抱いてはいけない想い
本当は気付いていた…
はやての私の見る目が変わっているのに…
なぜなら、私も同じだったから…
でもそれを認めたくはなかった…
何よりも愛しく…
どんな物より大切な存在…
だからこそ…
私はそれを認めたくなかった…
はやては知らない…
私が本当の兄で無いと言う事を…
私ははやての父親の兄の息子…
両親が死んだので引き取られた存在…
だが…引き取られるまでの時間が長すぎた…
親の遺産を狙ってくる有象無象の数々…
まだ幼かった私は両親の遺産を守る事はできなかった…
そして金のなくなった私は捨てられるように孤児院に預けられた…
その時間は私の心を砕くには充分すぎた…
私は誰も信じる事ができず…
笑う事さえ出来なくなった…
そんな私を救ってくれたのは…
誰でもない…はやて…お前なんだ…
だから私は私の全てを使ってお前を護ろう…
壊れた心を持つ私が唯一つ願う事…
私はどうなってもいい…
だから…
だから…
はやてにだけは幸福を与えて欲しい…
だがその願いは叶わなかった…
おじさんとおばさんが死んで…
はやてから足の自由は失われた…
世界に絶望した…どうして?
どうして?はやてを苦しめる…?
私はどうなっても良い…だから…だから…
はやてだけは苦しめないで…
はやてだけなんだ…私に残ったのは…
もう私から大切な者を取り上げないで…
だが…願いは叶わない…
世界は…神は…私に更なる絶望を与える…
はやての為にお菓子を作っている時…
ガタン!!
今の方から大きな音が聞こえる…
慌ててキッチンから飛び出した私が見たのは…
胸を押さえるはやての姿…
「大丈夫か!?胸が痛むのか!?」
慌てて駆け寄り声を掛けるが…
「だ・・だいじょう・・ぶ・・」
私を心配させないためか青い顔で言うはやて…
「嘘を言うな!そんなに青い顔をして・・」
苦しそうなはやてをしっかりと抱きしめる…
私から離れないように…
誰にも奪われないように…
「どうして・・どうして・・私ばかりを苦しめる・・どうして・・私から全てを取り上げる・・」
私はどうなっても良いのに…どうしてはやてを苦しめる…
どうして私から大切な者を取り上げる?
何よりも…自分の命より大切なんだ…
「はやて・・お前だけは・・お前だけは・・奪わせない・・私が何があっても護り続ける・・」
腕を切り落とされても良い…
足をもがれても良い…
だから…はやてだけは奪わないで…
だが腕の中のはやては力なく項垂れる…
心臓が止まったと思った…
「はやて…?」
声を掛けるが反応が無い…
慌ててはやての胸に手を置く
「生きてる…」
弱弱しいが心臓は動いていた…
全身の力が抜けた…
私はその場にへたり込みながら
「良かった…生きてる…」
はやてが生きてる事に安心し涙を流す…
まだ…はやては私の傍にいてくれる…
まだ…はやては私から離れていかない…
それに安堵すると同時に激しい嫌悪が襲ってきた…
はやては私を兄と慕ってくれている…
だから私を信用し頼ってくれる…
なのに…私ははやての足が動かない事を…
はやてが苦しんでいる事を…
心のどこかで喜んでいた…
はやての足が動かなければ…
はやての胸の痛みがあれば…
私の傍にいてくれる…
決して離れていく事はない…
でも…それは望んではいけない事…
私は最後まではやてにとって良い兄でなければならない…
はやての足が動くようになり…
私の変わりに護ってくれる者が現れたなら…
私は…はやての傍から離れよう…
認めてしまいそうになるから…
偽る事が出来なくなってしまうから…
お前が好きだと言ってしまいそうになるから…
私は消えるべきなんだ…
「お前は歩けるようになる…その痛みからも解放される…」
はやてを寝かしながら呟く
「だから…それまでで良い…私の傍にいてくれ」
孤独はつらい…
だが…もし…もし…
私がはやてを傷つけてしまう事になってしまったら…
私は耐えれない…だから…
「私は消える…それが相応しいんだ…」
自分の幸せを幸福と思えない…
死ぬ事も…痛みも怖れない…
そんな壊れた心を持つ私がお前の傍にいる資格はない…
「でも…お前が歩けるようになるまでは…傍にいることを許して欲しい…」
その時まで私がお前を護る…
それだけが私が生きる意味なのだから…
「さてと…はやてが起きる前に出かけるか…」
はやての為に作っていたお菓子は焦げてしまった…代わりを用意しないと…メモを枕もとの机に置き
はやての好きな翠屋のシュークリームでも買って来よう…私はそう考え出掛けていった…
「ただいま・・はやてもう動いても大丈夫なのか?」
私が戻るとはやては起きていた…
「うん、大丈夫」
にっこりと微笑むはやてに安堵しながら…手に持ったシュークリームを見せながら
「良かった、そうだはやて。お前の好きなシュークリームを買って来たんだ。一緒に食べよう」
「うん!!」
笑顔で返事をするはやてを大きく両手を広げ
「抱っこして!」
「はいはい、何時までも甘えん坊だな」
苦笑しながらはやてをしっかり抱き上げる…
何時までこうやって触れ合う事ができるだろう…
何時まではやてはこの笑みを私に向けてくれるだろう…
だが何時かは離れなければならない…
それが何時かになるかはわからない…
でもその時までだけで良い…
その笑顔を私に見せて欲しい…
それだけで…
私は救われるのだから…
抱いてはいけない想い… 終り
今回のコンセプトは龍也さんの心情をメインにして見ましたが…どうでしたか?面白かったですか?もしそうならいいのですが…私の考える最有力ENDははやてENDもしくは八神家ENDなので…それでは今度の更新もどうかよろしくお願いします
PS 次回の更新は未定ですが予定では陽華の話にするつもりです