忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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俺は東方が好きです


第21話 ヨミトの完璧手裏剣教室

 綱手と約束した縄樹との訓練初日。

 いつも通りの時間に店を閉めた俺は今、千手家の庭にいます……この世界で初めてお邪魔した人の家がここってどうよ?

 っていうか超デカいんですけどこの家!

 ここに来るまでに使用人らしき人も何人かいたし……住む世界が違うよ。

 ちなみに綱手は任務でいませんでした。

 別の意味で俺も住んでいた世界は違ったけどね!

 まぁどうでも良いことは置いておいて、まずは目の前でワクワクしている少年をどうにかしないとな。

 

 

「あ~……じゃあ始めようか」

「はい、おじさん!」

「おじさん……別にいいけどね。

 じゃあまず初日と言うことで縄樹君が現状何が出来るのか教えてくれるかな?」

「もちろん! え~と……アカデミーで習ったのは手裏剣の投げ方と印の組み方、軽い体術、後は一般教養だよ!

 忍術だったら変わり身の術と変化の術を習ったばっかりかな」

「そっか……だったらまず変化の術を見せてくれる?」

「いいよ……変化!」

 

 

 ボフンと白い煙で縄樹君の姿が隠れる。

 特に何に変化するか指定しなかったけど、一体何に変化するんだろうか?

 少しだけ楽しみにしていると、風が吹いて縄樹君の姿が露わになる。

 そこに立っていたのは綱手………に似ている女の子だった。

 パッと見そっくりなんだけど、如何せんスタイルが彼女っぽくない。

 まだ綱手の胸はそんなに育ってないぞ!

 そうなるのはまだ先のはずだ!!

 そんなことを思いつつもチラチラと胸を見てしまうのは男の性なのだろう……本人にしたら冗談抜きに死にかねないから気を付けないと!

 

 

「どう? 我ながら良くできてると思うんだけど」

「な、なんで胸を大きくしたのかな?」

「だって姉ちゃんが胸を大きくしたいって言ってたから……駄目だった?」

「いや、良いんだけど……ただ綱手の前でそれやったら殴られると思うから気を付けるんだよ?」

「? 分かった」

 

 

 縄樹君は首を傾げながらも頷くと変化を解いた。

 俺は冷や汗を服で拭いながら、今の変化を思い返す。

 一部故意に変化させた部分はあったものの、パッと見た感じでは中々のクオリティだったと思う。

 流石に家族だけあってよく見ているんだなと感心したくらいだ。

 後は相手になりきって演技することが出来れば何も言うことはないだろう。

 

 

「変わり身の術は俺が攻撃する必要性があるから後回しにするとして……この庭に傷ついても大丈夫なものってあるかい?」

「う~ん……何に使うの?」

「縄樹君の手裏剣の腕前が見たくてね」

「それだったらいつも的に使っている樹がアッチにあるよ!」

 

 

 そう言って走り出す縄樹君の後を歩いて追いかける。

 広い庭だが走れば端まで30秒も掛からないので別にそこまで急がなくても良いと思うんだが……手裏剣に自信があるのかな?

 歩き始めてから一分も掛からない内に縄樹君が待つ一本の樹の前に着き、そこで持ってきた荷物の中から三種類の投擲武器を出す。

 

 

「全部知ってるかい?」

「当たり前だろ! 普通の手裏剣にクナイ、そしてこのでっかいやつが風魔手裏剣だ!」

「正解、よく勉強してるね」

 

 

 正確に言うと普通の手裏剣っていうか四方手裏剣なわけなんだけど……一番よく使われてる手裏剣だから特に訂正はしなかった。

 この三種類の忍具はこの里でもポピュラーな武器であり、買おうと思えば普通の人でも買うことが出来る。

 他にも千本や八方手裏剣等も売ってはいるんだけど、使い手は多くないらしい。

 

 

「今から縄樹君にはこの樹に貼り付けた的に向かって、この3つの手裏剣を3回ずつ投げてもらう。

 ちなみにいつもはどの位の距離で投げてる?」

「えっと、15m位かな?」

「そっか、じゃあ……………この辺りから投げようか」

「でも風魔手裏剣って投げたことないよ?」

「あ~……じゃあとりあえず今は普通の手裏剣とクナイだけで良いよ」

 

 

 風魔手裏剣投げたことないのか……アカデミーではあまり教えないのかな?

 癖がある獲物だし、怪我の危険も少なくないから分からなくもないけどな。

 多少想定外ではあったけど、別にあの二つだけでも力量は確認できる。

 位置に着いた縄樹君が手裏剣を構えた……別に変な癖はついていない様だ。

 そのまま手裏剣を投擲。

 

 

「中心から5cmってところか」

「い、今のは少し手が滑ったんだよ!

 いつもだったらもっと真ん中に当てれるよ!」

「そっかそっか、じゃあ次に期待しようかな」

 

 

 その後の二投目、三投目も多少は中心に近づくけれど、中心3cm以内に入ることはなかった。

 クナイは5cm以内に入ることもなかった……というか一回的から外したし。

 どうやら縄樹君はあまり投擲技術が高くない様だ。

 これは少し考えないといけないな。

 縄樹君がこちらを見ながらすこし不安そうにしていることから、本人も気にしているのだろう。

 別に全部ど真ん中に当てなければ忍失格というわけじゃないけれど、出来れば中心から3cm以内に投げれる位のコントロールは欲しい。

 将来的には起爆札を付けたクナイとかを投げるわけだからね。

 

 

「とりあえずこれを集中的に練習しようか。

 一応手本になるか分からないけど俺が投げてみるから見ててくれるかい?」

「うん」

 

 

 俺は縄樹君の投げた手裏剣を的から引き抜き、さっき縄樹君が立っていた場所に立つ。

 基礎故に欠かしたことのない訓練。

 俺にとって20m位なら全て中心から1cm以内に入れることが出来る。

 まぁ10年近くやれば誰でもこの位は出来る様になると思う。

 俺は気負わず手裏剣を構え、打つ。

 一枚目が当たる前に二枚目と三枚目も打ち、全てを目標の位置に当てる。

 

 

「まぁ手裏剣はこんな感じで手を離す位置がとても大事なんだ。

 縄樹君もまずはそこを気にしながらやってみると良いと思う」

「………凄い」

「綱手ならもっと凄いこともできるさ」

「ホント!?」

 

 

 驚いた様に聞き返す彼に俺は苦笑いで返す。

 一枚目に二枚目を当てて砕き、二枚目に三枚目を当てて砕く位のことは出来ると思う……今の段階でも。

 なんたって将来的に指一本で地面割るくらいだし。

 見たことのない姉の妙技を想像してか、縄樹君の目が輝いているのを傍目に俺はクナイを持つ。

 

 

「縄樹君、興奮するのはそこまでにしてくれるかい?

 次はクナイを投げるからよく見ておいてくれ」

「あ、うん!」

 

 

 ここで一つ説明しておくとクナイ……というか投げナイフのような物を投げる場合には2通りの投げ方がある。

 回転させない様に投げる方法。

 回転させる様に投げる方法。

 縄樹君は前者の方法で投げていたので俺もそれに習って回転させずに投げることにする。

 一本ずつ投げるのなら狙ったところに当てるのは難しくない。

 握って、振りかぶって、タイミング良く離せばいい。

 ただしその動作は限りなくスピーディーに無駄のない動きを心掛けなければ意味がない……今から投げますよって言いながら投げる様なもんだしね。

 だから出来ればこの一連の動作を1秒以内に、尚かつクナイの投擲速度は出来る限り速く!

 それを肝に銘じ一投目。

 今出来る最速の投擲………やべぇ力入れすぎた。

 ベストを尽くした結果、いつもの癖でチャクラで身体強化してしまい、クナイは樹に埋まってしまった。

 

 

「は、はは……やり過ぎちゃった」

「…………」

 

 

 そんな目で見ないでくれよ縄樹君……これ位なら君のお姉ちゃんもできるんだからな?

 だからそんな唖然としないでくれ。

 頼むよ。

 

 


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