前書きネタが浮かんでこない今日この頃。
沢山の白霊応募ありがとうございました。
活動方向にも載せましたが、
カラクト様の白霊、聖堂騎士。
リーバー様の白霊、槍騎士。
を使わせていただきます
トリステイン城下町
裏路地の寂れた酒場。ガラの悪い盗賊もどきや、傭兵が屯する酒場に、一人の若い女性がはいってきた。顔はフードで見えないが、スカートのスリットから覗く白い足は、男どもの欲情を引き付けるのには十分であった。
そんな欲望まみれの視線を浴びながらも、女性――ロングビル、土くれのフーケ――はカウンター席に座りに、酒場の主に声をかけている。
「ん?なんだ、お前さんか。ここに顔を出すなんて珍しいじゃねぇか。しかも、随分と久々だな」
「まぁ、ちょっと野暮用があってね。お陰で稼ぎはいいんだけど、なかなか時間が取れなかったのさ」
「はっ、お前の稼ぎが良いとなると、貴族連中は顔真っ青だろうさな」
「残念。最近はまっとうな仕事だよ。そうだね、珍しい武器の情報とか、そういうのを集めてんだよ」
「ほほう。またご立派なお仕事なことで」
口元に笑みを浮かべて、フーケは酒場の主が出した酒を口に含む。この酒場とは、かなり古い付き合いであった。この酒場の主は傭兵たちに仕事を紹介したりと、一種のギルドのような役割をしていたのだ。最も、表より裏の仕事も多く、まだ規模が小さいころ、酒場の主が命を狙われたこともあった。その時に、フーケと、彼女の義兄にして恋人である【男】
が酒場の主を助けたのがきっかけで長い付き合いになっていたのだ。
「まったく、嬢ちゃんとあいつに助けられてから、俺の仕事は順調そのものだよ。あいつに限って、最高級の素材だったしな」
「はん、私の義兄で恋人だからな。それ位の仕事はするさ」
「あいつも大変だなぁ。嬢ちゃんが押せ押せで落としたんだったか……?」
「・・・・・・時間かけると、妹の方に盗まれそうだったからね……と言うか、未だに諦めてない」
「まぁ、なんだ。うん、なんもいえねぇわ」
苦笑いを浮かべる主とは対照的にフーケは、微妙な表情を浮かべていた。
かつて、自分たちが幼いころ、命を狙われたときに現れたのが【男】であった。寡黙な男であったが、自分達を見捨てず、共に生活をするうちに兄と慕い、フーケが大人の女性へと成長する頃には、何時しか愛する異性になった【男】
妹も【男】に恋焦がれていると知った彼女は、怒涛の勢いで攻め込み、陥落させることができた。のだが、妹は諦める気は無いらしく、二人で愛してもらえばいいじゃない。と言うスタンスでいるらしい。
仕事で帰らないフーケと違い、【男】はよく帰っているので、心配でしょうがない彼女であった。
「へへ、親父さん、随分と上玉を仕入れたもんじゃねぇか」
「まったくだ、なぁ、嬢ちゃん、俺らとも仲良くしねぇか?親父さんより、うまくやっやるぜ?」
「・・・・・・ああ?ったく、女だからって甘く見るんじゃないよ。どうせ、服の下にしか興味がないんだろう?」
いやらしい笑みを浮かべて、自身を囲む傭兵たちにフーケはやれやれと言った様子で、肩をすくめる。裏の仕事をしていると、こう言う奴らに絡まれることは何度もあったし、撃退もしたことがある。
「ご名答。あんたのような上玉なら、何晩でも相手してやれるよ!!」
「興味ないか?最高の快楽ってやつによぉ」
「はっ、残念だけど、すでにそれは知ってるから御断りさ。ほら、ぶっ飛ばされないうちに失せな、三下」
まったく相手にしないと言った様子で、手をヒラヒラとするフーケに傭兵たちは、額に青筋を浮かべながらも、いやらしい笑みを隠さない。それだけの魅力が彼女にはあった。
数人で囲み、部屋に連れ込んでしまえばこちらのもの。そして快楽漬けにするほど楽しむのだと、肉欲を抱く傭兵達に、酒場の主はため息をこぼしながら、忠告する。
「やめとけ、そろそろ嬢ちゃんの連れがやってくる」
「ああ゛!?それなら、その連れを始末すりゃいいだろうが!!」
「・・・・・・貴公らにそれができるとは到底思わぬが。まぁ、良い。肉欲に酔った獣を狩るのも一興か」
シンと酒場が静まり返る。扉をあけて入って来たのは、腰にのこぎりの様な武器。ノコギリ鉈と、変わった形の散弾銃を下げた黒いコートの男性。顔を隠すかのようにかぶった帽子から覗くのは、血色の瞳。その姿は、近隣諸国にも響き渡る人物と同じもの
「かかかかか・・・・・・狩人・・・・・・!?」
誰かがゴクリと、つばを飲み込む。
狩人。と呼ばれた男性が酒場に足を踏み入れれば、傭兵や盗賊達は道を開けるように避ける。
フーケにまとわりついてた傭兵達も小さく悲鳴を上げて、逃げ去り、狩人はそれを一瞥するだけで、気にもせずフーケの隣に腰を下ろした。
狩人、生身でオーク鬼を葬り去り、山賊や盗賊団を一人で壊滅させている男。
しかも、メイジを含む傭兵団を相手に大立ち回りを演じ、その全てを刈り取ったと言われるほどだ。噂でもない、事実であることを、この酒場の主が認めていた。
「相変わらずのようだな」
「はっ、お互い様だよ。ったく、あんたがもっと早く来てくれれば、絡まれずに済んだんだけどねぇ」
そういいながらも、フーケは隣に座る狩人にしなだれかかるようにして、身体を預けていた。
「・・・・・・埋め合わせをしろと、そういうことか」
「ご名答。久々に会ったんだ、恋人同士がやることなんて、一つだろう?」
「それを含めて相変わらずか。お前こそ、肉欲まみれではないか」
「それを教え込んだのは、どこの誰だったかなぁ?ほら、上に行くよ!!親父さん、何時もの部屋使わせてもらうよ!!」
「はいはい。まぁ、お盛んなこって」
己の腕に自慢の胸を当ててアピールするフーケにため息をこぼしながら狩人も二階へと上がる。
ここに来て随分と年月が過ぎ去るが、未だに自分がここにきた理由がわからない。
夢から抜け出たのか、それとも新たなる夢なのか。
部屋に入り、自身に抱き着いてくるフーケを抱き留めながらも、頭の片隅ではそのような事を考えている狩人であった
王城
マザリーニ様と声をかけられ、振り向いた先には、鎧を纏った美丈夫、ヴェルスタッドが歩み寄ってきていた。
「ヴェルスタッドか。練兵が終わったところか」
「ええ、先ほどグリフォン隊との演習を終えたところです」
「そうか。どうだね、隊長を務めるワルド子爵の腕前は。直接は見たことないが、優れた風のメイジなのだろう」
「筋は良いでしょう。私も戦っていて幾度か肝が冷えました。ですが、倒せぬ程ではありません」
「子爵も相当な実力なのだろうが、君と比べてしまうとな」
小さく喉を鳴らして、マザリーニは笑う。若くして隊長を務めるワルド子爵もかなりの実力なのだろうが、目の前にいるヴェルスタッド相手ではどうしても霞んでしまうのだろう。
王盾と言う唯一無二の称号を持ち、近隣諸国から引き抜きの声が絶えない英傑。
武力だけでなく、知力にも優れた武人であり、彼が王妃やアンリエッタに忠誠を誓い、親衛隊を掌握しているからこそ、邪な考えを持つ貴族たちは行動に移せないでいた。
文はマザリーニが。武をヴェルスタッドが掌握しているからこそ、今のトリステインはあるのだ。下手すれば、政治的にマザリーニに、そして物理的にヴェルスタッドに潰されるのだ。と言うか、潰された貴族がおり、その事実が更に歯止めをかけていた。
「アルビオン情勢、かなりきな臭くなってきましたな」
「まったくだ。異国の地の出来事。と考えている者たちもおるが、すぐ近くだ。飛び火せぬようにするのも骨が折れる」
「失礼ながら、飛び火は免れぬでしょう。内部に虫も潜んでおります故」
「君でも探し出せぬか……かなり根を深く張っていると見るべきか」
「ええ。今は私が軍部を掌握しておりますが・・・・・・最悪、アルビオンを打倒した貴族派が攻め込んでくるでしょう」
その言葉にマザリーニは苦虫を噛み潰したように表情を歪めた。
アルビオンにて起こった反乱。その規模は日を追うごとに大きくなり、今では現アルビオン王朝が劣勢を強いられているのだ。
「かつて、【竜狩り】が治めていた国があのような事になるとはな」
「ウェールズ王子は、優れた槍の使い手でもあったとか。アルビオン国内にて今竜狩りと呼ばれるほどの実力を有しておりました」
「そして、姫の・・・・・・か。はぁ、まったく頭が痛いな」
「心中お察しします。しかし、国外だけでなく、国内にも目を配るべきかと」
「うむ・・・・・・噂をすれば来たな」
窓から門の方を見れば、騎馬に護衛された一台の馬車が入ってきた。
山岳地帯を治める有力貴族であり、国家の上層部にも名を連ねる大貴族。しかし、ここ数年、老境に入り、私有地にて異様な実験を繰り返していると噂されてもいた。
本来ならば、マザリーニ、もしくはヴェルスタッドが領内視察を名目にして調査すべきなのだが、この二人が中央を離れれば、裏で暗躍する貴族派の相手をできる人材がいない。
対抗できそうなオスマンは、プライベートは彼らとも交友があるが、仕事となると中央には関わらないスタイルを貫き通している。
はぁっと深いため息をこぼしながら、マザリーニは会合が予定されている部屋へと向かっていった。
「ジェルドラ・ヤーナム卿か。やはり、密偵を増やしておくべきか」
山岳地帯の古都を治める大貴族、ジェルドラ・ヤーナムに不信感を覚えながら、ヴェルスタッドは密偵の候補を頭の中で浮かべるのであった。
朝日が砦を照らした頃、轟音が響き渡る。
一際巨大な存在。巨人の王が配下たる巨人を率いて砦に攻め入ってきたので。
前線で迎え撃つのは、ドラモンド率いるドラングレイグ軍にプレイヤーと共に戦う白霊。
今回呼び出されたのは、巨大な大剣を振るう聖堂騎士に長大な槍を振るう槍騎士。
聖堂騎士は大盾で攻撃を受け止め、怯んだ瞬間に切りかかる。
大剣を振るう力は巨人と大差なく、軽々と巨人の胴体を両断し葬り去る。横に振られた大剣でも二体目の巨人を切り裂き、聖堂騎士は周囲に目を配る。
そして、巨人相手に苦戦している兵士達を見つけると大剣を地面に突き刺し、背負っていた竜騎兵の弓を構えると、矢を二本装填して、一気に射ち出した。
その射撃に呆気にとられる兵士達であったが、頭と腕を撃ち抜かれて、痛みに悶える巨人の姿を見ると、一斉に槍と剣を突き立てる。
「あの騎士、我々を援護してくれるのか」
「ありがたい!!我らだけでは、到底及ばぬからな!」
巨人を仕留め、次の目標に向かう兵士達を援護するように、聖堂騎士は竜騎兵の弓を巧みに使い、巨人の腕を射ち貫き武器を使えぬようにし、または足を地面に縫い付けると無力化した巨人達と戦わせるようにしていた。
そして、ある程度の巨人を兵士達に任せると、再び、弓を背負い、地面に突き刺していた大剣を抜くと、自分も巨人へと襲い掛かる。
数が多いが、対処しきれぬ程ではない。その考えの元、聖堂騎士は振り下ろされた巨大な棍棒を大盾ではじき上げ、がら空きになった胴体に大剣を突き刺すと、背負い投げの要領で地面にたたきつける。いまだ生きている巨人には目もくれず、聖堂騎士は大盾を構える。
そこに当たる火球。どうやら、後方から狙って放たれたものらしい。
兜の下で軽くし舌打ちをすると、竜騎士の弓を取り出し、狙い撃つ。しかし、今度放たれた矢は二本ではない。驚愕の四本。
轟音と共に放たれた矢は、狙いたがわず呪術を放った巨人の頭・胴体・右腕・左腕を貫いて射殺す。そして、すぐさま腰に差していたブロードソードを一閃。先ほど、地面に叩きつけた巨人を真横に両断する。大剣・弓・ブロードソード。と各距離対応の武装を使いこなす聖堂騎士は、まさに万能騎士。
自分の同じ区画で戦う兵士達を鼓舞するように、大剣を天に掲げて、後ろを振り返る。
その姿を見た兵士達は、雄たけびを上げ、聖堂騎士に続く。
空気を破るかのような音が響き渡り、それが終われば胴体に幾つもの穴を穿たれた巨人が倒れ伏す。銀騎士の槍を振るう槍騎士は、目視すら難しい速度で刺突を繰り出し、速度にて巨人を圧倒する。自身を囲む巨人相手に、一切怯まず、突き穿つ。
巨人が棍棒を振るおうが、剛腕を叩きつけようが、槍騎士の残像にすら届かない。
背中には大盾を背負っているが、その重さを感じさせぬ速度。
多数の武器を使いこなす聖堂騎士とは違い、槍騎士は愛用の槍一本で激戦に身を投じている。彼にとって、この槍こそ最高の武器であると確信し、ひたすらに槍の技量を磨き上げてきた。身体を低くし、一足飛びで巨人に襲い掛かれば、振り下ろされる棍棒。しかし、槍騎士は直角に真横にステップで回避。身体に多大な負荷がかかる動きだろうと、槍騎士には慣れた物。自分の特徴は目視が困難な速度。回避そのまま飛び上がり、巨人の脳天に槍を突き刺し、左手に持っていたタリスマンより、奇跡、雷の大槍を出現させると、直接胴体に叩き込み、爆発する瞬間に飛び下りる。そのまま、次の標的に向かって走り出す。
視線を上げれば、自身に迫る幾多の火球。どうやら、呪術を操る巨人が一斉に攻撃してきたらしい。火球が炸裂し、爆音が響き渡り地面を抉り、土煙が舞い上がり、巨人達の視界を遮る。必殺の手応えであった。あれほどの火球の熱量を受けてしまえば、あの恐ろしい槍騎士だろうと、焼き焦げて死んだはず。
土煙が晴れ、そこに視線を向けようとした瞬間、一体の巨人の胴体に穴が穿たれる。
まさか!!と周囲を見渡すと、目に映ったのは銀の閃光。それが巨人の見た最後の光景であった。
なぜ、槍騎士は無事だったのかは、至極簡単な事。爆発する瞬間に、更に速度を引き上げて走り抜けただけ。あれほどまでに巨人を翻弄する速度を見せながら、この槍騎士は、未だに全力を出していなかったのである。
身体に穴を穿たれて、倒れつくす巨人の山を築いた槍騎士は槍を大きく振るい、こびり付いた灰色の肉片を払いとる。そして、槍に目を向けた。
刃に痛みなし、ゆがみも確認できず。これならば、まだ戦える。
未だに砦に群がっている巨人に視線を向けると、槍騎士の姿が一瞬で掻き消える。
そして、次の瞬間には、砦に群がっていた巨人達に、大穴が穿たれていた。
そして、別な場所ではプレイヤーと巨人の王が壮絶な戦いを繰り広げているのであった。