超次元ゲイム ヴィオレ !!! 作:こだま
剣を上から下に振り下ろす。
無骨でとくにこれといった装飾もないその剣を上から下に。
また持ち上げ、上から下に。
「そうそう。その調子その調子」
剣を振り続ける少年を少し丘だった場所から胡坐を書いて見守る少女が一人。
少年のほうはソレに対して口も開かずに剣を振り続けたが、しかし唐突に剣を足元に突き刺し、地面に仰向けに倒れこんだ。
「あー、疲れたー……」
「まだ三十分ぐらいしか振ってないけど?」
そういわれると少しばつが悪そうな顔をした少年だったが、あくまで動く気配はなさそうだった。
「ただ上から下へ剣を振るだけの単純作業なんかあきあきだって。それより模擬戦とかしたほうがいいでしょ」
「そのための基礎体力を養うための素振りなのに……」
その声を聞こえないふりをしてスルーする。
「じゃあ学校にでも行けば?「やだ」」
あんなところに行くのなら素振りし続けたほうがましだと彼は言う。
「イストワ―ル様が泣くよ?学校に行かなくても働くぐらいしないと」
「このご時勢に就職先なんか転がってるわけないってば。それに、俺はこの町から出る つもりはないし。」
「……こりゃあ重症だ。いや、前から知ってたけど」
「…………」
「あーあ、女神様がいたらねえ」
「女神様ならいるだろ?あのでっかい塔の上にさ」
寝転びながら、少年がさした方向にはゲイムギョウ界のどこからでも見ることができそうな大きな塔が立っていた。
もともとギョウカイ墓場であったところの上に立つあの塔は直径もさることながら、高さも尋常ではない。その高さは雲を突き抜けるほどである。
都市の名前はファイナライズ。
女神、ラストハートがおさめる国である。
この世界に残る最後の女神である。
このゲイムギョウ界は彼女の独裁政治によって成り立っている。
古代の女神たちは四人体制でそれぞれの国をおさめていたようだが……。
元プラネテューヌ地区。未来的な明るいビル群は廃れ、とりこわされてしまい、バラック住宅になっている。昔は真ん中に立派なタワーが建っていたらしいが、いまでは見る影もない。
元ラステイション地区。活発だった工場は無人となり、にごった空気だけが後には残り、植物さえ育てることが難しい。
元ルウィー地区。女神によって寒さに守られていた都市は女神がいなくなったことによって寒さの厳しい、人が住むのが難しい環境に陥っているとか。
元グリーンボックス地区。海に面し、各国との貿易が盛んだったその都市は、今では鎖国体制に入り、ほかの国からではその内情を察することもできない。
今の生活を乗り切るためにはファイナライズに行って働くしかない。
しかし、前の女神様を忘れることができない人々や、才能がないと見限られたものは、廃れた町並みでのたれ死ぬだけだが。
少年。ヴィオレはそのどちらでもないのだが。
「ししょー、俺帰るわ。どうも今日は練習に身が入らないし、気のせいか寒気もでてきたし」
言い訳じゃないよ?と言うヴィオレに、ししょーもじゃあ帰んなさいと手をあちらに向けてしっしっと追い払うようにサインを送る。
ソレが癪に障ったのか、やや荒っぽく、ヴィオレは練習用の剣(刃をそぎ落とした真剣)を直してあった場所に放り投げた。
剣はカランとつめたい音を奏で、他の剣に当たりながら元の場所に返された。
訓練のために脱いでいた黒に紫のラインが入った簡素なジャケットを着なおし、訓練場を出て行く自分の教え子を見て、ししょーはため息を一つつき。
「なにか嫌なことでもあったのかな」
と、根拠のない事実を口にした。
●
ヴィオレは少し苛立っていた。
それもこれも士官学校(高等学校に値する)に行った友人とすれ違ったことから始まる。
こともあろうに、あのモブA,B,Cは自分のことを見下してきたのである。
士官学校を卒業すれば、ファイナライズにエスカレーター式に就職できる。
しかし、それこそヴィオレからすれば考えられないことだった。
士官学校になぞいったらこの都市から離れなければならなくなる。
エスカレーター式とは言ったが、それは体のいい言い方というやつで、強制的に労働させられるのだと言ってもいい。
士官学校はファイナライズ産の自立起動式のロボットや機械でできており、学校の見た目も都市のみすぼらしさで引いてもなおプラスが残るような立派な作りだ。
引かれるのは分かるが、それではこの町を守る人がいなくなるじゃないか。
探せばいっぱいいるのだ。
パンくずを落とした子供から、死にそうになってる老人まで。
守るべき人がたくさんいるのに。
「今日の仕事も終わったな。報酬は…………まあ少ないけど」
手に持った数個の硬貨を握り締めそうつぶやく。
配給口にいって一日分の食べ物を手に入れるにはやや足りないが、一食分以上にはなるだろう。
その食べ物すらもファイナライズから送られてくるもの。
その事実に少し辟易しつつも配給口に向かい、ビニール袋にパンとレトルトの惣菜をもらう。
家にいる三人で分け合っても今日はおなか一杯にはなるかと思い、引き返そうとした。
その時。
「こら、放せってば!」
「おとなしくしろ!配給を奪い去ろうとしやがって」
少し、自分が並んでいた配給口が騒がしいことに気がついた。
「なあ、そこのおじいちゃん。何の騒ぎ?」
「なんじゃ、ヴィオレか。配給泥棒じゃよ、今時な」
「ふーん、珍しい。そんなことするやつ中々いないもんね。監視カメラだのアラームだの、無駄に高機能なもの全部詰め込んでるからな。まあそういう無駄さは好きだけど」
おいっちにーさんし。と屈伸しながら返答する。
さて。
「じゃあ、おじいちゃん。行って来ます!」
駆け出した。
老人の激励の言葉を全身で浴びてさらに加速する。
集まり始めたロボットの隙間をするりと抜けて、少女に言い寄る三人組のうち、右にいた一人のわき腹を思い切り横に蹴り飛ばす。
書体に起こすことができそうにないほどけったいな悲鳴を上げつつ倒れこんだ男を見た残り二人はこちらを見た……のだが、ヴィオレはその顔に確かな見覚えがあった。
「あ、モブB,C」
「「誰がモブだ!」」
「テンプレートな台詞をかえしてくれちゃって。どうせお前らなんかゲームになったとしてもシルエットor文字だけの3Dグラフィック使いまわしキャラになるのがオチだってば」
「この野郎!」
「無職野郎が粋がるなよ、社会のごみが!へへへ、いい機会だぜ前からこいつはきにくわなかったんだ。エイのやつはやられちまったが、お前を反乱分子としてファイナライズに差し出してポイントを稼いでやるぜ!」
ポイント制なんだ、しかもやっぱりAじゃん。
「その社会そのものがゴミなんですけど、そこらへんどうなのよ」
「うるせえええええ!」
BとCが左右から支給されているだろう片手斧で切りかかる。
その攻撃をしゃがみで簡単に避け、攻撃に移る。
「いくぞ!必殺!」
何?と隙だらけのまま固まるモブ達に、ヴィオレの必殺技が叩き込まれた。
対男限定技。急所二倍の攻撃。
「一夫多妻拳!」
ゴリュっと気色悪い感触が手に届く。
「「ぎゃあああああああ!」」
いかにもテンプレな悲鳴をあげつつ、白い泡を吹き倒れるモブ達に向けてヴィオレはドヤ顔で気絶している二人に向けてきめ台詞を放つ。
「誰が一夫多妻券は女にしか使えない技だと言った?」
中身が格好のよいものであったかどうかはおいてだが。
「ほら、大丈夫?たてる?」
「あ、ありがと」
自分が助かったものだと安心した雰囲気を放っているクール系の美少女だが、そんな彼女に満面の笑顔でサムズアップをする。
「よし、じゃあ逃げるぞ」
「ふぇ?」
「いや、だってほら。モブは倒したけど」
ガッチョンガッチョンいいながら迫るセキュリティロボを見る。
「あいつらはのこってるからなあ!」
「あっ、ちょっと!助けたくせに先に逃げるなあ!」
「いやいや、生身でロボット相手に戦うとか何考えてんの?」
「あれ!?これ私がおかしい感じにされる流れ?」
唐突にマジトーンになったヴィオレに突っ込みを入れつつも本気で走る女の子。
そして、どんどん集まるセキュリティロボ。
まあ、ロボットですから仲間を呼ぶコマンドとかはデフォ装備な訳です。
「ちょっと!きりがないわよ!」
「じゃあ何か武器持ってきてくれ!対ロボット用の原子分解銃とか!」
「あるかー!そんなん!」
「地球破壊爆弾とか!」
「それロボットが使うやつでしょ!あーもう!刀ならあるけど、これは……」
「じゃあ、ソレ貸して!」
「あっ、ちょっと!」
「これ頼む!」
配給を女の子に渡しつつ、少女が持っていた刀から刀身だけを引き抜く。
「ちょっとバカ!いくら武器があるとはいってもロボット八体は……!」
「黙って見てろって!」
迫るロボットに向けてめいいっぱいまで体を捻り、踏ん張ることができるように足を大きく開く。
「俺の真の必殺技!心して…………」
鉄の塊が押しつぶさんと襲い掛かる。
「刮目せよ!」
「デュエルエッジ!」
めいいっぱいまで力を溜めた斬激が緑と黄色の光を迸らせながら前列と後列のロボット八体の胴体を切り裂き、その内部のコードや基盤などをあらわにさせる。
「なっ……」
驚きで目を剥く女の子にやや乱れる息をおさえつつ自分の自己紹介を彼女にすることにする。
なんといえばいいか迷ったけれど、ヴィオレはうん。と頷いて。
「俺はプラネテューヌ守護隊長。ヴィオレだ。俺一人しかいないけどね」
そう言った。
もっと複雑なバトル描写は後々。
とりあえず、主人公の使う技を強調したかったので戦闘は技一発でしめました。