忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第28話 効果は未知数

 皆さんは‘スライム増殖炉’っていうカードを知っていますか?

 このカードは自分のスタンバイフェイズ……簡単に言えば自分のターンの初めに一体のスライムを召喚する永続魔法なんですが、攻撃力500のモンスターが攻撃表示で出てきても蹴散らされるのが関の山なわけですよ……遊戯王なら。

 でもここでは違う。

 少し前に試して俺の力が800相当だったから、案外馬鹿に出来ない攻撃力なわけだ。

 忍術とか使いまくって攻撃力800の相手を倒せたからそう判断しただけで、場合によっては……考えないようにしよう。

 まぁそれは置いておいて、モンスターは魔法・罠と同様五体まで同時に顕現できるんだが、攻撃力はあくまで500……俺で800と言うことは上忍なら余裕で1000以上あるだろう。

 遊戯王のルールでは戦う際に負けた方は勝った方の攻撃力、または防御力の差分のダメージを負うが、俺の能力ではモンスターがやられてもダメージを受けることはない。

 俺がプレイヤーであると同時にモンスターであり、山札であるという決まりが関係するのだろう。

 

 

 何故突然こんなことを言い出すかと言うと……今俺がトークンに襲われてるからなんだよね。

 原因は除外ゾーンでの修行に勤しんでいて、いつも通り俺の切り札の一つでもあるトークン召喚系の魔法及び罠を用いた戦術の模索をしている最中に、‘暴走闘君’というカードを使用したのが切っ掛けだと思う。

 トークンの攻撃力が1000上昇する効果を持つこのカードだけど、発動と同時にトークンの目から理性の色が消えて、俺に襲いかかってきた。

 今までこんなことは無かったから対策なんてしていないわけで、とりあえず三分前に罠を伏せたから最悪2分逃げ延びれば良いんだけど……これも一つの実戦経験のためと考えて色々試してみることにしよう。

 

 

「まずはこれ以上増えないようにしないと駄目だな。

 ‘魔法除去’発動・対象‘スライム増殖炉’」

 

 

 眼前にあった半球状の炉が光の粒になり消える。

 これで残るのは攻撃力1500のスライム一体のみ。

 コイツの厄介なところは上がった攻撃力じゃなく、その攻撃方法にある。

 ‘スケープゴート’の羊トークンなら攻撃方法は体当たり、‘終焉の焔’の黒焔トークンなら黒い炎による攻撃、でスライムトークンの攻撃方法はというと……触手での攻撃なわけだ。

 それに武器に関する装備魔法なら単純に切れ味、もしくは打撃力の高い武器が出てくるだけなんだが、‘魔道師の力’や‘団結の力’の様な形として現れない様な装備魔法は対象の筋力、もしくはそれに準ずるものを強化する。

 要するに触手の動きが結構速いんだよ。

 今のところ避けて対処してるんだが……触手を切れないのかって?

 触手の攻撃が速いのも問題なんだけど、‘暴走闘君’の効果は攻撃力上昇だけじゃなくて、トークンは戦闘で破壊されないっていう効果も付加する。

 よって斬撃打撃は通用しないと考えた方が良い。

 風とか土とかの忍術とかも効かないかもしれないけど、俺には使えないから関係ないね……安西先生、忍術が使いたいです。

 忍術が使えない事に嘆いていると、触手の数が増えてきた。

 

 

「これは避けるのが厳しくなったきた……除去を使うか?

 いや、まだいける!

 一先ず相手を尾獣……いや、そこまで危険じゃないから口寄せされた何かと仮定して、最低でも残り五分戦ってみるか!

 手始めに動きを制限する魔法‘攻撃封じ’発動、相手は守備表示になる!」

 

 

 スライムの触手が本体へと戻り、本体の質量が増える。

 強制的に守備表示にする効果は相手に今は守った方が良いと思わせるものなので、必ずしも守りに入るわけではないが、積極的には攻撃してこなくなるだけでも十分だ。

 このまま罠が発動できる時間まで待つのも一つの手だけど、ここは果敢に攻める!

 

 

「続けて装備魔法‘魔界の足枷’をスライムに装備、その後‘デスメテオ’を発動!

 暴走したスライムを焼き払え!」

 

 

 ‘魔界の足枷’は相手の攻撃力と防御力を100にして、そのモンスターの持ち主に500ポイントのダメージを与える装備魔法。

 今回は持ち主が俺だからダメージは俺にくるんだが、500位なら大した問題じゃない。

 ‘デスメテオ’は相手のLPが3000よりも多いとき発動できる、相手に1000ポイントのダメージを与える魔法。

 この世界にライフポイントと言う概念が適応されるのは俺だけ。

 故にこの発動条件は無視される。

 スライムの身体をどうやって捕らえているのかは分からないが、今相手は‘魔界の足枷’によって動きをかなり制限された状態だ。

 そんな状況下に高速で飛んでくる隕石を避けれるはずもなく、スライムは土手っ腹に巨大な穴を作ることになった。

 だがそれでも消滅はしない……やっぱり不定形の生物は生命力が強いんだな。

 デスメテオの所為で魔界の足枷も吹っ飛んだからスライムの攻撃力は再び1500に戻っているかもしれないが、これだけ質量が減っていれば触手の数はかなり限られるだろう。

 そんな事を考えながらも俺は警戒を怠らない。

 大きさは先程の半分以下になったようだが、未だ元気にうにょうにょと動いている。

 次の瞬間スライムが飛びかかってきた。

 何とか避けることが出来たが、かなりスピードが上がっている様だ。

 これは避け続けるのは無理だな……時間も大丈夫そうだし、もういいか。

 俺は避けるのを止め、体当たりを待ち受ける。

 疑うと言う事を知らないスライムはそのまま俺の腹目掛けて突進を繰り出すが、俺に届くその瞬間スライムが爆裂四散し、辺りに散らばるスライム片と共に光の粒になって消えた。

 

 

「‘炸裂装甲’は初めて使ったけど、衝撃も何もないな。

 物理法則とか何処行ったんだろう……」

 

 

 とりあえず先程消費したライフを回復させるために‘非常食’を使用し、その日の修行はそこで終わることにした。

 部屋に戻ると何やら外が騒がしい。

 耳を澄ませてみると里の外れで侵入者とうちは一族の一人が戦っているらしい。

 

 

「俺には関係ない話だな。 さてと、今日は疲れたから早めに寝るとするか」

 

 

 俺は寝具を用意して、外の喧騒を無視しながら床につく。

 早く戦争終わらないかなぁ……。

 


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