忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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エピローグ

 第四次忍界大戦から十数年の時が過ぎ、世界は大きく変わった。

 五大国が互いに歩み寄り、協力し合うことで大きな戦が減って比較的平和な時間が流れているのだ……まぁ今日に至るまで何度か危機的状況に陥るレベルの事件もあったのだからあくまで比較的である。

 

 

「ヨミト、そろそろ時間だ」

「分かってるよ綱手……それにしても岩隠れは少し遠いなぁ」

「仕方がないだろう、土影は歳の所為もあるが元から腰が弱かったからな。

年配者を気遣うのは当然のことだろう?」

「そうだね、だから綱手も里のみんなに気遣われて「ん?」……いや何でもないですよ?」

「そうか? それならいいが……」

 

 

 危ねぇ……あれは完全に殺る気の眼だった。

 綱手もこの十年ですっかり丸くなったけど、最近歳のことに触れると般若も逃げ出す様な顔するから気を付けないと。

 今から向かう先には似た様な人が最低でも三人いるから、もっと発言に注意しないと俺の胃が持たない。

 

 

 時が流れれば立場も変わる。

 火影は二つ代が変わり、先代火影であるはたけカカシが引退してからはナルトが火影へと就任し里をまとめている。

 あの頃はまだ大人と子供の中間位だったのが、今では二人の子供を持つ立派なお父さんだ。

 ナルトと結婚したヒナタも子育ては大変そうだが、この間会った時に聞いた限り日々幸せにやっているらしい……まぁ子供の一人が大分やんちゃで困っているらしいが。

 

 

 綱手の今の立場はご意見番で、火影としての任期は其程長くなかったが三忍として生きた経験と腕から未だ発言力はかなり強い。

 普段は火影邸が主な仕事場なのだが、ナルトが七代目に就任してからは先代であるカカシが先達としていろはを教えているからある程度時間に余裕ができているので偶にこういった外出も増えてきている。

 今回の様に他の国状況を知るためという真面目な内容の時もあれば、シズネを強引に引き連れて博打に興じることも……昔ほどヤンチャしてはいないが年相応の落ち着きを求めるのは無理なのだろう。

陸路も海路も技術進歩のおかげですっかり移動時間が短縮され、割と各国へ訪れやすくなっているのも原因なのかもしれないが。

 

 

土の国岩隠れの里についたのは夕方頃、集まりの主要人物である三人とその護衛は既に到着しており、茶を飲みながら最後の到着者である俺たちを出迎えた。

旧五影会談と称される集まり、およそ四半期に一度開かれる井戸端会議のようなもの。

そのメンバーは第四次大戦時に五影を務めていた者達であり、現在も風影をしている我愛羅を除いた元国のトップ達。

各々が既に役職を退き、隠居の身となった事で気軽に行えるようになったこの集まりだが、話す内容は酒を飲みながら行う本当の雑談であり、会談とは名ばかりのものだ。

 

 

「毎回貴方達が最後に到着しますね……相変わらずお二人とも若々しい姿で羨ましい限りです」

「照美様もお元気そうで何よりです」

「私は若作りが上手いだけだ……それにしてもお前少し太ったな」

「……言わないでくださいますか」

「また若い男に逃げられたらしいぞ? 焦ってるのかもしれんががっつき過ぎなのだ此奴は」

「エー様!!」

「いつもの事ではないか……アイタタタ」

「オオノキ様まで!!」

 

 

 とこんな感じに割と和気藹々とした駄弁りをする訳なのだが、主に喋るのは女性二人で他のメンツは聞き役が殆どである。

 護衛の人も時折話を振られるのだが、元五影相手なので畏まった返答が多く、元影達も最近ではあまり振らなくなった。

 ただし大戦の時から面識のある俺に関しては普通にガンガン話を振ってくるので気は抜けない。

 特に元水影の照美メイ様に対する受け答えは神経を使う。

 

 

「長十郎もすっかり水影が板に付いてきて、可愛いことを言わなくなってしまい寂しい限りなのです……ヨミトさんはどう思われます?」

「えっとですね……何とも言いにくいのですが子供が巣立つ親のような気持ちなのではないでしょうか?」

「子供……あんな大きな子供がいるような女だと見えているのですか?」

「え!?いやそういう事ではなくてですね!」

「私はまだ清い身です! 疑うのでしたら是非ご確認を「おい盛るな色ボケが!」ちっ……別に良いじゃないですか、双方の合意の上であれば」

「それで手を出したら責任を取れと騒ぐつもりだろうが!!焦り過ぎだ馬鹿者!」

「焦りもします……私が良いなと思った相手は殆どがもう結婚してますし、残る人も元水影という肩書に尻込みしてしまって近づいてこないのですから!」

 

 

 早速始まってしまった……そうこの会談で一番話題に上がるのが彼女の男性事情についてなのだ。

 そして幸か不幸かフリーである俺に軽く目を付けている彼女は会う度軽く誘いを掛けてくる。

 綱手としてはそれが妥協で声を掛けてきているように見えて気に食わないらしく、事あるごとに小一時間位口論が続く。

 それなら俺を連れてこなければいいのではと思うだろうが、それに関しては残る二人が待ったを掛けるのだ。

 

 

「ヨミトよ、治療の神を呼んでくれんか?

 今回のは少し長引きそうで困っとるんじゃぜ」

「分かりました、それでは魔法‘治療の神 ディアン・ケト’発動」

 

 

 ふくよかな妙齢の女性が光と共に現れ、彼の腰に手を当て治療を開始する。

 何故元土影がディアン・ケトを知っているかというと数年前に起き上がれない程腰を痛めた彼の治療のために綱手と共に呼ばれた際に使用したからであった。

 大戦後俺の本業である古本屋は副業の様になっており、忍じゃないのだが五影経由の名指しで依頼が来ることが増え、色々な所を飛び回ることが増えている。

 その内の一つが土影の腰痛解消依頼、オオノキさんはディアン・ケトの治癒魔法が大層気に入ったらしく、割とコンスタントに呼び出しが来るのだ。

 それと同じ位の頻度で来る依頼が元雷影であるエーさんからの物なのだが……これがまた厄介なのである。

 

 

「ヨミトよ、もう少ししたら今回も付き合ってもらうぞ?」

「今回もですか……強化はしますか?」

「そうだな、二段階上げてくれ」

「分かりました、用意しておきます」

 

 

 彼の依頼内容は腕が鈍らないようにするための組手相手……正直断りたかったが名指しで雷影に呼び出されると断るのは難しく渋々受けることになった。

最初は俺自身が相手を請け負わされていたのだが、常時戦場を地で行く雷影相手だとどうしても経験不足が表立ってしまい落胆されてしまったのだ。

依頼を受けた以上これは良くないと思い、装備魔法を使って身体能力を底上げしたら何とか満足してもらうことができた。

しかしやり過ぎたのか二度目の呼び出しを受けることになり、身体能力頼みの戦法は通じなくなっていた……またも落胆したような顔をするから今度は驚かせてやろうと思い、‘クローン複製’という対象の身体能力をそのままコピーしたクローンを作り出す罠を使いエーさんに突っ込ませた。

術こそ使えないが、身体能力や戦闘技術の再現のできるクローン体に最初は驚いていたものの、自分自身と闘うという体験に随分と手ごたえを感じたらしく、それ以来これまたコンスタントに呼び出しが来るようになってしまったのだ。

 

 

 このような理由で旧五影会談の準メンバー入りを果たしている訳だが、開催地次第ではここに二尾とユギトが混ざったり、シズネが参加したりする割と姦しい会なので俺も地味に楽しみにしている部分がある。

 近頃は本当に楽しいばかりの毎日だ……甘味の取り過ぎで太ってしまったが性格も丸くなったアンコちゃんと団子を摘むのも楽しいし、俺がいない間の店を任せているカツユには頭が上がらないけれど帰ったらいつも「お帰りなさい」と声を掛けてくれる存在がいると人生に張り合いが出る。

 本当にこの世界に来て良かった……そう思えるだけの幸せを俺は感じていた。

 俺は不老、寿命の違いからこれから先多くの別れが待っているだろう。

 しかしそれと同じだけ新たな出会いもあるはずだ。

 平和でも戦いは無くならない、いつか俺も死ぬことがあるかもしれない。

 だが少なくとも終わりの見えない生に絶望して自ら死を選ぶことはないだろう。

 俺はこの忍者の世界で生き残る……そう決めたのだから。




これにて本編は終了になります。
最後の方は展開が大分駆け足になってしまいましたが、何とか終わりまで持っていくことが出来ました。
それもこれも評価や感想を頂き、自身のモチベーションを保つことができたからであり、読者の皆さんには感謝の念でいっぱいです。
二年も続く長い長い話(一話一話は短かったけど)にお付き合い頂きホントありがとうございました。
一応二本の外伝を用意してあるので更新自体はもう少し続きますが、本編はここで幕引きとなります。
この後のヨミトに関してはご想像にお任せしますが、気が向けばアフターストーリーとか書くかもしれません……ナルティメットストーム4とか劇場版ナルト見てテンション上がったりしたら書きたくなるかもしれないからね!
少し長くなりましたが改めてもう一度、本作を読了頂き誠にありがとうございました!

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