイズは右拳を放つが、対する少女──立花響は左手でそれをあっさりと受け止め、逆に自身の右拳をゲイズの顔面に叩き込んで吹き飛ばす。そう、先程からこのような状況が何度も繰り返されているのだ。

 

 

「クククッ、いいぞ! まだだ! まだ力を残しているであろう!? さぁ、全てを見せろッ!! 今度はその全てをねじ伏せてやる!! さぁッ!?」

 

 

「………」

 

 

「どうした!? 何故来ない!? こんなにも愉しい闘いを、何故愉しまない!? 貴様も同類であろう!? なぁ、英雄紛いの女アアアアアアアアアッ!!!」

 

 

そんな苛立ちを露わにしながら問い掛けるゲイズに対し、響は…

 

 

「何が愉しいの…? こんな意味もなく傷付け合うだけの闘いの、一体何が良いの…? 分からないよ、私…分かりたくないよ…」

 

 

今にも泣いてしまいそうな程の悲しげな表情で、そう問い返したのだ。それは響の口から思わず出た言葉である。だが、それを聞いたゲイズは…

 

 

「何が良い、だと…? 何故理解できない? この愉しみが理会できない? そこまで貴様の“戦士としての誇り”は腐っているというのかッ!? “あの男”が貴様を堕落させたというのかッ!? ならばもういい!! 貴様を殺した後、あの“善人面の人殺し”も一緒に地獄へ叩き落として…ッ!!??」

 

 

ゲイズは最後まで言葉を口にすることが出来なかった。何故なら彼の前には…一切感情を読み取らせない表情の響が、目の前に迫っていたのだから…。

 

 

「もう、黙って…」

 

 

そこから始まったのは、圧倒的な“蹂躙”だった。今までとは比べ物にならない速さで響は攻撃を繰り出す。ゲイズの防御は意味を為さず、彼から一切の光を奪っていく。その技の名は……“無明連天殺”…。

 

 

「ゴフッ!!??!」

 

 

背後からパイルバンカーのような渾身の一撃を受けたゲイズは、隕石を思わせるようなスピードで一直線に吹き飛ばされ、途中にある巨大な岩に突き刺さる形で止まる。その腹部には…直径50センチはあるであろう穴があった…。

 

 

「………」

 

 

「ア…アガ…アッ…」

 

 

ゆっくりと近づいてくる響を見るゲイズの表情に、先程までの闘いを愉しむ様子は微塵も無い。彼の表情は今、絶望と恐怖に満ち溢れていた。逆鱗に触れてはならない存在を怒らせたことに対する、圧倒的な恐怖と絶望に…。そして…

 

 

「さようなら…」

 

 

この日一番の速さで放たれた響の右拳がゲイズの顔面を直撃した瞬間、凄まじい轟音と同時に土煙が巻き起こる。暫くすると土煙は晴れるが、そこには…数十メートル先まで深々と抉られた地面があるだけで、ゲイズの肉体や血の一滴も存在しなかった…。

 

 

「…………」

 

 

そんな場所を前にして、暫しその場を動かない響。と、そこへ、

 

 

「響…」

 

 

「! 未来…皆…」

 

 

未来を始め、翼やクリス達も全員響の下へ来ていた…。

 

 

「大丈夫か、立花…?」

 

 

「…はい、“へいきへっちゃら”ですよ」

 

 

「…そんな顔を見て、あたし等が信じると思ってんのか?」

 

 

「…そういうクリスちゃん“も”、大丈夫そうに見えないよ?」

 

 

「…気付いてる? あなた今、自分が大丈夫じゃないって認めちゃったのよ?」

 

 

「え…? あ…」

 

 

「「響さん…」」

 

 

マリアの指摘を聞いた響は、クリスに言ったことを思い出して気付く。そんな彼女の様子を心配そうに見つめる調と切歌…。すると、

 

 

「やっぱり…ダメなのかな…?」

 

 

『っ……!』

 

 

「もう私達…普通に笑って過ごしていくことなんて、出来ないのかな…?」

 

 

『……』

 

 

今にも壊れてしまいそうな響の言葉に、翼やクリス達も言葉を詰まらせて俯いてしまった。そこに戦いに勝利した者達の姿はない。そこにいるのは…不安や恐怖で押し潰されそうになっている少女達だけであった。そして、そんな不安や恐怖が少女達の心を蝕もうとした…その時、

 

 

「出来るに決まってんだろ」

 

 

『……!』

 

 

「お前等がどんなに深い闇の中にいようが、必ず救い出す。どんな連中がお前等の存在を否定しようが、俺はお前等の存在を肯定し続けてやる…。言っただろ? “ダメだったら俺が必ず護る”ってな…」

 

 

その言葉は、何よりも明るく彼女達の心を明るく照らし出した。その声は、誰よりも彼女達が今聞きたい声だった…。そしてその姿は、誰よりも彼女達が今会いたい者の姿だった…。

 

 

「帰るぜ? 皆の所に、な…」

 

 

『…はい!(ああ)(おう!)(ええ)(はいデス!)(うん)』

 

 

その問い掛けに、響達は笑顔で頷き、“その男”の下へ駆け寄るのだった…。

 

 

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