ハイスクールD×D ~とある三雄の物語~   作:無颯

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お久しぶりです、無颯です。

というわけで、月光校庭のエクスカリバー編、ようやくラストです。グダついてる気もしますが、ご了承ください…。

で、どうぞ。


戦いは大体事後処理の方が大変

響達の戦いが終わる少し前、一護もまた自身の相手である研究者風の男と戦っていた…。いや、“戦い”という表現は相応しくないだろう。何故なら…

 

「な、何なんだ…何なんだテメエはああああああああああッ!!??」

 

その研究者風の男──ギース・ヘイドは片膝を着いて屈服しているような状態であるのに対し、一護は掠り傷1つ負うことなく立っているのだから…。

 

「何なんだじゃねえよ。見ての通り、俺は“ただのしがない神器所有者”で…お前の敵だ」

 

「ふざけんじゃねえッ!! “ただの神器所有者”だと!? なら何で…俺の持つ7つの神滅具(ロンギヌス)クラスの神器の攻撃が、何1つ通用しねえんだよおおおおおおおッ!?!?」

 

一切表情を変えない一護に対し、怒りを露わにしながら叫ぶギース。そんな彼の持っているという“7つの魔王クラスの神滅具クラスの神器”、それは……

 

「ガングニール、天羽々斬、イチイバル、アガートラーム、シュルシャガナ、イガリマ、神獣鏡……それが響達を手に入れるために用意した力か?」

 

「ああ、そうだッ!! “あの施設”に残っていたデータを死に物狂いで手に入れて、死に物狂いで研究して完成させたんだよッ!! あの小娘(ガキ)共の持つ力と質は同じだが、余裕で殺せる程の出力を持つ全く同じ絶唱機甲(シンフォギア)をなぁッ!!」

 

「…響達を簡単に殺せる…?」

 

「そうだよッ!! 自分が持ってるのと同じ力で完膚なきまで潰される…これ程あの小娘(ガキ)共を絶望させる手は無えだろッ!! 適当な人工神器で力を手にしたあの“イカレ犯罪者共”じゃ、返り討ちに遭う可能性があるが、それなりに深手の1つは負わせられる。そこで俺が潰せば問題無え…筋書きは完全に見えてた筈だッ!! それが何で…テメエみてえなクソ小僧(ガキ)に膝を着く羽目になってんだよッ!?!?」

 

「…響達を手に入れるために、そんな連中まで利用したって言うのか…?」

 

そしてその問い掛けに対し、ギースはこう言い放つ…。

 

「ハッ! “目には目を、歯には歯を”って言うだろうがッ!! だからその犯罪者共を雇ったんだよッ!! “薄汚れた歌を歌うような人殺しの小娘(ガキ)共”には、丁度良い相手だからなァッ!!!」

 

「ッ………」

 

「無駄話は終わりだァッ!! どういう理屈で一切攻撃を喰らわなかったのかは知らねえが、こっからはテメエを本気で殺してやるよォッ!!」

 

するとギースの身体から尋常ではない量の禍々しいオーラのようなモノが溢れ始める…。

 

「………」

 

「恐怖に戦(おのの)いて声も出ねえか!? テメエも知ってんだろッ!? コイツは所謂制限解除の状態だが、あの小娘(ガキ)共とは格が違えッ!! 冥界の魔王共だろうと即殺せるレベルの状態なんだよッ!! だからさっさと…死ねやアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!」

 

そこから始まったのは圧倒的な攻撃の嵐だった。ギースは自身の持つ7つの神器、“絶唱機甲(シンフォギア)”による技を入れ替わり立ち替わり一護に向かって放つ。刀や蛇腹剣、鋸、鎌などによる斬撃、ミサイルやレーザーなどによる砲撃、そして拳による衝撃波が容赦なく一護を襲う…。

 

「ヒャハハハハハハハッ!!! すぐ死ねッ!! 今すぐ死ねッ!! あんな小娘(ガキ)共を庇うような小僧(ガキ)は一緒にぶっ殺してやるよッ!! あんな小娘(ガキ)共に価値なんざ無えんだからよオオオオッ!!!」

 

そしてギースのテンションが最高潮になっていた…その時だった…。

 

「誰に価値が無いって?」

 

「あ……? ッ!?!?!?」

 

その声を聞いた瞬間、間髪入れずに攻撃を放ったギースに異変が起こった…。

 

「な、なん、だ、コイツ、はッ……!?!?」

 

ギースの頭上にいつの間にか五芒星のような紋章が現れたかと思うと、そこから光が放たれ、異常なまでの虚脱感に襲われ始めたのだ。そんな異変を起こすことが出来る者は…この空間において1人しか居ない…。

 

「誰の歌が薄汚れてるって言った?」

 

「っ!? テメエ、一体、何をしやがっ……」

 

黒煙から現れたその男―――――黒崎一護が自身の今陥っている状況の原因だと即座に理解し、怒りを露わにしながら一護に目を向けるギース。しかし…その問い掛けが最後まで紡がれることは無かった…。

 

「な、なん、だよ、その、姿は…!? 何でテメエみたいな小僧(ガキ)が…ただの神器持ちの筈のテメエが、“そんな姿”をしてやがるッ!?!?」

 

ギースが混乱に陥った要因は、一護の今の姿だった。それは恐らく、その姿の存在を知らない者であれば誰でも言葉を失う姿だったのだ…。

 

「そう聞かれて答えると思うか?」

 

「ッ!! クソッタレがッ…!!」

 

そう言いながら近づこうとする一護を見て、応戦しようとするギース。しかし…

 

「ッ!?!? どうなってやがる…何で神器の力が使えねえッ!? 何を…何をしやがったッ!?!?」

 

「…テメエはもう何も出来ねえよ。テメエの自慢の神器の力は全部…“封印”させてもらった」

 

「ッ!?!? “封印”だとッ…!?!?」

 

一護の口から出た“封印”という単語に絶句するギース。当然である。神器の力を封印するというのは並大抵のことではない。まして魔王クラスでさえ裕に殺せる神滅具クラスの神器を容易く封印するなど…通常では考えられない事象なのだ…。

 

「長引かせるつもりは無え…覚悟はいいな…?」

 

「ッ!? 何なんだよ…何で、あんな小娘(ガキ)共を、そうまでして守護しやがるッ…!? 血の繋がりでも、あんのかッ!? それとも、女としての利用価値かッ!? あんな小娘(ガキ)共の何処にそこまでの価値を持ってんだよ、テメエはああああッ!?!?」

 

自身にこれから訪れる結末を想像し、一転して恐怖と混乱を露わにしながら問い掛けるギース。それに対し、一護は…

 

「くだらねえ…」

 

「…は…?」

 

「“価値”だと…? そんな概念で響達を計るんじゃねえ…。くだらねえ欲のために地獄を見せたテメエ等が、響達を語るんじゃねえ…」

 

無表情でありながらも怒りに満ちた瞳でギースを睨み付ける。制限解除をした状態のギースとは比べ物にならないエネルギーを静かに放出しながら…。

 

「あいつ等は何1つ汚れてねえよ…。あんな地獄みてえな場所で手に入れたあの力を、いつも誰かのために使ってる。あいつ等の歌はどんな奴の歌よりも人の心に届く…。だから“あの日”に誓ったんだよ。あいつ等の歌も、身体も、心も全て護り抜く…この手をどんだけ血で汚そうともな…」

 

「ッ! ま、待てッ…!?」

 

「じゃねえと示しが付かねえんだよ…“あの世界”で響達を命懸けで護り抜いた“アイツ等”と、“俺自身”になぁッ!!」

 

「お、俺はこんな所で死ぬ人間じゃねえッ!! お、俺はァッ…!?」

 

「…じゃあな…」

 

ギースが慌てて背を向けるが、それが彼の最後の行動だった。何故なら…いつの間にか一護が持っていた“光の剣のようなモノ”によって、胴体を真っ二つに斬り裂かれていたのだから…。そして、

 

「…さてと…迎えに行くとするか…」

 

一護はそんな“ギースの成れの果て”を見ることもなく背を向け……その場から姿を瞬時に消すのだった…。

 

 

☆☆

 

 

時を同じくして、駒王学園の校庭ではコカビエルの放った一言によって“一部に”大きな衝撃が走っていた…。

 

「う、嘘だ…」

 

「な、何を…何を言ってるのよ……?」

 

「神が、死んでいた…? 馬鹿なことを…そんな話聞いたこともないわッ!!」

 

ゼノヴィアとイリナがショックのあまり呆然とする中、語気を強めてその話を否定しようとするリアス。しかし、そんなリアス達を嘲(あざ)笑うようにコカビエルは話し出す。

 

「あの戦争で悪魔は魔王全員と上級悪魔の多くを失い、天使も堕天使も幹部以外の殆どを失った。最早純粋な天使は増えることすらできず、悪魔とて純血種は貴重な筈だ」

 

「そんな…そんなこと…!」

 

「どの勢力も人間に頼らなければ、存続が出来ない程落ちぶれた、天使も、堕天使も、悪魔も。三大勢力のトップ共は神を信じる人間を存続させるために、この事実を封印したのさ」

 

「嘘だ…嘘だッ…!」

 

「や、やめて……イヤッ…!」

 

コカビエルの話にゼノヴィアとイリナはショックを更に増大させ、アーシアもイリナと同じくらい震え出している。すると、

 

「フッ、嘘だと思うなら、そこにいるアイエールの者達に聞いてみればいい」

 

『ッ!?』

 

「その様子だと、貴様等は既に神の死を知っていたようだな、アイエール」

 

「…本当なの、当麻…?」

 

コカビエルが目を向けたのは、当麻やリクオを始めとするアイエールの面々だった。それに気付いたリアスは当麻に尋ねる…。

 

「…ああ、事実だ」

 

「っ! そん、な…」

 

「あ…ああ……!」

 

コカビエルの話を当麻が肯定したことで、その事実を認めざるを得ない状況となってしまったゼノヴィアとイリナ。当然ショックはより大きくなり、自らの武器であるデュランダルから手を放し、膝を着いてしまう…。

 

「そんなことはどうでもいい。問題は神が死んだ以上、戦争の継続は無意味だと判断したことだ。耐え難い…耐え難いんだよッ! 一度振り上げた拳を収めろだと!? あの戦いが続いていたら、俺達が勝てた筈だッ! “アザゼル”の野郎、二度目の戦争は無いと宣言する始末だ! ふざけるなッ!!」

 

「っ! 救いようのないくらいの戦闘狂だな」

 

「ええ、そうね。ここまで凄い人は初めてだわ…」

 

怒りと興奮に満ちた様子で叫ぶコカビエルを見て、表情をいつになく険しくするエルザとミラジェーン…。と、ここで、

 

「主はもういらっしゃらないの…? では、私達に与えられる愛は……!」

 

「…フッ、“ミカエル”もよくやっているよ。神の代わりとして天使と人間を纏めているのだからな」

 

「ッ! 大天使ミカエル様が神の代行だと…? では、我らは……」

 

「システムさえ機能していれば、神への祝福も悪魔払いもある程度動作はするだろうしな」

 

「ッ…!?!?」

 

「ッ! アーシア…」

 

「イヤ……イヤアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

「っ!? ちょっと!?」

 

「ダメ、完全にパニックになってるわ! 抑えるわよ!」

 

「無理もない…。私だって、理性を保っていられるのが不思議なくらいだ…」

 

コカビエルの言葉を聞き、ショックのあまりアーシアは完全に気を失ったため、近くにいた小猫が咄嗟に受け止める。更にイリナに至っては錯乱状態に陥ったため、ルーシィとシノンはその様子を見てマズいと判断し、雪菜や紗矢華などと一緒に抑えに掛かる。

 

「とはいえ、神を信じる者は格段に減った。聖と魔のバランスを司る者が居なくなったとはいえ、その聖魔剣のような特異な現象が起こる訳だ…。本来聖と魔が交わることはあり得ないからな。こうなれば俺だけでも、あの時の続きをしてやるッ!!!」

 

「…また…」

 

「! リアス…」

 

「またつまらない意地を張って…私のせいで…」

 

「ふざけんなッ!! お前の勝手な言い分で、俺達の街を、仲間を消されてたまる……」

 

そしてリアスが悔しさを滲ませ、イッセーがコカビエルに対する怒りを露わにし始めた…その時、

 

「「黙れ…」」

 

「グフォアッ!!??」

 

『ッ!?』

 

コカビエルは突如2人の人物に顔面を殴られ、思い切り吹き飛ばされたのだ。その2人とは…当麻とリクオの2人である。

 

「珍しいな。お前が素手で殴りかかるなんて」

 

「お前に合わせたんだよ」

 

「! そうか。その気遣いは上条さん的に有難いぜ」

 

「! と、当麻…?」

 

「…リクオ先輩…?」

 

狂った堕天使幹部を殴り飛ばした直後に平然と会話をする当麻とリクオに、驚きを隠し切れないリアスと小猫。

 

「くっ…話の途中で不意打ちとは、舐めた真似をしてくれるじゃないか」

 

「…何でわざわざ神の死を伝えた? この場で言う必要は無かっただろ?」

 

「フンッ、隠していてどうなる? さっきも言った通り、どの道これから戦争を始めるんだ。それに…良い“余興”になった訳ではないか?」

 

「…“余興”だと?」

 

「ああ。何しろ、神を信じる愚かな人間共の絶望する姿を見れたのだからなぁッ!」

 

「ッ!! テンメエッ…!!!」

 

当麻とリクオの問いに対し、コカビエルは高らかにそう言い放った。これにはイッセーを始め、リアスやエルザ達も憤りを感じざるを得ない。だが、それを聞いた当麻とリクオは…

 

「はぁ…やっぱりテメエは馬鹿だな、コカビエル」

 

「…何?」

 

「やめとけ、当麻。無理もねえだろ? どうせこいつも知らねえんだからよ」

 

呆れ返った様子でそう呟いたかと思うと、続けてこんな事を言い始めたのだ。

 

「確かに聖書の神は、大戦によって死んだ。こいつは紛れもなく真実だ。だが…“今の天界側に神がいない”なんて、誰が言った…?」

 

「ッ!? 何を言っている…?」

 

「言ってる意味が分かんねえか? 要するに、“天界側に神はいる”って言ってんだよ…」

 

『ッ!?!?』

 

「……は……?」

 

「! 主は、生きている…?」

 

「…本当、なの…?」

 

当麻とリクオの口から飛び出した一言に、リアス達だけでなく“神の死”を告げたコカビエル、そして生気を失っていたゼノヴィアとイリナも驚愕する他無かった。もっとも、コカビエルが言葉を失っているのに対し、ゼノヴィアとイリナは希望を見い出したような表情を見せているが…。

 

「フンッ、何を世迷い言を…。神の死は大戦の生き残りである三大勢力の各幹部達が、全員この目でしかと見ている。そんなハッタリを口にするとは、どうやら貴様等も大したことのない…」

 

「なら、その“神の魂を完全に受け継いだ存在”がいたらどうだ?」

 

「ッ!? 何ッ…!?」

 

「しかも、そいつがここにいる全員の知ってる奴だとしたら…テメエはどうする?」

 

「ッ!? ここにいる全員ということは…」

 

「お、俺達も知ってる奴って事かよッ!? でも、そんな奴と会った事なんて…」

 

立て続けに当麻とリクオの口から出たカミングアウトに、朱乃とイッセーは思わず呟き、声を上げる。それもそうであろう。そんな存在と出会っているのであれば、忘れる筈もない。何しろそれは、悪魔である自分達と最も対になる存在なのだから…。すると、

 

「まぁ、そんなに信じられないんなら、今ここで“直に会って”みろ…」

 

「そうだな。どうやら、そろそろ来るみたいだからな…」

 

「ッ! “直に”、だと…!?」

 

「ララ! モモ! ナナ! リアス達もまとめて結界を張れ!!」

 

「「「! うん(はい)(おう)ッ!!」」」

 

コカビエルが再び驚愕する中、リクオはデビル――ク三姉妹に指示を飛ばし、リアスとイッセーを始めとするグレモリー眷属、そしてゼノヴィアとイリナを取り囲むような結界を展開させる。そのメンバーの共通点はゼノヴィアとイリナこそ当てはまらないものの、他の全員が全て悪魔だという点である…。と、次の瞬間、

 

『ッ!?!?!?』

 

上空の空間のある一箇所に“罅(ひび)”が入った瞬間、コカビエルとララ達の結界内にいるリアス達は尋常ではない“圧”を感じた。コカビエルの放つモノが、一瞬で霞んでしまうような程の圧を…。しかしその間にも現われた罅はどんどん広がっていき、ついに空間が割れる。そして、そこから姿を現したのは……

 

「一護、君……?」

 

その名を口にしたのは朱乃だった。通常であれば、戦いに勝利してここに戻ってきたであろう青年の姿に、嬉しさを感じるであろう。だが今の朱乃は、その人物――――黒崎一護の姿を見て…言葉を失う他無かった。何故なら…

 

「“十二枚”の、天使の、翼……!?」

 

「う、嘘、じゃあ……」

 

今まで見たことのない白を基調とした何処かの部隊の制服のようなモノと白い外套を身に纏い、背中には“六対十二枚”の翼を生やしているのだ。これにはゼノヴィアとイリナもその姿に呆然とするが、同時に或る結論に行き着く他なかった…。

 

「やっぱりその姿になったか、一護…。いや、今は“ユーハバッハ”って呼んだ方が良いか?」

 

「…勘弁してくれ。その名で呼ばれるのは御免だ…」

 

「…あいつ等は?」

 

「…大丈夫だ」

 

当麻とリクオがそれぞれ問い掛けると、空中で静止したままの一護は右手を軽く振るう。すると、横一線に並ぶような形で地上に白い魔方陣が展開され…

 

「! 響さん!」

 

「…! うん、ただいま、雪菜ちゃん…」

 

「…全員無事ってことで良さそうね」

 

「ああ…」

 

「見ての通りよ…」

 

そこから姿を現したのは、一護と共に戦いのために姿を消していた響達7人だった。その姿を確認した雪菜や紗矢華達を始めとするアイエールのメンバー達が近駆け寄ってくると、響や翼、マリアもそう返す。もっとも、その表情は晴れやかとは言い難いものだったが…。と、ここで、

 

「ハハッ…フハハハハハハッ!!!!!」

 

『……!!』

 

1人の男の狂ったような高笑いの声が響き渡る。その声の主は…言うまでもなくコカビエルであった…。

 

「素晴らしいッ!! 素晴らしいぞアイエールッ!!! その姿!! この圧倒的威圧感!! 間違いない!! これは認めざるを得ない!! まさに貴様が、“天界の神”そのものであることをッ!!」

 

「……神の死を、バラしたらしいな?」

 

「そうだ!! 戦争を起こす以上隠す必要も無く、尚且つそこにいる教会の信者共にとっては丁度良いネタだったからな!! だが、結果は予想以上だ!! こうしてあの時この手で殺すことの出来なかった神が、再び俺の前に現われたのだからなぁッ!!」

 

「…………」

 

コカビエルとそんなやり取りを交わしながら、一護はふとララ達の張った結界の中にいるリアス達…特に神のことを信じているであろうアーシア、ゼノヴィア、イリナに目を向ける。その目に映ったのは気を失っているアーシアと…無意識に祈りを捧げるような姿で膝を付き、呆然と自分を見ているゼノヴィアとイリナの姿だった…。すると、

 

「威眠(いねむり)…(ボソッ)」

 

「「っ……!」」

 

「ッ!? お、おい、どうしたんだよ!?」

 

「! 大丈夫だよ、イッセー君。どうやら2人共、気を失っただけみたいだから…」

 

一護が誰にも聞こえないようにそう呟いた瞬間、ゼノヴィアとイリナは急に意識を失って倒れたのだ。これには近くにいたイッセーと裕斗も驚きつつ、咄嗟に受け止める…。

 

「当麻、リクオ」

 

「…何だ?」

 

「俺が終わらせる…。全員下がらせてくれ…」

 

「…そうかよ。じゃ、さっさと終わらせな…」

 

一護からの頼みをあっさりと受け入れる当麻とリクオ。そんな3人のやり取りを聞いた他のアイエールのメンバーも、暗黙の了解といった形で離れていく…。

 

「「お兄ちゃん(一兄)…」」

 

「…お前等も下がってくれ…。心配すんな、“一瞬”だからよ…」

 

「! 一護さん…」

 

「…さっさと下がるぞ。ここにいても、邪魔になるだけだからな…」

 

心配そうに声を掛けてくる調と切歌にそう返すと、未来とクリスはそう言って調と切歌を連れ、響や翼、マリアとと共に距離を取っていく…。

 

「“一瞬”、だと? フンッ、大した自信ではないか…?」

 

「…宣言しただけだ。長引かせた所で…何にもならねえからな…」

 

「ッ…! ふざけるなよ…これは待ちに待った戦争だ! 今まさに天界のトップと呼ぶべき存在が、こうして目の前に姿を現した!! これはまさに、恰好の機会ッ!!」

 

何処か冷淡な雰囲気を見せる一護の言葉に、苛立ちと興奮を織り交ぜて声を上げるコカビエル…。

 

「さぁッ!! 戦争の…始まりといこうかッ!! “神”ィィィィィィィィィィィィッ!!!!」

 

コカビエルは極大の光の槍を手にしながら、凄まじい速度で一護に向かって飛び立つ。その速度は明らかに違い、スピードに自信のある裕斗が霞む程のモノだった。全身から放っている力も、堕天使の幹部として相応しいモノだった。そして……

 

 

 

 

「聖唱(キルヒエンリート)…」

 

「ッ!!!!?!?」

 

「“聖域礼賛(ザンクト・ツヴィンガー)”…」

 

それは一瞬の出来事だった…。一護の右腕の袖口からアルファベットの書かれた4本の小さな柱が現われたかと思うと、空中に魔方陣にも似た極大の光の領域が一護を中心に瞬時に展開され……その領域内に入ったコカビエルは無数の光の刃を受けて“消滅”した…。そう、“消滅”したのである…。

 

「な…何が起こったの…?」

 

「た、倒した、のか…?」

 

「あの堕天使の幹部を…あの一瞬で…?」

 

その光景を見ていたリアス達グレモリー眷属の面々は、思わずそう呟くリアスとイッセー、裕斗を含めて呆然とする他無かった。当然であろう。自分達の力では全く歯が立たず、むしろ手加減すらしていたであろう強者が、何も出来ずに一瞬で消されたのだから…。するとそんな中、一護の姿が瞬時にいつもの“死覇装(しはくしょう)”に戻り、背中の十二枚の翼も消して…

 

「終わったぞ、当麻、リクオ…」

 

「…ああ」

 

「…ありがとよ、ララ、モモ、ナナ。もう終わりだ。結界を解いていいぞ」

 

「! う、うん…」

 

当麻とリクオに抑揚の無い声で一言報告した。それを聞いた当麻はただ頷き、リクオはララ達に結界を解くよう伝える。と、ここで、

 

「当麻…!」

 

「! リアス…」

 

「どういうことか説明してちょうだい。勿論、一護についてよ…」

 

「そ、そうだぞ一護!? 本当なのかよ!? お前、マジであの神様なのかよ!?!?」

 

「…………」

 

結界が解除された途端、リアスとイッセーがすぐさま当麻や一護に問い掛けた。無論、朱乃や小猫、裕斗も口にはしないものの、当麻達3人を複雑な表情を浮かべながら見ている。だが、イッセーの問い掛けに一護が口を開かずにいると、ここで、

 

「そろそろ出てこいよ! そんな所にいてもしょうがねえだろ?」

 

「! リクオ先輩…?」

 

リクオが何故かある一点を見上げるようにしつつ、少し大きな声でそう言ったのだ。そして突然のリクオの行動に小猫が思わず疑問を感じていると…

 

「フッ、やはり気付かれていたか」

 

『ッ…!!』

 

リクオの見つめていた方向から、そんな声が聞こえてきたのだ。突然のことに驚き、咄嗟に見上げるリアス達。するとそこには…“青い光の翼”が目を引く、白い鎧のようなモノを身に纏った人物がいた…。

 

「ッ! 身体が、震え上がる…! 何だあいつはッ!?」

 

「お前のライバルになる奴だよ、イッセー…。にしても、高みの見物ってのは少し虫が良すぎるんじゃないか、“白龍皇”?」

 

「ッ!? 白龍皇ですって!!?」

 

イッセーが地上へゆっくり降下してくる鎧の人物に何かを感じる中、当麻の口から出た鎧の人物の正体に驚愕するリアス。もっとも、それは他のグレモリー眷属の面々も同様なのだが…。

 

「出ていくまでもないと判断したんだ。まあ、コカビエルが消されるのは予想外だったが…」

 

「…目的は奴の回収って所か?」

 

「ご明察だ。“アザゼル”に頼まれてね。だがこの羽一つでも持って行けば、事の顛末の説明はできるだろう…。それと、そこにいるはぐれ神父の身柄を引き取りたいんだが……構わないか?」

 

「…堕天使サイドから正式に何かあるって解釈していいか?」

 

「ああ、そう捉えてくれて構わない」

 

「そうか…。リアス!」

 

「…!」

 

「ここは管理者であるお前の判断を尊重するが…どうする?」

 

一切動じることなく白龍皇と会話していた当麻から判断を求められ、一瞬たじろぐリアス。しかしすぐに管理者としての顔に戻ると…

 

「構わないわ」

 

「! 分かった…」

 

「決まりみてえだな…。ミラ!」

 

「ええ…」

 

当麻とリアスのやり取りを聞いていたリクオが指示を出すと、ミラジェーンは倒れ伏しているはぐれ神父――――フリード・セルゼンの首根っこを掴み、白龍皇に投げ渡した…。

 

「“魔神”、ミラジェーン・ストラウスか…。話は聞いていたが、これ程強い神器所有者が集まっているの光景は壮観だな。全員集結すれば、三大勢力など一瞬で滅ぼされそうだ…」

 

「…上条さん達に喧嘩を売りに来たのか?」

 

「いや、そんなつもりは毛頭無い。今の俺では、そちらの娘(こ)達の誰にも勝てないだろうからな…。それに今日は、とても面白い事も知れた。十分に満足させてもらったよ」

 

視線を鋭くする当麻に対し、白龍皇は意味深な笑みを見せつつ一護に目を向ける。と、ここで、

 

≪無視か。白いの…≫

 

『……!!』

 

「籠手が喋った…!?」

 

「つまりあれが、伝説の赤き龍って訳だね」

 

「ああ…」

 

辺りに響く聞き慣れない声。その声は…イッセーの右手に備わっている神器――――“赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)”から聞こえてくる。突然の会話の乱入者にリアスが驚く一方、クロメとアカメは冷静にその声の主の正体を推測する。

 

≪生きていたか。赤いの≫

 

≪折角出会っても、この状況ではなぁ…≫

 

≪いいさ、いずれ戦う運命だ。こういうこともある…。また会おう、“ドライグ”≫

 

≪ああ、またな、“アルビオン”≫

 

“赤龍帝の籠手”の声の主である“ドライグ”と、白龍皇の持つ神器――――“白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)”の声の主である“アルビオン”の会話が終わった所で、その場を離れようとする白龍皇。すると、

 

「おい! どういうことだ!? お前は一体何なんだッ!?」

 

「…全てを理解するには力が必要だ。強くなれよ、いずれ戦う俺の宿敵君。そして…」

 

荒々しく尋ねてくるイッセーに対し、淡々とそう返す白龍皇だったが、当麻と一護、リクオの3人に目を向けると…

 

「上条当麻、黒崎一護、奴良リクオ。君達とはいずれ“手合わせ”をさせて頂きたいんだが、その時は受けてくれるか?」

 

「…俺達の機嫌を損ねるような事をしなければ、考えてやる」

 

「! それを聞ければ十分だ。では、失礼する…」

 

そう言って、瞬時に飛び立ち姿を消した…。と、ここで、

 

「リアス!」

 

「! ソーナ!」

 

「まさか、白龍皇が乱入してくるとは…」

 

「ええ。でも今回はある意味助かった…っ!」

 

周囲の結界を解いて生徒会メンバーと共にやってきたソーナがそう言う中、リアスは或る事に気付いた。それは…

 

「待ちなさい、当麻!!」

 

そう、当麻を筆頭にしたアイエールのメンバーが全員撤収準備を始めていたのだ。その中には先程コカビエルを圧倒した一護の姿もあり、しかもその両肩には…気を失っているゼノヴィアとイリナを担いでいた。すると、

 

「悪いな、リアス。訳あってコイツ等は連れていかせてもらう。事情はあんたが帰ってきた時に説明するから、後は宜しく頼む」

 

「っ!?」

 

「お、おい! どういう事だよ!? おいッ!!」

 

リアスとイッセーの制止も聞くことなく、当麻がそう言った所でアイエールのメンバーの姿は一斉に消えた。その速さは白龍皇よりも更に上で、騎士である裕斗の目ですら追えない程だった…。

 

「ララ様ー!! ナナ様ー!! モモ様ー!! ご無事でございますか………あれ?」

 

その僅か数秒後に“聞き慣れない声”が空しく響いたのは…余談である…。

 

 

☆☆ 

 

 

「…ん……ここは……?」

 

ゼノヴィアが目を覚ますと、そこは何処かの部屋の中だった。しかも服装は教会の戦闘服のまま、その部屋にあるベッドに寝かされていることに気付くゼノヴィア。と、ここで、

 

「…! イリナ!」

 

「…ん……ゼノ、ヴィア…?」

 

自身の隣に寝かされているイリナに気付き、ゼノヴィアは咄嗟に揺する。するとイリナもすぐに目を覚まし、ゼノヴィアの姿を確認して上半身を起こした。

 

「ここは…?」

 

「分からない。気が付いたら私も寝かされていた…」

 

「そう…どうしてこんな所にいるのかしら? コカビエルと戦っていて、それで……っ!!」

 

「っ…!!」

 

イリナがそこまで呟いたところで、2人は思い出した。そう、自分達のこれまでの考えが全て吹き飛ぶような、“2つの衝撃的な事実”を…。と、その時だった…。

 

ガチャッ!

 

「気が付いたみたいだな?」

 

「「…!!」」

 

「大丈夫か? 一応怪我の手当はしてもらったんだが…」

 

部屋の入り口が開いたかと思うと、1人の人物が入ってきた。その人物とは…衝撃的な事実の張本人とも言うべき存在である、黒崎一護だった。そして、そんな一護の姿を見たゼノヴィアとイリナは…

 

「「お、お許し下さい!!」」

 

「は…?」

 

瞬時にベッドから降りたかと思うと、目にも止まらぬ早さで土下座してきたのだ。

 

「主だとは知らずに数々の無礼、本当に申し訳ありませんでした!!」

 

「教会に属する者として、心より謝罪致します。何卒お許しを…!」

 

「いやいやちょっと待て! そもそも怒ってねえし、土下座するなんざ微塵も無えから顔を上げろって…!」

 

頭が床にめり込みそうな勢いで土下座を続ける2人の様子に、慌ててやめるよう言う一護。しかし自身の行動を振り返ったゼノヴィアとイリナは止める様子を見せない…。すると、

 

「はぁ…しゃあねえ…」

 

一護が溜め息混じりに呟きながら右手を軽く振るうと、空中にディスプレイのようなモノが出現したのだ。しかも、そこに映し出されていたのは…金色の長髪が目を引く中性的な顔立ちの男の姿だった。

 

『お待ちしていました』

 

「なっ!?」

 

「ミ、“ミカエル”様!?」

 

その男――――天使長“ミカエル”の姿にゼノヴィアとイリナは驚愕するが、当の一護はそんなミカエルに対し、

 

「状況は分かってるな?」

 

『はい…まずは今回の一件に対する御協力、心より感謝致します、“主”よ」

 

「…その呼び方はやめろって言ってんだろ? それに今回の件はこっちにも関係のある連中が関わってたからな。話が無くても自然と協力する形になってたと思うぜ…?」

 

『…彼女達は、大丈夫ですか?』

 

「…多分な。まあ、そこはこっちで気に掛けるから、心配すんな」

 

『…分かりました…』

 

ここで一護とやり取りを交わしていたミカエルは、跪いているゼノヴィアとイリナに目を向ける。

 

『ゼノヴィア、イリナ、まずは今回の任務について感謝すると共に、あなた達を無謀な戦へ送るような形になってしまったことを、天界を統括する者として謝罪致します。本当に申し訳ありませんでした』

 

「っ!? あ、頭を御上げください、ミカエル様!!

 

「私達は命懸けの任務であることを覚悟の上で引き受けた…ミカエル様が頭を下げる必要などありません」

 

『…あなた達の寛大な心に感謝致します。では、早速本題に入りましょう…。あなた達も気付いている通り、そこにいる青年――――黒崎一護君は、我等が信仰する“主”に等しい存在です』

 

「ッ! やはり…」

 

「まさか主がこんなに近くにいらっしゃったなんて…ああ! 神を信じる身なのに神の存在に気付けないなんて、私達は何て罪深いのかしら…!」

 

ミカエルの口から一護が“神に等しい存在”であると証言されると、ゼノヴィアは改めて一護に目を向け、イリナはその事に気付けなかった自らを責めようとした。しかし…

 

『自らを責める必要はありません、イリナ。我々四大天使でさえ、彼が神としての姿になるまで気付く事が出来なかったのですから』

 

「なっ!?」

 

「ミ、ミカエル様達ですら気付けなかったのですか!?」

 

『はい』

 

更にミカエルの口から飛び出した内容に驚くゼノヴィアとイリナ。と、ここで、

 

「し、しかし、何故この事を黙っているのですか!? 主が亡くなっていたとしても、新たな主が誕生していたのであれば、私達は…」

 

「っ…」

 

ゼノヴィアは最後まで言葉を口にすることはできなかったが、イリナも彼女の言わんとしている事に気付き表情を曇らせる。彼女達の脳裏に浮かんだのは、コカビエルから“神の死”を暴露された時の絶望感だった。それは信者である2人にとってこれ以上無い程辛いモノであり、だからこそゼノヴィアは思ったのだ。もし新たな主の誕生が周知されていれば、このような絶望を自分達が味わうことは無かったのではないかと…。

 

『貴方達の気持ちは、私にもよく分かります。ですが、それはできないのです。彼が“神に等しい存在”であるが故に…』

 

「? どういうことですか…?」

 

『“システム”のことは、知っていますね?』

 

「! 主が使うことのできる、私達信者に加護を与えるもの…」

 

『そうです』

 

ミカエルの口から飛び出した“システム”という単語を聞いて、ゼノヴィアとイリナはすぐにどういったものかを思い浮かべる。

 

『主が亡くなった際、私達上級の天使はシステムの一部を引き継ぎ、あなた方信者への加護を維持し続けています。ですがシステムは私達でも扱いが難しく、これまで大きな不都合を生じさせてしまっています。神器の“禁手(バランスブレイク)”も、その不都合の1つに他なりません…。そして、そこにいる新たな主と呼ぶべき存在──黒崎一護君が天界へやってきた際にも、不都合と呼ぶべき大きな事象が発生しました。それが…人間界における“新たなる神器の大量発生”です』

 

「っ!? 神器の、大量発生…!?」

 

その話を聞いた瞬間、ゼノヴィアは思わず或る方向に目を向ける。そこには険しい表情を浮かべる一護がいた…。

 

『言うまでもありませんが、このようなことは前代未聞。亡くなった我等が主ですら、ここまでの影響を及ぼすことは無いでしょう。つまり…貴女たちの目の前に居る方は、亡くなった主をも凌ぐ力を持つ存在なのです。そしてその力は神でありながら、天界そのものを根本から大きく変えてしまう程危ういもの…。だからこそ、彼は天界の頂点に…いや、天界そのものに属することはできず、その存在も最大級に秘匿されなければならないものなのです』

 

「ッ!? 天界そのものを、根本から変えてしまう…」

 

「…そこまで話したってことは、お前のコイツ等に対する本題はここからだな?」

 

『…はい』

 

「? 本題…?」

 

イリナが一護に対して益々畏怖の念を強く抱き始めている中、一護はミカエルに険しい表情のまま問いかける。すると…

 

『結論から申し上げます…。今回の一件を以て、ゼノヴィアとイリナの両名を“破門”することが正式に決まりました』

 

「……え……?」

 

「は、破門……?」

 

突然の宣告に、暫し言葉を失うイリナとゼノヴィア…。

 

「う…嘘、ですよね、ミカエル様…?」

 

『…神の死を、ひいては新たな神の存在を一介の信徒が認識しているだけで、システムに影響が生じ、信徒全体の信仰に多大な影響が及ぶ可能性がある…。それ故に、大きな不安要素は取り除かなくてはならないのです。例えそれが、貴重な聖剣使いであったとしても…。本当に、申し訳ありません…』

 

「ッ!! そん、な…」

 

神妙な面持ちで謝罪するミカエルを見て、神の死を知った時と同じくらいの絶望を受けるイリナとゼノヴィア。特にイリナは、今にも倒れてしまいそうな程のショックをモロに受け、涙を流し始めてしまった…。しかし、ここで、

 

『一護君…いえ、我等が主よ。大変恐縮ですが、1つ私からお願いをさせて頂いても宜しいでしょうか?』

 

「…何だ?」

 

『…この2人を、貴方の直属の部下として側に置かせていただく事はできませんか?』

 

「「えっ!?」」

 

ミカエルの口から飛び出した頼みに、ゼノヴィアとイリナは先程までの絶望から一転して驚愕を露わにした。

 

『支離滅裂な願いであることは承知しております。私がこのような頼みをする立場に無いことも…。ですが、それでも願わせていただきたいのです。この2人にどうか、大いなる主の祝福をお与えください…』

 

「…俺はそんな祭り上げられるような存在じゃねえ。祝福なんて大層なものを与えられるような存在でもねえ…。それでも頼むのか?」

 

『…私は確信しているのです。貴方はかつての主でさえも為し得なかった救いを与えられる存在だと…。少なくとも貴方の前にいる2人は、貴方の下にいる方が天界に残るよりもずっと救われると私は思っているのです。それは貴方の側に居る“彼女達”を見れば分かります…。ですから…この2人をどうか、宜しく御願いします…』

 

「……」

 

ミカエルの言葉を聞いた一護は、何処か困惑した様子のゼノヴィアとイリナに目を向ける。2人を見た瞬間、彼女達の姿が“或る少女達”と重なった。自身が救い、自身の側にいる“9人の少女達”の姿と…。そして、

 

「悪いが、部下なんて存在を持つ気は更々無え…」

 

「「っ…!」」

 

「けどまあ…仲間としてなら受け入れてやるよ」

 

「「えっ…?」」

 

『! ありがとうございます…!』

 

一護の言葉にゼノヴィアとイリナが驚く中、ミカエルは心からの感謝の言葉を伝える。しかし、

 

「その代わり、約束しろ。教会の連中がコイツ等を裏切り者として侮辱したり、実力行使に出るような真似をしねえようにしてくれ…。今回の件で、アーシアがまさにその被害者になっちまったからな」

 

「「っ……」」

 

「もしそいつを破るようなことがあったら、その時は…それ相応の対応を取らせて貰う。いいな…?」

 

『…分かりました。天使長として、その約束を違えぬ事を誓います、我等が主よ」

 

「だからさっきも言っただろうが。その呼び方は止めろ。俺は黒崎一護だ。それで十分なんだよ…」

 

『…分かりました。改めて、ありがとうございます、一護君』

 

これまでで最も鋭い視線を送りながら問い掛ける一護に対し、ミカエルは動揺することなく返した。と、ここで、

 

『…! すみません、私はここで失礼します。回収した聖剣は…』

 

「こっちの技術担当が保管してるが、どうする?」

 

『聖剣についてはこちらから至急回収のための人員を送りますので、宜しくお願いします』

 

「分かった。まあ、どうせまた“すぐに会うことになる”だろ? コイツ等には、その時にまたちゃんと謝罪してくれ」

 

『はい…。ゼノヴィア、イリナ、何度謝罪してもし切れませんが、あなた方を放り出す形になってしまったこと、心よりお詫びします。ですが、貴女方の隣にいる方は十分に信頼のできる存在です。何しろ彼は異なる所もあるとはいえ、間違いなく我等が主に他なりませんから…』

 

「あっ…」

 

「ミ、ミカエル様…」

 

ミカエルは少々気まずそうに通信を切る旨を伝えつつ、ゼノヴィアとイリナにそう語り掛ける。そして、

 

『では、我等が主…いえ、一護君、ゼノヴィアとイリナのこと、宜しく御願いします』

 

「…ああ」

 

ミカエルの姿を写していたディスプレイが消え…この場には一護とゼノヴィア、イリナの3人だけとなった…。

 

「ふぅ…つう訳で、お前等のことは俺が預かることになったんだが…まあ、そう簡単に理解できねえよな?」

 

「! えっと…」

 

一護の問い掛けに困惑を隠し切れない様子のイリナ。すると、代わりにゼノヴィアが意を決して尋ねる。

 

「何故、私達の身を引き取ったのですか?」

 

「? どういうことだ?」

 

「っ…私達の身を引き取った所で、貴方に利があるとは思えない。今回の件で嫌という程実感させられた…。私達は貴方は勿論、アイエールという組織にとって足下にも及ばない存在だと…」

 

「……」

 

「その上、私達からは聖剣も無くなる…。そんな私達に、何故貴方は慈悲を与えるのですか? 今の私には分からない。ミカエル様からの言葉を以てしても、一体何を信じるべきなのか…私には、分からないんだ…」

 

その言葉を聞いたイリナもまた、動揺を露わにしながら顔を俯かせる。“神の死”と、“神と同質と言っていい存在”を同時に知ったことは、ゼノヴィアとイリナにとってあまりにも大きすぎる事だったのだ。しかし、それに対して一護は…

 

「はぁ…理由は1つしか無えよ。“ただ俺がそうしたかったから”…それ以上もそれ以下も無いっての」

 

「「…は(え)…?」」

 

「それに“慈悲”とかそういうのも止めてくれ。俺はお前等に敬われるような奴でも無いし、畏まって話されるような存在でも無えしな」

 

溜め息混じりにそう言い切ったのだ。それを聞いたゼノヴィアとイリナは呆気に取られるが、一護は話を続ける…。

 

「前にも言っただろ? アイエールに上下関係なんざ無えって。そりゃそうだ。ここにいる連中は基本、自分のやりたいことを自由にやってるんだからな。まあ、明らかに危ねえことをしようとした時は流石に止めるし、色々あって自制してもらってる奴もいるが…」

 

「! じ、自由にやってるって、そんなの組織じゃ…」

 

「あー…そもそも組織だなんて思ってねえんだよ。ここにいる連中は大体、皆を仲間として…場合によっては家族としていつも接してる。俺や当麻やリクオも“総帥”やら“副総帥”やらと名乗ってるけど、そいつは形でしかねえ…。それがこのアイエールの…いや、俺達の本質なんだよ」

 

「…私達の身を引き取ることが、貴方のやりたいことだと?」

 

「だから、そう言ってんだろ…? お前等が追放されることになった原因は、俺にもある…。神と同質って言われながら、システムに俺は一切介入する事ができねえんだからな。ったく、力がかえって悪影響を及ぼすっていうのは、何とも言えねえな…」

 

ゼノヴィアの問いに対し、一護は自嘲気味に呟きながらも、こんな言葉を掛ける…。

 

「別に罪滅ぼしなんてつもりも無え。さっきから言ってる通り、俺はただ俺のやりたいことをやろうとしてるだけだ…。お前等は確かに教会から追放された。けど、だからってこれから生きてく理由が無い訳じゃねえだろ? お前等には、何か“やりたいこと”は無えのか?」

 

「っ…!」

 

「私達の、やりたいこと…?」

 

一護の口から飛び出した“やりたいこと”という単語に、大きく反応するゼノヴィアとイリナ…。

 

「“神を信じる”のも構わねえ。お前等が今までずっと信じてきたものだ。簡単に捨てきれるはずも無え…。けどまあ、それ以外にもやりたいことの一つや二つはあるんじゃねえか? それが無いっていうなら、探してみればいい。その間はここで暮らせばいいしな。ここにいる連中も、何やかんやで大体お人好しになっちまったし…」

 

「! やりたいことを、探す…」

 

「ああ…意外とすんなり見つかるかもしれないぜ? お前等は今まで自分の事に気を回せてなかった気がするからな…。まあ、それに安心しろ。お前等もここで暮らす以上、誰が何と言おうと仲間だ。危ねえ目に遭いそうになった時は…」

 

その瞬間、一護はいきなり自らの姿を変える。それは“背中の十二枚の白翼”と“純白の装束”が目を引く姿…そう、ゼノヴィアとイリナも目にした、神としての一護の姿だった…。そして…

 

「確実に護るからよ。どんな奴が相手だろうと、な…」

 

「「っ…////!」」

 

「? どうした?」

 

「あ、えっと…///」

 

「い、いきなりその姿になって、驚いただけです…///」

 

「? そうか。つーかさっきから言ってる通り、敬語も止めろ…って、まあ、それは後でいいか…」

 

何故か顔を紅潮させるゼノヴィアとイリナに対し、その理由についてとりあえずゼノヴィアの言った内容で納得する一護…。

 

「とにかく、これから宜しく頼むぜ?」

 

こうして、アイエールに新しいメンバーが加わることになった…。

 

 

END

 

 

 

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