魔化魍育成日記   作:マデリアン

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運命(笑)
 そんなわけで第8話。運命じゃなくて事件とかでもいいんだけど……なんか違うから妥協案で運命、なんかイイのないかね?

あとクスリが切れてちょっと不安です。ではどーぞー


巻の捌 動き出す蟹と運命

 あれ以来、ちょこちょこと来るようになったミッテルト。時々カラワーナやドーナシーク、レイナーレが一緒に来ていたが。そして今何をやっているかとか、はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)がどうのとか、実はカワラーナとドーナシークがつき合っていて、この仕事が終わったら結婚するとかぼこぼこもらしていく。

 

「思ったんだけどさ、その情報喋っても良いの?」

「何がっすかー?」

「いや、拠点の情報とか、えっとアー、シア? の神器ぶっこ抜くとかさ」

「あー大丈夫っすよー、だってしげちー攻め込む気ないでしょ? 情報売る気もないし」

「ま、そうだけどさー……気が変わってーとか考えないの?」

「しげちーがそんなことやろうとは思わないっすー、だってしげちーめんどくさがりのズボラだし」

「なんもいえねぇ、何この敗北感」

「なんだか知らないっすけど、私の勝ちっす」

 

 今日も今日とて遊びに来た堕天使ミッテルト。お前仕事は?と聞くと、他の奴にブン投げたッすっと帰ってきた。重春は何も聞かなかったことに。ちなみにしげちーというのは、彼女が3回目の訪問の時につけたあだ名で

 

『なんか重春、っていうの固っ苦しいっすね。うーん……しげちーってあだなで行きましょう』

 

 とのことで以来しげちーと呼ばれることになり、ふといつか爆殺されるんじゃないかと心配になった重春である。

 

 

 

 

 そんなある日のこと、学校にて。今日は久々に翔太が来ていたので、重春はレオも呼び3人で昼食をとる事にした。

 

「翔太さん風邪だったのかい?」

「んぁ? まぁなぁ、風邪で寝込んでたんだよ」

「重春がお前がいないから、寂しがってたぜー」

「……私翔太ちんがいないと寂しくて夜も眠れなかったのぉ~きゃるん」

「キモいわ、そんなこと思ってないくせに」

「ばれたか」

「バレバレだな」

「二人とも、全然変わってねぇな」

 

 重春がふざけておどけ、それに対して翔太がツッコミ、レオがさらに燃料を投下していく。ただ友達とバカ騒ぎし、ご飯を食べる。3人が集まった時の昼の光景だ。

 

「あー午後からの授業やる気でないー、さぼりたいー」

「重春、1つ忠告してやる、サボるな」

「翔太さんから名言戴きましたー、サボるな」

「俺に仲間はいないのか」

「ここにはいるぞ、ただし普通に授業受けてるやつの仲間だがな」

 

 教室に戻り、授業前の数分を使い机の上に引っくり返り、精一杯授業のボイコットをしようとする重春、その野望は翔太とレオによって止められ、おとなしく席に付き、そのまま机に顔を伏せ眠り始める。

 

 

 

「やってまいりました放課後、翔太さん復活パーチーと題しまして! どっかで遊ぼうぜ!!」

「すまん、俺オカ研に行かなくちゃ」

「なんと?」

「俺も用事で家に帰らないとダメなんでな、そのパーチーはまたの機会に取っておいてくれ」

 

 二人が去っていき、教室には虚空に手を伸ばす重春が一人。

 

「何この空しさ……これが、孤独……」

 

 ひゅぅっと風が重春の前を吹きぬけていくような、そんな音がした。

 

 

 

「で、そうやってソファの上でゴロゴロ回転してるんすね。しげちーは」

「悲しくなんかないやい!」

 

 まっすぐ家に帰り、いつの間にか家の中にいたミッテルトに疑問も抱かず、手洗いうがい着替えを済ませ、ソファの上ですねている重春。見ていてウザったくなってきたミッテルトにより蹴落とされたが。

 

「そうだ、みっちゃん」

「唐突にあだ名をつけるなっす、しげちー」

「新しい魔化魍産み出そう」

 

 フローリングの上で伏せていた重春が、ガバリと起き上がり、這うように部屋を出ていく。その後を追っていくミッテルトは気持ち悪く這い回る彼の姿よりも、新しい魔化魍をどうやって産み出すのかそこにに意識が向いていた。ので

 

「よっし俺の部屋到ちゃフギャッ!!」

「あ、ゴメンっす」

「痛い、重い、臭い」

「悪かったって言ってるッすよ、女の子に重いとはどーゆーことっすか?! あと臭いって何!?」

「くさそう」

「はいはい」

 

 渾身のネタ振りも不発に終わり、ミッテルトに開けて貰ったドアの隙間から体をねじ込み、自室に入る。

 

「キモいっすね」

「あの子ら除いて、俺1人っきりだったからね、友達が家に来ればこうもなろう」

「鉄仮面でもかぶってろッス」

「フハハ、怖かろう! しかも脳コン!!」

「怖いってかキモいっす、たしかにしげちーってばノーコンっすね」

 

 もの投げるの下手過ぎっす。と押し入れからなにやら色々出してくるしげちーを見ながら呟く。そしてあらかた出し終わったのか器具の前に座りこんだ。ちょいちょいと重春の対面に座るよう指でさされそこへ座り込むとパラパラとノートを開いてくる。

 

「そのノートなんすか? あとこの機材は?」

「この機材は魔化魍産み出すのに100均で買って来た。それっぽくなるかなーって、今では結構気に入ってる。このノートは日本各地の妖怪についてまとめたノート、小学生の時に図書館に入り浸って作った。あのときの職員さんの変な目は忘れられん」

 

 都道府県別に記されたノートをあちこちに散乱させどんな魔化魍を産み出すか考えていく。

 

「んー、あそうだみっちゃんが何かお題出して」

「急なネタ振りっすね、ってかそのあだ名で行く気ッスか」

「もち、出来る範囲でならどんな妖怪でも」

「じゃあ吸血鬼とか?」

「吸血鬼……西洋妖怪ねー、できることにはできるんだけど……やったことないからわかんねーし、長期休暇の時にしようかな。てか日本の妖怪はほぼほぼできると思うけど『オロチ』がどこまで反応できるか……」

「そうなんすか、てかオロチってまた神器(セイクリッド・ギア)?」

「そそ、『自然の闇(オロチ)』って名前、これは多分生まれつきだと思う、保育所に入ったころからなんとなーく、自分の中に何かがあるのはわかってたし」

 

 どんな魔化魍にします? と聞かれノートを見ながら悩み、選んだ結果ミッテルトは

 

「この『蟹坊主』ってので」

「蟹坊主? ……あぁバケガニかオッケイ!!」

 

 そうしてミッテルトの前で、くらげ火やカマイタチを産み出したのと同じように、試験管に透明の半液体を注ぎ、人差し指ではなく中指から種を出し、ポトンと入れる。

 

「蟹坊主ってどんな妖怪なんすか?」

「そこにまとめてあるんだけど……簡単に説明すると、寺院に住み着いて流れのお坊さんとかに問題を吹っ掛けるんよ、でその問題に答えられなかったらその人を喰う妖怪」

「へぇーそんな化け物が日本には、いるんすね~」

「現代じゃあもういないよ、いるとしても今ゆっくり成長しているバケガニくらいだよ」

「バケガニ今もいるんすか!? どこに!?」

「俺が見つけたのは、長野の山奥の滝つぼに潜んでたバケガニだけ、海にもいるって話だけど……」

「だけど?」

 

 そこで話を切ってある一冊のノートを取りだし、ミッテルトに見せる。

 

「魔化魍分布図?」

「うん、俺が完全趣味で作ってる分布図。で妖怪……魔化魍にも種類があるんだよ、例えば10年に1度のしか出現しないノツゴ、常に移動してるコダマの森とかとか、このツチグモなんか通常種、表皮が硬い種類、凄いのは火を吹く種類もいる」

「色々いるんすねクモにも」

「いるんだけど、魔化魍や妖怪って元は自然から生まれたモノで、自然が無ければ産まれないし、存在も出来ない……だけどここ数十年で開発とかで自然が減って、天然ものの魔化魍や妖怪がなかなか現れなくなったんだ」

 

 ノートには彼の実家のある長野とその周辺だけだったが、いたるところに×印が。それは森林伐採や都市開発などで開かれた森林地帯や山であった。

 

「まぁ俺1人がどうのこうのいっても、仕方ないんだけどね? ハッハッハ! さてとバケガニの為に水槽用意しなきゃ」

「水槽? いるんすか? 魔化魍に?」

「魔化魍って言っても産まれたての幼体、体が出来上がるまでは見とかないと、何かあったら死んじゃうし」

 

 部屋を出て階段下り、物置から水槽を取りだす。最近使ったのかそれはとても綺麗であった。

 

「とっておいて正解ですわ。幼体のくーさんにつかったやつだけど……まぁ大丈夫かな?あーあと」

「何やってんっすか?桶に塩入れて」

 

 ミッテルトが玄関で伸びていた鎌田さんを抱き、キッチンへ行くと、重春が真剣な顔をして塩水を作っていた。

 

「海水作ってる」

「海水? 何で」

「バケガニはね産まれてからじゃないと、海水種か淡水種か解らないんだよね」

 

 天然ものは住む場所で決まってるんだけど、とメモを見ながら慎重に塩を入れていく。

 

「海水って真水に塩ドバーって、入れりゃ出来るもんじゃ?」

「初めて魔化魍を産み出したのが保育所の頃、初めての魔化魍がバケガニだったんだよ」

「はぁ」

「でな、産まれたては水に入れなきゃいけない、なんて解らなかったから……」

「……どうなったんすか」

「次第に体が乾いて行って、ひび割れて血を流しながら、苦しそうにうめいて死んでいった」

 

 初めての魔化魍がそのような最後をむかえたのを知ったミッテルト、目の前の家主は頭の中で、昔の光景がフラッシュバックしているのかカタカタと震えていた。

 

「それからは、産み出して、調べて、死んで、産み出しての繰り返しをして、魔化魍の幼体にはどんなものが必要で、何が大切なのか解っていったよ……その分大勢の命を無駄にしたけどね……」

 

 バケガニ……ウブメ……ヌリカベ……と虚ろな目でぶつぶつと呟く重春。暗黒面に飛び込み自殺しかけている彼を止めるためミッテルトが声をかける。

 

「で、でもその研究のおかげで、今から産まれるバケガニの赤ちゃんが生きられるんすよ! 決して無駄じゃないっす!!」

「そう?」

「……っ! ……そうっす!! だから元気出してくださいッす!! このミッテルト様が選びに選び抜いた魔化魍を!! こんな所で死なす気っすか!?」

 

 その言葉に作業の手が止まり、天を仰ぐように見上げ、深呼吸をする。そして次に作業に取り掛かった時重春の目には力強い生気と希望にあふれた光が宿っていた。

 

 

 

「さてさて、海水の用意と真水の用意!! 出来たぜ!! あとは幼体がどっちのタイプか解れば……」

「運命の一瞬っすね……」

 

 目の前では試験管からビーカーに移し替えられた、ウズラの卵程に大きくなったバケガニの卵がピクピクと動き始めていた。やがてその動きは大きくなり、卵の殻を突き破って小さな鋏が見えた。

 

「やったっす! 無事孵化したッす!!」

「まだだ! まだどっちのタイプか判断が出来ていない……」

 

 安心するのはそれからだ。と瞬きするのもおしいと言わんばかりの鬼気迫る表情で、じっと卵から出てくるバケガニを見つめる。約1分ほどでふ化が終わり、体長5センチ程の緑色の甲羅を持つバケガニの幼体が弱弱しくも小さな産声を上げた。

 

「次だ、その子を手のひらに乗せてくれ」

「私のっすか!?」

「そう、急いで、でも慎重にね」

 

 生唾を飲み込み、ゆっくりと繊細なガラス細工を持ち上げるように、ミッテルトが半液体の中に手を突っ込みバケガニをすくい上げる。

 そこへティースプーンに自作した海水とコンビニで買って来た天然水を入れた二つを両手に持ち、バケガニへと近づける。

 

「何するんすか?」

「どっちが気に入るか、それ試す。気に入ったほうがこの子に適した水だってこと」

 

 まずは天然水。近づけたそれを恐る恐ると言った感じで鋏を浸し口に近づける。がすぐに離し体をよじる。

 

「真水はダメ」

「てことは!」

「見るまでは解らない、いくぞ」

 

 もう片方、海水の方を近づけると同じように鋏を浸し口に近づけなめとる。数秒固まったのち、もう一度鋏を伸ばし海水を口へと運ぶ。それを何度も何度も繰り返す。

 この光景を見て二人は顔を見合わせ

 

「このバケガニは!」

「海水種!!」

「「いよっしゃー!!」」

 

 二人で喜び手を振り上げる。瞬間! ミッテルトの手からバケガニがすっぽ抜ける!!

 

「あ!」

「赤ちゃんが!!」

 

 二人が急いで手を伸ばす、が届かない、このまま床に激突し死んでしまうのかとミッテルトが思い、また死なせていしまうのかと重春が絶望しかけた……瞬間!!

 その部屋に一陣の風が吹き荒れた。

 

「がぅっ!!」

「鎌田さん!」

「かまちゃん!!」

 

 颯爽と駆けつけたカマイタチの鎌田さんによるつむじ風が、地面へと墜落しかけたバケガニを上空へと舞い上げる!そして舞い上がったバケガニを優しくキャッチしたのは……

 

「……………………」

「ナイスだ! くーさん!!」

「ありがとう! くーさん!!」

 

 鎌田さんの起こした風に乗り、ふわりと現れ優しくキャッチした紅色の半透明の身体をしたくらげ火、くーさんであった!!

 こうしてあらたに加わった鳥山家の住人バケガニ(名前は現在考え中)は、2匹の先輩の手によりその命が繋がれた。今はリビングに置かれた水槽の中ですくすくと成長している。

 

 

 

「いやー今日は良いものが見れたっす! ありがとうございました!!」

「いやいや、こっちもある種のトラウマが克服できたし、家族も増えた。俺もみっちゃんには感謝してるぜ」

 

 夜、バケガニ歓迎パーティーを二人で開き、飲めや食えやの大騒ぎをしミッテルトがレイナーレの元へ帰るそうで、玄関先で見送りをしていた。

 

「いやーうまかった! さっすがゴリさんっすね」

「せやろ? また来てもええんやで?」

「もちのロンっすよ! まだかまちゃんやくーさんと遊び足りないし、ゴリさんの手料理も食べたいっす。なにより今日生まれた、あの子の名前を決めなきゃいけないでしょ? 絶対くるっすよ!!」

「また明日来るのか?」

「いんやっす、明日はいよいよシスターの身体から神器をぶっこ抜く日っす。だから明日はこれねぇっす」

「そか、じゃあそれ終わったらまた遊びに来てや、今度はレイナーレさんとか呼んで」

 

 玄関先で会話を交わしていると、横から鎌田さんとくーさんがひょっこり顔を出す。

 

「じゃ、鎌田さん元気で! くーさんも元気でね……じゃ! またこんど!!」

「おーうまたなー!!」

 

 空へと飛び去ろうと舞い上がった瞬間、何かを思い出したようにミッテルトが戻ってくる。

 

「今思い出したんだけどさ、しげちーに言わなきゃいけないことがあったんだ」

「何さ?」

「2つあってね、1つは最近この町ではぐれ悪魔が死んでるらしいんだ」

「それはこの土地を治めてるリアスなんとかって人がやってるんじゃないの?」

「いや、そうじゃないっす……その殺された中には天使、妖怪、悪魔に堕天使……」

「人間以外のもの全てってこと?」

「そうっす、目撃情報がバラバラなんで信憑性は薄いっすけど、あいては金の身体をしてたり、赤かったり、青かったりするらしいんす」

「金の身体……赤と青」

 

 その情報は一つ、彼の記憶を揺さぶった。数週間前の路地裏での戦闘。あの異常なほど人外を嫌い、異常なまでに普通に固執した仮面ライダーモドキ。その存在が以外な所で知らされた。

 

「あの? 大丈夫っすか?」

「え? あ、あぁ大丈夫大丈夫……でもう1つは?」

「あ、はいもう一つは……これっす」

 

 ポケットから一枚の写真を取り出し、重春に渡す。その写真には白髪でどこか狂った表情をしている神父が映し出されていた。

 

「この狂ってそうな人が……どうしたん?」

「こいつははぐれの悪魔祓い(エクソシスト)、フリード・ゼルセン……見たとおり狂ったやつっす。で見て欲しいのはこの胸の所っす」

「胸の?」

 

 フリード・ゼルセンの胸元にはペンダントが掛けられていた。そのペンダントをよーく見ると

 

「コア・メダルか!? これ!?」

「えぇ、私もちらっと見ただけなんで、どうかは解らなかったんですが」

 

 やはりメダルだったんすね……と写真を見ながら呟くミッテルト。そのメダルは金で縁取られ黒い色をしていた。模様まではわからないが、少なくとも白のサイ・コアではないことが重春にはわかった。

 

「で、これをどうしろと? 俺にとれと?」

「いや違うっす、明日仕事が終わったら、交渉してそれを貰う手はずになってるっす」

「その報告? 今見せたのは」

「そうっすサプライズで見せるよりか、まずあなたが持ってるメダルと同じものか、見てからでもいいかなって」

「ん、ありがとスゲーいい情報をそれも2つ、ありがとうございます」

「いいっすよお礼なんて、いつも遊びに来てるお礼っすから~」

 

 じゃそゆことで! と翼を羽ばたかせて飛び去って行った。重春はその後を目で追いながら暫く空を見て、家の中に戻る。物語の節目はすぐそこまで迫っていた。




 クスリっていっても合法(笑)ハーブじゃないよ? 塗り薬がねなくなったの。アトピーだから風呂上りにスキンケアを怠ってるとヒドイことになるんよ……あれはもうヤダ。

 さてさて、いろいろ動き出すお話。家に入り浸るミッテルト。新しい家族もやってきてさらににぎやかになる重春家。ただし鎌田さんはまだなつかない。
 読者にはわかっているけど翔太とレオと重春は学校生活では仲のいい『お友達』仲がよさそうでいいですね。

 ではまた次回ーまたねー

今いる魔化魍
・カマイタチ
・クラゲ火
・化けガニ←New!!
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