それが仮面ライダー   作:ふくつのこころ

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怒涛の十九話


疾風

 トライドロンは吹き飛ばされ、雄之介に向かってアンは叫んでいるのが一転して液晶画面が多量出現、それらに浮かぶ。

 耳を小さな手でふさぎ、目を閉じて丸くなる。

 それが楽だった、そうしていれば誰かが自分を護ってくれる。

 父のように、伯父のように強い人が―――。

 

『よくも……、よくもッッ!何をしてるんだ!実験!?被検体!?計画、そんなの知らない!マリちゃんとタクミをよくも……ッ!聞き入れろ、ペンダントッ!』

 

 一つの液晶画面に浮かぶ、覚醒の日。

 自分の足元に転がっている、仲の良さそうな二人の死に顔。

 踏みにじっている研究者に対して吼える為、怒ったっけ。

 細い身体を引き摺り、その画面を見る。

 

『ウ、グ、ァァァァアアアアッ!』

 

 身体を変化させ、ペンダントの石を中心に広がる光。

 その光がやんだ後、現れる異形はまるで昆虫のよう。

 それをきっかけに顔立ちの整った少年が号令を取り、実験体の中で戦う意思を持っていた者達が一斉に姿を変える。

 心臓を思わせる紅い怪人になった、ハート。

 どこか神々しくも、けれど希望を与えてくれる力強さをもった姿になったアギト。

 溜息をつきながらも、蝙蝠を思わせる怪物になったヴェルメリオ。

 

 理不尽を許さず、子供ゆえに外の厳しさを知らないまま生きてきたからこそ、目の前で行われている理不尽に抗うことを決めた小さき異形たち。

 一見すると利己的、けれども彼らにとっては大儀。

 挑むことこそ存在理由、大切な者とそこにあることが生きること。

 痛いこと、辛いこと、投げ出したいこと。

 それらで得た力とはいえ、ともだちを助けられるならば彼らは躊躇わない。変身した者はいつだってそうだ、現状を『変える』為、何かを為すには自分が『変わる』ことが必要。

 

 だから変身する。

 それがエゴであったとしても。

 それが認められぬ主張であったとしても。

 示さなくては戦えない、示さなくては突きつけれない。

 

 示してこそ。

 力は示さなければ意味がない。

 

 それが彼らの言い分。

 

「うるっさいなぁぁぁッ!みんな、みんなこわれちゃえばいいんだ!しずかにさせてよ、しずかなばしょにいさせてよ!ほうっておいてくれよっ!」

 

 幼児の視界が捉えたのは、金髪の女性の涙であった。

 

「みえちゃうよ」

 

 そんな我侭は、輝きと共に叶えられる。

 

 

 

「……なんだ?」

 

 死神博士は魂の抜け殻となった青年に起きた変化を疑う。

 視界で捉える分には何の問題もないが、『動き』がある。

 言いようのない、なんとも不思議な動きが。

 その動きが死神博士の拘束を解き、薙ぎ払う。

 まるで昆虫のように這い蹲る姿勢をとり、死神博士を睨む様子はまるで威嚇しているかのようだった。

 瞳の色は変わらず、姿も特に変化なし。

 

 しかし、その頭部には触覚があった。

 昆虫の触覚があった。

 

 (ぴか)

 

 輝きが周囲を包んだかと思えば、現れたのは昆虫のような怪人。

 

「ユーくん……?」

 

 その異形に最初に声をかけたのは灰色の槍を持つアンだった。

 異形はその声をきっかけに背中の羽を広げて跳ぶ、飛ぶ。

 

 その手に掴まれた痕、顔に殴られた痕があったから。

 

 

嗚呼々々々々々!

 

言葉にならない咆哮、異形の姿はまさに昆虫のそれであった。

 

手には鎌がつき、踵からは棘が映え、肩にも棘。

そして禍々しい口は開き、ズラリと並んだ牙が存在を主張する。

 

「な、なんなんですかねぇ?ってか、なんなんだよ!?お前はァァァァ!」

 

 エターナルは異形に最初に挑んだ。

 得物で異形を斬り、切り、切り裂く。

 しかし、異形はそれらの攻撃に対してまるで甲羅のように硬い肉体で刃を通さない。

 むしろ、その身体を使って鋭く尖った爪でエターナルの白い装甲を剥ぎ取らんとする。

 エターナルエッジの攻撃は確かに通じていた、しかし、オーディンの加護を受け、ただ戦うことにのみ特化したベルセルクがそうであったように昆虫のような異形もまた暴走状態にある。

 

「エターナルの装甲が……、エターナルの装甲が!よくもッ!また何かのガイアメモリのチカラだろ!」

 

『マキシマムドライブ!エターナルウェーブ!』

 

 二十六本のガイアメモリが終結し、緑色のエネルギーをエターナルの体中から迸らせるが異形には効果はない。むしろ、そのエネルギーの波を齧りとるように食らい、エターナルに襲い掛かって残りの装甲をはぐと白髪の神父が現れる。

 その手にある聖剣計画によってできた、聖剣の一本で切りつけるが、得物を発見したとばかりに柔らかい肉に食らいついて滴る血を喜んで咆哮を上げ、啜りとる様子には流石にフリードも断末魔を上げた。

 それをただただ見守ることしか出来なかったが、光の槍を作り出してコカビエルが異形に向かってゆく。

 

「その姿は……、今は良い。『     』、どうだ?俺とお前で戦争を起こさないか?」

「待て、コカビエル。貴様に協力する代わりに私の邪魔はしないとしたはずだが?約束を反故にする気かね?」

「いや、そのつもりはない。ただ、エターナルの装甲、そしてエネルギーを食らい尽くしたとあれば俺を含めて兵力は十分だと思ってな」

 

 きっと、雄之介が正気であれば気が気でないコカビエルの言葉。

 死神博士は自分の実験を横取りにされたかのように不機嫌な表情でコカビエルに口出しし、もう、アンのほうを向いていない。

 

 失敗したと思っていた実験が成功していたと知り、喜びが隠せないと言った様子だ。

 そこにハートがふらふらと足取りがおぼつかないまま、死神博士を睨む。

 

「ま、待てよ……。散々、『   』を馬鹿にしておいてそれか?許せねえ、取り消せ!そして、連れて行かさせやしないぞ!そいつは俺の友達だ!いや、俺たちの友達だ!死んで行った仲間の分、償ってもらおうか!もちろん、『    』を返してもらおう!」

「ガラクタが。何を言っているんだか。一度の完全体となるにあたってのエネルギー消費の効率が悪いからこそ、貴様はこいつに劣っているんだ。この四号、サイクロン形態は実にいい。だからこそ、こいつは初代超人(ファースト)に近づけたマガイモノだ」

「だから、その言葉をォォォォォ!取り消せって言ってんだろうが!」

 

 紅いオーラを纏い、怪人態となるとハートは更に濃いオーラに包まれる。

 すると、先ほどよりパワーが上昇し、死神博士に即座に近づいたかと思えば、拳を叩き込もうとし、コカビエルがまさに『横槍』を挟む。

 

「……なるほどな、まさにこれが横槍か」

「ぐ、ぐぁぁぁ……」

「思いあがるなよ、ガラクタ。コイツもそういっている、と賛同するのは癪だが、そんな状態でどうするつもりだ?」

 

 コカビエルが超戦闘形態(デッドゾーン)となったハートを一蹴したとき、垣間見える電子回路。

 そこにすぐに動いたのは、沈黙していたはずの昆虫のような異形・サイクロンであった。

 

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