なんとか配布のアサシン式が我がカルデアに来てくれましたが、魔眼を持たない私ではセイバー式が当たる確率が見えないようです
サイクロン態が動き出すと、ハートの表情に笑みが広がった。
あの時の、強者としての
しかし、どこか様子がおかしい。
「……雄之介?」
サイクロン態は死神博士を狙うように見えたが、ただただ暴れているだけにしか見えなかった。コカビエルを襲い、グレモリー眷属を襲う。それこそ、サイクロン態にとって、その心にとっては最も不本意なことであると知らず。
「ハートロイミュード、どうして被検体四号が最高傑作かわかるか?それは、四号は怪物には似合わない“信念”となる考えを持っているからだ」
『信念、だと?』
「そう。超人・スカルから力を受け継ぎ、その思考はスカルのそれに染まっている。違和感を感じなかったか?被検体の中で最も心が折れなかったことを」
ジョーさんには心当たりがあった。
ロストドライバーとジョーカーメモリ、そして超人ジョーカーの名前にこだわる様子。
まさに病的、取り憑かれているともいえる傾向。
『まさか……。そういうことか!君は知っていたのかね?アン』
「……うん。初めて会った時から、ユーくんは壊れてしまいそうな印象だった。帽子を被るのが好きみたいだから、汚れがついてるからって触ろうとしたら……」
「怒鳴りつけた。いやはや、超人スカルの変身者の男と同様の行動だ。理解しかねるね。私が生み出したのは
ハートはサイクロン態を見やる。
そして、自らの手ともう一人の紅い友を浮かべる。
自分たちが生き残れたのは、信念があったから?心が強かったから?
いや、そんなものではない。
もっと単純なものであった。
「俺たちは生きたかった。それじゃダメなのか?そこにいる雄之介のガールフレンドだってそうだ。俺たちは必死だった、俺たちは生きたかった!」
「改造人間に生死を決める権利なぞあるものか。利用できなければ死あるのみ。それが創造主により生み出された、被創造主の定めだ。ホースオルフェノク、ハートロイミュード。ハートロイミュードは欠陥品だが、あのファンガイアの王子は厄介だ。それに白龍皇もな」
ハートはゆらりゆらりと立ち上がり、キッと死神博士を睨み付けた。
「勝手に捕まえておいて、何が定めだ!」
破ァァァァァァ!
力を込め、ハートロイミュードとなると死神博士に組み付く。
死神博士は改造人間を生み出す上で“変身”する力を手に入れることに成功したのをハートは知っている。それにこちらの怪人態での能力なんて知られているに等しい、それこそ最初から限定解除でもして超パワーで押し切るしかあるまい。
それも、相打ち覚悟を狙ってだ。
今では同胞こそ多いが、友人はヴェルメリオとサイクロン態になってしまって暴走している雄之介しか自分の親友はいない。
この壊れた身体がどこまで持つのか、どこまで届くのか。
「サイクロン態を気にしているのか?ハートロイミュード」
「何を言っているのか、さっぱりわからないな、死神博士」
「隠しても無駄だ、そんな身体になっても負傷しても変わらん。バットファンガイア、ハートロイミュードに四号。私が生み出した中でも優秀な者たちだ、覚えているだろう?貴様らの脳波データから私は次の行動を予想することができる」
少し遠くのほうで、雄之介の名前を呼ぶ少女がいる。
彼女はホースオルフェノクと呼ばれ、死神博士が四号である雄之介と結んだ良好な関係に歓喜していた存在。
彼女もまた雄之介に救われた存在だ、常に大切に持っている宝玉と同じくらいに怪人態で暴走している青年は思っている。帰る場所があるのならば、失わせてはならない。
『もしも、僕の願いにこたえてくれるなら!輝いてくれ!キングストーンフラッシュ!』
ふざけたネーミングだと思った、しかし、その部屋の外からでも眩しさは絶えず。
聞いたところによると、「女の子にひどいことをしたからだ」と言っていた。憧れのおやっさんとやらははーどぼいるどという奴だろうが、彼はそんなのではない。
未熟で優しくて非道になれない、半熟卵。
固ゆでになれなくとも、その優しさで包み込んでくれる太陽。
「おい、雄之介のガールフレンド!なんとかして止めてくれ!今はお前に俺たちの友達を託す!」
「で、でも……」
『彼の言うとおりだ。アザゼルにも私からは問い合わせてみよう、あのままでいいと思わないのは君もそう思っているはずだろう?アン』
「私は……」
唐突に赤い怪人に声をかけられた。
それも雄之介の昔の知人ともいえる人物に。きっと、彼らはそれほどに南雄之介という青年を大切に思っているのだ。
決して万全と言える体調でなかろうとも、友の為に戦う。
それが彼らの流儀らしい。
ジョーさんが宥めるような声でアンに提案する。
科学者であるアザゼルならば、なんとかしてくれるはずだと信じていたから。
「こいつを……、雄之介に!」
ハートロイミュードの胸にある鉄板、それを引きはがしてサイクロン態へと投げる。
サイクロン態は暴走しているとはいえ、その身体がぼろぼろになろうとも気にせずに拳、噛みつき、蹴りを繰り返している。
当然、グレモリーのほうにしろ、他の援軍らしき人物にしろ抵抗しているが北欧神話のオーディンの加護を受けた兵士のように狂ったように戦う様は戦意を削ぎつつ、その中でも戦意を失わない紅い鎧に身を包んだ者と戦っている。
そして、サイクロン態の背後に落ちるナンバープレートにはハートの被検体番号が刻まれている。
音のした方向に向かうと、サイクロン態の視界に入ったのは友の被検体番号。
「これは……」
呆気ないと言えば呆気なかったが、それがサイクロン態に生まれた隙でもあった。
怪人態が解け、その隙を狙ってアンとジョーさんがサポートして運転するトライドロンが回り込み、負傷した雄之介を載せて走り去ってしまった。
プレートは、もちろんない。
「どういうつもりだ、ハートロイミュード」
「傷つくのを嫌う奴だからな、誰かが。それでも自分が戦うのには誰かを護れる強さがあるから、って言うもんだから目を見開いちまったね」
火花が零れ、死神博士の背後からの奇襲に反応し、拳だけで受け止める。
ハートロイミュード形態が解け、それでも合間合間から覗くことのできる電子回路のショートを見るに鉄板を力づくで自分で引きはがしたのは愚行と言えよう。
「けど、こうでもしなくちゃ立ち上がれない。あいつはそういう奴だ、臆病なくせに誰よりも先制して前に立つ。あいつが四番な理由がわからないな、一番でもいいくらいだ」
「なにがいいたい?ハートロイミュード」
「お前に応える義理はないさ」
人間の状態でもなお、その怒りを隠せないハートは死神博士の胸を殴りぬく。
途端、破裂音が周囲を包み込む。
砂塵が舞い上がり、木の葉は流れ、煙が巻き上がる。
「今のうちに撤退するわよ!」
「「「わかりました」」」
「で、でも部長……ッ!」
「超人が勝てないほどの実力者なのよ?私たちに何かできるとは思えないわ。わかって、イッセー」
「……ッ!」
リアス・グレモリーは撤退を拒む紅い竜を宿す眷属を諭すと、眷属は拳を握り締めた。
自分の無力を噛みしめる眷属に寄り添い、彼らも撤退を行う。
常時なら暴走しがちなきらいがあるリアスであったが、今回はどうもそうしている場合ではないらしい。
堕天使総督のアザゼル製であろう車両とAIのようなもの、ああいうのを欲しがるのはリアスの兄やそのほかの魔王くらいであろう。力不足を悔しがりつつ、撤退することとした。
(ヴァーリ、ユー兄さまを……)
その中で朱乃は銀髪の幼馴染の助けを願った。
四人の中で慕う者がいないも同然の青年を助けてほしいと。