忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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はじめまして……もしくは久しぶりです
にじファンでは妖(ゼロ魔の二次小説書いてました)と、今はあやかしびとと名乗っているものです
相変わらず1話1話が短いですが、これからまた宜しくお願いします



始まりの章
プロローグ


 プライドとプライドのぶつかり合い。

 今まさに二人の男の戦いに終止符が打たれようとしていた。

 

 

「これでラストだ!」

「ま、待て! ちょっとだけ待ってくれ!!」

「いや、待たないね。

 F.G.Dでダイレクトアタック!」

 

 

 俺の場はガラ空きだし、攻撃力5000のF.G.Dの攻撃は止められない。

 今のライフは4600だから……死ぬじゃねぇか!

 

 

「くっそ!……俺のライフは0になり、俺の負けだ……。

 レダメ強すぎんだろ!?」

「まぁ、再録される前は3000円位したカードだしな。

 ドラゴンデッキには必須なカードだろ?」

「分かってはいるんだけどさぁ」

「っていうかそのデッキ、除去少なすぎ。

 火力重視の装備とかロックバーン以外にもデッキあるんだろ?」

「俺のデッキは24式まである!」

「中途半端すぎだろ……っていうか多いな!?」

「いや、最初はこんな作る予定なかったんだけど、作りたいデッキ作ってたらこんなんなっちゃった。

 今では必要カードが足りなくて困ってるよ」

「だろうな……で、どうする?

 もう一回デュエっとくか?」

「応よ! 負けっぱなしじゃ悔しいからな!

 今度はデッキデスデッキで勝負だ!!」

「また微妙な……」

 

 

 そう言いつつも若干笑みがこぼれる友人の顔を見ながら、俺はデッキをシャッフルする。

 あ、自己紹介が遅れました。

 俺の名前は笹倉(ささくら) (きわみ)と申します。

 ガッチガチのオタクで、漫画やアニメ、ゲームは勿論のこと、エロゲや二次小説も読み漁る残念男子。

 大学が情報系の大学だからか、オタクも多くて余り浮かないのは本当に良かったと思う。

 ちなみにさっき友人とやっていたカードゲームは、かの有名な遊戯王。

 俺が小学生の時に始まり、今では世界でトップクラスの人気を誇るカードゲームだ。

 1パック5枚入り150円という安さ故に子供から大人までやっている人が居る。

 まぁ本気で勝つためのデッキを作るなら結構お金かかるんだけどね。

 実を言うと俺はかれこれ10年近く遊戯王から離れていたんだけど、大学入ってから出来た友人がやってたから実家で昔のカード引っ張り出して持っていったのが復帰の始まりだった。

 まぁそんなどうでもいい事は置いといて、あの後結局二戦して満足した俺は、友人と一緒にゲーセンに行って現地解散したわけである。

 

 

「あいつと遊ぶのは楽しいんだけど、家が遠いのが厄介だな。

 交通費も馬鹿にならんし……」

 

 

 俺は電車を降りて寂れた駅から出ると、晩飯をコンビニで調達するために横断歩道を渡っていく。

 だがもう少しで渡り終えるというところで、けたたましいクラクションの音が聞こえてきて……振り返ると猛スピードでこっちに向かってくる軽トラが突っ込んできているのが俺の視界に入った。

 一瞬ヤベェ死ぬかも……とか思ったけど、前方に転がることで何とか轢かれることなく済んだ。

 ちなみに俺を轢きかけた軽トラはそのまま電柱に突っ込んで止まっている。

 

 

「あっぶね……すり傷超痛いし、脚挫いたっぽいな」

 

 

 痛みから死ななかったという事実を改めて実感すると、今度はふつふつと怒りが沸いてくる。

 幾ら軽トラの運転手が怪我をしてようとも、赤信号を無視して突っ込んできたことに文句の一言も言わないと、この怒りは抑えきれそうにない。

 俺はゆっくりと立ち上がろうとするが、周りには軽トラの窓ガラスと思われるものが散乱していて迂闊に手をつけない。

 どうしようか迷っていると、突然変な音が聞こえてきた。

 何かひび入る様な音。

 この状況でひびが入る場所は二つ。

 軽トラのガラスか……電柱だ。

 どうやら音の源は後者の様で、俺はこちらに倒れてくる電柱の姿を捉えた。

 

 

「(SSネタの様な転生トラックもどきを避けれたと思ったら、本命は電柱とかマジ笑えねぇ。

 積みげー崩してないし、まだまだSSを読み漁りたかった。

 そして何より……まだ作ってないデッキあったのに!!)」

 

 

 ここで俺は一瞬の激痛と共に意識が闇に呑みこまれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「起きろ」

 

 

 何かが聞こえる。

 

 

「早く起きろ」

 

 

 いや、俺死んだから。

 なんかピタゴラスイッチみたいな感じで死んだから。

 

 

「時間がもったいないから早く起きろ。

 現実を認識しろ」

 

 

 目を開ける? いや、だから俺死んでるんだ……ってあれ?

 何で俺の意識があるんだ?

 電柱にプチってされたんじゃなかったのか?

 これは……まさか神様ミス→お前死んだ→転生パターンか!?

 

 

「神というわけでも、私のミスでお前が死んだわけでもないが、転生は正解だ」

 

 

 マジで!?

 ……驚きで目を開けたわけだけど、光りすぎててアンタの原型すら分からないんだが。

 

 

「それは意図的なものだ。

 私の姿は人の精神にあまり良い影響を与えないのでな」

 

 

 何処の邪神だよ……いや、まぁ良いんだけどさ。

 所でさっき転生がどうとか言っていたけど、ホント?

 

 

「あぁ、事実だ。

 お前には転生してもらう」

 

 

 嬉しいやら悲しいやらだな。

 どうせ今まで生きていた世界に転生することは出来ないんだろ?

 

 

「出来るが、その際にはお前の生前の記憶は消させてもらう」

 

 

 それじゃあんまり意味ないな。

 戻っても記憶が無いんじゃ両親に謝ることも出来やしない。

 記憶無しで生まれ変わるんじゃ別人だし……。

 

 

「今お前が選べる選択肢は3つ。

 一つ、記憶を消して元の世界に転生する。

 二つ、記憶を残して別世界に転生する。

 三つ、記憶を消して別世界に転生する。

 このどれかだ」

 

 

 記憶は消したくない。

 せっかくため込んだオタ知識消したくないし、何よりいっぱい勉強したというわけじゃないけど、それなりに勉強して得た知識を消すのは勿体な過ぎる。

 まぁ知識が無い方が柔軟な発想が出来たりするのかもしれないけどな。

 

 

「結局、お前はどれを選ぶのだ?」

 

 

 二番でお願いします。

 

 

「了承した。

 次にお前は異世界に転生するにあたり、そのままの状態で転生した場合直ぐに死んでしまうだろう。

 今回のこれは、転生とは名ばかりの転送に近いものなのだから……。

 容姿や記憶をそのままにお前を異世界で再構築することになる。

 その世界でお前が生きてきたという歴史に改変を行なうので、疑われることは無いだろう。

 故に一つだけ得たい能力を言うがいい」

 

 

 え? 物騒な世界なんですか?

 俺小学校の頃に空手やってた位で、全然鍛えてないんですけど……。

 

 

「わかっている。

 だからこそ一つだけ願いを言うがいい。

 物騒な世界で生き残れるであろう願いを。

 ……一つ言い忘れていたが、その世界での老化は気にしなくてもいい。

 こちらとは細胞の劣化速度が大幅に異なるために、少なくとも星の命が終わっても寿命はこないだろう。

 ただし寿命で死ななくなるだけで、他の要因では死ぬ」

 

 

 不老とかヤバい。

 不死に関しては……まぁ無い方がいいのかもね。

 人が居るかどうかも知らないけど、もし捕まって解剖とかになったら嫌だし。

 それにしても能力かぁ。

 あ……なら!

 遊戯王のカードの中身を呼び出せる能力って出来ますか?

 

 

「ゆうぎおう?

 少し待て………これか。

 幅が広すぎるな。

 だが制約が掛っても良いのならできるだろう」

 

 

 制約ってなんですか?

 

 

「好き勝手にやりたい放題出せるわけではないということだ。

 例えるとまずモンスターは出せない。

 一度に使える魔法、罠は合わせて5個。

 永久に場に残る効果に関しては自分で消さない限り一枠使われ続ける。

 禁止や制限などには別途何かしらの制約があるということだ」

 

 

 要するに普通の遊戯王のルールを元にした制限ってことか。

 ならどうにかなるかな?

 

 

「ならば能力はそれでいいのだな?

 詳しい能力の詳細はその世界に送ってから情報を送る事にする」

 

 

 なんか未だに実感沸かないけど、とりあえずありがとう。

 俺は死んだけど、本当の意味では死んでない。

 ましてや次はそう簡単に死なないようにって能力までつけてくれるなんて、ホント感謝してるよ。

 

 

「これが私の使命だ。

 お前の行く世界にお前の住んでいた世界を知る者はいない。

 新たな地でのお前の生に幸あれ」

 

 

 ウオッ!? なんか光が強くなってきた。

 また意識が……。

 

 

 

「これでまた一つの世界が修復できた。

 戦争等で欠けた世界の構成要素を、構成密度を上げた死者の魂を使い補強する。

 管理者からの通達だが……このシステム、あの者が読んでいた二次小説というものの転生物という内容によく似ていたな。

 あやつが送られた世界も似たような世界であるし、あの世界の人間にはまだまだ我々が知らない力が眠っているのかもしれないな」

 


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