忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第131話 終幕

 合流してすぐに影達にも‘スキルドレイン’の事を話すと、最初半信半疑ではあったが綱手が説得に回ってくれたお蔭で何とか信じてもらうことが出来た。

 尾獣に説明した時は彼らが直感的に嘘などをある程度見抜く事が出来るので、俺が本当のことを言っていると信じてくれたので楽だったのだが……流石に里のトップは早々簡単に人の話を鵜呑みには出来ないから時間が掛かるのはしょうがない事だろう。

 尾獣達の厚意によって今回に限り背に乗ることを許された影達と俺は尾獣達の全力疾走を体験する事になったが、そもそも人を乗せて行動をしたことが殆どない彼らに乗員への配慮なんてものは存在せず、安全ベルトのないジェットコースターに乗っている様で俺は少し怖かった……影達は普通にケロッとしていたが。

 ただまぁ俺を乗せてくれた二尾の蒼く艶やかな毛並みは凄く気持ちよかったので、そっちに集中していれば思いの外精神的ダメージは少なかった。

 

 

 そのまま暫く地獄と天国を同時に味わっていると強い光と共に此方に途轍もない衝撃波が襲いかかる。

 咄嗟に一尾が一番前に立って砂で防壁を作り上げたが、その防壁ごと俺達は吹き飛ばされた。

 尾獣達の重量のお蔭で其程飛ばされることは無かったが、それでも戦闘の余波で10m近い尾獣を吹き飛ばす二人の戦いの激しさに息を呑む。

 その上俺が解き損ねた地爆天星四つが終末の谷の方へと飛んでいき、ここにいる尾獣達もチャクラを引っ張られているらしい。

 その吸引力たるや類を見ない程で、この中で最もチャクラ量の多い九尾以外の尾獣は膝をついてしまう。

 何とか立ち上がることは出来るようだが、今までの様に進むことは出来なくなってしまった現状をどうすればいいか考えている合間にも戦闘は激化しており、先ほどと比べ物にならない程の光と轟音、そしてそれに伴って出来たであろう雷雲が大陸を襲う。

 見渡す空全てを覆い尽くす其れは分け隔てなく地上へ雷を落としていく。

 少し前に俺が使った‘ライトニング・ボルテックス’が静電気に思える程の規模と威力……もしも遊戯王の初期から存在し、その殆どの期間を使用禁止の枠に分類されている全体除去、ライボルの完全上位互換である‘サンダーボルト’が使えればこんな感じなのだろうか?

 

 

 此方にも例外なく降ってきた雷撃にチャクラに余裕のない尾獣と影達は成す術がない。

 現状を打破できるのは俺しかいないのだ……当たれば感電を通り越して消滅しかねないそれ等に対して俺が使用したのは全方位の物理攻撃から守れる‘悪夢の鉄檻’と今日使える最後の‘サイクロン’。

 上空の雷雲の一部をサイクロンで散らす事でこちらの被害を抑え、鉄檻で感電や衝撃、余波を防ぐ。

 咄嗟の判断とはいえ思いのほか上手くいったが相も変わらず尾獣は満足に動けないし、鉄檻の効果は2ターン……10分間続く。

 それを説明すると多少彼らから不満は出たが、周囲の被害状況を見て納得してくれた。

 なぜなら雷が落ちたところには大きな穴が開き、所々火の手も上がっていたのだから。

 結果五人と五匹は少しの間足止めなわけだが、出たところでこれだけの事をできる二人の戦いに介入するのは厳しいだろう。

 二人の力量は既に影達を凌駕し、その差は数で埋められるレベルのものではない……もしもサスケがナルトに勝てば彼を止められる忍はいないという事だ。

 影達もそれが分かっているのだろう、檻が消えると同時に走り出すと思われた彼らは対策を考えているのか足取りは重く、進行速度は目に見えて落ちた。

 

 

 それからどれ位の時間が経っただろうか……チャクラを吸い取られ続けながらも進んでいた尾獣たちは息も絶え絶えであり、影達もチャクラ不足と疲労から足元も覚束ない様子。

 宵闇が周囲を黒く染め上げ、先ほどまで聞こえていた激しい戦闘音も既に聞こえなくなった……二人と繋がる尾獣達が言うにはまだ決着自体は着いていないらしいが、既に二人もチャクラが殆ど残っていない状態で戦っているらしい。

 影達はそれを聞いていざという時は刺し違えてでもサスケを止める決意をしていたが、消耗しきっている彼らでは分が悪いのは目に見えているので、その時は率先して俺が前に出ようと心の中で覚悟を決めた。

 もう終末の谷は目と鼻の先……自然と緊張が高まる中一瞬爆音と共に太陽と見紛うばかりに光が現れ、その衝撃でへし折れた木々がこちらへと飛んでくる。

 前回は一尾の作った壁によって防がれた飛来物だったが、今の尾獣たちは大規模な術を使うことができない。

 各々の身体能力でも十分躱しきれるものではあるのだろうが、念のため‘光の護封剣’で前方から来るそれらを防ぐ。

 

 

「これはあの時使っていた……こんな使い方もできるのね」

「水影様の溶遁であれば余裕で対処できたと思いますが、今は出来る限りチャクラを節約していただいた方が良いかと思いまして」

「お気遣い感謝します」

 

 

 鉄檻と違って護封剣はこちら側からの物理的接触は素通りなので先ほどのような待ち時間は存在しない。

 飛んでくるものが無くなった時点で剣群を越え再び目的地へと進む一行。

 それ以降は激しい戦闘どころか戦いの空気すら感じられないほどに静かで、不安になった俺は九尾に二人の状況を尋ねる。

 

 

「妙に静かだけど今二人はどんな状況ですか?」

「死んではいない……だがサスケからチャクラを引っ張られる感覚が無くなっている」

「決着がついたのだろうか……?」

「何とも言えんな」

 

 

 自然と足早になる一同、その結果遂に終末の谷が見える所まで来ることができたのだが、その光景に一瞬息をのむ。

 初代火影とうちはマダラの巨大な立像は無残にも破壊され、滝は跡形もなく吹き飛んでいた。

 そんな中大きな岩の上に二人が並んで横たわっている姿を発見、写輪眼による幻術を警戒しながら接近するが、二人は何処か穏やかでありサスケも憑き物が落ちたような顔をしている。

 二人は片腕を失っており、このままでは失血死してしまうと俺と綱手がカツユを経由して止血を行い、念のため土影が土遁でサスケを拘束した。

 なんとなく消化不良ではあったが、こうして第四次忍界大戦は幕を閉じることになる……目が覚めたサスケは特に反抗することなく無限月詠の解除に協力、その功績から死罪を免れることになった。

 その後の事は俺が敵味方どちらにも回復効果のある範囲内全てに回復効果をもたらす魔法を限界まで使ったり、二尾とユギトの再会に立ち会ったり、どさくさ紛れに大蛇丸に浚われそうになったりと色々忙しく、人生で最も忙しい時だと実感できるほどだった。

 しかし俺にとって本当に大変なのは戦後だった……どうしてこうなった?

 




駆け足になったけど次で最終話かな……長かった

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