弟が出来ました……綱手に!
里は千手家に男児が生まれたって結構な騒ぎになってる。
ただ千手家は初代と二代目火影が出た家系と言うことで他里に強く警戒されているため、しばらくは綱手の任務を少なめにし、家に居る時間を長くするらしい。
これに関しては綱手本人からそういう理由でしばらく来れなくなるとカツユを通して言われたから間違いない。
朝起きたら机の上にポツンと小さなカツユが居て、綱手の声で「弟出来て心配だからしばらく店に行けなくなる! でも偶にカツユをそっちに送るから私の好きそうな本があったらその時は宜しく!」といきなり言われたときはかなり驚いたけどな。
話が終わった瞬間カツユが「朝早くに申し訳ありません! 綱手様が思い立ったが吉日だからと……」って小さな身体で一生懸命頭を下げているのを見て、カツユ可愛いと思った俺は少し変なのかも知れない。
とりあえず頭を下げるのを止めさせて、自分の腹が空腹を訴えるのでカツユと一緒に朝食を取ることにした。
最初はカツユも遠慮して帰ろうとしたんだが、一人で食うのは味気ないからと呼び止めて手早く朝食を用意する。
何か食べられないものはあるかと聞けば、しょっぱくないものなら何でも大丈夫とのこと……そこはやっぱりナメクジなんだなと思ったけど口には出さないでおいた。
俺が用意した朝食はご飯、卵焼き、味噌汁、漬け物という普通の朝食。
流石に俺と同じものを食べると塩分が多いと思い、カツユの前に出したのは水洗いしたキャベツと小さく砕いた飴だ。
キャベツはともかく、砕いた飴はパっと見て何か分からない様で首を傾げている。
「これは何ですか?」
「飴を砕いたものだよ? 大きいままだと食べにくいと思ってね」
「飴……って何ですか?」
「飴って言うのは砂糖と水をおおよそ1:2で混ぜて、火で煮詰めた後に冷やすと出来る甘いお菓子のことなんだけど……知らなかった?」
「はい」
「そっか、まぁ食べてみれば何となく分かると思うよ」
これ以上俺には説明できそうにないので一先ず食って貰うことにした。
俺も自分の飯が冷めてしまう前に食いたかったしな!
俺は漬け物で飯を食いながら、おっかなびっくり飴に近寄っていくカツユを見守る。
まぁぱっと見砕けたガラスにも見えなくないから警戒してるのだろう。
このまま放っておくと食べ終わるまでに日が暮れそうだから、食べても問題ないことを示すために一つまみの飴を俺が食ってみせる。
それを見てカツユは息を呑み、再び飴に向き合うとゆっくりと飴に口を付けた。
「ん………あ、甘くて美味しい」
「そっか、それは良かった。
作った甲斐があったよ」
「これってヨミト様が作ったんですか?」
「だから俺には様付けしなくて良いって言ってるのに……買うより安く済むからね。
果物の飴とかは中々上手くいかないんだけど、これくらいなら作れるようになったよ。
一人暮らしだと自炊は必須だしね」
カツユの顔は表情が読み取りにくいが、そう言った俺に何となく感心してくれている気がする。
自炊って言っても簡単なものしか作れないから、騙しているような気持ちになって微妙な気分になってしまったけれど、カツユが美味しそうに食べてくれているから開き直って食事に集中する。
それほど量が多くなかったのもあって朝食はすぐになくなり、今は二人でまったりとした時間を過ごしている。
分体だからこそ急いで戻る必要は特にないらしい。
こうして一対一で話す機会なんて今後あるかどうか分からないから有効活用しないとな!
「カツユって何が出来るの?
分裂して、声を伝えたり出来るのは分かってるんだけど……」
「他にですか? う~ん……酸が吐けます」
「そう言えばカウンターに穴開けてたね」
「あの時は本当にご迷惑をお掛けして申し訳ありません!」
「いや穴ももう塞いだから気にしなくて良いよ?」
「ありがとうございます。
他に何が出来るかと聞かれれば……今のところないですね」
「今のところ?」
「今綱手様と試していることがあるんです。
流石に何をやっているかまでは教えられませんけど」
そう言って申し訳なさそうに頭を下げるカツユ。
こっちが無理言って聞いてるんだから、そこまで気にしなくても良いのに……。
「いや、良いんだ。
少し気になっただけだから、だから頭を上げてくれ。
むしろこっちこそ答え辛いことを聞いてゴメン」
「いえいえ、私の方こそ!」
「いや俺が!」
このやりとりを数回繰り返すと、何か面白くなって吹き出してしまった。
まさかこんな漫画みたいなやり取りを実際にやるとは思わなんだ。
カツユは俺が何で吹き出したのか分かってない様で首を傾げていたが、それがまた面白くて笑いが止まらない。
しばらく笑い続けて、やっと笑いが収まったのでキョトンとしているカツユに軽く謝る。
「ゴメンゴメン、何か面白くなっちゃってね。
いやぁ笑った笑った」
「いえ、少し驚きましたけど楽しそうで良かったです」
「優しいねカツユは……そうだ!そろそろ戻るんだろう?
戻る時ってどの位の荷物もって戻れるんだい?」
「え? えっと、本二冊分くらいです」
「そっか……なら大丈夫だな。
ちょっと待ってて!」
俺は急ぎ台所に行き、飴玉をいっぱい詰めた紙袋を持って戻る。
飴は保存が利くから、ある程度まで作ったら袋詰めして保管してるんだよね。
自分じゃ食べきれなくなってきたから、丁度良かった。
カツユは俺が飴でパンパンの紙袋を持って戻ってきたのを見て、不思議そうに首を傾げる。
「この間飴を作り過ぎちゃって一人じゃ食べきれなかったんだ。
だからもし良かったらこの飴を貰ってくれないかな?」
「こ、こんなにいっぱい……良いんですか?」
「うん、このまま置いておいても食べきれる自信ないしね。
カツユももし飽きたら捨ててくれて良いから」
「そんな、大事に食べます!」
そう言って頭を下げるカツユに少しだけ安堵した俺。
流石にこの量は多いかなって持ってきてから思ったから不安だったんだけど、喜んでくれたようだ。
うん、やっぱり能登ボイス可愛い。
その後カツユを見送って(ボフンって消えたんだけどね?)店に行っていつも通りの暇な一日を過ごした……こんな日が何時までも続けばいいのに。
能登ボイスが好きです
田中(少佐)ボイスが好きです
大塚(スネーク)ボイスが好きです
秋元(東方不敗)ボイスが好きです
……声って大事だよね