忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第39話 日常

 あれから一週間が経過した。

 あの後シズネを家まで送ったのだが、どうやらあそこを出たときから監視が付けられたようで最近は外に出ると常に視線を感じる。

 店でも偶に視線を感じるので客の中の数人は監視が目的なんだと思う。

 別に家の中までは監視されないし、何か仕事や修行に不具合が起こるわけじゃないから良いんだけど、少し肩身は狭いが……まぁ万が一のことを考えて不安材料を監視するっていうのは理解できるから文句は特にない。

 要するにその点以外はいつも通りそれなりに平和で普通な日常に戻ったわけだ。

 変わったことと言えばシズネが偶に遊びに来るようになったこと位だろう。

 最近は今までに増して忙しい綱手と遊ぶ事が出来ないため時間を持て余しているのか、今週だけで既に三回来ていた。

 遊ぶと言っても店の絵本を読んだり、俺の横で昼寝したりと別段邪魔になるわけでもないし、この子がいると少なからず客が増えるから好きにさせている。

 

 

「店主……これを会計してくれ」

「あ、はい100両になります」

「うむ……」

 

 

 俺はお得意さんになりつつある油目一族の男性に本を手渡し、受け取った代金を机に仕舞う。

 そしてすぐ帰るであろう彼に「またのお越しを」と声を掛けようと顔を向けた。

 するといつもは本を買えばすぐに帰る彼が俺をジッと見ていることに気付く

 

 

「どうかしましたか?」

「店主は‘木ノ葉の白い牙’と呼ばれる忍者を知っているか?」

「え、まぁ名前位は聞いたことがありますが、それがどうか?」

 

 

 ‘木ノ葉の白い牙’……話し好きの客が前に話題に出していた凄腕の忍者。

 綱手達よりも有名で、行動範囲も広いために他国の忍からは酷く恐れられている。

 曰く髪の色と供に感情も抜け落ちたとか、狙われたものは一族郎党皆殺しとか碌な噂は聞かない。

 まぁ会ってみないことには真実なんて分からないんだけど、特に知らなくても困る問題じゃないのでスルーしておく。

 

 

「彼が砂の里に行った際に凄い傀儡を使う忍者と戦ったらしいのだが、店主は何か心当たりはないか?

 彼がそれだけ言うということは余程の相手だったのだと思うのだ」

「何故俺にそれを聞くんですか?」

「店主が前に傀儡の術に関する書籍を読んでいたのを思い出してな。

 俺も今度砂の里に行く任務があるので、何らかの情報が得られれば幸いと思って聞いただけだ……知らないなら知らないで別に構わないが、何か知っていることがあれば教えて欲しい」

 

 

 正直俺に聞くなと……いやまぁこの人友達少なそうだから別に構わんが、とりあえず思い当たる事でも話しておくか。

 店をしていれば偶に他の里からの客も来ることがある。

 そういった人は基本的に一般人で情報をそんなに持っていないのだが、噂話くらいなら幾つか知っているものだ。

 例えば当代の風影は輝く砂を使った忍術を使用できるとか、砂の里には狸の化け物がいるとか……とにかく眉唾物から信憑性が高そうなものまで色々な話を聞く機会が俺にはあった。

 その中で砂の傀儡に関した情報も数は少ないながらも存在する。

 

 

「一応心当たりがないこともないが信憑性は何とも言えないよ?」

「それでも構わない、聞かせてくれないか?」

「ふぅ、俺は情報屋じゃないんだけどね………砂の里には有名な傀儡を作る一族がいるという噂だよ。

 話を聞く限りその機能は多岐にわたり、忍術の真似事をさせることも出来るとか。

 更にその一族は優秀な技術者であると同時に強い忍でもあるらしい」

「一族の名前は?」

「それは教えてくれなかったが、別口でチヨという凄腕の傀儡使いがいると言うのを聞いたことがあるな。

 後最近その一族の子供が頭角を現しているとか言う話も聞いた」

「そうか……情報提供感謝する。

 何故ならこの情報が俺の命を救うことになるかも知れないからだ」

「かまわんさ、うちの数少ない常連が減っちゃ困るからね。

 その代わり任務が終わったらまた何か買っていってくれよ」

「了承した」

 

 

 彼はそう言い残し今度こそ店を後にした。

 それにしても……砂の里ねぇ。

 ここに居る限り木ノ葉崩し以外じゃ関わることはないだろうが、少し積極的に情報集めてみようかな?

 情報は武器であり防具、あって損になることはあんまりない……機密情報とかは知った時点で荒事必至だけど。

 情報集めと言っても客と世間話をする頻度を増やす位しかしないんだけどね。

 忍者じゃない限り額当てなんて着けてないし、何処の人かなんていうのは運任せになるけど別に里のことを知るのも悪くない。

 カツユと話すときの話題くらいにはなるだろう。

 綱手も今回の任務が終わったら少し休みを取って何処かに行くとか言ってたし、三代目は忙しいのとこの間の一件で一人でこの店に来ることは控えるだろうから、自然と家に遊びに来るのがカツユとシズネの二人になる……凄いだろ、俺の家に来るのって大蛞蝓と子供だけなんだぜ?

 

 

「っと自虐的思考はこの辺にしておこう。

 今日は本屋の古い在庫を買い取る日だからそろそろ用意しないとな」

 

 

 俺はおそらく増えるであろう小説の棚と雑誌の棚を整理し、売れそうにない本を地下の倉庫へと運んだ。

 そろそろ地下も整理しないとな……まだ結構余裕があるとはいえ艶本と倉庫行きの本がいろんな所に積み重なってるのは見栄えが悪いしね。

 頭の中のスケジュール帳に地下倉庫の整理を組み込み、店に戻った俺は読みかけの本を片手に本屋からの使いを待つのだった。

 


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