トンガリ帽子の復讐者と小さい竜の迷宮物語 (リメイク開始)   作:ケツアゴ

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意味なし価値なし無駄な事

「ネルガル君、町の外に行きましょう! この前、野草には詳しいって言ってましたし手伝って下さい」

 

 朝、Lv.4なので炊事が免除されているネルガルはレフィーヤの提案を受ける。野草集めなり適当なクエストを受けて外に行ってこい、との事だ。スープを掬ったスプーンを持つ手を止めた彼に対して彼女は依頼書を取り出した。

 

「この野草集めのクエストのついでにピクニックでもどうですか? お弁当持って出掛けましょう」

 

「……いや、そういった依頼って零細ファミリアの為に手を出さないのが大手ファミリアのマナーじゃないのかな?」

 

 ダンジョンに潜るわけでもなく、外の弱いモンスターを相手にする程度なので当然報酬は安い。だからダンジョンで少し稼げる冒険者は所要時間的に割に合わないし、戦闘力が低いサポーター等が請け負うことの多い仕事だ。それか怪我をしたけど高価なポーションを買う余裕がないので癒えるまでの生活費を稼ぎたい弱小ファミリアだ。

 

 流石に拙かったかと気付いて目を逸らすレフィーヤだが、小遣い稼ぎにクエストを受けたのではない。ただ単純に最近物騒な事が多かったので気晴らしに遊びに誘っただけだ。ちょっと空回りしている感じは相変わらずであるが。

 

「どどど、どうしましょう!? 反感買いますよねっ!?」

 

「今更キャンセルは出来ないし、こなすしかないね。仕方ないなぁ……近くの村に治療に行く予定だしついでに行ってあげるよ」

 

 手伝ってくれるんですね! と安心した様に喜ぶレフィーヤ。ネルガルはやれやれと肩を竦める。その姿を離れた場所でリヴェリアが呆れた風に眺めていた。

 

「……年上として世話を焼いてやれと言ったが、どちらが保護者か分からんな」

 

 

 

 

 

 そんなこんなでオラリオの外まで出掛けた二人だが、ネルガルは依頼書の隅に書かれたリストの品に首を傾げざるを得なかった。先ほどまで妙に張り切ったレフィーヤが持っていたので気付かなかったのだが、何を集めるのか分からないのでは意味がないと言ったら慌てて見せてくれた。年上の面目丸潰れである。

 

「レフィーヤさん。エルフがこれを集める依頼を受けるとか変な顔されなかった?」

 

「え? これを受けるのですか? って言われましたけど、報酬が安いからじゃないのですか? ……あれ? よく見ればエルフの方はご注意くださいって」

 

 今回年上としてネルガルを気晴らしに連れて行こうと張り切ったレフィーヤは口実にクエストを選んだのだが、張り切りすぎて依頼書をちゃんと見ていなかった。依頼を受ける際の受付嬢の怪訝そうな顔も張り切りすぎて気付かなかったらしい。

 

「このリヨダケって……エルフ専用の強力な媚薬効果が有るんだけど」

 

「え? えぇえええええええええええええっ!?」

 

「……はぁ。僕が集めるからレフィーヤさんは別のお願いね。ほら、簡単な見分けか他のメモを書いてあげるから」

 

 呆れが混じった表情のネルガルはとんでもない依頼を受けてしまったと真っ赤になっているレフィーヤにメモ書きを渡すと、そのまま目的の品を集めるために歩き出した。

 

 

 

 

 

『ケケケケケ! イシュタル・ファミリア関連の依頼かもなぁ。あの馬鹿みてぇにウブなエルフの見習い娼婦が仕事慣れする為にとかよ』

 

「別に依頼者が何に使おうが勝手でしょう。……見付けた」

 

 大量に群生している目的のキノコを胞子が手に着かないように手袋をして採取していると遠くでレフィーヤの話し声が聞こえてくる。散策に出たフィルヴィスと会ったらしく、メモを見ても見つけられないレフィーヤ手伝いをすると遠くのネルガルに伝えてきた。

 

 そして、ネルガルの方にも近付いてきた者が一人。明らかに一般人の動きではない女だった。足音を消し、一般人ならば背後に立たれても気が付かない存在の薄さ。スキルによる物ではなく、熟練した技術による物。密偵、或いは暗殺者、若しくは両方なのだろう。金貨の入った袋を投げ渡して彼女は口を開いた。

 

「……『魔術王(ソロモン)』ね? 私はラキアの者だけど……」

 

「……ラキア、かぁ。これは話を聞く代金って所だね? 僕、とっても欲しい物が有るんだけど……」

 

 握手を求めるように差し出された少年の手を見て女は任務成功を確信する。まだ子供なので色では難しいが、目先の利益に飛び付く単純さは所詮子供だと内心あざ笑いながら握った手は骨が砕けるような力で握られ、声を出す前に引き寄せられて喉を潰される。掠れるような声を絞り出しながら視線を向ければネルガルは笑みを浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

「僕が欲しいのは、君達の国の王族と軍関係者、主神アレス、そしてアレスを信奉する国民全員の首さ。好き勝手に領土を広げて来たんだ。……今度はお前達の番だよ」

 

 まるで悪魔の笑みだと、これから始まる拷問を予期しながら思う女であった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふん。貴族の地位を代価に僕に内部から裏切らせ、クロッゾの魔剣を打てる人と共にラキアに連れて行く、そんな予定だったんだ。じゃあ……ラ・グロンドメンド・デュ・ヘイン」

 

 潰れた声で無理に情報を引き出された女に対して用が済んだので魔法を放つ。スキルの恩恵で無詠唱で放てるも威力が落ちる憎悪の焔は怨念を具現化した物だからか灰すら残さず容易に彼女を消し去った。

 

「さて、採取も終わったし向こうを手伝う……のも面倒かな?」

 

 聞こえてきたのは楽しそうな笑い声。平和で幸せそうなエルフの少女達の声にネルガルは近寄りがたさを感じていた。彼処に割って入るには自分の手は血にまみれ過ぎている。そんな気がしたのだ。そして、そんな遠慮をする事態が甘くなった証拠だと思ってしまう。

 

 

「やっぱりさ、レフィーヤさんは顔も忘れた誰かに似ている気がするんだよね。……駄目だなぁ、こんなんじゃ」

 

 

 

 

「しかし、こんな子供が既にLv.4とはな。才能とは凄まじいものだ。……それと改めて礼を言わせてくれ。あの日から随分と夢見が良いんだ」

 

 採取も終わり、レフィーヤが気合いを入れた結果、大量に作りすぎてしまった弁当の処理を手伝うことになったフィルヴィスはレフィーヤを挟むようにして座ったネルガルの顔をマジマジと見詰める。驚異的な治療魔法の使い手として噂になっており、この前ダンジョンで会ったが、こうして顔を落ち着いて見るのは久し振りだった。

 

「ペイン・ブレイカーは精神状態まであるべき状態に戻すからね。……落ち着いた状態があるべき状態だって認識するのは本人次第だし、ベートさんが言うにはレフィーヤさんと何かあったんでしょ? お礼を言うならそっちにしてよ。そんな事より、そろそろ例のアレの時期だよね」

 

「アレ? ああ、神会か。お前はオラリオに来てから初めてだったな。良い二つ名が貰えるのを願っているぞ」

 

「ロキ様が変なのを付けるのは絶対に許しませんから大丈夫です。それとも遠征ですか? そっちも初めてで不安でしょうけど、私が色々教えますから大丈夫ですよ。……Lv.は下でも先輩ですから」

 

 即座に神会の事と判断する二人に対し、ネルガルは内心で納得していた。ラキアが行うオラリオへの侵攻は思い浮かびもしない様子。毎回毎回ラキアの惨敗で、オラリオ側は相手を殺さない余裕を保って終わるから仕方がないのだが。

 

 

 

 

 

 

(ラキアを完膚無きまでに叩き潰してくれてたら、そう思っちゃうんだよな)

 

 レッドライダーの眷属になる前、××××××(顔も名も忘れた女神)の孤児院で暮らしていた頃の記憶は消したが、ラキアに侵略の余裕が無ければ幸せに暮らしていただろうと、ネルガルはそう想い、意味のない感傷だと自嘲する。

 

 

 

 

「あーあ、馬鹿馬鹿しい。何一つ価値なんて無いのにさ」

 

 そんな言葉が自然と口から零れていた。




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