超次元ゲイム ヴィオレ !!!   作:こだま

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第二話

 

 

 ビービーとけたたましく鳴り響く警報音も次第にドップラー現象をともなって消えていき、辺りを静寂が支配した時、やっとヴィオレと少女は辺りに放置されていた木材の中から顔を出した。

 

「もう大丈夫だろ。あいつ等機械だから、カメラに捕らえられない限りは一度探した所は探さないから」

 

 よいしょ、と掛け声で喝を入れて自分たちを隠していた木材の隙間を広げて立ち上がる。

 

「ほら、これ」

 

 ポイッと少女に刀を渡す。

 その武器の扱いに少しむくれたような顔をしたものの、仮にも助けられた相手であるとを思い出して、文句の言葉を飲み込む。

 

「ありがとう。守ってくれて」

 

「いや、別に。いつもやってることだから。久しぶりに派手な技も出せて楽しかったしさ」

 

 ししょーに使用は止められてるから。と少女に向かって言うヴィオレに、その人があの技を教えたのかと納得する。

 

「ねえ、その師匠さんってどこにいるの?」

 

「え?えっと……。ここから西にいったところだけど、郊外にあるからモンスターも沸くかもしれないから、一人じゃ危険だぞ?」

 

「そうなの?困ったなあ……」

 

 途方にくれたような素振りを見せ、これからどうしたのかを考える。

 ソレを見て、ポロリと漏らすように。

 

「じゃあ、俺が案内してやろうか?」

 

「え?」

 

 何気なく言った一言に疑問の言葉が返ってくる。

「いや、だって。この都市には自由に動けて強いやつなんか俺ぐらいしかしらないし」

 

 さりげなく自分がこの都市では一番強いのだという自己主張をするヴィオレを華麗にスルーした少女は、しかしその選択しかなさそうだと早々に判断する。

 

「じゃあお願いできるかしら」

 

「ああ。でも、今からじゃ着くのは結構遅くになるな。じゃ、ウチ来る?」

 

「え、でも」

 

「この辺りに宿なんかないよ。困ってるなら、俺の家に合わせたい人だっているし」

 

 少女は一人の女の子として、そんな簡単に男の子の家に上がりこんでよいものかと思ったが、しかし自分の目的にくらべたらそんなものたいした問題じゃないと頭の中で切って捨てる。

 目的を達するという、人間としては満点の行為でも、女子としては零点の行為であった。

 

「お言葉に甘えるわ」

 

「了解」

 

 ただ、彼女はこの選択をした過去の自分のことを抱きしめたくなる衝動に、未来で駆られるようになるのだが、それは別のお話ということで。

 

 

 

 

 

   ●

「ここ。ここが俺の家」

 

「ここが……」

 

 ネプタワーが立っていた場所。

 今ではファイナライズに資源を回収される際に解体されたので跡形もなくなってしまったのだが。

 ともかく、その跡地に立つ他と比べて少しこぎれいなバラックがヴィオレの家なのである。

 

「ただいまー、いーすん」

 

「あ、ヴィオレさん。おかえりなさい。そちらの方は?」

 

「ん、ししょーに用があるらしいんだけど、もう日も暮れるから連れてきたんだ」

 

「そうなんですか」

 

 少女がヴィオレの家に入ると、その中には本の上に載った妖精のような少女がいた。

 サイズ的にはかなり小さく、決して背が高いほうではない少女の三分の一ほどあるかないかだろう。

 

「あなたは…………」

 

「ん?どうかした?」

 

 何かを呟く少女に、どこか態度が変わったのを察したヴィオレが返事をかけるが、彼女は、なんでもない。と答え、ヴィオレも、彼女の様子が戻っているせいから、気のせいなのだろう、と思い、それ以上の詮索を控えることにした。

 

「あの、すいません。イストワール様。少しお話よろしいでしょうか?」

 

「え?」

 

「―――についてのお話です」

 

 少し声を潜めた部分は、ヴィオレには聞こえなかったが、いーすんの表情を見れば、決して笑い話の類ではないことは容易に想像がついた。

 

「あ、いーすん。俺は部屋の奥に行ってるよ」

 

 なので、彼がこの場から去ったのはもはや必然のようなものだったのだろう。

 昔から、こういう場の空気を読むことは得意であった少年である。

 

 きっと少女がいーすんとする話に自分がいたら、両方に入らぬ気を使わせてしまうと考えた結果である。

 

 ヴィオレは、いーすんや少女が何かを言う前に、その部屋を出て行った。

 

 そういえば、と。なんとなしに思うことがあった。

 

「名前聞いてなかったなあ。あの子」

 

 

 

  ●

 

「おーい、リース。起きてるかー」

 

「あ、うん。ちょっと待ってね」

 

 なにやらごそごそと言う音が小部屋から聞こえてくる。

 まあ、彼女も年頃の女の子だから、自分が入るにあたって何か都合の悪いことの一つや二つぐらいあるのだろう。と勝手に納得。

 

 いいよ。とお許しがでて、ようやく中に入った。

 

 その中には、黒髪の少しあどけなさの残る、彼がリースと呼んだ少女がベットから体を起こして、ヴィオレを迎えた。

 

「ほら、ごはん持ってきたぞ。ゆっくり食えよ」

 

「うん、おにいちゃん」

 

 ちなみに、この二人。血は繋がってはいない。

 二人とも、イストワールに引き取られた孤児なのである。

 ちなみに、リースのほうが先に預けられているのだが、彼女はある時から彼のことをおにいちゃん、と呼んで慕っているのだった。

 

 ちなみに、彼女は十一歳。十五歳のヴィオレとは四歳違いだが、彼女の精神的な年齢は実際の彼女の年齢とはそぐわず、かなり高い。

 

 ヴィオレの正義の味方ごっこの理由を察するぐらいには。

 

「足は大丈夫か?痺れとかは?」

 

「大丈夫。相変わらずあまり動かないけど体調も万全だよ」

 

「そうか、じゃあ今度車椅子で外に出かけるか。あまり楽しくはないだろうけど」

 

「ううん。おにいちゃんと一緒ならどこでもいいよ」

 

 そう答えるリースを見て、どこかヴィオラもテンションがあがって、少し舞い上がってしまう。

 

「まあ、明日は無理だから、明後日にでも…………」

 

「そんなに急がなくてもいいのに。私は待つよ?」

 

「そ、そうか……。……お前はもうちょっと我侭になれって、俺みたいにさ」

 

「おにいちゃんみたいになったら、おにいちゃんを見守れなくなるからやだ」

 

「見守るって、お前は俺の保護者か?」

 

「ほごしゃだよ?妹でもあるけどね?」

 

 少し生意気なことを言うリースだったが、ソレに対して特にヴィオレはなにも言わずにただただその頭を彼女が痛いというまで続けるのだった。

 

 

 

 その後、レトルトのシチューをリースにあげて、自分の部屋に戻ったヴィオレは、なんとなく、それでいてぼんやりと天井を見つめながら考え事をする。

 

 明日も皆の悩み事を聞いて、ししょーに鍛えてもらって、……いつもどおりにすごそう。

 

 ちらり、と自分の荷物置き場を見る。

 拾った遊べそうなガラクタとか、小さい頃に遊んだおもちゃとか。

 そんなものを見て。

 

 いつか、あんなおもちゃで遊び続けたいなとなんとなく思った。

 

 

 

 

 

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