『Are you ready?用意はいいか、雄之介。トライドロンのドライブはフルスロットルで君自身も行かなくては振り下ろされるぞ?』
「それは困る。だから、サポートを頼むよ。ジョーさん!」
『OK!君がナイスドライブを行えるようにしよう!』
アクセルを踏み込むと、トライドロンはミノタウロスのほうへと向かって前進する。
その黒いボディは太陽の下で黒光りしており、ジョーカーのカラーリングはアンから見てもカッコいいと思えた。
切れ味を強化した魔剣を魔剣創造で作り出し、それを両方の手に握って振るう。
徒手空拳を得意とするとはいえ、ジョーカーに変身した雄之介に状況が状況であれば魔剣を作って渡すときもある。
そのときは彼の、ジョーカーに合うカラーリングとしている気遣いを雄之介は気づいていまい。
「……絶対、ノリノリなんだろうなぁ、ユーくん」
「アン!そっちに行ったぞ!」
「わかった!」
トライドロンの車線上に入らないようにしつつ、白龍皇の光翼の
赤龍帝の篭手の禁手の
その白い姿が宝玉の点滅もあり、美しく見えるのは戦場の華と言えよう。
自分では認めたくないが。
アンのほうに向かってきたミノタウロスの突進を避ける。
白龍皇の光翼の能力、『力を半減させる』能力を部分使用したことでミノタウロスの脚力は弱まっている。
狩猟するのに困る分、肉が美味しいと聞いたのならば飛びつかずにはいられないが、雄之介のストッパーとしてテンションを上げる様を見せられないのがアンの辛いところだ。
もう一振りの魔剣、
「はぁぁぁぁぁッ!」
他の魔剣のように属性付与で火炎で燃やしたり雷を纏ったりと派手なことは出来ない分、便利なのでアンは気に入っている。
特にミノタウロスのような純粋なパワータイプであれば尚更だ。
高速移動による接近、こういうのをキャッチアンドリリースと言うべきなのか?
そんなことを考えるアン、ミノタウロスの表皮を切りつける。
鈍い音が周囲に響く、まだ刃が通らないほど体力を消耗していないらしい。
――なにか起きそうだなぁ。
ミノタウロスを轢き殺すつもりでいるのか、前進したかと思ったらトライドロンの動きが止まっている。
雄之介は新しいものを使うと、必ず何か事件を引き起こすトラブルメーカーだ。
慣れてきたところで力を上手く使いこなせるようになるので、沢山、鍛錬すれば安定させることが出来るので努力の人であるのは間違いない。
Tridron
「どうして止めるんだよ、ジョーさん!?」
『落ち着け、雄之介。ただ走るだけがトライドロンではない。ジョーカーメモリに力を込めてみたまえ』
「メモリに?」
ジョーさんに言われたようにジョーカーメモリに力を込めてみると、トライドロンの周囲を覆う紫色のオーラが見える。
ジョーカーの必殺技である、ライダーキックやライダーパンチを放つ際に拳と足が纏う色に似ている。
アザゼルの趣味だろうか?
「え、なにこれ凄い!ジョーさん!トライドロンがオーラ纏ってるよ!」
『Yes!これがトライドロンの装備の一つ、オーラショットだ!さぁ、撃て!雄之介!』
オーラを撃て、と言われて雄之介はどうすれば良いのか分からなかった。
『なにをしているんだ?雄之介。ミノタウロスに向けて狙いを定める。それだけじゃないか』
「それでいいのか?」
『offcourse!』
静かに精神統一し、それからトライドロンのフロントガラスから見えるミノタウロスに向けて狙いを定める。
すると、ミノタウロスのほうを見てフロントガラスの上で紫のジョーカーを模したマークが重なる。
打ち出すための引き金らしいものは見当たらないが、その必要はないようだ。
思念を送ると、車体がぐらりと揺れた感覚がする。
『Tridron!EnergyShoot!』
「!?」
車体から打ち出された紫色のオーラ、それがミノタウロスに命中――
「凄い!トライドロン凄いな!」
『これくらい容易いものだよ』
――しなかった。
「なぁ、ジョーさん?ミノタウロスにオーラショット当たってないんだけど?」
『……そういう時もある』
ミノタウロスにオーラショットがヒットせず、地面に着弾したことでかえってミノタウロスを怒らせたようだ。
ミノタウロス相手に徒手空拳で立ち回っている戦闘狂の同僚、高速移動と魔剣で立ち回る世話焼きな金髪少女。
その二人に流れ弾で当たらなかったのが幸いだったが、ふと金髪少女のほうを見てみるとあちゃーと頭を抱えていた。
二刀流をしていることもあって、手が離せないのだろう。
顔だけで感情を表している。
やはりやらかしてしまった、と雄之介が思っているとミノタウロスに肩を竦めたのを雄之介に見せて切りかかりに行った。
「試運転がー……」
『君、本番に弱いといわれないかい?』
「いや、そんなことは……ある」
『やっぱりか』
もし、ジョーさんに肩があればきっと竦めていただろう。
ジョーさんの声のトーンが落ちていると、がっくりと雄之介も肩を落とした。
本番に弱いといわれるのは誰であれ、たとえ、車両のAIであっても落ち込むものだ。
しかし、
「ジョーさん」
『なにかね?雄之介』
「後ろからミノタウロスが来てるんだけど、自動操縦はできる?」
『……私を誰だと思っている?』
ジョーさんは雄之介の目を見て感じた。
「なら、頼むよ」
このドライバーは、この青年は確かに強い意志を持っていると。
本番に弱いと断じた青年だが、多分、そうじゃない。
「変身!」
ジョーさんは運転を自動操縦に切り替える。
今回はサポートを、雄之介の運転の補助だけであったが付き合ってみるのも悪くないかもしれない。
運転席のキーの傍から外したジョーカーメモリを懐から取り出したロスドライバーに挿入し、そのあとに同様の色と形状のものが現れる。
アザゼルが自動操縦をトライドロンで行えるように積んだ、ダミーシステム。
雄之介が車両から降りると、その姿は超人『ジョーカー』のそれに変わっていた。
「やっぱり、降りて身体を動かすほうがいいのかなぁ?」
Grrrrrrrrr!
そのミノタウロスの個体はアンが取り逃がしたものだった。
疾走しているトライドロンを得体の知れない物と認識し、恐怖を抱いたのだろう。
排除せねば、と恐怖に襲われているミノタウロス。
しかし、興奮しているようにも見えた。
余裕があるのか手首のスナップを利かせ、ミノタウロスが手に持つ斧を振り下ろされるより早く、軽いステップで回避する。
懐に入り込み、拳撃を入れる。
すると、重量を込めた安定した一撃を入れたことによってミノタウロスの体が揺らぐ。
『Shooooooooot!』
その隙を見逃さず、トライドロンから放たれるオーラショット。
トライドロンから聞こえる音声、おそらくジョーさんの声であろう。
これほどまでにノリノリな声、今日初めて聞いたものだが聞き間違えるはずがない。
雄之介自身がオーラショットを打ち出すよりも、正確にジョーさんが撃てるのは当然のことだ。
なぜなら、それがプログラミングされているから。
「それでも落ち込むんだよなぁ……」
倒れたミノタウロスを見つつ、フックロープとどこに収納してあったのか巨大な荷台に載せる。
拘束したまま載せているのもあり、運搬中に暴れるのではないかと考える雄之介。
相変わらずヴァーリは楽しそうだ。
やはり彼に安寧は似合わない。
そんなことを考えつつ、体育座りをしながらアンとヴァーリがミノタウロスと戦う様を見ているのだった。
Tridron
「やっぱり、予想通りかぁ……」
少し離れた距離でトライドロンの隣で体育座りをして見ている赤い一対の複眼に黒いボディの超人。
オーラショットが外れたことを気にしているんだろうか?
あれで結構、雄之介は落ち込みやすい性格であると今朝の出来事からよく分かる。
それに昨日今日の仲ではないのだから尚更だ。
「早く終わらせて帰らないとなぁ。運転できるのユーくんだけだし」
仕方ないと言った雰囲気、しかし、アンの表情はまんざらでもない。
スピードで翻弄しているうち、ミノタウロスのほうも疲れてきたようだ。
巨躯とアン自身のパワーが足りないこともあり、一度に倒せる数は少なく、ヴァーリや超人に変身できる雄之介がいなければ積極的に戦いたいと思う相手ではない。
「さぁ、まだまだいけるだろ!?俺を楽しませてくれよ!」
『ほどほどにしておけよ?ヴァーリ』
「分かってるさ!けど、楽しいじゃないか!」
『Divide!』
宝玉が点滅し、力が吸い上げられる感覚に襲われる。
「……早くあっちも止めよ」
アンの周りの男は面倒で世話を焼く必要があるなぁ、と再確認させられた。
アンちゃんマジ苦労人。
アンちゃんの容姿は金髪ロングの美少女。
戦闘時も髪を纏めずに戦っているのは邪魔にならないように編み出した動きのおかげ!らしい