忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第105話 不老と不死

 ユギトを抱えている為に両手が使えない今の状況は非常に良くない。

 気を失った人一人抱えたままの戦闘は、いくら何でもハードすぎる。

 故に初手である程度の時間二人を拘束しつつ、その隙に距離を取るというのが上策だろう。

 此処で仕留めるという選択肢も無いわけではないが、四肢を斬り飛ばされようが、腹を貫かれようが大したダメージになっていない奴らを殺す方法は限られる。

 よって確実性を重視し、二人を拘束した後に逃走という方針で行くことに決めた。

 

 

「‘光の護封剣’発動」

「なんだこりゃあ!? おい角都、なんとかし……っておい、何でテメーは無事なんだよ?!」

「咄嗟に下がったからに決まっているだろう……それにしても見たことのない結界術か。

 思いの外面倒臭い相手かもしれんな」

「(二人同時に捕らえることは出来なかったか……だが一人でも減れば危険は半減だ!)

 面倒臭いのでしたら見逃してくれませんかね」

「それは無理な相談というものだ、此方も仕事だからな」

「というかテメーが後生大事に抱えてるその女は既に俺に呪われてんだよぉ!

 もう何処にも逃げられねぇぜ!」

「呪いね……流石にやったことないけれど少し試してみるか」

「あぁ?! テメー何をブツブツと「‘サイクロン’発動」印も結ばずに風遁だと!?」

 

 

 発動した直後‘サイクロン’は飛段と呼ばれる男を包み込む。

 突然のことではあったが即座に頭部を守って致命傷を避けようとする辺り、絶対に死なないという訳でもないのだろう。

 だがこの魔法の効果はそもそも攻撃ではないのである。

 身構えた飛段は一向に訪れない痛みに疑問を抱き、顔を守っていた自身の腕を見て驚愕した。

 

 

「どういう事だ……何で呪いが解けてやがる!?」

「やっぱり‘黒蛇病’や‘燃えさかる大地’と同じ類と認識されるのか……相手と自分でダメージを共有しているのだろうというのはユギトちゃんとの戦いを見ている時に感じたけれど、こうも上手くいくとは思わなかったよ」

「やはり面倒臭い相手だったか……俺も少し真面目にやるとしよう」

 

 

 角都が此方に向かって走り出すと、その後ろを先程ユギトに水遁と風遁を放った3m近い大きさの黒い人型二体が追従する。

 一先ず囲まれることを避けるために何とか片手でユギトを支えつつ、角都を手裏剣で牽制し、後ろの二体の動向にも注意を怠らない。

 飛んでくる忍具と速射性に優れた忍術が飛んでくるのを避けながら、距離を保ち続けていると飛段の怒鳴り声が響く。

 

 

「糞っ! どうやって俺の呪いを解きやがった……答えやがれ!」

「五月蝿いぞ飛段、どうせそこから出られないのならせめて静かにしていろ……耳障りだ」

「んだとテメー角都! お前がソイツぶっ殺して俺が此処から出たらテメーも呪ってやるから覚悟しろよ!?」

「ヘマを踏むような無能のすることなどに、何の恐怖も湧かんな。

 いいからそこから出る方法でも考えろ足手まとい」

「糞が……ぜってぇ此処から出てテメーを一度呪い殺してやる……絶対だ!!」

 

 

 飛段が先程よりも激しく暴れ出すが、光の護封剣はびくともせずに彼を囲い続けた。

 あの様子なら効果が切れるまでは居ないものとして扱っても大丈夫だと判断し、眼前の敵だけに集中する。

 本当ならば万が一の事を考えて彼にも警戒しておきたいところだが、激しさを増す角都の攻撃を躱すので余裕が無い。

 相手は別段速さに特化した動きというわけでもないのにも関わらず気が付けば距離が詰められている。

 角都という男……単純に強いのもあるが、戦うのが上手い。

 俺が攻撃を避ける先に忍具を投げ、それを躱せばその先には人型が一体待ち構える様なことが何度もあったのだ。

 そんなことがあれば嫌でも分かると言うもの……このまま消極的に隙を探しつつ拘束する事は不可能に近いのだと。

 ならば少し方針を変えねばならない。

 俺は手持ちの忍具全てを角都一人に全て投擲する。

 すると彼は俺の想像通り二体を自分の前に立たせて盾とした。

 それで相手の足が僅かではあるが止まったので、その隙に大きく後ろに跳躍し距離を取ると、それに合わせて急ぎユギトをチャクラ糸で俺の背に括り付けた。

 全ての忍具を弾き終え、再び此方との距離を詰めようと走り寄る一人と二体。

 俺は彼らに向かって二つ(・・)の魔法を使用する。

 

 

「‘昼夜の大火事’発動」

 

 

 彼らの足下から爆発的に広がる炎……その炎は二階建ての家一軒を丸々飲み込む程の大きさまで瞬く間に広がった。

 その範囲に若干入り込んでいた飛段が何やら騒いでいるが、そのまま焼死してくれたのならそれはそれでOKなのでスルーしつつ、恐らく死んでいない角都に備えて次の一手を用意する。

 思った通り別段消えにくかったり、触れた途端炭化するレベルの高温というわけではないので、すぐに水遁で一部の炎を消し飛ばして出てきたが、所々に火傷が見られることからノーダメージというわけではないらしい。

 一瞬このまま続けて二発‘昼夜の大火事’を打ち込もうかとも考えたが、何度も同じ手に引っかかるような相手でもないと思い直し、当初の予定通りようやく伏せてから五分経過して使える様になった罠を使用するための隙を作るため、角都の眼前に先程発動させた魔法を現界させる。

 

 

「‘ブラックコア’発動……ここから消えてくれ」

「時空間忍術の一種か!? 調子に乗るな小僧ぉ!!」

 

 

 角都は咄嗟に自身の身体を人型に殴らせ、身体を後方へ吹き飛ばす。

 その結果人型の一体が直径50cm程の黒い球体に吸い込まれて消え去った。

 それほど期待しては居なかったが上手くいけば一人始末できるかもと思っていた俺は小さく舌打ちすると、使用可能になった二枚の‘強制脱出装置’を発動させてその場から逃走する。

 突然現れた巨大な機械に包まれた俺とユギトはそこから凄まじい速度で備え付けられていた椅子ごと射出されたが、逃がさないとばかりに打ち落とさんと今までで一番の忍術と忍具による弾幕を張られるが、‘サイクロン’で忍術を掻き消して、飛来する忍具の一つをチャクラ糸で絡め取って他の忍具を打ち落とす。

 そして先程使用した‘サイクロン’によって新たな気流が生まれ、かなりのスピードで二人から見えない高度まで到達する。

 そこで俺はチャクラ糸で彼女の椅子を引き寄せ、椅子に備え付けられていたパラシュートでゆっくりと降下しつつ、角都と飛段のいた場所から遙か離れた場所へと着陸するのだった。

 




前回主人公っぽい活躍といったな……アレは嘘だ!

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