忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第107話 任務完了報告

 木の葉に帰った俺とシズネは真っ直ぐ火影邸へと向かい、任務完了とその後に起こった出来事について報告を行った。

 暁が二尾を襲ったという話を聞いた時は「なんだと?!」と声を荒げたものの、二尾が無事であることを話すと何とか落ち着いて話の続きを聞く体勢へと戻り、報告を聞き終えると綱手は一度大きく溜息を吐いた。

 

 

「二尾を助けた件、良くやったヨモツ……それにしても暁に属する忍は癖の強い輩が多いな。

 起爆粘土を使うデイダラ、砂の天才造型師赤砂のサソリ、うちはの天才うちはイタチ、元忍刀七人衆の一人干柿鬼鮫……そして今回雲隠れに現れた死なない忍の飛段と角都か。

 何奴も此奴も一筋縄じゃいかない連中ばかりだ」

「俺は今聞いた中の半分ほどしか知らないけれど、サソリという男は綱手の弟子が倒したって聞いたよ?」

「そうだ、故に現在生きている暁の中である程度情報があるのは五人、暁が何人で構成されているかは不明だがこれまで判明した構成員から考えると、楽観視出来る要素は一つたりとも存在しない。

 特に今回ヨモツが戦ったという二人に関しては早急に対策を考えねばならないだろう」

「ではシカクを呼んで、直ぐにでも対策会議を開きましょう!」

「頼んだぞシズネ、ヨモツは戻って良い……ご苦労だった」

 

 

 そう言って机の書類に向き直る綱手に俺は一礼して執務室を後にしようとしたが、前を歩くシズネが立ち止まったことで釣られて足を止める。

 何かに気付いたかのように少しだけ目を見開いて振り返るシズネの腕には荷物の中にあった酒瓶が抱えられていた。

 

 

「あ、忘れてました! 綱手様、これお土産です。

 雲隠れで結構有名なお酒だそうで、美味しいと評判だそうですよ」

「おぉ、そうか! では取りあえず一口「仕事が終わってから飲みましょうね!」……一口位良いじゃないか」

 

 

 諫められて端正な顔立ちを一瞬歪めて小さな声で文句を言うが、其程距離が離れていない為にシズネの耳に入り、彼女は疲れた様に肩を落とす。

 そんなお決まりの流れを見て、俺は相も変わらずストッパーとして働いているシズネの苦労を想い、苦笑を浮かべざる得ない。

 

 

「そう言って一口じゃ終わらないから言ってるんです……そうだヨモツさん、コレ預かっていてください。

 それで仕事が終わり次第綱手様とお家に行きますので、久しぶりに一緒に飲みましょう!」

「それは別に構わないけれど……三人で飲むのなら一升じゃ足りないかい?」

「それなら大丈夫です、これ以外にも何本か持って行きますから」

「そうかい? なら俺も何本か用意しておくことにするよ……つまみは和え物とか乾物でいいかい?」

「えぇ十分です、綱手様も良いですよね!」

「良いと言えば良いんだが……欲を言えば鳥のササミも用意して欲しいところだな」

「勿論用意しておくよ、火影様の好物だからね」

「なら私からは特に言うことはない……さぁて、じゃあ一段落つくまで頑張るとしようか!」

 

 

 綱手の現金な対応に俺とシズネは顔を見合わせて笑うと、書類に判を押す作業を黙々と行い始めた彼女に一礼し、今度こそ執務室を後にした。

 建物を出て直ぐに一言二言交わした後シズネとも別れ、懐かしの……という程は離れていなかった我が家へと帰宅。

 暗部の格好のまま家に帰るわけにもいかないので、いつも通り物陰に隠れて‘光学迷彩アーマー’を発動してから、家の中へと入る。

 一先ずザブンと風呂に入って旅の汚れを落とし、軽く飲み会の下拵えをしてから彼女達が来るまで疲労回復の為に一眠りをして時間を潰すことにした。

 

 

 この数日間で色々と濃密な体験をした所為か、泥のように眠り続け、目を覚ました時には外は夜の帳に包まれていた。

 疲れが抜けきったとまでは言えないものの、少しだるい位までは体力が回復した俺は欠伸を噛み締めながら、明かりを点けつつ台所へと向かう。

 冷蔵庫を開けて、用意しておいた幾つかの食材を取り出し、それぞれを少量ずつ摘む。

漬けていた野菜も良い感じの味になり、和え物も良い塩梅に味が染みているのを確認できたので、これで何時二人が来ても大丈夫だと一人頷いて、地下の暗所に置いてある酒を幾つか引っ張り出して表面に薄く積もった埃を払い落とす。

 俺は別段酒が好きというわけでもないから、何かイベントでもない限り酒を開けることはない。

 引っ張り出してきた酒も買ったのは少し前にラベルに惹かれて衝動買いした一品である……流石に摩訶不思議やどんでん返しなんてラベルを見かければ気になるに決まっているだろう。

 美味いかどうかは予想も出来ないが、美味かろうが不味かろうがネタの一つにはなると、自分自身を説得して買い、今の今まで本の在庫と共に地下で眠っていた酒……それを今日開ける。

 決していざという時苦しみを分かち合う仲間が欲しかったとかいう気持ちは全くない……無いったら無いのだ。

 少しだけ悪い顔をして一升瓶を拭いていると、玄関の戸を叩く音が聞こえる。

 二人が来たのだなと思い、急ぎ玄関の戸を開けると予想通り、其処には綱手とシズネが立っていた。

 

 

「すまんな、会議が長引いてこんな時間になってしまった」

「何サラッと嘘ついているんですか!? 綱手様が途中で机を叩き割った所為で書類が飛び散った所為じゃないですか!」

「机を叩き割ったって……何でそんなことに?」

「ははは……しょうがないだろう、ご意見番の二人が無理ばかり言うんだ。

 ついイラッとして……な」

「『つい』じゃないですよ! あの時のお二人の視線の冷たさたるや、鉄の国の真冬日に匹敵する位でしたよ!?」

「まぁまぁ、取りあえず此処は寒いから中に入るといい。 料理の用意も出来ているし、少ないけれど俺も酒を用意したから、飲みながら話を聞くよ」

「そうだぞシズネ、私は飲み会を楽しみにして今日の職務を乗り切ったんだ。

 さぁ飲むぞ~、今日は飲み明かすぞ~」

「はぁ……明日も仕事があるんですから、程々にしておいてくださいよ?」

 

 

 居間に二人を通して台所へ料理を取りに行くと、後ろから「手伝います」とシズネが腕まくりしながらやってくる。

 殆ど準備は終わっているけれど、一人でやるよりは早く出来るのは確かなので、ありがたくご厚意に甘えさせて貰って盛りつけを彼女に頼んだ。

 彼女が持参した幾つかの肴も皿に盛って持てる限りの料理を持って居間へと向かうと、既に手酌で飲み始める綱手の姿が……シズネがそれを見て表情筋をピクピクさせているが、すぐに諦めたかのように息を吐いて料理を並べる。

 

 

「私たちが来るまで位待ってくださいよ……空きっ腹にお酒は良くないですし」

「まぁ硬いことを言うな、それに腹には溜まらないが肴はあるさ……なぁカツユ」

「こんばんはぁ……あれぇ? お二人とも影分身をなさっているんですかぁ?」

「流石に一人で飲むのはつまらなくてな、少し相手をしてもらっていたんだ。

 中々面白い話を聞けたぞ? 主にヨミトの事だったがな」

 

 

 ニヤリと意地悪そうな笑みを浮かべて俺の方を見る綱手にカツユが何を話したのか凄く気になったが、聞いたら聞いたで凹みそうなので深く追求はしないでおく。

 こうして騒がしくも始まった飲み会は用意した酒を全て飲み干して全員が酔いつぶれるまで続き、翌朝全員顔色がとんでもない状態になったまま仕事に向かう羽目になるのだが、それを差し引いても楽しい飲み会だった。

 


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