というわけで、今回は鈴奈庵ベースのお話です。第77位のあの方が登場です。
ではノーサイドでお送りします。
「小鈴が、占いを……?」
「そうなんだ。しかも、今までそれが外れたことは一回もないらしい」
「ええっ!?そんなに……。魔理沙もやったの?」
「ああ。しかも、言われたことが全部当たった」
小鈴が始めた占い。それは、数日ほど経ってから恋人の博麗詠夢の耳に飛び込んできた。
「そう言えば、最近妖怪退治の仕事やらなんやらで忙しくて小鈴にもあまり会えてないし、明日久し振りの非番だから行こっかな」
「うん、そうしてやれ。小鈴もここ一週間くらい会えなくて寂しそうだったから」
「そうだね。ありがと魔理沙」
しかし、その時には既に小鈴に何か黒いものが取り憑いていた……
ーーーーーーーーーーーーーーー
翌日。
詠夢が鈴奈庵に足を運ぶと、そこは大勢の人で賑わっており、そこからは寺子屋の生徒たちが出てきた。
「あれ、みんな……何してたの、鈴奈庵で?」
「あ、詠夢先生ー!」
「ねえねえ聞いてよ、小鈴さんの占いがね!」
「すっごく当たるの!」
「先生もやってみたらー?」
「うん、やってみるよ」
「先生もそろそろ寺子屋に来てねー」
「はーい、近いうちに行くよー」
そうやり取りをして鈴奈庵に入る。
チリンチリン、と入店を知らせる鈴が鳴った瞬間、詠夢に何かが覆いかぶさった。
小鈴だ。
「ごめんね、なかなか会えない状況になっちゃって」
「いいの。こうやって詠夢が来てくれるだけで私は嬉しいから。さあさあ、ここに座ってちょうだい。詠夢も占ってあげる」
久し振りの再会もほどほどに、小鈴はカウンターに自分と向き合って座るように詠夢に言う。
「あ、そうだ。魔理沙から聞いたんだけど、占いが絶対に当たるって有名らしいけど……いつからこんなこと学んでたの?」
「いや、学んでた訳じゃなくてこの本を読んだんだけど、いろいろ否定するのを忘れてたら私が始めたみたいになっちゃった」
そう言って詠夢に見せた本を、詠夢は手に取り読み始めた。特に危ない本では無さそうではあるが、覚え書きのような、落書きのようなものがあった。
「へぇー。じゃあ、僕のことも占って欲しいな」
少しワクワクしている詠夢を見て自然と小鈴からも笑顔が溢れる。
しかしその時、詠夢の勘が何かを捉えた。
気になって立ち上がり、小鈴の周りを見回してはみたが、特に妖気は感じられなかった。
「何かあったの?」
「いや、なんでもない」
小鈴は、僅かながら詠夢の変化に気づいていた。しかしそれを口には出さず、黙々と占いを進めていく。
「なるほど、どうことが転がっても不吉、かぁ……」
結果はあまり良いものではなく、詠夢の調子も少し下がり気味だった。
「まあ、所詮は占いよ。あまり気にかけないほうが良いわ」
「意外と気にしちゃうんだよなー……ん?」
すると、詠夢はまた先程と同じような表情を……否、先程より厳しい表情を浮かべ、反射的にお札を小鈴の方向の壁に投げた。
しかし、小鈴が気づき、振り返った時にはもう何もいない。
「ねえ詠夢、どうしたの?なんか変よ?」
「いま、誰かが見えた気がして……」
「ちょっと働き過ぎで疲れてるんじゃないかしら?もしよかったら今晩、うちに泊まってく?」
「あ……う、うん」
そう小鈴は言っているものの、気づいていた。
目の吊りあがり方、反応の速さ……。それは、ただの思い違いではなく、妖怪の類を成敗する時の様な冷たい眼差しだった。
また、詠夢はしっかりと見ていた。決して思い違いではなかったのだ。
数年ほど前に人里で1人の男性が不審死した。その人と小鈴の後ろに憑いていた人物の顔がほぼ合致したのであるーーー
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ねえ詠夢。全部話して」
夕方になり、2人だけの静寂の中、小鈴は思っていたことを口にした。
「な、何を話すの?」
「ほら、そうやって1人で問題を抱えない。私には分かってるんだからね、詠夢が妖怪か何かの類がいるのに気づいてること」
「ご、ごめん……でも、あまり公共の場所で言うと混乱を招きそうだったから。でも、もしかしたら小鈴の身にも危険が来るかもしれないから、これから話すことは絶対に聞いてて」
そう言い、詠夢は自分が知ってる全てのことを話した。
「……つまり、私を利用してその不審死した人が妖怪になったって訳なの?」
「うん、でも、まだ仮説に過ぎないから真相は分からない。でも、流石にこの生活に嫌気が刺したって訳なはず……」
「フッフッフ……そのまさかだよ、少年」
「……っ!」
「だっ、誰!?」
詠夢と小鈴の話のタイミングを見計らっていた様に登場したのは、不審死した男……易者だ。しかしその姿形は、完全に妖怪と化していた。
ザッーーー
スッーーー
まるで天狗のような速さでお札を投げるが、易者の方が反応が早く簡単に避けられる。そしてその勢いのまま鈴奈庵から出て逃げるのを詠夢は全速力で追う。
そしてそのまま人里を出ようとする易者の前に、詠夢は立ち塞がった。
「まだ人里の中だ。俺を人里の外に出して、自由にしてくれ」
易者の言葉に対し、詠夢は冷徹な目で睨むだけ。
易者は続けた。
「占術を通じて世界の外側を見たら、今のままの人里生活が窮屈に見えて、人間をやめた。俺が書いた落書きは、嫉妬心によって自分を復活させる術を仕掛けた。そうしたら、あの嬢ちゃんが見事にやってくれたってわけさ」
「お前、小鈴をよくも……!」
「まあ、お前には関係ないだろう。人里を出たら人間とも関わりを持たなくなる。人間には関係ないことだ。たとえ怨霊だとしても感情をコントロールすれば何も起きない」
「……あっそ。で、何したいの?」
「お前、俺の話を聞いてたのか?俺は人間を辞めてだなーーー」
「その話は聞いた。あと、お前が人里を出ようが出まいが僕には関係あるんだけど」
詠夢は重たく冷たく易者に言い放ち、懐からお祓い棒を取り出した。その瞬間易者は驚愕の表情を浮かべ、叫んだ。
「お、お前まさか……!」
「そのまさか。僕は博麗の神主、博麗詠夢。まああんたには関係ないだろうけど」
「待て、止めろ!幻想郷に危害は与えない!本当だ信じてくれ!」
「なるほど、信じろと?到底無理だね。ここでは、人間が妖怪になるのが1番の大罪だ。そんなルール破りには居場所は無い。ここで消えてもらう」
まずは易者に札を1つ叩きつけた。
「俺は怨霊だが、感情くらいコントロールできるーーー」
「だから何?僕はそれが出来なくて月の都に攻め入った神霊を見たことがあるんだけど、そっちの方がマシだったね。お前はやり過ぎた、それだけ」
「落ち着け!少し時間をーーー」
「問答無用」
その一言を重く冷たい声で叫び、無慈悲に、お祓い棒を易者の体の上から下へ振り下ろした。
ーーーーーーーーーーーーーーー
鈴奈庵に戻った詠夢は、小鈴から阿求に聞いた事の顛末を聞いた。
「で、結局『民家要術』の罠だった……と」
「そう、さっき阿求と霊夢さんが来てね。私、何も知らないでまんまと罠に引っかかっちゃったなぁって」
「大丈夫。何があっても僕が守る」
「詠夢……」
小鈴は今にも涙腺が崩壊しそうになりながらも詠夢を抱きしめた。しかし詠夢は吹き出しそうな笑いを堪えて小鈴を見る。
「それでさ、小鈴。その……頬のくるくるはなーに?」
「えっ、うそ!?」
「ぷぷっ、似合ってるよ」
「なっ!?ちょ、からかわないでよー!」
小鈴は顔を赤くして詠夢をポカポカ殴る。
鈴奈庵は、今日も平和です。
人里で易者を退治したのは次回に繋げたいからです。いいね、ほのぼのエンド。
ではまた次回、お会いしましょう。