忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第29話 時の流れ

 外から威勢の良いかけ声や木材を切る音、釘を打ち込む音が絶え間なく聞こえる今日この頃、皆さんは元気にお過ごしでしょうか?

 なんか忍者学校の校舎を増築するとかで、ここしばらく日中はずっとこんな感じで騒がしいんだけど、終わらない戦争で気落ちした人達にとっては活気を感じられて良いのだろう。

 もう少しで完成するらしく、それを祝ってか縁日も結構並んでいる。

 まぁこの騒ぎに乗じて何かする人がいないとも限らないので、いつも以上に見回りしている忍者は多いが、忍者達も水を差すまいと極力目立たない様にしているのが見て取れる。

 その努力の結果、男の子が気になる女の子を誘ったり、親と一緒に縁日を回ったりと微笑ましい光景が様々な所で見ることが出来た。

 今日が一般的にいう休日に当たる故に人の数も馬鹿に出来ない。

 客商売としては今日は稼ぎ時なのだろう……俺には関係無いけどな!!

 俺はいつも通りに店を開いて、偶に来る客に本を薦めたり、客が来なければ本を読んで時間を潰す……こう言うとなんか友達いないみたいだけど、一応何人かはいるんだよ?

 近所のラーメン屋さんの人とか、花屋のお兄さん、忍犬連れたお姉さん辺りは外で会ったらよく世間話とかするし、歳のことを考えなければ油目一族の子とかも知り合い以上の関係にはなっていると思う……でも今の所一番仲が良いのは大蛞蝓のカツユかな?

 最近は綱手の本を取りに来る日以外でも偶に家に来て話す位だからね。

 実は口寄せ契約を結んでくれないかと提案したこともあるんだけど、カツユを呼び出すには中々大きなチャクラが無いと厳しいらしく、彼女が調べる限り俺のチャクラ量じゃ呼び出した後は殆どチャクラが残らないらしい。

 それでも治癒能力のあるカツユと契約できるならいざという時助かるんだけど、カツユ自身がそれじゃあ良くないと言うためお流れになったわけだ。

 でも俺としては諦めたくないわけで……

 

 

「そこら辺どうしたらいいと思う?」

「知らねぇよ。 っていうか何の話だよ」

「女の子は難しいって話だよ。

 君も将棋の本ばっかり読んでないで、外で女の子でもナンパしてきたら良いんじゃないかい?」

「いいよ、めんどくせぇ。

 どうせいつか誰かと付き合うんだ、別に今無理に探さなくたって良いだろ」

「無理に探す必要はないけど……いや、こういうことに関しては俺もそう経験があるわけでもないな。

 余計なお節介だった、すまない」

「いや、別にそこまで気にしてるわけじゃねぇっすから」

 

 

 そう言ってまた立ち読みに戻る男の子。

 この子は最近来る様になった子で、将棋の本を偶に見に来る準常連さんなんだけど、今日は買う気がないらしく、将棋の手が載った本を流し見している。

 

 

「にしてもアカデミーの増設くらいで何でこんな騒ぐかね……俺には理解できないな」

「みんな不安なんだよ、戦争も鎮静化どころか悪化する一方だし、里に侵入してくる他国の忍も増えてきてる。

 この間だって他里の忍が三忍を倒して名を上げようと攻めてきたし」

「あぁ、そう言えばそんなこともあったな。

 あの時は驚いたっすよ……いきなりでっけぇ蛙と蛇と蛞蝓が出てきたんすから」

 

 

 つい一週間前くらい前のことだけど、結構な騒ぎになってたからなぁ。

 何処の里かは知らないけど、話に聞く限り土遁を使う奴らだったらしい。

 今里に目立った被害がないのは三忍が瞬殺したからなんだと……ただ相手の忍術による被害は無かったんだけど、口寄せの所為で何軒か家が倒壊してしまった。

 その結果三代目は大激怒。

 奇跡的に怪我人は出なかったものの、三忍は暫くボランティア活動に勤しむことになったとかならなかったとか。

 その後も俺と彼は暫く三忍の口寄せについて話していたのだが、店に彼を迎えにきた二人の姿が見えたので彼は立ち読みしていた本を棚に戻す。

 

 

「シカク、そろそろ縁日に行こう!

 たこ焼きと綿アメとイカ焼きとチョコバナナと焼きそばとお好み焼きが僕を待ってるんだ!!」

「チョウザ……お前そんなんだから太っ「シカク!!」っと危ねぇ、サンキュウいのいち」

「ん? 今シカク何か言った?」

「いや、太巻きとかはあればいいなって言っただけだよ」

「太巻きかぁ……それも有りだなぁ」

「縁日で少し探してみますか」

「そうだな、それじゃまた暇だったら来ますんで。

 行くかチョウザ、いのいち」

「「おう!」」

 

 

 俺は楽しそうに縁日に向かう三人を笑顔で見送ると、店の閉店準備に取りかかる。

 いつもより大分早い時間だけど、こういう日は客の入りが0に等しい。

 なら只店でジッとしているよりも除外ゾーンでいつもの鍛錬を少し長めにやった方が特だろう?

 と言うわけで店前の看板を開店から閉店へと変え、店の戸に鍵を掛けようとした瞬間、誰かが俺の肩に手を置いた。

 この感じは……もう本人が来ることはないと思ってたんだけどな。

 

 

「この時間はまだ閉店には早いと思うんだけど?」

「今日は縁日に行く人が多いからもう客はこないと思うから閉めても良いかなって……でもかの三忍様が来たなら閉められないな……久しぶりだね綱手」

「ヨミトこそ、元気そうで何より」

 

 

 振り向くと最後に会ったときよりも大人っぽくなった綱手が立っていた。

 二年の年月は彼女を心身供に成長させるには十分な時間だったみたいだな……まぁ時間だけが彼女を成長させたわけじゃなさそうだけど。

 俺は化粧をした綱手に時の流れを感じつつ、一先ず彼女を店の中に招き入れた。

 


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