魔化魍育成日記   作:マデリアン

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描きたくなったからねしょうがないね。この作品は魔化魍を愛でる作品です。犬を見て可愛いと思ったり、猫を見てモフりたくなるのと同じ感覚です。


巻の壱 噛まれると結構痛い

 春、それは様々な生命が活動を開始する季節。生命の息吹があふれる季節。冬眠していた動物は眠りから覚め、エサを求めて歩き出し、厳しい寒気を乗り越えた植物は、暖かな日差しをその身に受け。人は新たな生活の場で、新たな出会いをする。

 そしてここにもこの春、高校生になり一人暮らしを始めた少年が1人、眠りから目覚めた……

 

「……ぅあ? あー、え? やっば! 始業式に遅刻する……ってまだ7時……はぁ」

 

 ベッドから慌ただしく下り、服を脱いで下着姿になったところで、時間を見間違えていたことに気が付く。肩の力を抜き、のろのろと服を集め部屋を出る。

 

「取り敢えず朝めしを簡単に作って、布団は……まぁいいか干さなくても。昼は、今日は無いし家帰って食べようか。晩御飯どうしようかな?」

 

 1人ブツブツと呟きながら、洗濯機に洗い物を放り込み、顔を洗って朝食の準備をする。

 

「いただきます……さて今日の天気は……晴れ、降水確率は、10%か大丈夫か、な?大丈夫でしょ、うん」

 

 ウィンナーを3本、昨日少し余った白ご飯を茶碗によそい、レンチンする。その間にインスタントのお吸い物へと熱湯を注ぐ。卓袱台へとそれらを全部運び、テレビをつけて食べ始める。その際チラリと時間を確認する、7時20分、これならゆったりとした気持ちで出かけられるな。と思い白ご飯を咀嚼し飲み込んでいく。

 

「ごちそうさまでした、洗い物は……帰ってきてからやろう」

 

 食器をお盆に乗せ、流し台へと一つづつ置き、蛇口から水を注ぎ乾いて洗いにくくなるのを防ぐ。歯を磨こうと洗面台へ行こうとしたとき、足元に何かがぶつかってくる。

 

「がぅっ!」

「うぉ? おぉー鎌田さん。おはよーさん、さて体をモフらせなさい」

「がぅうっ!!」

「あ~逃げられた。どうやったら懐くんだろう?」

 

 足もとにぶつかってきたイタチの鎌田さんを触ろうとしたが、プイとそっぽを向かれどっかへ駆けていく。その様子を眺め、懐かれてないのは何故か考えながら洗面台へ歩いていく。

 歯を磨き、自分の部屋に自分の荷物を拾いに行く。忘れ物が無いか確認し、玄関に向かう。するとそこで鎌田さんと出くわす。

 

「でたな、鎌田さん。さぁこっちおいで!」

「がぁっ!!」

「噛まんでもえぇやん……ちょっと痛いけどすぐ治るっしょ。さていってきまー」

 

 玄関先で靴をガジガジしていた鎌田さんに腕をかまれ、噛み傷からすこし血がにじんでいたが、まぁ大丈夫かと決め、外に出る。

 彼のテンションは寝起きからゆっくりと、エンジンがかかってきていた。家の外に出たときは顔がニヤニヤと歪んでいた。

 

「ふぇーでっかいなー駒王学園は……チャリ置き場はどこかな?」

 

 自転車をこいで10分ほど、彼がこれから通う高校『駒王学園』に到着した。校門前は桜吹雪が舞い散り、新入生を歓迎している様だった。チラチラと周囲を見渡し自転車置き場を探す。

 自転車を置いてからクラス分けの表を見に行く。そこで自分のクラスを確認すると、すぐにそこから離れてクラス分けの表の周りに固まっている生徒を遠巻きに眺める。

 

「ねぇ! 私たち同じクラスだよ!!」

「ヤッタァー! よろしくね!!」

「あー俺たち離れ離れだな」

「でも私たちの絆はどこまでも一緒だよ」

「またあんたと一緒か腐れ縁かよ」

「また一緒とか、でも一人でも知り合いがいて安心だわ」

 

 友達……仲良し……その言葉で彼の心に少し傷が入ったような気がした。が友達は実家のある長野にいるし、今でも連絡をちょこちょこ取り合っているので問題は無い。

 

「でも目から流れるこの水は、何でしょか?」

 

 クラスに入って、自分の席で静かにする。今はまだ動く時ではないと心に言い聞かせ、クラスを見渡す。元々友達同士で出来たグループが数個あり。他は自分と同じで一人で座って、おとなしくしていた。

 暫くして担任がやって来て、その後をぞろぞろと追い掛けて、始業式の行われる講堂へと向かった。

 

『では続きまして、校長のお話が……』

『ありがとうございました、では続きまして生徒会長である、3年の支取蒼那さんの演説です……』

『最後になりますが、これから新たな1年、新入生の皆様も……』

 

 長く、身にもならない話をぼけーっと聞き流し、やっと解放される。精々覚えているのは生徒会長が美人だったことと、赤い髪のこれまた美人さんがいたこと。あと下ネタを喋りまくっていた2年生が3人目立っていたことぐらいだ。教室に戻り、担任の挨拶のあと自己紹介の流れとなった。

 

(自己紹介……何話そうか? 趣味とか? あとは好きな食べ物とか?)

 

 つらつらと考えていると、いつの間にか自分の番が来ていた。ゆっくりと立ち上がり口を開く。

 

「えーっと、長野から来ました鳥山重春(とりやましげはる)です。よろしくお願いします。趣味は妖怪研究、民俗学研究って言った方がいいかな? 好きなものは麻婆豆腐と和菓子。家でイタチを飼ってます。1年間よろしくです」

 

 パラパラと気の抜けた拍手と共に席に座る。言いたいことは大体言えたし大丈夫だろうと、他の人の自己紹介をゆったりと聞き流していく。

 自己紹介が終わり、時間割や配布物が配られ、今日はお開きとなった。重春は昼を近くの牛丼屋で済ませようかなと考え、帰ろうとしたとき後ろから声を掛けられた。

 

「なぁ! えっと鳥山、重春だっけ? 今から遊びに行かね?」

「うにゅあ? あー、えっと……」

「さてはお前自己紹介の時ボーっとしてたろ? 俺は佐脇恭平(さわききょうへい)だ、でどうよ?」

「今から? あー……ごめん、家にペットいるから帰って、飯あげなきゃダメなんだ」

「あ、そっか自己紹介の時言ってたなそんなこと。ほいほいわかったぜ。あ、じゃあさメルアド交換しとこうぜ」

「良いよ、ちょっと待ってね……よいしょっと、ほいさ」

 

 リュックの中に放り込んであった紫色の携帯を取り出す。すると佐脇が少し驚いた顔で

 

「お前まだガラケーなのかよ、なんでさ」

「え、いや。高校入学のお祝いで親に買ってもらったんだが……悪いか?」

「別に悪くはないけどさ、ダサくね?ガラケーとか」

「いいじゃんかよ、ダサいダサく無いの前に、携帯なんて電話とメールが出来りゃそれで十分じゃん」

「えー……」

 

 あーだこーだ言いながらも、メルアドを交換し佐脇たちは遊びに行った。重春もその後を追う様に家へと帰る。その途中でスーパーに寄り、晩御飯の買い物をしていく。

 

(今日は、豆腐があるし湯豆腐かな……なら野菜と、ジュースはオレンジで良いかな?)

 

 考えつつ買い物籠に品物を入れていく。あらかた買い終え品物を袋に詰めながら重春はふと思った。

 

(もうこの世界に転生して16年か……最初はどうなるかと思ったけど案外どうにかなったし、これからも大丈夫かな? さすがに悪魔とか天使とかのいざこざには、自分から首を突っ込まないだろうし)

 

 彼、鳥山重春は転生者と言うやつで、生前は大学生をしていた、どこにでもいるオタクだった。放火による火事に巻き込まれあっけなく命を落としたが、神様の魂釣りにたまたまヒットし、釣り上げられ転生することとなった。その際、いくつかのお願い事を叶えて貰った。そのうちの一つは仮面ライダー響鬼に出てきた『オロチ』と呼ばれる現象を自分の能力としてもらった。今その能力は元の現象から大きく変化し『魔化魍を産み出す』という変な能力に変わっていた。その能力を使い、1人暮らしではさびしいからと、魔化魍の中から『カマイタチ』を産み出してペットとして寂しさを和らげていた。

 家に帰り、自転車のかごに乗せた買い物袋を手に持ち、家の鍵を回して開ける。扉を開くと中からカマイタチの鎌田さんがその三つ首を重春へ向け、睨みつけるように見てくる。

 

「ただいまー」

「がぅっ!」

「おー鎌田さん、お出迎えか?」

「がぁっ!」

「……」

 

 鎌田さんは脛にタックルをぶちかまして、部屋の中へ走り去っていく。脛から生暖かいものが流れる感触がしてみると

 

「うーわ、斬られた」

 

 パックリと横に一文字、斬られた跡から血が流れていた。その怪我を見ながらため息をつく。鎌田さんは産み出して幼体のころはすごく懐き、寝る時も一緒だった。だが今は重春の顔を見るたびにがうっ! と吠え、噛んだり、斬りつけてきたりする。

 

「どこで育て方を間違えたんだろう……お父さんは悲しいです」

 

 トホホと呟き、家に上がる。脛の傷はいつの間にか癒えており、怪我のあとは流れた血が、靴下にしみ込んでいたのみだった。ギシギシと音のする、昔親が使っていたという旧家の中を歩き、リビングで荷物を下ろす。

 1人暮らしをしたいと親に言ったら、あっさりと認めてくれたのは記憶に新しい。何でそんなにあっさり決めたのかと聞いたら

 

『昔住んでいた家があってな、そこの掃除を兼ねてな』

 

 と言われ、長野の実家から新幹線に乗り、この家の管理人に話を通し、家を掃除して、電気とか水道とかの修理とかで、春休みが全部なくなった。ピカピカになったのは良いが、夜になんだか寂しくなり、オロチを使い鎌田さんを産み出し、ペットとして家で飼い始めるようになった。エサに関しては重春が特別性のものを与えているので、人などは襲わないようになっている。

 

「では晩御飯も出来たし、いただきます」

 

 リビングでだらけながらテレビを見て、お腹が空いてきたので湯豆腐を作り、録画していたアニメを見ながら湯豆腐をつつき始める。

 何故か足には鎌田さんが3匹に分裂して噛みついていた。

 

「そろそろ痛いからね? 鎌田さんズよやめてくれないかな」

「ガッ!」

「ガッフ!!」

「ガアウゥゥ!!」

「そーかい、やめる気はないのね、あとで覚えとけ」

 

 夕飯を食べ、食器を洗ってから、風呂に入る。風呂の中で、立ち込める湯気を見つつ、明日からどうするか考える。

 

「明日は、校内のオリエンテーションに、えっと部活紹介が一日中やってるんだっけ?」

 

 風呂から上がりオレンジジュースをマグカップに注ぎ、ちびちび飲みつつ体の熱気を冷ましていく。あまり暑いとパジャマが汗だくになるのだ。飲み終え、明日の予定を確認してからベッドに自分の身体を投げだす。

 

「あー、ねむ……おやすみ―」

 

 ごろりと転がり、暫くしてすぅすぅと寝息が立ち始める。こうして転生者鳥山重春の一日はのんびりと過ぎていくのだった。




鎌田さんがなぜ懐かないのか、それは作者にも疑問。でもいますよね、ご飯あげてるし、きちんと世話もしている。なのに懐かない。そんな魔化魍が鎌田さんです。これからも魔化魍は増えていきます。お楽しみに?
今いる魔化魍
・カマイタチ
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