忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第99話 ナルトの師

 うちはサスケが里を出てから数日が経ち、件の一件に関する情報がそれなりに広まり始めている。

 人の口には戸が立てられないとはよく言うもので、関係者にしか分からない様な情報も結構流れているようだ。

 とりあえず俺の聞いた情報は奪還作戦に参加したメンバー、およびその協力者の名前と事の顛末……要は火影邸で聞いた情報の延長線上のもの位である。

 参加メンバーの中にナルトがいたから話を聞こうと思えば聞けなくもないけれど、今はその時の怪我で入院している上に、件の少年の事で落ち込んでいるから保護者としては傷口を抉る様な真似は出来ない……自来也が師匠になった時点で既に保護者というのも飾りになりかけているのだが、それとこれとは関係なく自分の好奇心のために子供を傷つけて良い訳が無い。

 そもそもそれを知ったからといって何をするという訳でもないのだから、ナルトが俺に今回のことについて相談をしたいと思ったときに話を聞く位の気持ちで丁度いいだろう……少なくとも俺が今まで生きてきた中で経験してきた事を参考にしたところで今回のナルトに掛けられる言葉なんて在り来たりの励まし位しか出てこないが。

 それに眼を覚ました直後に比べて、同じ班のサクラという子や自来也、他にも同期の友人達が見舞いに来ていたことで少しずつではあるがナルト本来の明るさが戻ってきているので、自分なりに何か心を決めたのだろう。

 男子三日会わざれば刮目して見よとはよく言うが、本当に子供の成長というものは早いものだ。

 

 

 ここ数日間昼休憩の時間に行っている今日のナルトの見舞いも終え、店に戻ってきた俺が鍵を開けようとすると、何故か鍵を掛けたはずの戸が開いており、中から人の気配がする。

 始めに頭に浮かんだのは大蛇丸からの刺客……しかしそれならば気配を隠そうともしないのはおかしい。

 ならば空き巣かと思い、服の袖に隠していたクナイを逆手で握りこみ、一気に戸を開ける。

 するとそこには普通に立ち読みしているイチャイチャシリーズの作者がいた。

 俺は溜息を一つ吐き、クナイを戻すと何故か不法侵入していたその人に声を掛ける。

 

 

「何やっているんですか自来也様……というかどうやって入ったんですか?」

「ん、おぉすまんすまん。 勝手に中で待たせてもらった。

 それにしても相変わらず面白い品揃えだのぅ……中々見かけん他里の本も幾つかあって、つい時間を忘れてしまった」

 

 

 自来也は手に持っていた雨隠れの里の謎と言う本を棚に戻すと、笑顔で俺に謝罪した。

 微妙に反省してなさそうな態度に少しイラッとしたが、悪意があるわけでもないのでとりあえずは心を落ち着けて、彼が何故ここに居るか尋ねる。

 

 

「今度からは不法侵入しないでくださいよ……それで今日は何の御用ですか?

 本を探しに来たという訳ではないのですよね?」

「もちろんだとも。 今日儂が来たのはナルトについて話す事があるからだ」

「貴方が来る時は大体それが理由ですから何となく分かっていましたが、今回は何ですか?」

「ふむ、お主も聞いておると思うが……うちはサスケが里を抜ける際に彼奴を連れ戻す為に動いた者達の中にナルトが居た。

 今ナルトが入院しているのはサスケと交戦した際に受けた傷が原因だ。

 ナルトはその事自体は其程気にしているわけではないが、連れ戻せなかったことには大きく責任を感じておってな。

 あの時もっと自分が強ければと、らしくもない葛藤をしていた位だ……でだ、儂はナルトを本格的に鍛える事にした」

「綱手を迎えに行く道中で既に師弟関係になっていた様な話を聞いてますから、俺としては別に何も言うことはありませんが……」

 

 

 師弟になった時点でいずれはそうなるだろうと思っていたし、ナルトが決めたことなら俺としても反対する理由はない。

 むしろ何故自来也が今改めてそれを俺に伝えに来たのかが分からない。

 そんな俺の考えが伝わったのか、自来也は呆れたように大きく息を吐く。

 

 

「まぁ話は最後まで聞け、儂がナルトを鍛えるのは何も強くなりたいと言われただけが理由ではない。

 ナルトは強くならなければならないのだ」

「強くならなければならない?」

「お主は知らないかもしれんが、ナルトは暁という組織に狙われている。

 奴等は様々な里の抜け忍集団で、尚かつ恐らくメンバー全員が儂から見ても腕の立つ忍だ。

 昔大蛇丸の奴が暁のメンバーだったが、リーダーではなかったことから少なくとも大蛇丸と同等、もしくはそれ以上の腕前の忍が最低でも一人はいることになる」

「それは笑えない冗談ですね……五影以外にそんな存在はそうそういないと思いますが」

「暁のリーダーに関しては儂も何も知らないに等しい……だがその様な集団を纏める者が弱いはずがないだろう。

 そんな者達に狙われている以上、ナルトには力を付けて貰わなければならない。

 それで此処からが本題になるのだが……儂は一週間後から三年間新作の取材も兼ねて諸国漫遊をする予定なのだが、それにナルトを連れていこうと思う。

 今日はその報告に来たのだ」

「三年間ですか……長いですね」

「コレでも短い位なんだがのぅ」

 

 

 確かに大蛇丸クラスの忍から身を守れるだけの実力を付けるのに三年という時間はかなり短いかもしれないが、まだ中学生位の年齢で故郷を離れて修行の旅に出る期間としては三年は長いだろう。

 可哀想というのは失礼かもしれないが、ナルトは大変な星の元に生まれているのだなと改めて思った。

 

 

「これからの三年間、ナルトの安全は儂が保証する。

 だから安心して見送ってくれ」

「分かりました……ナルト君を宜しくお願いします」

 

 

 俺が深く頭を下げると自来也は「もちろんだ」と短く返答して店を後にする。

 彼が出て行った後、俺はゆっくりと頭を上げて椅子の背もたれにもたれ掛かると、大きく深呼吸をした。

 

 

「一週間か……何か餞別でも用意しておいてあげようかな。

 兵糧丸とか長持ちするし、いざという時に食べれていいよね」

 

 

 兵糧丸は基本的に美味しいものではないから味付けを少し工夫して、最低でもあの独特の苦みを緩和させられるように少し頑張ってみよう。

 一先ず店が終わってから材料を調達しに行こうと決め、本棚から兵糧丸の作り方が載っている本を取り出して、その作り方を学び直すことにした。

 


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