東方博麗社〜もし博麗神社に参拝客が来ていたら   作:だぴょん

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今回も鈴奈庵の話です。

では、小鈴視点でどうぞ。


こころの能楽

表情豊かなポーカーフェイス、秦こころ。

 

彼女はいま、博麗神社で能楽を披露していた。

 

沢山のお面と華麗に舞い踊るこころの姿を一目見ようと人里から地底のさとり妖怪、天人や花妖怪に邪仙までたくさんの人や妖怪が集まっていた。

 

そんな中、私は神社の中で詠夢と話していた。

 

詠夢「どう小鈴、面白かった?」

 

「うーん……まあ面白かったわね、内容は全然わからないけれど」

 

詠夢「まあ、あれは内容より見た目の滑稽さを楽しむものだって霊夢もこころちゃんも言っていたし」

 

「それにしても……あの霊夢さんがこんなことやるなんてらしくないわよねー」

 

霊夢「『らしくない』って何よ」

 

そこにぬっと現れたのは霊夢さんだ。リボンをつけているのになぜか頭にはちまきを巻いていた。

 

詠夢「あ……えっと……いや、うちでこういう文化的なことをやるのが霊夢っぽく無いってこと」

 

霊夢「まあ……それで神社にお賽銭が来るなら評判も上がって一石二鳥じゃない!」

 

いかにも霊夢さんらしい答えが返ってきたな、と思う私と詠夢だった。そこに来たのは……

 

魔理沙「あ、霊夢。それはなんだ?饅頭か?」パクッ

 

魔理沙さんだ。彼女は勝手にお饅頭を一個口に頬張り逃げようとしたが、

 

霊夢「あー、食い逃げしたなぁー!絶対に逃がさないわよ!」

 

そう魔理沙さんに言い放ち、霊夢さんはお札を魔理沙さんに投げる。

 

魔理沙「………!クッソ、お札に捕まったか!」

 

霊夢「私と詠夢のお札はあの鴉のブン屋より速いのよ、逃げようとしないことね」

 

ポカポカゴンゴンゴツゴツドカーン!

 

詠夢「いまドカーンって言ったけど……まあ、いいか」

 

「それにしろ、こういう厳かな感じも良いわね。いままで激しいのが大きかったじゃない?」

 

詠夢「ああ、僕が関われなかったアレね」

 

詠夢は空を見上げる。

 

霊夢「本当は詠夢は紫に止められてたのよねー、代わりに私が守矢とか守矢とか守矢を駆逐していたけれどもね」キラッ☆

 

霊夢はピースサインを顔の横で作る。やはりこの人は鬼巫女だと思った瞬間だった。

 

魔理沙「イタタタ……でも何か載っているんじゃないか、鈴奈庵って本とかたくさんあるからさ」

 

「あっ………」

 

私はその瞬間、詠夢を引きずって参道を戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2分ほど行ったところで、詠夢が叫んだ。

 

詠夢「ちょっと小鈴!?戻るなら飛ぶよ、いつまでも引きずられてると痛い」

 

「ご、ごめん詠夢!」

 

詠夢は立ち上がり、私の手を掴んだ。

 

詠夢「ほら、腰に掴まって」

 

小鈴は詠夢のお腹をギュッと抱く形で、頭を詠夢の肩に寄っかからせる。

 

「おいしょっと、準備出来たわ」

 

詠夢「じゃあ行くよ」

 

ふわぁ、と空に浮かび高速で幻想郷の上空を飛ぶ。詠夢の体の温かみがとても心地よくて、離せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

side out

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三人称視点

 

鈴奈庵。

 

カランカラン

 

小鈴「いらっしゃい」

 

数冊の本を持って阿求が来た。

 

阿求「これが返却の分全てね。……あら、能楽の本?」

 

「いま、神社で霊夢主催でこころが能をやっていてね。でも内容が分からないから……」

 

小鈴「だからいま探しているのよ」

 

小鈴と詠夢は10冊を超えるであろう本をテーブルに置き、2人とも同時のタイミングで眼鏡をかけて、同じタイミングで本を開いて本を読み始める。

 

阿求「あの……詠夢?私も頼ってねー……ハハハ」

 

そう、阿求は何百年も前からの記録が全て頭の中に入っている。そのため、阿求を頼る方が早いのだ。

 

「そうだね、じゃあお願い」

 

 

 

 

 

 

阿求「もともと能は『猿楽』と呼ばれていて、庶民の文化だったのよ。それを、観阿弥世阿弥が現在の能楽に近いレベルまで上げたというわ」

 

「ちなみに観阿弥世阿弥というのは室町時代の人のことだよ」

 

小鈴はふむふむという表情で話を聞いていた。

 

阿求「でもね、これより前の猿楽は何も記録されていないし残っていないわ」

 

小鈴「じゃあ妖怪などに聞いてみるしかないわね……」

 

バンッ!

 

阿求「私がいるじゃない!前世の記憶も引き継ぐのよ、私は」

 

阿求は全ての時代を見て覚えているのだ。知らないことは殆どないと言っても良いだろう。

 

小鈴「分かったわ。説明してよ、眉唾さん」

 

そう言った直後、詠夢が小鈴に声を掛ける。

 

「小鈴、いま地雷踏んだよ?」

 

小鈴「えっ?」

 

小鈴が本から目を離して阿求の方を見る。すると、黒い笑顔を浮かべた阿求が立っていた。

 

阿求「じゃあ、少しO☆HA☆NA☆SHIしましょ?」

 

小鈴「ひ、ひぃっ!」

 

小鈴と阿求が話をしようとしたところに詠夢が割り込んで来た。

 

「あっ!これは!」

 

小鈴も詠夢が開いていた巻物に目を通す。

 

小鈴「これ……神社でやっていたものよ!」

 

阿求も覗く。この巻物の名前は山怪散楽図、そこに書いてあった絵は正に地獄絵図のようだった。

 

阿求「ええーーっ!?ちょっと小鈴!これ、読める!?」

 

小鈴「ええと……仮面喪心舞 暗黒能楽……!?」

 

「これはもしかして……こころちゃんが心を奪うためにやっているとか!?」

 

その時。

 

カランカランと来客の鳴り物がなり、入って来たのは、

 

「あ、マミゾウさん!ちょうどいいところに来てくれました」

 

捕らぬ狸のディズガイザー、二ツ岩マミゾウだ。

 

マミ「ん?何があったのじゃ詠夢殿」

 

すると詠夢はこの絵巻をマミゾウに見せる。すると、マミゾウは微妙な反応を見せた。それを見た小鈴は事情を説明し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小鈴「……ってことなんですよ」

 

「だから小鈴がどうにか出来ないかって」

 

マミゾウは少し困った顔を見せたが、すぐに答えを返す。

 

マミ「うーむ、もしかしたら打開案が思い浮かぶかもしれんな。わかったぞい、儂がどうにかしてやろう。あと詠夢殿、そろそろ帰らないと霊夢の奴に怒られるぞ」

 

時刻はもう夕方。マミゾウは詠夢と一緒に鈴奈庵を出る。

 

「じゃあ何かあったら鈴奈庵に来るからね、また明日ね」

 

小鈴「分かったわ。また明日ね」

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

帰り道。参道を詠夢とマミゾウは歩いていた。

 

マミ「それでなんじゃが……この絵巻物は天狗が書いた戯書じゃ。小鈴殿はどうやら見落としていたらしいのう」

 

マミゾウの口から衝撃の事実が発表されると同時に詠夢は目を丸くした。

 

「えっ!?それでは何も問題……いろいろ大ありだった……」

 

マミ「む?何故じゃ?」

 

実は最近、里で古参の兎が「あれは心を奪う能楽だ」という噂を広めていることを詠夢は慧音などから聞きつけていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

博麗神社・霊夢の部屋にて

 

「っていうことがあってさ……」

 

霊夢「でも、私たちは人里だけの問題に関わる必要はないじゃない?」

 

すると、マミゾウは霊夢の近くで耳打ちをする。

 

マミ「霊夢、そんな噂を流されたら博麗の名に傷がつくぞ」

 

霊夢「じゃあ、能楽止めようかしら?」

 

「そうすると、こころちゃんのお面が安定しなくなってまたただの道具に戻っちゃうよ?」

 

詠夢はうまく霊夢の弱点を突く。

 

霊夢「なっ!?ど、どうしようかしら……えーと……」

 

すると、急に霊夢は取り乱した様子であわあわし始めた。

 

「霊夢、落ち着いて!じゃあとりあえず、いまの能楽の一番の問題点はなに?」

 

霊夢「それは、誰も意味が分からないことじゃない?」

 

「じゃあそこを直そうよ?」

 

それが詠夢とマミゾウが辿り着いた提案だった。

 

演目を面白く、馴染みやすいものに変えることでみんなの不安を無くし、またみんなに楽しんで貰えるようにしようというものだった。

 

霊夢「あとは小鈴ちゃんよねぇ……」

 

そう、小鈴を説得しなければならないのだ。

 

マミ「それに関しては安心しなさい、儂がなんとかするわい。嘘をつけばあの小娘は信じるじゃろ」

 

「まあ、化け狸っぽいやり方だね」

 

マミ「では、儂は行くぞ。またの」

 

そう言いマミゾウは神社を後にした。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

その後……霊夢の部屋、姉弟2人だけだ。

 

「ごめんね、あの事バラしちゃって」

 

詠夢は申し訳なさそうに霊夢の方を見る。

 

「いいのよ、あんま気にして無いしね。妖怪とか大好きなのは昔からだもの、しょうがないわ」

 

霊夢は微笑んだ。しかし、すぐに詠夢を心配するような表情に変わり、話しかける。

 

「でも、あんたの方が心配よ。嘘付くのなんて大嫌いだし、それが小鈴ちゃんとなるとね……あの時の笑顔があんたのじゃなかったわ」

 

霊夢も義理とはいえ、7年も一緒にいると表情が少し違うだけでもわかるという。すると、詠夢は俯いて話し始めた。

 

「ほんとは嘘なんてつきたくないよ……小鈴がかわいそうで……かわいそうで……!」

 

すると、霊夢は詠夢に近づき、彼を抱きしめた。

 

「本当は貴方、辛いのよね……好きな人に嘘までついてやろうとするの」

 

詠夢は霊夢の中でこくりと頷く。

 

「でも、今回は協力してちょうだい。本当にごめんね……」

 

霊夢は詠夢が必死に涙を堪えているのがわかった。霊夢は頭を撫でる。

 

「よしよし、あんたは頑張った。私もついてるし、小鈴ちゃんもいるわ」

 

霊夢は自分の服が少し濡れているのがわかった……

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

次の日。

 

演目は「新生能楽 心綺楼」として、宗教家達が戦う様子を面白おかしく表現した事によって、さらに受けて参拝客も大層増えたそうだ。

 

小鈴「あ、詠夢ー!」

 

小鈴が詠夢を呼ぶ声が聞こえた。

 

「小鈴……どうしたの?」

 

小鈴の話によると、マミゾウは小鈴に『こころはもともと妖魔本に封印されていた妖怪で、その事が詠夢に知られるとこころは退治されそうになった。それをギリギリで止めた霊夢はそんな事を絶対にしないという事を約束で能楽の公演を許可した』という事に収まったらしい。

 

詠夢は下を向いて浮かない顔をしていた。

 

小鈴「おーい、おーい詠夢!大丈夫!?そんな浮かない顔をして」

 

「え?……ああ、何でもないよ」

 

小鈴「そう……なら良かったわ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを側で見ていた霊夢は、この子は本当に真っ直ぐで良い子だなと思ったのだった。




はい、今回はわりと詠夢の心にダメージがいく感じになりましたね。そろそろほんわかしたいです。

それではまた次回、お会いしましょう。
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