忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第127話 ジリ貧

 最初は順調だった。

 五影が先頭に立って巨像を削り取り、その邪魔にならない様に俺の側から彼らの支援をする仲間達。

 俺も仮面の男目掛けて‘ブラックコア’を放ち、躱されはしたものの巨像の顔の一つを丸々消し去った。

 数多の腕、顔の一部、足の一部等を破壊し、このまま行けば押し切れる……誰もがそう思ったが、巨像は一定まで破損すると再生を開始。

 それを切っ掛けに木像が木遁で作られたという確証は得られたが、切断された腕は瞬く間に生え変わり、他の部分も直ってしまった。

 これには五影の面々も眉を顰め、その他の面々は顔色が悪くなる。

 

 

「限がないのぅ……奴自身をどうにかすればいいんじゃろうが、デカブツが邪魔すぎる。

 ヨミトと言ったか、さっきの黒いのまだ出来るか?」

「出来ますが後二回で打ち止めです」

「数撃って逃げ場無くすこともできんか……もう少し考えてから動くのが最善じゃな」

 

 

 土影の言ったその言葉に俺も声を出さずに賛同する。

 俺も現状既に力を17回使い、現在伏せている一つの罠は予想されている最悪の事態が発生した時に使う予定のもの……要はこの戦争中に使える力は残り22回分だと言うことだ。

 戦闘らしい戦闘に参加した訳ではないが、既に半分近い回数を使用したという事実は残る強大な敵二人の存在を考えると余裕を持てるとは到底思えない。

 唯一の救いは護封壁が相手の物理的な攻撃を受けられるので人的被害が現状0に等しい事位だ……しかしそれも何時まで保つか分からない。

 相手も壁の特性に気付いたのか、壁の外に出た者を優先的に狙い、壁を攻撃する際には狙う箇所を一点に集中させる事で火力を上げ、僅かではあるが護封壁を歪め始めている。

このまま受け続ければいずれ破られてしまうだろう。

 そもそもこの壁は基本的に物理攻撃以外はあまり防いでくれないのだ……基準はチャクラの込め具合。

 純粋なチャクラのみで出来ているチャクラメスなどはほぼ素通りするし、チャクラによって生成した水や火であっても自然にある物を使用して威力を増している場合は増幅分を防ぐことが出来る……そう、増幅分(・・・)はだ。

 

 

「撃ち漏れた火遁が飛んでくるぞ! 水遁使える奴は相殺しろ!」

「糞、雷遁使いの手が足りない……誰か他の所担当してる奴で雷遁使える奴は居ないか!?」

「馬鹿言うな、こっちだって手一杯だってんだ!」

 

 

 五影達は基本的に壁の外で積極的に戦っているが、他の仲間達は内側で防衛主体に戦っている。

 それでも相手のチャクラが異常に多いのか、術はかなりの部分がチャクラで出来ており、相殺にも相当数の数が必要となっていたために戦いは競っていた。

 戦い始めてからどれ程の時間が経っただろうか……五影は未だ最前線に立って戦っているもののチャクラが減って派手な術を使えなくなり、他の仲間もチャクラが完全に切れた人から戦線を離脱していき、今では十数人で戦線を維持している。

 そんな中三代目火影は持ち前の知識と経験から、チャクラを節減しながら敵の猛攻を捌いていた。

 木像の放つ五属性忍術同時発動も影分身を五体生み出して対応し、直接攻撃されれば地形を盾に最小限の動きで躱して火遁を放ち腕を焼く。

 時には穢土転生体であることを利用して自分の身を犠牲に仲間を守り、五影達へ指示をとばす。

 この戦場におけるリーダーは間違いなく彼だった。

 

 

 ちなみに俺も‘昼夜の大火事’を二回連続で放つことで木像の顔丸々焼き尽くしたり、壁の外で倒れてる仲間を‘魔導師の力’で強化された腕力を駆使してチャクラ糸で引っ張り込んだりと攻防それぞれにそれなりの活躍をしていたが、どうにも手詰まり感が否めない状況故にそろそろ一度デカいのをブチかまそうと決意して、その意思を五影達に伝えようとした時遠くから何かが飛んでくるのが見えた。

 敵の増援かと攻勢から防衛へとシフトし、三代目を殿に五影達も一旦此方に集まり身構えるが、飛んできたのは風影と横になっているナルト……前線にいたナルトが動く気配すらなく横たわっている姿に嫌な予感を感じる。

 

 

 直ぐ様この場において最も医療忍術に長ける綱手とシズネ、サクラの三人が駆け寄ったが風影から告げられたナルトは尾獣……九尾を抜き取られ、このままでは死を待つばかりであると言う言葉に一同が息を呑む。

 唯まだ助かる方法もあるらしく、それを成すために少し離れた場所に居る四代目の元へ行かなければならないのだが、このままでは其処まで持ちそうにないので道中医療行為を行って貰うために誰かついてきて欲しいとの事。

 当然視線が集まったのはトップクラスの経験と腕を持つ医療忍者である綱手だったが、如何せんチャクラがギリギリすぎるため医療行為の途中でチャクラが切れては危険だと言うことで辞退、残る二人から同行者が出ることに。

 技術と経験で言えばシズネ、チャクラと機転で言えばサクラ。

 二人の短い話し合いの結果、今回の様な特殊なケースの医療行為は若いサクラの方が柔軟に行動できるであろうという事で結論がでたらしく、決まるや否や風影の作った砂の足場に乗って飛び立った。

 

 

 されど仮面の男が黙って見ている訳はなく、彼らを術で撃ち落とそうとするがこの場にいる者皆でそれを防ぎ、俺も護封壁を彼らの盾に出来る位置へと移動し、激しくなった敵の攻撃を防ぐ。

 流石の護封壁も度重なる攻撃に遂には耐えられなくなり、木像の放つ十発以上の拳を受けると、まるで硝子が割れたときのような音を出して消えてしまった。

 それに伴い‘魔導師の力’によって増幅されていた力が一段階下がり、少しだけ身体が重くなる。

 壁が割れたことで俺自身の行動制限は消えたけれど、その代わりに単身では敵の攻撃に対応できない仲間達がまた数人リタイアする事になった。

 数人で済んだのは雷影が雷遁を纏って高速移動しながら敵の攻撃範囲から弾き飛ばしたからだ。

 彼は勢いそのままに俺の元まできて地面を削りながら止まる。

 

 

「さっきの結界はもう張れんのか?」

「あれは日に一度が限度でして……ですが別の方法であれの動きを暫く止めることは出来ます」

「そうか……では二十秒後それをやれ。 その間に俺達が全力で攻勢を掛けて仕留める」

 

 

 そう言って俺の方を一切向かずに再び前線へと戻っていった。

 彼が戻ると同時に後方から大蛇丸率いる三人組が突出、赤髪の娘がサスケがどうこう叫びながら身体から半透明の鎖を生み出し木像を圧倒。

 身体を何度か穿たれながらそれの横を強行突破する。

 それに続く様に残る三人もこの戦線から離脱、積極的に協力していた訳ではないがこの機会逃す訳にはいかない。

 

 

「‘光の護封剣’だ……頼むから大人しく拘束されといてくれよ?」

 

 

 光で出来た巨大な剣軍に囲まれてその場から動けなくなった半壊の木像、半壊した状態で囲われた所為で再生するにもスペースが無く直すことが出来ないらしい。

五影達の様子を観察していた男がゆっくりと此方に振り向き、小刻みに身体を震わせながら「やっぱりアンタ良いわぁ♪」と呟いたのが聞こえた気がした。

 


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