島津飛翔記   作:慶伊徹

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三章 蒲生範清との合戦

 

 

岩剣城周辺に布陣してから4日。

本格的な城攻めを開始してから丸2日が経過した。昼夜問わず攻め立てる。日本に於いて初めて合戦にて使われる鉄砲の轟音が鳴り響けば、風切り音を鳴らす数多の弓矢が天高々と弧を描き、戦意高々な島津兵が大手門を破らんと猛勢を掛ける。

しかし敵もさることながら必死に籠城を続ける。祁答院良重自ら先頭に立ち、城兵を鼓舞しながら蒲生範清率いる連合軍の救援を待ち続けた。

まさしく一進一退の攻防である。

銃弾に加え、火矢による損害は大きいが城内の士気は上々。兵糧も問題なく蓄えてある。後は如何に敵の数を減らし、救援に駆け付けた連合軍と足並み揃えて島津軍を挟撃するかであった。

ーーなんて。

岩剣城城内では考えられている事だろう。

島津兵2000を釘付けに出来ている事から此度の戦、島津家全体に大打撃を与える大勝であるとも。

だが甘い。

そう断じざるを得ないな。

本陣で行われる戦評定の参加を許された俺は貴久様から最も遠い末席に腰掛けながら、ここ2日間の城攻めを反芻した。

結論から評するに島津軍は手を抜いていた。

ともかく兵の損失を少なくするように動いている。岩剣城の東南に位置する白銀坂に陣を張った新納忠元殿も貴久様のお言葉通りに無理な突撃は控えているぐらいで、北部に陣取った義久様も基本的に包囲に参加しているだけだ。

戦意高揚な義弘様は策を理解していながらも唯一不満そうだった。いや、どうやら忠元殿も焦れったくあるようで貴久様に噛み付いている。曰く、総攻撃を仕掛けるべきだとか。

もう少し待てば平松で決戦が始まる。

義久様が兵を損なわせないように指揮しているのはこの為だ。

無論、主君に進言したのは俺である。

義久様率いる300の兵はこれからが本番。

その大役を得るためにも此処からは俺の仕事だった。

 

「殿、岩剣城を包囲して4日。城攻めを始めて早2日。何を悠長にしておられますか!」

 

忠元殿の威勢の良い言葉に数人の家臣が我が意得たりと頷いた。然り然り、と口にする者もいる中で、鎌田政年殿が膝を叩いて貴久様に詰め寄り催促する。

 

「城内の敵、戦意高揚なれど寡兵であらせられる。殿が蒲生範清の兵を待っておられるのは存じ上げるが、挟撃される可能性を潰す為にも此処は総攻撃を仕掛け、一刻も早く岩剣城を攻め落とすのが上策というもの」

 

確かに上策かもしれない。

短時間で落城できる平城ならな。

岩剣城だと大手門に繋がる道は狭い上に一つしかなく、三方は急峻な崖だ。降伏する兆しも見えない中に於ける無闇な城攻めは攻め手の被害が拡大するだけだろうに。

 

「政年の言葉、我が意得たり!」

「おお。忠元もそう思うか!」

「殿、ならば我らに下知してくだされい。必ずや大手門を破り、城内のことごとくを血で染めてさしあげましょうぞ!」

 

いや、歴戦の武将である忠元殿と政年殿が理解していない訳がない。

島津忠良の四天王の座は猪武者では務まらない。実際、新納忠元は親指武蔵と呼ばれ恐れられた武将でありながら、和歌を詠み合うなど文化人な側面を持ち、史実において長宗我部信親の遺骸を引き取りに来た谷忠澄に対して討ち取ったことを陳謝したという礼節を弁えた武将でもあったとされている。

何か理由があるな。初めての戦評定だから確信を持てないが、何やら焦っている様子が見受けられる。

功名を欲しているのか。

ならば何故だ。

俺みたいな若造ならまだしも、既に家老職の中でも飛び抜けた武功話を持つお二方がどうして功名に焦る必要があるというのか。

ーーいや待て。

もしかして俺か。俺のせいか!

 

「落ち着きなされい!」

 

考えがまとまり掛けた直前、祖父の大声が評定の間に響いた。義久様の隣に腰掛ける筆頭家老は威厳のある口調で喧騒に満ちそうな場を収めた。

 

「政年殿、忠元殿。見ての通り岩剣城は堅城ぞ。無駄に兵を失う必要はござらぬ。此処は当初の策の通りに事態を進めるがよろしいかと存ずる」

 

だが、政年殿も黙っていない。

鋭い視線を祖父に向ける。

まるで扱いた手槍のようだ。

本陣にて行われる戦評定。

合戦の勝敗が懸かっているからなのか、まさに血の降らない戦模様。舌戦と呼ぶべきか。

12歳の身で体験できたことはまさに僥倖だったな。忠良様に心底感謝である。

この経験を糧としないと勿体無さすぎる。

 

「お言葉ながら。忠朗殿、城内の兵と蒲生の軍勢に挟撃される危険性については如何がお考えか」

「政年殿の仰られる通り、岩剣城に控えるは寡兵。この伊集院忠朗が命を賭して包囲しておく所存に御座る」

「儂らはいざ知らず、末端の兵士たちは背後を突かれてると知りながら正面の敵に集中できようか。否、出来まいて!」

「さようで御座る。此処は総攻撃を以て他になし!」

「然り!」

「然りじゃ!」

 

忠元殿の危惧もわかる。

人は背中を突かれた状態で平静を保っていられない。武将なら顔に出しても逃げ出すことはないが、例え精強な島津兵であろうと一人また一人と逃亡兵が出ることは十分にあり得る。それは最終的に前線の崩壊に繋がっていくだろう。

政年殿の掛け声に合わせるように、功名を欲しがる家臣たちが立ち上がる。

それでも貴久様は何も言わず、義久様たちも慣れていないからか家臣たちの熱気に呑まれている。忠良様はひたすら目を瞑っていた。

俺はどこで仕掛けるか悩む。

蒲生範清が加治木城の包囲を解いたのは今朝のこと。到着は2日後。俺の策が上手く行けば蒲生率いる連合軍を一蹴しつつ、城内へ付け込みも狙える。理に適った策だと思うが若造の練った策だと捻り潰されたらお終いだ。

故に千載一遇の好機を待っているのだが、それは家臣の一人が発した台詞によって舞い降りた。

 

「よもや忠朗殿、臆病風に吹かれたのではありますまいな」

 

来たぁ!!

 

「臆病風とは無礼千万であるぞ!」

 

言葉を失ったかのように沈黙を保っていた俺が突然、口角の泡を飛ばしながら椅子から立ち上がったのだ。

評定の間が一気に静寂に包まれる。

俺は12歳という若輩者であることを忘れたように捲し立てた。忠良様も認めた口の回る様を見せてやろうじゃねぇか。

 

「そのような謂れは武門の名折れ。如何にご祖父様に向けた言葉であろうと、我々伊集院家に向けた罵倒であると捉えるが返答や如何に!」

 

伊集院家に喧嘩売ってんのかコラ!

意訳するとこうなる。

戦評定の熱気に当てられたとは言え、祖父を罵倒した新納忠元殿のご子息である新納忠堯殿に鬼気迫る口調で返答を求めるが、見計らっていたかのように忠良様が仲裁に入った。

 

「忠棟、落ち着け」

「しかし!」

「落ち着くのじゃ。儂らが相争えば敵方の思う壺ぞ」

「くっ」

 

一旦引く。

忠良様に噛み付いても仕方ない。

此処は主導権を半ば引き寄せただけで良しとしよう。どうやら忠良様は俺に策を言わせたいらしいしな。

 

「忠堯も言葉が過ぎる。忠朗は薩摩平定に最も貢献した武士の一人じゃ。臆病風に吹かれたなどお主が口にしていい言葉ではない。分を弁えんか!」

「も、申し訳ありませぬ」

「しかし忠良様。尊敬するご祖父様を罵倒されたのです。聞き逃すことなど到底出来ませぬ!」

 

元島津家当主の背筋を凍らせる大喝に忠堯殿が萎縮した。

気持ちはわかるよ。恐ろしいよな。

兵を鼓舞する手際の良さ。舌を巻くほどの指揮の巧みさ。まさに名将だ。加世田城で半ば隠居していると思えない現役っぷりである。

そんな人生の大先輩から叱られたのだ。

俺もそうなる。誰だってそうなる。

此処は新納親子にも手柄を立てさせるべきだな。咄嗟に策の一部を変えた俺に、忠良様は意味ありげな視線を送りながら口にした。

 

「忠棟、ならばお主の策を申してみよ」

「……よろしいのですか?」

「貴久、良いな?」

 

一拍の間が空き、貴久様も頷いた。

 

「無論です。忠棟、策を申せ」

「ははっ」

 

これにて準備は整った。

もしも忠元殿の言葉を遮り、理に適った策を披露しても無礼だと怒鳴られた挙句に潰されるだけだったと思う。

戦評定に参加するのは初めてな為、誰かが率先して意見を尋ねてくることもない。家臣たちの前で貴久様と忠良様が12歳の若造を特別扱いするのも不可能。功績が無く、発言力も無ければ献策するだけでも一苦労である。

全く世知辛いものだ。

しかし一連の流れによって貴久様と忠良様から献策の許しを得た。

ようやくだ。ここからようやく始められる。

俺は練っていた策を披露した。

そんなに難しい物でもない。

練度の高い島津兵なら十二分にこなせる。

鉄砲の有用性も知らしめることが可能だ。

そしてーー。

俺の策は認められ、岩剣城の戦いは佳境に入ったのだった。

 

 

 

 

 

 

2日後、卯の刻。

午前6時。朝靄立ち込める中、2500の兵を引き連れた反島津連合軍は岩剣城北部に広がる平松にて布陣した。

帖佐平山城を背にして魚鱗の陣を敷いていることから奴らの動きは察するに余りある。

彼らからしてみれば兵数で上回っている上に一刻も早く岩剣城を救援しなければならないからな。岩剣城の守将は祁答院良重。その嫡子であり帖佐平山城から出撃してきた祁答院重経による焦りも効いているのかもしれねぇ。

俺からしてみれば祝着の極みだ。

蒲生範清と相対する島津兵は貴久様率いる1200人余り。兵力差は約2倍である。

しかし、平松の決戦を予期していた島津軍は堅陣を築いていた。幾多にも柵を巡らせ、その中には100丁の鉄砲隊を配備。岩剣城に持ち込ませた全ての鉄砲を並べたのだ。

この柵を越えて、鬼と称された島津兵を薙ぎ払い、烏合の衆とも取れる連合軍総出で岩剣城の救援に迎えるかどうか。

俺なら白旗あげるな。

恐ろしいなんて物じゃない。

そして策はまだある。

……まだあるのだ。

 

「ねぇ、源太くん」

 

平松西部に『天ヶ鼻』と呼ばれる山がある。

義久様と義弘を中心とした300の島津兵は息を殺して合戦の始まりを待っていた。

貴久様の判断の下、狼煙が打ち上げられる。

瞬間、山を駆け下り、連合軍の側面を衝く。

義久様は後方で指揮を執り、義弘様は最前線にて槍を振るう手はず。300の内、半数は騎馬武者だ。唐突な伏兵の登場に浮き足立つ蒲生軍を一蹴に伏してくれるだろう。

いや、油断は禁物だ。

もしかしたら策を読んでいる可能性もある。

もし伏兵の存在を気取られていても、それを挽回する策を用意しておかないといけない。

俺がもしもを考えて頭を巡らしている中、義久様が小声で話しかけてきた。

俺は山間から覗く両軍の布陣を眺めながら答える。

 

「如何なされましたか?」

「岩剣城の包囲はあれだけでよかったの?」

「問題ありませぬ。忠良様の統率力ならば如何ほどの心配もいりますまい。新納忠元殿と忠堯殿も千載一遇の好機をみすみす逃すような武将にあらず」

 

平松の決戦にて大勝を収めても、岩剣城が頑固に抵抗しては兵の損失が大きくなるだけである。

故に其方も策を用いた。

岩剣城から出撃する兵数は約300と言ったところか。ここぞとばかりに祁答院良重、西俣盛家が先陣に立って遮二無二に突撃してくるだろう。此処で島津軍を退却せしめないといずれ兵糧が切れて、城内は餓死者で埋め尽くされることとなる。

待ち受けるのは島津忠良様が率いる200人の兵士。残り300名は忠元殿と忠堯殿が統率。そして用いる戦法は島津を代表する有名な物だ。

 

「釣り伏せだったかしら?」

「はっ」

 

敵軍と一戦交え、わざと敗退する。

追撃に移る敵軍を伏兵を敷いていた場所まで誘導し、四方八方取り囲んでから包囲殲滅する島津軍の十八番となっていく戦法だ。

忠良様なら難なくこなせるだろう。

50を超えてもなお衰えぬ覇気を醸し出し、任せておけと鍛えられた胸板を叩いた様は既に隠居を楽しんでいる翁には見えなかった。

そして岩剣城を落とす為にもう一つ戦術を付け加えた。

 

「城主を野戦にて討ち取り、敗走した城兵が大手門から逃げ込む隙を衝いて岩剣城に殺到し、城内の混乱に乗じて雪崩れ込めば、城を落とすことなど造作も無きことにござりまする」

 

俗に『付け込み』と呼ばれる戦法だ。

短時間で、かつ最小限の被害で城を攻略することが出来ることから、頻繁に使用される戦法であった。

 

「あくまでも釣ることに拘ったのね〜」

「はっ。遠征するだけでも疲弊します故。謀叛を起こした者に我々が疲弊してまで付き合う必要はないかと存じ上げまする」

 

兵糧を始めとした様々な物資を戦場に運ぶだけでも莫大な金銭、労力を使ってしまう。

三州平定や九州統一に使うならまだしも、蒲生範清の発端とした此度の戦で疲弊するのは割に合わない。

だからこそ釣ったのだ。

戦は起こさず収めるが上策。

始まってしまったからには致し方無し。

最低限の損失を以て、最大限の利益を得なければならない。

故に奴らを利用する。

北薩に於ける親島津と反島津の色分けを明確にした上で、義久様と義弘様に武功を挙げさせ、これからの合戦の主流となる鉄砲の有用性を島津家全体に知らしめる。

その為に犠牲となってもらおうじゃないか。

そんな歪んだ想いが顔に出ていたのか、義久様は悲しげに目を伏せた。

 

「源太くん、怖いわ〜」

「これも偏に島津家を想えばこそでござりまする。どうか、平にご容赦下さりますよう」

「はぁ。お祖父様が源太くんを気にいるのわかった気がするわ〜。少し似てるものね〜」

「え?」

「ううん。なんでもない」

 

頭を振り押し黙った義久様。

眼下に広がる両軍の布陣を見下ろしている。

俺も周囲に倣って口を閉ざした。

それから一刻経っただろうか。

義弘様の辛抱が限界に達した頃だった。

 

「来た」

 

敵が動いた。

濛々と立ち込める砂塵の中から、鯨波の声を上げながら駆ける蒲生勢。島津軍の築いた堅陣も何のその。数に物を言わせて押し倒そうと迫り寄るがーー。

耳を劈くような轟音が鉄砲隊から響き渡る。

天ヶ鼻にまで届いた銃声は伊達じゃない。刹那、蒲生率いる連合軍の兵士たちがもんどり打つようにして倒れた。

続けて、島津家の弓隊が前進。鉄砲隊が弾を詰め替えるまでの間、矢の雨を降らせる。

鉄砲と弓による間断ない攻撃に敵の脚色も鈍るが、2倍の兵力による押出しと父を助けるという祁答院重経の奮戦もあって、遂に堅陣の一角に到達。激しい喊声を上げながら、柵を押し倒そうと群がっていく。

蒲生範清、祁答院重経自ら手槍を振るい、混戦の中に飛び込んだ。

鉄砲隊は尚も銃声を轟かす。

100の鉄の塊が面となって襲い掛かる。

蒲生勢は堪らず進軍を停止するが、祁答院重経の突出のせいか陣形は何時の間にか魚鱗から鋒矢に変化していた。

 

「ここだ!」

 

思わず叫んだ。

義弘様も既に乗馬済み。

義久様に於いては軍配を持ち、周囲を固める兵士たちに突撃の準備をさせていた。

それ程までに絶好の機会。

鋒矢の陣は、魚鱗の長所と短所のどちらもより特化した物である。強力な突破力を持つ反面、一度側面に回られ、包囲されると非常に脆い。また陣形全体が前方に突出し、主戦場が本陣より常に前方を駆けていくため柔軟な駆動には全く適さないわけだ。

つまりは好機。ここを逃してはならない。

今、300の兵で側面を衝けば勝ち確定だ!

そして貴久様も見抜いていたのか。

最適な瞬間に狼煙が打ち上げられた。

 

「皆、私に着いてこい!」

 

義弘様が先陣切って駆けていく。

300の兵士が鯨波の如く山を下る。

伏兵の存在に気付かず、側面に弱い陣形であり、鉄砲隊の援護射撃も重なって、瞬く間に敵軍は総崩れとなった。

断末魔の叫び声をあげながら蜘蛛の子のように散らばっていく。

この時代、現代の軍隊に存在する小隊長のような指揮官はいない。統括する武将さえ討ち取ってしまえば、残りの兵士は逃げた方がいいのか、戦っていいのかわからなくなり、否が応にも混乱の極みに達してしまう、

貴久様の軍勢も堅陣の奥から突撃。側面と正面から追撃を食らった連合軍は遂に敗走散り散り。このまま行けば史実通りに奴もーー。

 

「祁答院重経、島津義弘が討ち取ったり!」

 

まさかの義弘様が討ち取っちゃったよ!?

12歳だよね?

3日前なんか怯えてたのに。

女になっても、幼くても、猛将は猛将であるということか。流石は島津四姉妹。大陸でも鬼と恐れられた一族。紛れもなくチートだ。

いや、なんにしろ。

 

「我々の勝ちだ。勝鬨を挙げろ!」

 

死屍累々に重なった連合軍の兵士たち。

惨状と死臭に蓋するように大声を発する。

島津兵は生き残った安堵感と極度の緊張から解放された故の疲労感もなんのその、天にも届けとばかりに右手の拳を突き上げた。

その姿を馬上から眺めて数瞬、俺もようやく現実を受け入れて勝鬨に参加した。

勝った。勝ったんだ!

俺は馬に跨りながら吐息を漏らす。

初陣に勝利した。それも己の策によって。

達成感に満ち溢れるかと思っていたが、どうやら身体はそれ以上に休息を求めていたようだ。

顔は微笑み、瞳を閉じて、少しだけ休もうかなと考えた直後、右肩に焼け付くような激痛が走った。

 

「な、にーーっ?」

 

経験したことのない鋭痛。

右肩に視線を向ければ一本の矢が突き刺さっていた。流れ出る血液。赤い体液を認識した途端、4日に及ぶ対陣の疲れも重なったのか意識が歪み、馬上から落ちてしまった。

 

(……そう、だよなぁ)

 

霞行く意識の中で反省する。

ここは本物の戦場だ。

勝ち戦だろうと油断は禁物だった。

全く、今回は教訓になることばかり。

 

「次は、完全な勝利、を……」

「源太くん。源太くん、しっかりして!」

 

義久様の心配げな声に押されるように、俺は今度こそ完全に意識を手放した。

あぁ、死んでいたら嫌だなぁなんて考えながら。

 

 

 

 


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