才人は、目を精一杯それに向けていた。
周りの景色は、猛烈な勢いで流れており、そいつは時折、太陽や雲に隠れては
姿が眩みそうになる。
高速機動中に相手を見失ってしまいそうになるからだ。
必死に、歯を食いしばっていると耳に付けたインカムから通信が入った。
『ほら、どうした、どうした、遅れているぞ。そんな様子では、ネウロイに落とされるぞ』
―――言われなくても・・・!
そう、言いたくなるのをこらえて
「了解。追いついて見せます」
と、返した。
才人は、坂本少佐と高速機動訓練を行っていた。
――――数日前に遡る。
坂本少佐が、零式戦闘脚を用いた訓練を終了したのちに、才人が零式戦闘脚に触れたのが
きっかけだった。
才人は、男性なのに、あろうことか、零式戦闘脚が反応し、魔力も出せれることが
判明した。
そこで、坂本少佐が乗ってみろと、命令が出た。
「俺が、乗るのですか?」
「うむ、本来なら、女性しか反応しないはずのストライカーユニットが反応したんだ。
なぜ反応したのか知らないが、反応したということは、相当優秀な魔力使いのはずだ。
この時勢優秀な兵士は一人でも欲しい。それに」
そういうと、坂本少佐は頭を下げる。
「お前が、協力してくれたら、他の男でも使えるようになり、歳半端もいかない子供達が
戦場に行かなくて済むんだ。死ぬ人も大幅に減るんだ。だから、お願いだ」
坂本少佐は、頭を下げ続ける。
才人は、しばらく無言でいると、口を開く。
「自分は、この世界のことはよく分かりません。そして、これが動けることが
どんな意味をもたらすか知りません。ですが」
戦闘脚を見ながら言う。
「目の前にある、困っている人をほっておくことはできません」
「……!では!」
「ええ、乗ってみます」
それから、準備を進める。
裸足にしたうえで、半ズボンに履き替える。
「ここに、足を入れればいいんですね?」
「うむ、後は感覚で分かるはずだ。空母からの発艦経験は?」
「航空機なら、何度もある」
「よし、戦闘脚も同じような感覚でいけば、発艦出来る!やってみろ!」
そういって、坂本少佐は離れる。
才人は、目の前にある、戦闘脚の穴をしばし見つめると、覚悟を決めたのか
頷きながら、足を差し入れる。
すると、また、左手が光り、戦闘脚が反応する。
頭に情報が入ってくるが先ほどではない。
目を閉じて、左手からあふれ出る力を、両脚に流れるようにイメージする。
そのイメージが良かったのか、足元から振動が伝わってくる。
目を開けてみれば、戦闘脚から、先ほどの坂本少佐のように
光のようなプロペラが回っていた。
それに、魔力を込めるようにイメージすれば、より高速回転しだし
坂本少佐よりも、激しい轟音が響きわたる。
飛行甲板の両端には、手空きの乗員たちが興味深そうに見ており、立っていた。
「頑張ってー!」
宮藤は、坂本少佐の傍に立って応援していた。
才人は、宮藤に少し頷くと、前に傾ける。
戦闘脚を固定していた台座からのロックが自動で解除されて、自由の身となる。
滑走を続けながら、より魔力を込める。
一段と、振動と轟音が大きくなり、速度が速くなる。
景色がどんどん流れていくが、才人の経験から、離れるのは、まだだと考える。
―――まだ……まだ……
やがて、端までもう少しという所で、勢いよく上昇するイメージを描く。
戦闘脚が、爆発したような音を出しながら、勢いよく大空へと飛び立つ。
脇目もふらず、大空へ一直線であった。
それを見た乗員組は「すげえ」「あいつ飛んだぞ」とざわざわしていた。
そして、宮藤は
「平賀さん、すごい!すごーい!」
目を輝かせていた。
だが、才人は大空への喜びを噛み締めていなかった。
予想以上に強いトルクや、魔力を注ぎ続けないというイメージの問題があった。
―――これは……雷電以上にじゃじゃ馬だぞ。
才人は、以前に乗ったことのある、雷電のような癖のある操縦に苦労していた。
過去の事を思い出したのがまずかったのか、集中力が途切れてしまう。
「しまっ、うわああああーーーーー!!」
不意に、魔力のイメージをつかみ損ね、左右の回転速度が不規則になり
不規則な空中ダンスを開始する。
才人は、何とかしようとするが、焦れば焦るほど、ダンスはひどくなる。
そして、才人は海に墜落を開始する。
艦隊の乗組員の、ざわめきがひどくなり、駆逐艦が墜落予想位置へと
移動開始しようとする。
才人の墜落速度はますます速くなり、もう少しで、激突しそうになるが
海面ギリギリで体を捻ったかと思うと、海面擦れ擦れを水平に飛びついていた。
才人はふらついているようだが、先ほどのと比べたらマシなふらつき方であった。
それを見ていた、乗組員たちは安堵のため息をつく。
才人もここら辺で、潮時と考え、空母へと着艦しようとする。
戦闘脚であろうと、航空機であろうと、地面に着くためには
十分な減速が必要であるが、才人には難しかった。
魔力を過給しすぎたり、減給しぎたりと苦労しながら艦尾へと持ってくるが
―――だめだ!速度が速すぎる!
案の定、空母の甲板に激突しそうな勢いで戦闘脚が触れ、その勢いのまま、前に倒れ
倒れながら、ぐるぐると回る。
やがて、回転が止まった時には、才人は横向きに倒れていたが
そのままゴロリとあおむけに倒れる。
「はー……はー……」
才人は深呼吸を繰り返す。
そこに坂本少佐がやってくる。
「大空の旅はどうだ?平賀?」
才人も呼吸を整えると返事する。
「ええ、なかなか快適で、じゃじゃ馬でしたよ。それを自由自在に操れる
坂本さんはすごいと思いましたよ」
「うむ、簡単に乗りこなせれたら、私達のベテランの立場がないからな。
平賀も初めてにしては上手かったぞ」
「それはどうも」
才人は笑う。
そこに
「平賀さーん、大丈夫ですか?」
宮藤がやってきた。
甲板に激突したことが心配に見えただろう。
「大丈夫だよ、宮藤。そんなに大したことないよ」
「で…でも……」
やはり優しい子だ・
「ふぇっ」
「心配かけてすまなかったな。大丈夫だから」
だから、頭をぽんぽんと撫でたのである。
宮藤は、顔を赤くしていた。
そんな二人の空気を破るかのように声が響き渡る。
「では、平賀明日から、毎日飛行訓練を行ってもらう」
「えっ、毎日ですか?」
航空機であっても、毎日はきついのだ。これがストライカーになれば
どれほどになるか、想像もつかない。
「うむ、ネウロイは今すぐ待ってくれるわけでもないからな。
早急に戦闘に役に立つ兵士にならなければならない。
なーに、毎日、牛乳を飲んでいれば大丈夫だ。
明日から覚悟しとけよ!はーはっはっはっ!」
そう言って、笑い去った。
その場には、顔が赤いままの宮藤と明日からの訓練に顔を青くする才人が残された。
こうして、現在。
坂本少佐によるスパルタ訓練により、何とか戦闘が出来る状態となった。
「ぜーはー、ぜーはー」
飛行甲板に倒れる才人
「情けないぞ、男なら余裕を見せんか」
余裕のある坂本少佐
「訓練お疲れ様です。お茶持ってきました」
二人の世話をする宮藤
「ああ、ありがとう宮藤」
そういって、お茶をぐびぐび飲む才人
「私も頂こうか」
坂本少佐も飲む
「ところで、坂本さん。まだ、ブリタニアには着かないのですか?」
「ん?ああ、あと半日はかかるな」
事も無げに言う坂本少佐
「えー、まだかかるんですか?」
「そうせかすな。半日ということは今日中に着く」
「そういうことだ。慌てても、なに……」
ふいに言葉を止める才人
才人に、数日前に感じたことのある、アレ(・・)を感じたからだ。
――――まさか、ここでか?
隣にいる、坂本少佐も何かを感じたのか、眼帯を上げて、ある方角を見る。
才人も見ていたその方角の先には
「「敵だ(ネウロイ)!!」」
艦隊中にけたましく、警報が鳴り響く…………
いかがでしょうか?やはり、最初は下手っぴな表現をしたかったのですが、難しかったです。
次はネウロイ襲撃です。宮藤の飛び立ちはあるのでしょうか?
お楽しみに
意見や感想をお願いします。
没ネタ
「いけーーー!」
勢い良く飛び立つ才人
才人がそのまま飛び立つかと思われたその時
戦闘脚のプロペラの回転が止まり、そのまま海にポチャしてしまった。
「「「「「・・・・・・・・・・」」」」
艦上にいる将兵の沈黙が痛い
「私は艦長に報告しなければ」
坂本少佐が離れたのを皮切りに
「おい、借金を返せよ」「えーもう少し待ってくれよ」
「今度こそ、将棋で勝ってやるわ」「ふっ、返り討ちだ」
「さーちゃんと整備しないとな」
皆、見て見ぬふりをしたようだ。
「平賀さーーーーん!」
宮藤の声が悲しく響き渡る。
才人は、駆逐艦に釣られました。