この世界に来て三日目。
色々と分かった事が増えたから、改めて今後の方針を纏めようと俺は店のレジに設置した椅子に腰かける。
まだ店を開ける程本の配置などを把握してないからここに座る必要はないんだけど、本に囲まれていると何か集中できる気がするから考えを纏める時はここに座ることにしている。
まず食料を買いに行ったときに耳に入ったアカデミーが既に創設されていることと既に二代目は亡くなっていることが分かった。
忍びの教育体制は三代目が完成させたもので、二代目が死んでから完成されたとかなんとか言っていたと思う……簡単に言えば三代目すげぇ。
もう一つ忍者関連で知ることが出来た情報としては、三代目がアカデミーの新卒業者のチームを一組担当する事になったという事。
これは確定した情報じゃないけど、恐らく後の伝説の三忍だ。
三忍の詳しい年齢は知らないが確か50代だったはずだから、この事から今の時代がおおよそ原作の40年前くらいなんだと思う。
「やっぱり九尾襲撃前かぁ……想定内だけど、これで死亡確率が高いイベントを乗り越えないといけないのが確定したな。
九尾の襲撃は原作の10年前くらいだったはずだから、今からおおよそ30年後。
なんか無駄に不老にされたから老化による戦闘力の低下は無いとしても、二次災害でもポックリ死にかねないから、やっぱり鍛えなきゃ駄目だよな」
大きなため息を一つ吐くと、手元に置いてある‘忍’という一文字が入った重り入りリストバンドと脚用の重りを手に取る。
手首の重りは15キロで脚のは30キロなので、本当なら鍛えてない俺には身体を壊すレベルの重さなんだけど、こっちに飛ばされる際に筋力の強化が行われていたためか少し重く感じるが動けないレベルじゃない。
このバンドを見つけた時は「おお、これで気分はリー君だね!」と思って一番重いやつ持とうとしたんだけど、流石NARUTOの世界。
微塵も持ち上がらなかったよ。
よく見たら500キロとか書いてあったから、持ち上がるはずもなかったんだけどね!
考えてみればリーも重りを外した時に地面にめり込む程の重さだったもんな……忍者すげぇ。
ある程度冷静になったところで無理が無い位に重くて、日常生活に支障が無いレベルで探してみたところ、今の俺の筋力に合っていたのがこの重さだった。
まだ値札すら外していなかった重りを手足につけ、歩きまわってみたり、軽く跳んでみたりしたのだが、流石に合計90キロの重りは結構身体に負担を掛けてくる。
「これは……慣れるまで結構掛りそうだな。
でも最悪逃げ脚だけでも上忍レベルにしたいから次から買う重りはちょっと冒険しなきゃ駄目っぽいか?」
特に才能を付加されたわけじゃないから、多少無茶しなきゃ死んじゃうっていう……まぁカードの能力がどの程度のものなのか試してないし、試せる場所もないから夜とかに影響の小さいであろう魔法や罠の実験していかなきゃいけない。
それにこの三日間で日用品と食料は買ったけど、店の中身は基本手つかずだし、看板どころか店の名前すら決まってない。
実際は店の中味が手つかずといっても散らかっているわけじゃないし、このまま店を開くことは出来るんだけど、看板がないのは店としてどうよ?と思ってまだ店を開いていないだけだ。
「考えるべき事は多いけど、とりあえず方針としては身体能力の向上と生活サイクルの確立を基本として、急ぎ考える必要があるのは店の名前位か?
古本の仕入れに関しては、なんか地下に本の倉庫があったから暫くはそれでどうにかなるだろうし、近くに古本屋は無い様だから‘要らない本を買い取ります’って暖簾を表に掲げておけばいいかな?
九尾イベントに関してはまだ時間があるからじっくり考えていくことにしよう」
ある程度方針が決まったところで、今日決めた事を紙にメモして机の中へと仕舞いこむ。
これで今日やることは店の名前を考えるだけだ。
出来れば今日中に名前考えて、三日以内に店を開けたい。
「どうするか……やっぱりシンプルかつ日本的な名前が良いよなぁ。
尚且つ本を売っているという事が分かる名前。
本に関わる単語といえば、書・読・巻・本・文とかか?」
頭の中を駆け巡る単語の羅列。
しかし幾ら組み合わせを変えてもしっくりくるものが無い。
どうしたものかと思い、とりあえず本に関係する言葉だけで考えるのは諦めることにした。
「本の住処……これだと本屋っぽいな。
書の隠れ家……これは結構良いと思うけど、保留。
ん?……本の新たな持ち主が出来るまで、本はここで休むと考えればどうだ?
本の宿とか……おぉ!これ結構いいんじゃないか!?」
俺は店の名前を‘本の宿’に決め、看板用の板を買いに行くことにした。
そのついでにこの里のまだ見てない所を回ってみようと考え、部屋に戻って準備を行う。
持っていく物は地図と財布だけだから、準備といっても直ぐ終わるんだけどね。
そう言えば看板って何処で買うんだろう?
っていうか看板屋さんってあるのかな?
なんかいきなり前途多難っぽいけど、お店やってる人に聞けばわかるよね!
よし、そうと決まればカッコいい看板を探して、そのお店の店員さんに聞いてみる事から始めよっと。