台風のせいで予定していたことができなくて辛い。
原作介入はエクスカリバーからとなります。
ミノタウロスを討伐した後、ジョーさんに頼んで雄之介は魔力による荷台をトライドロンから出して載せた。
「ユー、これは便利だ。なあ、今度から修業する際は付いてきてくれよ」
「ねえ、ヴァーリ。それはユーくんをパシるの?どうなの?修業の相手というので良いんだよね?」
ゴゴゴ……、と笑顔で背後から黒いオーラを放つアン、それには強者でありバトルジャンキーな若き白龍皇にもよくわかる。
養父のアザゼルの放蕩を叱ったり、夜食を作ったり、雄之介のストッパーとなったりとアザゼルが拾ってきた子らの中では長女というやつではなかろうか。
実際、アンの歳はヴァーリより上で雄之介より下であるのは目測でわかる。
強者は敵の年齢という時まで測ることは容易なのだ。
「二人とも、帰らない?」
超人の姿から普段のカジュアルな服装に戻った雄之介は大きく欠伸をした。
黒い超人ジョーカーの姿、その姿での身のこなしははっきり言って人間離れしているのに対し、のんびりと頭の後ろで手を組んでいる様子は十代らしいといえよう。
「ん、そうしよっか。今夜はわたしが作るよ」
「アンの作る夕飯だと!?ユー!これは俺に譲れ!肉だぞ!これはアンに作ってもらうしかない!ハンバーグだ!ステーキだ!肉を食った後は俺と戦え!」
「えー、疲れたんだけどなあ……」
『狩猟の後は昂りやすいんだそうだ。雄之介、私は君がやるときはやる男だと信じてるぞ?』
ヴァーリの顔はまさに戦闘民族、戦いを求める戦士のそれである。
トライドロンの運転席の扉がいつの間にか開いていたのは、ジョーさんがトライドロンのシステムを弄ったのだろう。
超人ジョーカーをモチーフにしたスポーツカーが牛頭人身のミノタウロスを牽引している絵は非常にシュールだ。
人間は戦場に出ていると、本能が刺激されて子孫を残そうとする思いが強くなるらしい。
逆に闘争心が刺激され、戦いを挑んでくるのはヴァーリくらいだ。
「ヴァーリに聞いてない。ユーくん、何食べたい?ミノタウロスは使わないのになるけど」
「ビーフシチュー。久々に食べたい。ちなみにミノタウロスを使わない理由は?あとジョーさん、疲れたからヴァーリとは今はやりたくない」
素っ気ないというより、本当に疲れたというのが分かる雄之介の表情。
そうか、と残念そうなジョーさんである。
「ん?解体方法が難しそうなのと、わたしはユーくんやヴァーリみたいに力がないのと時間がかかるから。未知のものをいきなり殴らない……でしょう?」
アンの台詞は料理の例えでは最も(?)だが、未知のものをいきなり殴らないというところで間が空いたのは気のせいではあるまい。
なぜなら、身内に暴走バッティングマシンがいるからだ。戦闘民族は恐ろしい。
「禿げ上がるほど同意」
「おい!?どういうつもりだ、ユー!」
それから雄之介らはトライドロンに乗り、帰路に着いたのだった。
*
「おう、帰ってきたかお前ら。AIならぬ、DIはどうだ雄之介」
「ただいま、先生。DIって?」
ピットに戻ると、アザゼルが出迎えてくれた。
先にアンとヴァーリが降り、アンはふとアザゼルに尋ねる。
「DI……、堕天使知能ってことさ」
「でも、それ、おかしいよ。AIはオートインフォメーションのはずだし、DIだとダテンシインフォメーションじゃない」
「気にしちゃダメだよ、アンちゃん。アザゼル先生は、うん。†闇喰らいし光の力を宿す者†だから」
「ぐ、ぐああっ!?雄之介、聞こえてるぞ!?……トライドロンの調子はどうだ?」
「最高。で、AIが話したんだけど、先生がつけたんですか?機能で」
帽子の上からアザゼルが雄之介の頭を叩くと、雄之介が頭を抑えていた。
ヴァーリなら平気な顔をしていたというのに、まだまだ雄之介はコドモが抜け切れていないらしい。
ツッコミとして頭を叩いたものの、
「AIに話しかける機能つけてるわけないだろ、運転手に。まあ良い。ほら、飯食ってこい。疲れたろ?」
「わかりましたー。……あれ?ヴァーリは?」
「ヴァーリ?あいつはもう行ったよ。この様子だと、大丈夫そうだな」
トライドロンを器具で弄りながら、雄之介がキョロキョロしているようなのでアザゼルが言うと、
「二人で食事にしようか」
「うん。ビーフシチュー楽しみだなあ」
と、いちゃつく声が。
バラキエルから惚気話を聞き、酔っている際ならば結婚の長所を語られるが独り身だからこそできることがある。
でないとトライドロンのようなものは作れない。
しかし、目の前でいちゃつかれるのと話で聞くのではまた別だ。
舌打ちするのを堪えるので一杯だったアザゼルである。
「ほら、お前らも早く行け。腹減らしてんだろ」
「「はーい!」」
威勢の良い返事は狩猟の後の疲れがあるようには思えない。
去っていく二人の背中を見送りながら、
「……」
暖かい気持ちになれた気がした。
*
夕飯の後、雄之介が皿を洗ってくれるとのことでアンはゆっくりしていた。
『皿洗いは任せてよ』
夜になって静かになった神の子を見張る者の建物内、静寂が支配する廊下を渡って雄之介の言葉に甘え、アザゼルが趣味で集めた書籍のあるプライベートの書斎。
書籍を持って行く分には構わない、と雄之介らに開放しているのもあって大体開かれている。
中には水着の女性の写真集を発見して顔が険しくなるが、ふるふると頭を振る。
雄之介が表に出さないだけで興味を持って然るべきなのだ。
写真集を戻して実った胸元に手を当てて、自分が魅力的か考える。
「わたしはかわいいかな?」
たまに言葉を交わすバラキエルの娘を除いて周囲の同年代といえば、雄之介とヴァーリくらい。
ヴァーリはバトルジャンキー、雄之介はマイペースで二人とも草食系かと言われたらそうではないが、容姿を雄之介はあまり褒めないので不安になるときがある。
「……あれ、これって」
『極秘ファイル!見るなよ!フリじゃないからな、絶対見るなよ!』とあるアザゼルのファイル。
ヴァーリと雄之介ならば茶番がはじまりそうなタイトルのファイル、しかし、アンは冷静な少女であった。
中身はタイトルと違い、至極真面目な内容である。
その中の章の一つが、
『聖剣計画と超兵計画の関連性』
「これっ、て……」
ぱらぱらと好奇心でめくっていくと、被験者リストの中には見慣れた名前がある。
『被験体04号・南雄之介』
『あの場所』で出会った大切な少年もまた、目的は違えどもアンと同じ被害者だった。
アザゼル先生が書いたファイルの中身とはいかに。
ガバガバじゃねーか!って意見は雄之介やヴァーリなら察するだろうし、アンなら水着の写真集は倦厭してみないだろって慢心から