祝福の風の決意
龍也がリインフォースを救ってから1週間・・彼女は六課の一員として受け入れられていた・・私が廊下を歩いていると・・
「おう、リインフォース何やってんだ?」
後ろから鉄槌に声を掛けられ、私が振り返りながら
「鉄槌か」
私がそう言うと鉄槌は眉を顰めながら
「だから・・私は鉄槌じゃねぇ!!ヴィータだ!」
そう怒鳴る鉄槌に
「すまない・・て・・いやヴィータ・・」
私が謝りながら言うとヴィータは
「良い加減によ、私達の事を鉄槌とか呼ぶの止めてくれよ」
呆れたように言うヴィータに
「判っているのだが・・遂・・な」
私がそう言うとヴィータは
「まぁ・・直ぐに治せとは言わないけどよ・・所で何処に行くんだ?」
笑いながら尋ねて来るヴィータに
「その・・兄上様の所に行こうと・・」
私がそう言うとヴィータは
「兄貴・・?・・聞いてないのか?兄貴は今日居ないぞ?」
えっ・・私が停止しているとヴィータは面白く無さそうに
「今日はよ・・フェイトと一緒に本局で用事があるんだってよ」
不機嫌なヴィータ・・昔からだがヴィータは兄上様に・・その・・多大な好意を持っている様で・・これは勿論妹としての物ではなく・・その・・女としての好意だ・・私がそんな事を考えているとヴィータは
「まぁ・・そんな訳でよ、兄貴は今日居ないんだよ・・夜には帰るそうだからよ、それまで待ってろよ、んじゃな・・私は新人の訓練見に行って来るからよ、リィンとかと一緒にいろよ」
そう言うヴィータに頷き、私はリィン達の居る食堂へ向かった・・
「あっ!お姉様です!」
「本当だな、姉だ」
にこにこと手を振るリィン・・彼女のフルネームはリィンフォースⅡ・・つまり・・私が残したデータを元に主はやてが作り出した私の生まれ変わりの様な存在なのだが・・彼女は私の事をお姉様と呼ぶ・・最初は困惑したが・・今は少し嬉しいと思う・・そしてその隣に居るのは兄上様が助けた融合騎でアギトと言うらしい、少し勝気な所がヴィータに似ていると私は思っている・・私はリィン達の所に行き椅子に座ると、後ろから
「持って来ましたよ・・あれ?お姉ちゃんも一緒ですか?」
「!・・わ・・私は・・や・・やっぱり・・か・・帰ります・・は・・放して下さい~」
何かの布を持って来たユナと私を見て逃げ帰ろうとするアザレアをユナが掴んで引きとめる、彼女達が兄上様の融合騎で、ユナは私と同じ様に消えてしまった、セレスという融合騎の二代目で、アザレアは詳しくは教えてくれなかったが、元は誰かの融合騎だそうだ・・アザレアは人見知りが激しいらしい・・逃げようとするアザレアにユナが
「アザレア、お姉ちゃんはお兄ちゃんの家族です、逃げるのは失礼ですよ」
そう言われたアザレアは逃げようとするのを止め、出来るだけ私と距離を取って椅子に座った・・今から何をするのだろうと私が考えていると
「今からですね、お兄様の人形を作るんですよ!図面ははやてちゃんが書いてくれました」
リィンが笑いながら図面を見せてくるが・・
「・・??」
意味が判らなくて首を傾げていると、ユナが図面を私に渡しながら
「初めてですから判らないですよね?私が教えてあげますからやってみませんか?」
私は図面を受け取ってよく見る・・確かにパーツごとに分割されているが、確かに兄上様のデフォルメされた姿が書かれていた・・リィン達のは少し違っていて、騎士甲冑やBJを身に着けている兄上様の姿が書かれていた・・私が図面を見ているのに気付いたアギトが
「私達のは兄とユニゾンした時のやつで、姉のは普通の基本のやつだぜ・・完成するとこうなるんだ」
アギトがポケットから兄上様の人形を見せてくる、管理局の制服に黒いコートを着ている何時もの兄上様の姿をそのままに・・可愛らしくデフォルメされた人形を見て
「・・私も・・作れるのか?」
その人形が私でも作れるのか?と尋ねるとユナが
「大丈夫ですよ、私がちゃんとお姉ちゃんに教えてあげますから」
私はその言葉に頷き、ゆっくりとぎこちない手で配られた布に図面を書き写し始めた・・私が苦戦してると、紅銀の瞳になったアザレア?が
「違う、ここはこうだ」
私の手からペンを引ったくり図面の間違いを訂正してくれる、さっきまで私と話そうとしなかったアザレア?が話しかけてきた事に驚いていると、アザレア?は私の眼を見ながら
「私の名はアリウム・・アザレアのもう1つの人格だ・・今まで自己紹介が遅れて申し訳なかった・・余り私は表に出ないが・・よろしく頼む姉上様」
そう言うアリウムに
「ああ・・こちらこそよろしく頼む・・」
そう返事を返すとアリウムはユナに
「ユナ、姉上様は私が見よう」
そう言うアリウムは私に丁寧に教えてくれ・・作り始めてから3時間後・・
「で・・出来た・・」
私の手の中には兄上様の人形があった・・少し不出来な所もあるが・・充分すぎる・・私がその人形を見て1人納得していると
「何してるんだ?リインフォース?」
突然シグナムに話しかけられ驚いてその人形を落としてしまう・・地面に落ちかける前にシグナムがそれを拾い上げ
「兄上の人形か・・よく出来てるな」
そう言って私に人形を返してくれたシグナムは
「もう直ぐ兄上様が戻る、もし見られて恥かしいなら部屋に戻した方が良いぞ」
そう教え、直ぐに何処かに行くシグナムの後姿を見ているとリィンが
「シグナムも同じ人形を持ってるんですよ?・・何時も枕元に置いてあるんです」
そう教えてくれ私は少し驚いた、シグナムは兄上様に好意を持っていた・・だがそれはあくまで兄妹としての物だった筈なのだが・・私はそんな事を考えながら持っていた人形を抱き抱えながら自分の部屋に戻った・・私が食堂に戻ると兄上様が居た
「兄上・・!?」
私は声を掛けかけたが、それを呑み込み食堂の柱の陰に隠れた
「龍也、美味しいね」
兄上様の周りにはフェイトや・・確か・・スバルとティアナと言う名の少女達が居り・・楽しそうに食事をしていた・・兄上様は少し困ったような顔をしながらも食事を楽しんでいるようだった・・私はその光景を見ながら・・
「胸が・・苦しい・・」
自分でも判らない不快感を感じていた・・どうして私があそこに居れないのか・・どうして私や主はやて達ではなく、フェイト達に笑いかけている・・そう思うと胸が苦しくて仕方なかった・・
「・・?」
兄上様と一瞬目が合いかけるが、自分から目を逸らし逃げるようにその場を後にした・・兄上様と話したかったがそれ以上にこれ以上あの光景を見たくなかった・・私は逃げるように自分の部屋に戻り、扉に鍵を掛けてベッドに横たわり・・自分で作った兄上様の人形を抱き抱えながら
「私はどうしてしまったのだ・・」
私はただ兄上様の傍に居たかった・・名を呼んで欲しかった・・ただそれだけの筈なのに・・最近兄上様となのは達が話していると胸が苦しくなる・・・そしてそれと同時になのは達が酷く憎いと思った・・
「判らない・・この気持ちは一体何なのだ・・」
自分でも訳の判らない感情に困まりながら人形を抱き抱えベッドの上を転がりまわる・・そして私は1つの答えに辿り着いた
「わ・・私は兄上様が好きなのか!?」
この行動は見た事がある、主はやてやヴィータが良くやっていたからだ・・私は自分の出した答えに・・
「駄目だ・・この想いは叶う事はない・・」
直ぐに否定的な答えを出す・・私のこの願いは叶う筈が無いのだ・・兄上様の隣は主はやての物だ・・そこに私の入る隙間は無い・・だが・・
「せめて・・諦める前に良い思い出が欲しい・・」
私のこの気持ちは・・多分本物だ・・だが・・それは願ってはいけない事・・私はそう考え・・最後に良い思い出をと・・思い枕を抱き抱えながら兄上様の部屋に向かった・・
(あの時のぬくもりを最後にまた得て・・私は兄上様の事を諦めよう・・)
消える前の最後の晩・・私は兄上様と一緒に寝た・・暖かくて・・それで居て心が満たされた・・最後にその温もりを感じて・・兄上様の事を諦めよう・・兄上様の隣は主はやてとヴィータの・・いやシグナムの物だ・・そこに私の居場所は無いのだ・・私はそんな事を考えながら兄上様の部屋の前に行き扉を叩いた
「・・誰だ・・なんだリインフォースか・・どうしたんだ?」
笑顔で尋ねて来る兄上様は寝る前だったのかパジャマ姿だった・・私は兄上様に
「えっと・・ですね・・そのですね・・一緒に寝たいと思ったのですが・・駄目でしょうか?」
私がそう尋ねると兄上様は
「別に良いぞ、おいで」
私はすんなり良いよと言ってくれた兄上様に驚きながら部屋の中に入った・・部屋の中は綺麗に整頓されていた・・兄上様は欠伸をしながら
「すまんが・・今日は疲れた・・私はもう寝るが・・リインフォースはどうする?」
そう尋ねて来る兄上様に
「私も寝ます・・」
そう返事を返し私は兄上様と一緒に布団に入った・・
(何だ・・この胸の高鳴りは・・)
前は感じなかった胸の高鳴りに私が困惑していると・・隣から穏やかな寝息が聞こえてくる・・
「もう寝てしまわれたのか・・」
よほど疲れていたのだろう・・直ぐに寝てしまった兄上様の寝顔を覗き込み・・顔の前で手を振ってみるが反応が無い・・どうやら完全に眠っているのだろう・・私がそんな事を考えていると、兄上様の手が伸びてきて私を抱き抱える
「!?!?」
突然の事に私が驚いたが、私は
「んっ・・」
兄上様の胸に顔を埋め、兄上様の背中に手を回し抱きつきながら・・
「暖かい・・」
包まれているようなこの感じ・・まるで陽だまりの中に居るような心地良さを感じ・・私は・・
(駄目だ・・兄上様を諦める事なんて出来ない・・私はずっと・・傍に居たい・・)
この暖かさを知ってしまっては駄目だ・・諦めようと思っていたが・・そんな事は無理だと私は思った・・
(明日・・主はやてに言おう・・それで主はやてに嫌われても良い・・私はずっと・・兄上様の・・そ・・ば・・に・・)
私はそんな事を考えながらその暖かさに呑まれ・・直ぐに寝入ってしまった・・そして次の日私は兄上様を起こさないように布団から抜け出し・・主はやての部屋に向かった・・
「・・・」
私は主はやての部屋の前で・・
(仮に私が兄上様の事を好きだと言ったらどうなるだろう・・主はやては怒り狂うかもしれない・・)
主はやては私から見ても独占欲の強い人だ・・私がそんな事を言えば・・怒り狂った主はやては私の事を嫌いになってしまうかもしれない・・でも・・
「私は兄上様が好き・・この気持ちに嘘はつけない・・」
私は覚悟を決めて主はやての部屋の扉を叩いた
「ん?・・誰やこんな朝早くから・・なんやぁ・・リインフォースかぁ・・そんな所に立ってないで部屋の中に入りよ」
笑顔で招き入れてくれる主はやてと暫く紅茶を飲みながら話をしていたが・・私は自分がここに来た目的を主はやてに切り出した・・
「主はやて・・大事な話があります」
私がそう言うと主はやては椅子に座りなおし
「そんなに改まるって事は相当大事な話しやね」
そう笑う主はやてに私は頭を下げながら
「最初に言っておきます・・申し訳ありません・・私は・・兄上様が好きです・・最初は傍に入れるだけで良かったんです・・でも今はそれだけじゃ嫌で・・私を見て欲しくて・・兄上様に好きになってもらって欲しくて・・すいません・・私はこの自分の気持ちに嘘をつけないんです!!」
私が捲くし立てるようにそう言うと主はやては穏やかに微笑みながら
「良かったぁ・・リインフォースも兄ちゃんが好きなんやね?嬉しいわぁ・・味方が増えたで」
怒られると思っていたのに、予想に反して笑いながら言う主はやてに
「怒らないんですか?」
そう尋ねると主はやては
「何で怒るんよ?・・リインフォースも兄ちゃんを好きなんやろ?・・怒る必要なんか無いわ、私としては味方が増えて嬉しいわぁ」
そう笑う主はやては私に兄上様を囲む状況を説明してくれた・・今兄上様を好きな者は13人居り・・その内時分の味方は、シグナムとヴィータで・・後は皆敵で・・自分達から兄上様を奪おうとしていると・・主はやては説明を終えると手を差し出しながら
「これでリインフォースも私の味方・・兄ちゃんに私達を好きになって貰って・・ずっと兄ちゃんと一緒に居よう?」
そう笑う主はやての手を握り返しながら
(そうか・・私達から兄上様を奪おうと言う者達が居るのだな・・そんな事はさせん・・兄上様は・・私達の物だ・・)
リインフォースがそんな事を考えている中・・龍也は
「リインフォースどこに行ったんだ?」
一緒に寝た筈のリインフォースが居なくなっている事に首を傾げていたりする・・
祝福の風の決意 終り