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こう書くと最終回みたいですが、まだまだこの作品は続いていきますので、もしよろしければ今後ともお付き合い頂けると幸いです
三代目が来てから早三日。
冷やかしの客すら来ないという暇な店内で、いつも通り技術書の類を読み漁っていると店の入り口から一人の少年が入店した。
「相変わらずガラガラだね」
「まぁしょうがないさ……それで今日は何のようかな、縄樹君?」
彼が前回ここに来てから、かれこれ半年ぶり位だろうか?
彼が初めて綱手に連れられてここに来た後、何度か二人で本を買いに来ていたんだけど、戦争が近づくにつれて綱手の代わりにカツユの分体が連れ添い、彼が五歳になってからは一人でここに来るようになった。
それに合わせて買う本は昔と比べて忍の自伝が多くなり、どうやら忍者を目指しているようだ。
今の彼の姿を見てもそれはハッキリと分かる。
動きやすい服装で腰にはホルダー。
ホルダーの中身は綱手のお下がりなのだろう傷が付いたクナイが見える。
「今日は忍術について書いてある本あるかなって来たんだけど、なんか良い本ある?」
「良い本も何も千手家にいっぱいあるんじゃないのかい?」
「確かにいっぱいあるけど、封印されてる危ない本もあるからって書庫には入れてもらえないんだ!
だから自分で教本探そうと思って今日ここに……」
「へぇ、これはツいてるなぁ!
ヒルゼンの野郎の知り合いだけじゃなく、千手の餓鬼までいるなんてな!」
いつの間に入ったのか縄樹君の後ろに着物姿の目つきが悪い男が笑いながら立っていた。
何だこいつ……とりあえず客ではなさそうだ。
俺は縄樹君にカウンター内に入るよう勧めるが、縄樹君はむしろその男の方を向き啖呵をきる。
「誰だお前!」
「あ? 俺は善良な一市民だよ。
ちょっと火影様に借りを返しに来たんで~す」
「借りってなんだよ?」
「優しい優しい火影様がとある町を牛耳る組潰した借りだ。
いやぁ組がなくなってからは町が平和で………金が入ってこねぇんだよ!
ったく、余計なことしてくれたぜ。
あそこまで組をデカくするのにどれだけの金と時間が掛かったと思ってやがるんだよ……しかも使える奴ら殆ど殺しやがった所為で建て直しの目処も立ちやしねぇ」
うわぁ……こいつヤクザの親分かよ。
っていうか何で三代目への報復でこの店来るんだよ!
三代目に直接行けよ!
行って砕けて来いよ!!
俺のそんな思いに微塵も気付かずにヤクザは懐から白鞘の匕首を取り出す。
「ここに来たのはまぁ八つ当たりみたいなもんだ。
アイツを殺せりゃ一番良いんだが、流石に俺はそこまで馬鹿じゃねぇ。
直接行けば俺なんか瞬殺だ……だからアイツの周りを攻めることで追い詰めることにした。
アイツに関わる一般人を殺し続ければアイツも堪えるだろ?
その栄えある一人目がお前だよ古本屋」
「有り難くはないかな? まだ死にたくないし」
「遠慮するなよ、すぐ済むしな。
千手の餓鬼は店主の次だ、安心して良いぞ?
それにお前は殺しはしねぇ……手足の一本や二本は落とすかもしれねぇがな」
そう言ってニヤリと嗤うヤクザの親分はまるでエサを前にした肉食獣の様にも見えた。
俺はある物を確認しながら彼の挙動を見続ける。
狭い店内をゆっくりと俺目掛けて歩いてくる彼だったが、彼の真ん前に小さな人影が現れた。
「止めろ! おじさんに手を出すな!!
お前の相手は僕がする!」
「へぇ、流石は木ノ葉の名家の嫡男。
勇ましいねぇ、でも……俺は下忍にも満たない餓鬼にやられる程弱くはねぇんだ。
順番は変わるが先に餓鬼の手足落としておくことにするか」
「やれるもんならやってみろ、この負け犬野郎!」
「……吠えたな、餓鬼が」
いきなり一触即発の空気になったな。
このまま放って置いたら縄樹君が達磨になってしまう。
彼をどうにかする用意は8割方出来ているけど、完全にするにはもう少し時間が掛かりそうだ。
どうすればいい……縄樹君の身体能力を信じるのも一つの手だけど、流石にギャンブル過ぎる。
トラップカードを使うか?
でもこの店に被害を極力出さないで、尚かつ縄樹君に不審がられない様なカードってかなり数が限られるような……今の伏せている状態のカードは‘くず鉄のかかし’‘六芒星の呪縛’‘和睦の使者’の三枚。
うん、割とどうにでもなりそうだ。
微妙に安堵のため息を吐くと、それを合図に二人が動き始めた。
刀と違い、鍔のない匕首は鍔迫り合いをすることが出来ない。
しかしそれは縄樹君の使っているクナイも同じ。
どちらも正面切ってぶつかる武器じゃないんだが、そんなのこと知ったこっちゃねぇとばかりに二人の刃がぶつかり合う。
本来なら大人と子供で勝負になんてならないんだが、伊達に忍者目指しているわけじゃない縄樹君は何とか剣戟を防いでいる……いや、正確に言えば防がせて貰っているだな。
斬り合っているヤクザさんの顔には愉悦の表情が浮かび、縄樹君の表情には苦しそうに顔を歪めていることからそれが分かる。
正直今すぐにでも加勢したいけれど、トラップで防げるのは攻撃二回分だから心許ない。
故に俺は気付かれないように作業を進めていく。
「ほらほら、どうしたぁ?
負け犬に負けたらお前は一体何になるんだ?」
「う、うるさい!! はっ!」
「おぉ、怖い怖い……怖すぎて腕に力が入っちまうなぁ!」
「あっ!?」
剣速が上がった斬り上げで縄樹君のクナイがはじき飛ばされ天井に突き刺さる。
丸腰になった縄樹君を見て愉悦を深めるヤクザさん。
後30秒位で用意が出来るんだが……かなり際どいな。
「さて、お仕置きの時間だぜ小僧。
俺は優しいから一太刀につき手足を一本落としてやる。
子供だから特別だぞ?
大人だったら指先から寸刻みにするとこなんだからな?」
「や、やれるもんならやってみろ!」
「その元気がいつまで続く事やら……とりあえず右腕からな?」
ここが限界のラインだな……後15秒程欲しい所だが、まぁ何とかなるはずだ。
俺は手に持った糸にチャクラを流し始める。
ヤクザさんが匕首を縄樹君の右腕へと振り下ろそうとした瞬間に俺は宣言した。
「罠発動‘くず鉄のかかし’」
俺の宣言と共に縄樹君の目の前に鉄くずで出来た案山子が突如現れる。
案山子は匕首の斬撃をその身体で受け縄樹君の身を守った。
その光景を見て縄樹君は固まり、ヤクザさんは大きくバックステップ。
これでまた少し時間を稼げそうだ。
「おい、古本屋……てめぇ忍だったのか?」
「お、おじさん?」
「う~ん、そうと言えばそうだし違うといえば違うかな?」
「ふざけんな!!」
「一応忍じゃないんだけど、忍者っぽいことは出来るっていうのが正解だね」
「糞が……舐めやがって!」
ヤクザは怒りを隠そうともせず、標的は俺に移ったようだ。
匕首を持った彼が本気で俺目掛けて突っ込んでくる。
まぁもう……遅いんだけどね。
俺の手前2メートル位のところでヤクザは、ものの見事にすっころんだ。
「気付かない君が悪いよ?
まぁ気付いたとしても、ここには辿り着かせないけどね。
レジカウンターの中は俺の
チャクラが流れている糸に雁字搦めにされ、受け身も取れず身動きも取れないヤクザさんに俺はそう告げた。
小物っぽい敵出してみました……そして直ぐに退場します!
あぁ戦闘描写が上手くなりたい
というか文章構成力を上げたい