夜天の守護者 番外編   作:混沌の魔法使い

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どうも混沌の魔法使いです。今回はEXS8で登場したリーエさんの話になります。彼女がもし好評ならこれからもちょこちょこ出して行こうかなと思います
それでは今回もどうか宜しくお願いします


番外編 運命と言う波の中で

 

 

番外編 運命と言う波の中で

 

「また違う……」

 

ここではない。私が探している世界はここじゃない……切られた傷を押さえながら闇の中を連続で転移し人里はなれた遺跡の壁に背中を預け、傷が癒えるのを待つ

 

「あの人が居ないだけで……こんなにも世界は残酷で冷たい」

 

首から下げたペンダントを握り締め、自分の周りに結界を張り眠りに落ちる……この世界でネクロは完全な悪。私の話なんて誰も聞いてくれない。切られた傷が痛む、いくら不死に近い再生能力があっても痛いものは痛い

 

「……帰りたい、あの場所に……」

 

あの場所に帰りたい、それだけが今の私の支え……気が付いたらまた私は別の世界の遺跡に居た、ネクロとしての本能が逃げる為に転移したのだろう。

 

「……貴女も私を殺すの?」

 

気配を殺し私の背後に居る人物に振り返りながら尋ねると

 

「なんでさ?」

 

呆れたように笑う銀髪の青年、ネクロにとっては天敵ともいえる筈の彼は

 

「怪我か? どれ」

 

 

「……触らないで」

伸ばされた手を弾き、再生が始まっている傷跡を見せると

 

「……ネクロ化? いやその割には安定してる。 君は一体?」

 

不思議そうな顔をする彼に

 

「……適正が高ければ、ネクロ化せずに人としての人格を保てる」

 

「なるほど、長い年数ネクロと戦ってきたがそういう事例を見たの初めてだ」

 

やっぱり違う、姿は似てるけど……

 

「どこへ行くんだ?」

 

「……ここは私の場所じゃない、じゃあね……」

 

翼を展開しそのまま転移する。

 

「居場所がないよ……」

 

誰もいない闇の中で蹲り声を押し殺し泣き叫ぶ……

 

 

誰もいない……

 

それで良いとネクロが叫ぶ

 

それでは駄目だと心が叫ぶ

 

 

 

寒い、凍えそうだ……

 

そうだ、心を失えとネクロが叫ぶ

 

駄目だ、闇に沈むなと心が叫ぶ

 

 

思い出が消えていく……

 

そうだ、奴のことなど忘れてしまえとネクロが叫ぶ

 

忘れるな、何があってもそれだけは忘れてはいけないと心が叫ぶ

 

 

「……痛い、苦しい……」

 

相反する2つの意思が私を壊す、ただひたすらに……心と身体が砕けて行く……

 

時空の狭間、誰も足を踏み入れる事のない世界で私の意識は闇に飲まれ消えて行った……

 

 

「あ……あああああッ!!!!」

 

痛い痛い痛い!! 身体が千切れて消えまた別の何かに変わる、魂も記憶も磨り減って自分が何者なのかさえわからない

 

「…だ……ぶか?……ネク……になり……今ならまだ……助け……る」

 

どこか遠くから聞こえる声、そして柔らかな蒼い光、それが私がまだ人間だった頃に最後に見たのは

 

「ごめんな……助けるのが遅くなって」

 

泣きそうな顔でそう謝る蒼銀の瞳の青年の姿だった。

 

「目が覚めたかね?」

 

「……?……??」

 

身体を起こしたところで声を掛けられ喋ろうとするが声が出ない、それに目に包帯を巻かれているのか何も見えない

 

「……喋れないのか、念話の心得は?」

 

念話くらいならと頷くと

 

『何処まで覚えているかね?』

 

『ネクロに攫われて……ネクロ化を……』

 

そうだ私はネクロ化をさせられて……じゃあ、今の私は

 

『非常に言いにくいが。君は人間じゃない。と言ってもネクロでもない、人間とネクロの中間の存在になってしまっている。全ては私が遅れたからだ、申し訳ない……私が君の未来を壊してしまった』

 

『……いいえ。そんなことない……です。 助けてくれてどうもありがとうございました』

 

記憶を失う瞬間にみたあの顔、それを見てこの人を責めれるほど私は残酷じゃない。きっとこの人は私以上に傷つき涙を流したに違いないから

 

『そういってもらえると多少は気が楽だ。 ではまた来るよ、暫くはここで養生するといい……所で君の名は?』

 

『……リーエです』

 

『そうか、ではまた来るよ、リーエ』

 

 

そういって遠ざかっていく気配を感じながら

 

『あ……名前聞いてなかった』

 

私は名乗ったのに……相手の名前を聞くのを忘れていた。でもまあいっか、また来るって言っていたし。私はそう考えまた眠りの中に落ちていった……

 

『リンゴは好きかね?』

 

『……はい』

 

翌朝またきてくれてそう尋ねてくれた人にそう言うと

 

『ほら、あーん』

 

口元に何かが近付いてくるのを感じ口を開く、甘い果物の味

 

『……お、美味しいです』

 

『それは何より。まだ食べれるかね?』

 

『……は、はい』

 

また口元に運ばれるリンゴを食べ終え

 

『……あの、あなたのお名前は?』

 

私がそう尋ねると

 

『……名乗るほどたいした名前じゃないから気にしないでくれ』

 

『……名前を聞かないとお礼を言えないじゃないですか』

 

『ではフェイカーでも呼んでくれ』

 

『……100%偽名じゃないですか』

 

どう考えてもフェイカーなんて名前はありえないと思う

 

『うん、偽名だからな』

 

認めちゃったよこの人

 

『リーエの目が見えるようになったら、名前を教えてあげよう』

 

『何でですか?』

 

別に今教えてくれてもいいのにと思いながら尋ねると

 

『まぁ色々と訳ありでね、ではまた今度』

 

そういって遠ざかる気配と入れ替わりで別の人の気配がすぐ近くに来る

 

『こんにちわ、リーエさん』

 

『ど、どうも』

 

同年代か少し年上の女性の声にそう返事を返すと

 

『私はクレアと申します、あの方の指示で貴女の世話をすることになりました。宜しくお願いしますね』

 

『……えと、宜しくお願いします』

 

それから私はクレアさんと一緒に過ごす時間が始まった。顔が見えないのでどんな人か判らないが優しい人なのは良く判った

 

~1ヵ月後~

 

『…今日は来てくれないんですね。フェイカーさん』

 

『あら、寂しいのですか?』

 

からかうような口調のクレアさんに

 

『……そ、そんなことは』

 

『無いと言えますか?』

 

楽しそうな口調のクレアさんに

 

 

『……言えません』

 

『正直なリーエさんに良い事を教えてあげましょう。あの方はとてもお忙しい方なのです、ですから偶にしかここに来れないのです』

 

『忙しい? どんな仕事を?』

 

『それは、ふふ、秘密です♪ 目が見えるようになってから直接聞いて見てはどうですか?』

 

どうも今はこれ以上教えてくれそうにない、私はそう判断し

 

『そうですね。そうします』

 

物分りのいい子は好きですよ、と言うクレアさんは

 

『ではそんな良い子にはご褒美がつき物ですよね?』

 

『クレア、お前最近おかしくないか?』

 

第3者の声に驚きながら

 

『……ふぇ、フェイカーさん? 何時から?』

 

『来てくれないからの所から』

 

最初からいたーッ!! 恥ずかしいにも程がある

 

『まぁ今日は嫌々ながら聖王教会に行かんとならんのでついでに来た』

 

聖王教会? 私が住んでる自治区の……

 

『あの、正体を暴露しそうになってますよ?』

 

『つい口が滑ったな。まぁ問題ないさ、そうそう主治医の天災が言うには近いうちに目の包帯を取るそうだ。それからはリハビリを頑張ろうな』

 

『……はい』

 

『じゃあな。また』

 

ぐりぐりと私の頭を撫でて遠ざかる気配、その気配の移動先を見ていると

 

『名残惜しいですか?』

 

『……はい』

 

思わずそう返事を返してしまい

 

『……あ』

 

『聞かなかった事にしておきましょう。では今日のリハビリを始めましょうか』

 

『……ぐす……はい』

 

声を出せるようになるためのリハビリ、まだ目が見えないので歩く事のリハビリは包帯が取れてからになる。

 

「ではあ・い・う・え・お どうぞ」

 

「……ッ……あ……い……ッ……う……え……お」

 

「結構です、ではつぎはかきくけこ」

 

この声のリハビリは辛い、出し方が良く判らないのだ……暫くそれを繰り返し

 

「では声のリハビリはここまで、次は握力ですね」

 

頷き。パズルやルービックキューブ等の指先を使う物を使ってのリハビリを始めるのだが

 

バキャン

 

「またですね、ではこれを」

 

『すいません』

 

全体的に力が強くなりすぎている、力加減のリハビリなのだ

 

「半ネクロ化の力を上手く使えるようにならないといけないですね」

 

『はい』

 

また手渡されたルービックキューブをさわり、数分で粉砕する

 

「では次を」

 

どんどん壊れたルービックキューブが量産される。

 

「今日はこれくらいにしましょうか」

 

『……本当にすいません』

 

僅か一時間で150個の残骸の山が出来ているだろう、力加減が難しい

 

「がんばりましょうね」

 

『はい』

 

~2週間後~

 

「はい、これで良いよ」

 

先生に目の包帯を外される、ぼんやりと見える視界の中で

 

「見えるようになったな。では約束通り。私の名は八神。八神龍也だ。リーエ」

 

え? 八神龍也って……神王陛下様?

 

「う……うえええええッ!?」

 

「おお、声も出るようになったか。良かったよかった」

 

驚きすぎて悲鳴が出ただけだ。慌てて何か書くものを探す

 

「どうぞ」

 

クレアさんに差し出されたペンと紙に

 

『い、今まですいませんでした!!!』

 

書き終わると同時に崩壊するペンと摩擦でこげた匂いのするスケッチブックを見せると

 

「気にしないでいいさ。今度からの歩くリハビリとかは私も付き合うから、頑張れよ」

 

私の頭を撫でて

 

「では、後は任せる」

 

「お任せを」

 

恭しく頭を下げるクレアさんに

 

「どうして教えてくれなかったんですか」

 

「驚いたでしょう?」

 

ベルカ自治区に暮らす私にとって神王陛下様はその名の通り神にも等しい人、驚きを通り越して怖くなってしまう

 

「では明日からのリハビリ頑張ってくださいね、私はこれからは偶にしか来ませんから」

 

はい?

 

「ですから歩行や物の持ち運びあと魔法戦闘の訓練は全部、我が王が見てくれますよ?」

 

「……う……そ……ですよね?」

 

「いいえ? 本当ですよ」

 

無慈悲な宣告に私は思わず頭を抱えた

 

翌日

 

「……ふむ、義手が砕けた」

 

「……すいません」

 

握り締めた義手を粉砕してしまい、真っ青になりながら謝る

 

「腕変えるか」

 

何事もないように腕を替えて、うっすらと魔力を通す

 

「ん。もう1回歩く練習な」

 

「は……はい、し、神王様」

 

私がそう言うと

 

「それは好きじゃないんだ。龍也とでも呼んでくれ」

 

「……うー。あの……じゃあ、龍也様で」

 

最大でもこれが限界だ、私が俯きながら言うと

 

「様付けか……まぁ良いか、じゃあはい、手を持って歩こうな」

 

また手を握られ、ゆっくりと引かれる

 

「……う、っく」

 

進みたいのに進めない、かすかに痙攣を繰り返す足を見て

 

「ゆっくり行こう、な?」

 

「はい」

 

仕事の合間、合間に来てリハビリを手伝ってくれる龍也様、少しずつ惹かれ始めるのを自覚しながら半年後、漸く歩けるようになり声も普通に出せるようになった。今思えばこのときが1番楽しかったのかもしれない。

 

半ネクロの私を受け入れてくれた六課の皆と龍也様と過ごす毎日はとても楽しかった、お父さんもお母さんも死んでいなかった、でもそれに代わる仲間がいてくれて、それがとても楽しかった。でもそれはいつまでも続かない

 

「……え……あっ? あああああああッ!!!!」

 

身体がバラバラになる……

 

ただひたすらに痛い……

 

腕を漆黒の装甲が覆い服が破ける音と共に視界の隅に蝙蝠の様な翼が映りこむ。そして魔力が暴走を繰り返し、世界に皹が入っていく

 

「リーエ!!」

 

「ああ……た、龍也様」

 

世界が砕けその中に吸い込まれていく、嫌だ……消えたくない

 

翼で必死にそれに耐えるが、時間の問題だ……龍也様が近付こうとするのが見えるが暴走を繰り返す、魔力で近付く事さえできない

 

「うっ……」

 

翼が折れる嫌な音と共に身体が宙に浮いて、狭間の中に引き込まれていく

 

「リーエ!!」

 

投げ渡される剣十字のペンダント

 

「絶対また会えるから!! 絶対に手放すな!!」

 

その言葉を最後に私は世界から弾き飛ばされた……

 

 

 

「……夢ですか……これで1478回目のあの時の夢ですね」

 

懐のメモにまた線を注ぎ足し、身体をチェックする。痛みはない、魔力も回復してる

 

「……まぁ2478回みた皆と再開する夢を見るよりかはマシですね」

 

あの夢を見ると未だに現実を認識した瞬間に泣いてしまう、それを考えると私の心に残る一番楽しかったとき夢の方が良い。頑張ろうって気になれるから

 

「……90年経って漸く16歳前後ですか、一体普通に成人するのに何年かかるやら」

 

苦笑しながら立ち上がり翼を変化させてローブとフードにする

 

「……また会えて、龍也様がおじいさんになって居たらどうしましょう?」

 

半ネクロの私は歳を取るのが遅い。 どれくらいのスピードなのかは判らないが、とりあえず90年で6才から8才くらいだと思う、胸とか身長での判断だが、とりあえず成人してないのだけは判る

 

「……まぁそれはそれでありとしましょう。では行くとしますか」

 

次の世界は一体どんな物だろうか? 今度こそ元の世界が良い、いや贅沢は言わない、せめて龍也様が居る世界が良い

 

「……まぁ過度な期待は止めておきますか」

 

90年もこんな事を繰り返していれば精神的にも強くなる、最初の方なんて龍也様が居ないだけで何度泣き崩れた事か。確か20年経つくらいまではそんな感じだったと思う。そんなことを考えながら新しい世界に足を踏みいれた

 

「……どうも、こんにちわ」

 

街でばったり出会わせた銀髪の青年に挨拶をする

 

「ネクロなのか?」

 

私という存在を前に不思議そうな顔をする青年に

 

「……私はネクロでも人間でもない者。貴方は私を悪と見なしますか?」

 

1700回目の問い掛けに

 

「そうだな。違うんじゃないかな? 私は君という人間を知らないから。 それで君の名は?」

 

「……リーエ」

 

この世界も私の求めるものと違う、でも……少しだけここにいるとしましょう……だって407回目の伸ばされた手を掴みたいと思ってしまったから

 

 

 

 

 

街の中で黒いコートの青年とローブの少女が描き出されていた本が独りでに閉じる。それと同時に現れた黒い帽子の男が淡々と語り始める

 

「運命と言うのは時に残酷です。 不死に近い身体を得たリーエ嬢。 彼女が望む世界は一体何時彼女の前に姿を見せるのでしょうか?」

 

無数の本が浮かび上がりページを開く

 

「運命という鎖に繋がれた彼女はこれからも旅を続けるでしょう。 そしてそのたびに出会いと別れを繰り返しながら。 何時の日か心から休める場所を探して」

 

最後に浮かんだ本のページに黒いコートの青年によりそうように眠る、ローブの少女の姿が描き出される

 

「それではまたいずれ、彼女の物語を語るとしましょう。ではその時までしばしの別れを」

 

 

 

番外編 運命と言う波の中で 終わり

 

 

 




何か思いついてしまったので感じるままに書いてみましたがどうでしたでしょうか?
もし面白かったのならまたリーエさんの話を番外編で書いてみようと思います

それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします
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