言葉にしないと伝わらない物
「パパはパパなのっ!お兄ちゃんじゃないの!!」
「違うんです!!お兄様はお兄様で!!お父様ではないんです!!!」
ううーと唸りあう雷華とリィンに
「お父様は私達のお父様なのです」
「違う!!兄は私達の兄だっ!!」
冷静な星奈に怒鳴るアギト・・
「父上は父上だが、お前達の兄でもあるよな?」
「は・・はい・・に・・兄さんは兄さんですけど・・静夜達のお父さんです」
冷静に話し合う静夜とアザレアに
「如何してこうなってしまったのでしょう?」
困った様に呟くユナ・・時間は少し遡る・・
「明日はパパがお休みだから遊んで貰えるよね!」
「そうですね、お父様はお忙しいので偶の休みは私達と遊んでくれる筈です」
食堂で雷華と星奈がそんな話をしていると
「?おかしいです。明日はお兄様はリィン達と遊びに行く約束をしてるですよ?」
お昼を食べに来ていたリィンがそう言うと
「何を言ってるのです、養女である私達のほうが優先のはずです。貴女達は次の休みにすれば良いででしょう」
「何言ってんだよ!!兄は一週間前から約束してくれてたんだぞ!!お前たちが待てよ!!」
「嫌だ!!明日は僕達なの!!アギト達は待ってれば良いでしょ!!何時でもパパと一緒なんだから!!」
きっかけは些細な事だった・・明日は龍也の休みであり。自分達と遊んでくれる筈だと言う雷華達とリィン達が喧嘩になってしまったのだ・・長い時間を生きている雷華達だが精神は子供に近い、そしてはそれはリィン達も同様だ・・子供だから持つ独占欲、それが喧嘩の引き金になってしまったのだ
「何時も!?何言ってんだよ!!私達は仕事を手伝ってんだ!!遊んでるんじゃない!!一緒に居るのはお前達の方だ!!!」
「何を言ってるのです?私達は学校に行ってるんです、何時も一緒に居るわけじゃないです!」
どちらも譲るつもりはなく、何時までも言い合いをしている雷華達についにはやてが怒った・・
「いい加減にせい!!喧嘩してたら兄ちゃんはどっちとも遊んでくれんわ!!」
その怒声にびくりと身を竦める雷華達に
「ええか、兄ちゃんも私は喧嘩する子は嫌いや!!」
そう怒鳴られた雷華達は
「嫌い・・?パパが・・僕たちを嫌いに?・・」
「お兄様が・・リィンを嫌いになる・・?・・」
凄くショックを受けた表情のリィン達にはやてが
「皆部屋に行ってるんや。喧嘩ばっかして・・少しは仲良うしよとか考え!!」
リィン達はしょんぼりと肩を落として部屋へと戻って行った・・
「それで皆元気がないのか」
「うん・・ちょっと怒りすぎたかも・・」
帰宅した後、いつもなら真っ先に飛びついてくる。雷華やリィンが来ない事を疑問に感じ、はやてに尋ねるとはやては事情を説明してくれた・・
「雷華達はほら自分達が養女やから自分達を優先してくれる思ってて、リィン達は妹だから自分達を優先してくれる筈だと思ってるんや」
「私はどっちが優先とかないんだが、子供だからかな・・自分達を優先して欲しいって気持ちがあるんだろうな・・」
私はどちらとも惜しみない愛情を注いでるつもりだ。養女である雷華達も大事だし・・妹であるリィン達も大事だ・・どちらがより大切とか・・そういうのはない・・
「まぁ・・話をしてみるよ」
「うん、そうしたって・・」
「はやて、後で良いから雷華達にリィン達の部屋に来るように言っといてくれるか」
「ん、判ったで」
私ははやてにそう頼んでから、話をする為にリィン達の部屋に向かった・・
「・・お兄様は・・お兄様で・・お父さんじゃなくて・・」
「リィン、お兄ちゃんはお兄ちゃんですけど。雷華達のお父さんでもあるんですよ」
「じゃあ、お兄様はリィン達より。雷華達の方が大事なんですか?」
「違います、どちらがとかじゃないのはお兄ちゃんの態度を見てれば判るじゃないですか」
「でもでも・・」
ユナが上手くリィンを宥めようとしているが・・上手く行ってないようだ・・
「入るぞ」
軽くノックしてから部屋に入ると
「あ・・兄・・」
「に・・兄さん」
「お兄ちゃん」
近寄ってくるユナ達だが、リィンだけはぷいっと目をそらしてしまう
「リィン、はやてに聞いたが・・雷華達と喧嘩したんだって?」
「・・コクリ」
体育座りのまま頷くリィンに
「どうして喧嘩になったんだ?」
「お兄様・・は明日休みじゃないですか・・だからリィン達と遊んでくれるって約束してたじゃないですか。でも雷華達は自分達と遊ぶんだって言うから・・喧嘩になっちゃって・・」
確かにリィン達と遊ぶと約束していた、だけど雷華達も遊んで欲しかった・・それが喧嘩の理由か・・
「リィン、リィンは雷華達が嫌いか?」
「嫌いじゃないです!・・嫌いじゃないけど・・リィンからお兄様を取っちゃう気がして・・それが嫌だったんです」
「私も・・そう思って・・」
リィンとアギトは無意識に恐れたのだろう・・私が自分達より雷華達を選ぶんじゃないかと・・だからそれが嫌で意固地になってしまって・・雷華達も恐らくそう思ったのだろう・・自分達から私が離れるんじゃないかと・・それは純粋たる独占欲・・自分達だけを見て欲しいと言う子供じみた独占欲・・
「馬鹿だな・・私は何処にも行かない、ちゃんとリィン達のそばにいるよ」
リィンを抱っこしながら言うと
「本当ですか?・・リィン達の傍にいてくれるですか?」
「約束する・・でも、雷華達の傍にもいる。私はリィン達も、雷華達も両方大好きで、どちらも大切なんだ」
リィンを抱っこしながら言うと、コンコンと控え目なノックの音と共に雷華達が入ってきた
「えと・・はやて姉に言われてきたんだけど・・」
「はい・・えーと・・私達も考えたんです・・リィン・・アギト・・ごめんなさい・・その自分勝手すぎました」
ぺこりと謝る2人に静夜が
「お前達は子供過ぎるんだ、父上の愛は広く大きい・・我達だけではなくリィン達にも注がれるべき物なのだ」
「「・・うん・・」」
静夜が1番お姉さんらしく。2人を嗜める・・だが・・私の愛が広く大きいって・・そんな事言われたのは初めてなのだが・・・リィンを抱っこしたまま座り
「ほら、皆おいで」
両手を伸ばし雷華達を呼び寄せ、近寄ってきた雷華全員を確りと抱きしめ
「私はリィン達も雷華も両方大好きだ。可愛い養女と妹達・・どちらも大切で大好きだ。どちらか一方だけとかなんて思ったことは一度もない。皆大好きな私の家族だ」
きっと今回の喧嘩の原因は私にもあるんだ・・言葉にしなくちゃ伝わらない事もある・・行動しなくちゃ信じられない事もある・・
「だから大好きなリィン達が喧嘩すると・・私はとても悲しい・・皆仲良くしててくれるのが1番嬉しい。判るかな」
こくりと頷くリィン達をもう1度確り抱きしめ
「私は何処にも行かない。ちゃんと皆の傍にいる・・大切な家族の傍にね」
はやてに出会うまで私は1人だった・・ずっと寂しかった・・誰かに傍に居て欲しかった・・そんな私の家族になってくれたリィン達の傍から離れる訳がない・・ずっと護り続ける・・私の大切な家族は誰にも傷つけさせない。私はそう誓ったのだから
「明日は皆で遊びに行こう。勿論はやて達も一緒に。皆で遊んで、皆でご飯を食べて、皆で笑おう。・・なっ」
「「「「はいっ!!」」」」
元気よく返事をするリィン達に
「良し、皆良い返事だ。さ、今日はもう寝るんだ。明日一杯遊ぶ為にな」
「はーい、んじゃあ、僕たちは部屋に戻るね?」
部屋に戻ると言う雷華に
「あ・・雷華ちゃん?・・今日は皆でリィン達の部屋で寝ないですか?」
「ほえ?良いの?」
「はい、家族は皆でいる物なんです!だから一緒に」
「うん!!ちょっと待っててぬいぐるみと枕取ってくる!」
「おお、我も行くぞ」
「私もです」
パタパタと走っていく雷華達を見ていると
「お兄様も一緒に寝てくれますよね?」
どこか不安そうに言うリィンに
「勿論だ。リィン達が悪い夢を見ないように私もいるよ」
花の咲くような笑みで笑うリィンは嬉しそうに私の服を掴み
「お兄様・・大好きです」
「当然、私も」
「私もです」
「・・えと・・私もです」
すすすっと寄って来て甘えるユナ達の頭を撫でてると
「僕も!僕もっ!!」
「私もお願いします」
「我も・・その・・頭を撫でて欲しい」
反対側から同じ様に寄ってくる雷華達の頭も撫でながら
「明日は遊園地だ、皆で仲良く遊ぼうな」
「「「はーい!!」」」
笑顔で返事を返すリィン達に囲まれながら、私も眠りに落ちた・・
言葉じゃないから伝わってなかったけど・・
言ってくれないから判らなかったけど・・
パパは・・
お兄様は・・
ずっと言ってくれたんだね
ずっと言っててくれたんですね・・
大好きだよ・・って・・
大切だよって・・って・・
不安に思うことなんてなかったんだ・・
怖いと思う必要なんてなかったんです・・
だってパパは・・
だってお兄様は・・
ちゃんと僕達を・・
ちゃんとリィン達を・・
愛してくれてたんだから・・
愛してくれてたんですから・・
言葉にしないと伝わらない物 終り
・・まだスランプなのかうまく表現出来てるか自信がないですが・・やりたかったのは書けたと思います。今回私が表現したかったのは、不安定な子供心でした。自分達は大好きだけど・・龍也がどう思ってるのか判らなくて・・不安で・・だから自分達と同じ立場のマテリアルズを許容できなかった、リィンの子供じみた独占欲の話でしたがどうでしたか?面白かったでしょうか?それだけが不安です。ですので感想を頂けるととても嬉しいです。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします