ゼロの使い魔 虚無の騎士   作:へタレイヴン

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火の魔女、そう呼ばれる二人の姉妹をご存知だろうか。

いつの頃からだろう、村の外れの小高い丘に立つ廃寺院に彼女たちが住み着いたのは。
得体の知れない黒いローブの、しかし、とても美しい姉妹だった。まるで夜闇の様な美しい黒髪を持つ姉と、雪のように真っ白な髪と肌の妹。
両者とも、とても美しく、村人にとっては見たこともない存在。だからこそ、逆に不気味に感じたのかもしれない。
村には食料や、日用品などを購入しに現れる程度であったが、村人達も、よそ者と思いなかなか関わりを持とうとしなかった。
彼女たちが廃寺院に住み着いてから少し立ったある日。村に盗賊が押し入った。
男達も必死に抵抗を試みたが、運の悪いことに盗賊の頭は落ちぶれた火のメイジ。勝てる訳もなく、抵抗した者は見せしめには殺され、女子供は売り物として扱われる事になるだろう。
力なく項垂れる村人達であったが……そんな時だ、姉妹の姉の方が村に来たのは。
その美しい姿を見た盗賊たちは、下劣な笑みを浮かべ、そのローブの下の裸体を想像し、彼女も捕えようとし、あわよくば自分たちの欲望のはけ口にしようとしたのだろう。
しかし、彼女は下らないとモノを見るようにして、腰に下げていた片刃の美しい波紋を持つ剣――混沌の刃――を抜き放つと、無慈悲に……そして、流れるように太刀筋で盗賊達を切り捨てる。

「我が身に触れていいのは、我が王のみ。貴様らの様な下劣な輩などが触れることが出来ると思うな」

そう宣言し、彼女は盗賊の頭の前に立ちふさがる。その美しい顔には怒りの表情が浮かべていた。村人達のささやかな暮らしを壊した存在に、怒りが収まらないのだろう。
しかし、盗賊の頭は火のメイジ。如何に彼女が武芸に長け強くても、勝てるわけがない。村人たちもそう思い、見つかる前に逃げろと言ってきた。
だが……彼女は優しげな笑みを浮かべて、心配することはないと告げる。

「火は我が友。火は我が心。……そして、火は我が夫。ならば、怖がることなどない、心配するな、あの様な下郎、私が消し炭にしてやろう」
「ほう……随分と調子が良さそうだな。俺の配下どもを殺した女ってのは……てめぇか?」
「ふん、たかだか獣の癖に人の言葉を喋るか。まぁ良い、どうせ直ぐに物言わぬ骸に成り果てるだろう」
「たかだか女の分際で何ができる!!両手両足の腱を切って、犯したあと……豚どもの慰みものにしてやる!!」

頭のメイジが杖を抜き、周囲で燃え盛ってた火を操り彼女に襲いかからせる。どうやら、犯すと言いつつも、完全に殺しに来ていたようだ。
だが……女性は薄く笑みを浮かべると、左手を前に突き出し……襲い来る火を止めてしまった。その光景を見たメイジと村人たちは、何が起こったのか理解ができなかった。
ただ、女性だけは、その綺麗な唇を動かし、言葉を紡ぐ……死刑を宣告を告げる。

「私に火を使うなど、意味のないこと。まぁ、理解する必要などない。貴様はここで果てるのだから」

クイと左手を動かすと、受け止めた火だけでなく、周囲で燃え盛っていた火が、まるで意思を持つかのようにして盗賊たちに襲いかかった。
逃げ惑う盗賊たち全てを飲み込み、恐ろしいことに、彼らが文字のごとく炭になるまで、火は消えずに燃え盛ることになる。


全ての盗賊を炭にした後、妹の方が複数の薬草と、不思議な力で村人たちを癒して回っていた。



「あ、ありがとうございます」
「いえ、気にしないでください。……あとはこの薬草をつければ、傷はふさがります」

優しく笑みを浮かべて、治療を続ける妹を見守りながら、姉は村長と話を続けていた

「なんとお礼を言えばいいのか……貴女方は村の恩人じゃ。」
「気にしなくても良い。私たちが好きでやった事だ。……しかし、私たちの事を恐れぬのか?」
「ほほ、確かに貴女様の火の魔法、見たこともなく強大なものでしたな。しかし、それを恐るなどと……こうして、村のために戦い、みなを癒してくれたお方をどうして恐ることができましょうか」

それは村人の総意だった。あれほど強大な力を持つが、彼女たちは自分たちを助けてくれた。それのどこが恐ろしいのだろうと。
その言葉を聞き、姉は小さく笑みを浮かべる。あぁ、人とはなんと素晴らしいのだろうか。夫が救いたかったのは、こう言う人たちなのだろう……と今は会えなくなってしまった愛すべき夫の姿を思い浮かべる。


以後、彼女たちは、村人の尊敬を集めるようになった。とある理由で、長寿になってしまったと伝えられても、みなまったく驚かない。どうやら、盗賊たちの一件が妙な耐性を付けることになってしまったのだろう。
時には学問を教えてもらいながら、時には一緒に農作業を行う。いつしか、姉妹は村人達にとってなくてはならない存在になったのだ。

美しい姉妹がいると言う噂は、直ぐに国中を駆け巡り、求婚に訪れる貴族も現れた。しかし、その全て断り、実力行使を取ろうとして貴族も返り討ちにしてしまった。
なぜ結婚しないのかと、尋ねられた時に姉妹は二人してこう答えたという

「私達の英雄にして、王を超える存在など現れないだろう」

そこまで彼女たちに愛される存在は誰なのか……彼女達に恋をしている村の若い男衆には、叶わぬ思いとなってしまった……。

そして、季節は巡り……彼女たちの住まう寺院は村人達の協力もあり、立派に建て替えられた。
名をイザリス寺院。そこに住まう姉妹の名は、姉をクラーグ。妹をクラーンと言う。




感想を元に訂正。白蜘蛛姫様=クラーン。


里帰り編 3羽 騎士とヴァリエール家の姉妹

 

 

 

ヴァリエール家 プレイヤーの客室

 

 

「はー、色々な薬草があるもんだなぁ。しっかし、つくづく相棒のソウルとか言うのは便利だな。こんなにもしまっておけんだからよ」

 

壁に立てかけてあるデルフが、感心したように、テーブルの上を眺めていた。そこには、緑から始まり、黄土色、黄金色、白色と言った薬草――月の草――が並べられている。

その1つ、三日月草を手に取ると、プレイヤーは器に入れ、棒でゴリゴリと磨り潰し、そこに公爵から譲ってもらった水の秘薬を注ぐ。

そして、再びゴリゴリと磨り潰すという行為を繰り返していた。事の発端は、2日前にさかのぼる。そう、カトレアが発作を起こし、倒れた日の事だ。

 

 

 

 

2日前

 

 

「では、彼が持っていた薬を飲ませてみたら、容態が安定した……そういう事ね?」

「はい。咄嗟の事でしたし……」

 

若干、肩身を狭くしながらルイズはエレオノールの質問に答えていた。その隣では、公爵が若干険しい顔をしながら、腕を組んでいる。

夫人であるカリーヌは、カトレアの眠っているベットの近くの椅子に腰掛けて、優しく彼女の頭を撫でてあげていた。

なお、プレイヤーはカトレアのお友達である動物達を、別な部屋に移動させているので、この場に居ない。そのお陰で、ルイズが質問攻めを受けているわけだ。

 

「飲ませたのは良いとして、一体どのような薬を飲ませたのかね?」

「あ……えっと、小瓶に入った薬と、白い……草みたいなのを飲ませていました」

「白い草?……まさか、得体の知れないものをカトレアに飲ませたという事かしら?」

 

キッとエレオノールの眉がつりあがる。ソウルとか言う訳の分からない業を操ったり、妙な薬草を飲ませたりと、プレイヤーの行動は色々とおかしく思うのだろう。

何時もなら、ここでビクつくルイズだが、プレイヤーがそんな物を飲ませるわけはないと、反論をする。……勿論、口移しという事はキッパリと隠してだが。

 

「そんな事はありません!!本当にプレイヤーは、ちぃ姉様の事を助けようとしたんです!!現に、ちぃ姉様の発作もおさまって、静かに眠ってますから、薬草ということも確かです」

「……確かに、ルイズの言う通りね。この娘がこんなに安らかに眠ってるなんて、見たことないわ」

 

すぅすぅと、静かに寝息を立てるカトレアの様子を見て、カリーヌもルイズの言うことを信じると頷いている。母親として、病弱なカトレアと過ごす時間が長かった彼女にとって、こんなに安らかに眠っている娘の寝顔は、本当に始めてみる。

4人の間に微妙な空気が流れている部屋に、少し居心地が悪そうに入ってくる男性、プレイヤーだ。

そして、やはりと言うか、4人の視線は、プレイヤーに注がれる。

 

「プレイヤー、ちょうど良かった。ちぃ姉様に飲ませた薬と、薬草。ここに出してくれる?」

 

ここは直に見せたほうが早いと判断したルイズは、エレオノールが何か言う前にプレイヤーに指示を出した。

確かに、その方が手っ取り早いか。と頷いたプレイヤーは、徐に公爵の前のテーブルに歩み寄り、自身のソウルから数種類の薬草と、乳白色の液体の入った小瓶を取り出して、並べる。

 

「ほう……これがカトレアに飲ませた薬草と薬かね。……ふむ、薬効は?」

 

公爵は物珍しそうに三日月草を手に取り、その効果を聞いてくる。1つずつ説明するのも、色々と面倒ではあるが、ちゃんと説明したほうが納得してくれるだろうと、頷きルイズを解して、それぞれの薬草の説明を行うのだった。

 

 

 

 

 

「……では、この白い薬草、新月草の次になる黒の薬草、暗月草が育てば、カトレアの病は癒せると……そう言う事かね?」

 

フルフルと震える手で、新月草を手に取りながら、公爵はプレイヤーに視線を向ける、それに対して彼も、確実に治るだろうと言った様子で頷いた。

奇跡の薬草、暗月草。あらゆる病、あらゆる怪我を一瞬で治すと言われ、実際にその効果を備えていた。ボーレタリアを初めとする大国の王族しか入手できず、それもかなり高価な薬草だ。三日月草から育て始めても、多くのものは後月草で止まってしまう。これだけでも、多少の傷ならば、瞬時に癒すことが出来る。

しかし、それに続く満月草は、それ以上の効力を持ち、新月草は、腕を切断されたとしても、その断面に塗りつけてくっつければ直ぐに傷を塞ぎ、動かすことが出来るとまで言われる効力だ。

だが、そこまでになる、月草の滅多に見ない。第一、これは栽培方法などまったく関係ないのだ。新月、暗月は月草が枯れてから、ようやく姿を現す。しかも、その確立も大変低い。

最も、それに見合った効果があると言えば、そうなるだろう。

そして、乳白色の液体、女神の祝福。太陽の王女グウィネヴィアの加護を受けた秘薬とも言われるが、一説では、彼女の母乳では無いかとも言われている。それを聞き、当初はそんな訳無いだろうと思っていたプレイヤーだが、幻影とではあるが、その姿を見た後では、もしかして……と考えてしてしまい、使う機会が巡ってこなかった。

しかし、ある意味で皮肉なものである。神の力では癒せぬ病が、ただの草の力では癒せるのだ。それこそ、神が万能ではないという皮肉なのだろうか?

 

 

「……なんという、なんという事だ。カトレアの病を治す術が存在したとは……」

 

そう零すと、公爵は手のひらで顔面を多い、俯いて肩を震わせていた。ポタポタと、手を伝わり落ちてくる水滴は涙。如何なる水のメイジさえ治せなかった娘の病。

この娘は、一生この屋敷の中で過ごす籠の鳥かと本人も、家族も諦めかけていた時に見つかった治療法。どれほど嬉しいかは、想像につくだろう。

エレオノールに居たっは、信じられないという顔をしていた。水のメイジではないが、彼女自身も優秀なメイジであり、学者でもある。その彼女が調べてもカトレアの病を治すことはできなかった。それなのに、この男、プレイヤーはいとも簡単に治す方法を示してしまった。嬉しさと困惑、嫉妬が入り混じり喜ぶべきところなのに、素直に喜べない。

そんな気持ちが心の中に渦巻いていたが、自分の前に座っていたルイズを見て、そんなことなど吹き飛んでしまう。目の前の妹は、その瞳に大粒の涙を貯めていた。

 

「プレイヤー、本当ね……?本当にちい姉さまの病気は治せるのね、健康になるのね……?」

 

絶対に治るだろう。とプレイヤーが頷くのを見ると、一つ二つと涙が零れ、その可憐な顔をクシャクシャに歪めてルイズは泣き声をあげながら泣き出した。

大好きなカトレアの病が治る。これほど嬉しいことはなかったのだろう。ただただ純粋に嬉しい、純粋に心の底から安心した。そんな素直な気持ちが心を動かし、彼女に涙を流させた。

そんな純粋な心を、ルイズを見てしまえば、エレオノールの心の中に存在した困惑や嫉妬など吹き飛んでしまう。

 

(そうよね、家族だもの。誰がどんな方法でカトレアの病を癒す方法を持ってきたって良いじゃないの)

「ルイズ、あまり泣きじゃくるんじゃないの。ヴァリエール家の娘なのだから、しっかりなさい」

「ぐす、けど……おね゛えざま。ぢいねえざまのやまい゛がなおるのでずよ。よ……よかっだ」

「まったく、おちびの泣き虫なんだから……ほら、胸を貸してあげるから、今は思いっきり泣きなさい。そして、後はシャンとするのよ」

 

ギュッとルイズを抱きしめると、エレオノールはポンポンと優しくルイズの背中を叩いてあやす。彼女とて、この末っ子が憎い訳ではない。逆に可愛くて可愛くて仕方がないのだ。

だからこそ、アカデミーでルイズの魔法の事を調べ、出来損ないと言わせないと誓い、厳しく接していたのだ。それも全て愛情ゆえに。

その愛情があるからこそ、今こうしてルイズをあやしている姿は、聖女の如く美しく優しい。ほう……とプレイヤーも、その姿を微笑ましく思った。

喜び合う家族の中、カリーヌも優しげな笑みを浮かべ、よかったと眠っいるカトレアの頭をなでていた。しかし、心の片隅では渦巻いていた物は形となり、月の草、そしてプレイヤーの正体に気がつく要因になった

 

(やはり、彼があの人の……ソラールの言っていた火の英雄……いいえ、光の王を超える太陽の火の王。再び伝説がこの地にやってきたのね)

 

 

 

とまあ、こんな事もありプレイヤーは、自身の持っていた月の草の種子を譲り、幾つかの草を飲み薬代わりとして煎じていたのだ。

 

「飲めばいかなる傷、如何なる病さえ癒す薬草ねぇ。けど、栽培には難しいと……まぁ、そりゃ当然だわな。そんな薬草がポンポンできたら、この世は人で溢れちまうな」

 

カタカタと話すデルフに、若干苦笑いを浮かべながら、そうかもしれないなとプレイヤーは返しながら、ことりと出来上がった薬の瓶をテーブルの片隅に置く。

数は20本程だろうか。結構な数を作ったし、当分は十分だろう。かりに足りなくなりそうでも、学院でつくりルイズに頼めばここまで郵送してくれるだろう。

まぁ、現在公爵の指示で屋敷の一角を大規模菜園に改修を行っている。そこで生産されるようになれば、問題はないだろう。

 

「公爵様も随分と思い切った事をするもんだな。あん?娘の為なのだから当然だろう?はっ、違いねぇやな。相棒と同じ親バカって奴か」

 

笑いながらカタカタと震えるデルフに、うるさいと言いながらプレイヤーも苦笑いを崩さない。確かに、自分もかなり娘――タバサ、否、シャルロット――には甘いだろう。

現に、ヴァリエール家に来てからというもの、毎日伝書鳩を飛ばして、お互いの様子を確認し合うほどだ。ヴァリエール家とツェルプトー家の領地が近いの事が良かったのだが……故に両家……と言うかヴァリエール家はツェルプトー家を毛嫌いしてるのだなと妙に納得もしてしまった。

ルイズは自室で休暇中の課題を片付けているし、自分はどうするか、文字を読む練習がてたら適当な本でも読んでみようかと、備え付けの本棚に歩み寄る。

うーんと悩んでいたが、何やら扉の向こう側で人の気配がする。それも、隙間から微妙にこちらを覗き込んでいるではないか。

プレイヤーがそちらに視線を向ければ、引っ込んでしまい、離せばまた覗き込む。面白いなと、何度か繰り返すが……いい加減、進まないので、扉に歩み寄り、開けることにした

 

 

 

 

(どどど、どうしましょう。ここまで来たのは良いのですが……なんとお礼を言えば)

 

プレイヤーの部屋を覗き込み、しゃがんで頭を抱え込んでいる桃色の人物、カトレア。目を覚まし、父親から色々と話を聞き、自分の病が治ると分かった時、彼女も最初は飲み込めなかった。しかし、確かにあの発作から異様に身体が軽く、具合もまったく悪くない。それならば、プレイヤーの話も真実なのではないか?彼女の掛かり付けの水のメイジもこれほど体調の良いカトレアは見たことがないと太鼓判を押すほどだ。……ならば、絶対に自分の病は治る。そう思うと、気持ちも楽になるものだ。

しかし、そんな彼女の記憶に残るあの出来事。

 

(わわ私……プレイヤーさんにくくくくく口付けされましたよ……ね?)

 

しかも舌を入れて、である。どうやらあの時は、まだ意識があったようで、鮮明とは行かないが、覚えていたらしい。

最初こそ、素敵な男性、暖かな人と思っていた人物が、自分の命の恩人であり、治療法を示してくれた人。……それで、恋に落ない女性などいるだろうか。

失礼ながら、居ないと言わせていただく。

そんなこんなで、お礼を伝えに……とここまでやってきたのはいいのが、恥ずかしいやら嬉しいやらで扉の前で右往左往していたのだ。

考え込んでいるからこそ、扉を開けてこちらを見ているプレイヤーに一向に気がつかない。どうしたんだ?と言うように、ポンと頭に手を乗せられた時点で、カトレアははっと気がついて顔を上げた。

 

 

「あああああのえっとそのプレイヤーさん……お、おひゃようございましゅ!」

 

カトレア、豪快に挨拶を噛む。……ボッと音を立てて顔を真っ赤に染めるカトレアとは、う…ん?うなづきながら、とりあえず中に入るか?と指差すプレイヤーであった。

 

 

 

「えっと……その、先日はありがとうございました。プレイヤーさんのおかげで、体調も良く、とても晴れ晴れした気持ちです」

 

対面に座りながら、ペコリ頭を下げるカトレアに身体は大丈夫なのか?と問いかければ、優しげ笑顔で、お礼と返事が返ってきた。

彼女の内のソウルと火も初対面の時に比べて、随分と大きく、そして安定してるところが見て取れる。両者とも、生命の根幹を司るものであり、これが大きければ大きいほど強大な力を持ち、長生きできるのだ。プレイヤーは、最高峰のソウルと火を持つからこそ、こうして強大な力と命を持つ。

 

「聞けば、私の病を治す薬草の種子も提供していただいたとか……本当に、貴方は優しくて素敵な方ですね」

 

そうだろうか、頬を掻くプレイヤーに、そうですよと伝えるとカトレアはおもむろに、彼の左手に触れ、そのまま自分の頬まで持っていき、スリスリと擦り付ける。

 

「ふふ、大きくて暖かい手。男の方は、みなそうなのかもしれませが……プレイヤーさんの手は特別な気がします」

 

幸せそうに、スリスリとするカトレアにとは対象的に、若干照れた様子で、プレイヤーは視線を外す。その姿が可愛らしく思ったのか、カトレアはますます笑みを深める。

……箱入り娘+恋愛=超一直線で盲目と言う方程式は正しかったようだ。

 

「プレイヤーさんは、どの様な女性が好みなのでしょうか?お姉さまみたいな、しっかりしてるけど少し抜けているタイプ?それとも、ルイズの様なツンツンしながらも、甘えてくるタイプ?あ、もちろん、私もしっかりしつつ、抜けてますけど、甘える事もありますよ?」

 

あれ、カトレアってこんな人だったか……?と内心、首をかしげながらも、どう答えるべきかと考えるプレイヤーもプレイヤーで、どこか抜けているらしい。

しかし、この場で、既婚者――で良いのだろうか――と伝えるべきかどうかと迷っていると、コンコンと扉をノックする音が聞こえてきた。

カトレアから手を離してもらい、扉の方に向かうが……若干、寂しそうにシュンとしているカトレアが可愛くて仕方がない。確かに、ルイズと同じで甘えたがりのタイプなのだろう。

扉を開ければ、そこには身なりを整えたエレオノールが立っていた。

 

「失礼、ミスタプレイヤー。先日のこと、改めてお礼を言いに来ました。病をなおす術、カトレアの命を救ってくれたこと、本当に感謝しています。」

 

そう言うと、エレオノールは頭を下げる。慌てて、気にしなくていいと身振りで伝えると、彼女は小さく笑みを浮かべ、彼を眺めた。

 

「……確かに、貴方は他の男とは違うのかもしれないわね。」

 

最初の方が小さく聞こえなかっので、ん?と首をかしげながら、しっかりと身なりを整えている彼女に疑問を覚える。

 

「あぁ、この服装ね。これから、アカデミーに帰るのよ。貴方から提供してもらった薬草も研究したいしね。その帰りがてら、領民から相談された場所を視察するのよ」

 

 

領民から相談された場所となると…あそこしかないだろう。ここに来る途中にあった村、色のない濃霧が出ると言われた場所。

では、失礼するわね、と言い残して金色の髪を靡かせて去っていくエレオノールの後ろ姿を眺めながら、プレイヤーは言いようのない不安に駆られていた。

 

 

 

 

 

 

 

門の外では、兵士たちが自分の獲物を持ちながら、談笑に花を咲かせていた。みな気心知れた仲であり、信頼している仲間たちなのであろう。

 

「しっかし、幾らエレオノール様の護衛とは言え、メイジ3人と騎兵10人は大げさすぎないか?」

「いや、最近領民から相談されただろ。そこの調査も兼ねて、この人数なんだとよ」

「へぇ、そうだったのか。まぁ、この人数なら、山賊くらいどうってことないだろう」

「だと良いんだがな……。噂では、その場所……三目の怪物やら、牛やヤギの化物が出るらしいぜ」

「おいおい、そりゃ幾らなんでも与太話過ぎるだろ。そんなの絵本の中だけだって」

「だよなぁ。おっと、我らがお嬢様の登場だ」

 

エレオノールと屋敷から出てきたのを確認すると、兵士たちは姿勢を正して彼女の道をあける。

そして、彼女が馬車に乗り込むのを確認すると、それぞれの馬に跨り、随伴するようにして出発するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深い森の中、三目の巨体はその身体を揺らしながら、霧の中を練り歩く。その三目の巨体を狙うようする影。

木の上に陣取っていたヤギ頭の怪物は、骨の様な大剣を両手に構えて、三目の巨体が木の下を通り過ぎようとした瞬間、飛び降りて剣を脳天に突き刺した。

ズズン…と音を立てて倒れる三目の巨体を眺め、そのまま立ち去ろうとするヤギ頭の怪物だが……ギロリと光のない眼で、地面を睨みつけて高く跳躍する。

刹那、地中から黒い骸骨が這い出てきた。そちらも、両手には刀を持ち、ギラリと赤い光が目の場所に宿っている。

両者とも、円を書くようにして対峙、骨の様な二本の大剣と鋭利に輝く二本の刀。ヤギ頭が姿勢を低くし、飛び出そうとした瞬間、木々がなぎ倒される。

しかし、押しつぶされるよりも早く、ヤギ頭と黒骸骨は跳躍し、その木々をなぎ倒した存在を睨みつける。牛頭の化物。そして、先ほどヤギ頭が倒した者とは別の、三目の巨体がその場で巨大な鉄の斧と、巨大な骨を削った斧を振り回し、暴れていた。

それを眺めつつ、ヤギ頭と黒骸骨も、それぞれの獲物を構えて走り出し、その巨体に襲いかかるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

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