忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第45話 宴

 手紙に書いてあった時間にシズネの家に着くと、既にパーティーが始まっていた。

 遅刻したのかと思い、一先ず家人に挨拶するために家の中を歩き回る。

 今日の宴に来ている客はやはり忍者が多いらしく、所々に額当てを付けた人達が呑んだり食べたりしていた。

 俺は忍者の知り合いが少ないので名前とかは分からないけど、見るからに凄腕っぽい忍者もいて若干俺が場違いな気がする……走り回っている下忍と思わしき子供は見ていて和むが。

 そのまま少し歩き回っていると人が多く集まる宴会場の様な場所に辿り着いた。

 見回すとシズネの父親と綱手が談笑している姿が目に入る。

 後で探す手間が省けて良かったと彼らに近づいていく。

 

 

「こんばんは、今夜は誘っていただいてありがとうございます。

 綱手も久しぶりだね」

「ようこそ本瓜さん、今夜は楽しんでいってください。

 料理は妻の得意料理ばかりですから味は保証しますよ」

「ヨミトか! カツユから話だけは聞いていたが、直接会うのは久しぶりだな!」

「ありがとうございます、料理の方は後でじっくり味わわせていただきますね。

 ところで綱手……その口調はどうしたんだい?」

 

 

 前に会ったときはもう少し女性っぽい話し方だったと思うんだが……何故こんなに男前な口調になったし。

 カツユから綱手の近況とかを偶に聞くことはあったけど、口調については何も言ってなかったから普通にビックリした。

 

 

「この口調かい? これは賭場に行くときに舐められないようにするためって言うのが大きいんだが、今はそれで慣れてしまったからそのままにしているだけだ」

「どんな頻度で賭場に行ってるのやら……まぁ元気そうで何よりだよ。

 でもあんまり里に戻ってこないで賭場に行ってばっかりだとシズネちゃんに愛想尽かされてしまうよ?」

「大丈夫だ、シズネは優しい子だからな」

「程々にしてあげてくれよ綱手ちゃん。

 最近シズネが賭場って楽しいの?って聞いてくるんだから」

「ははは……善処するさ。

 と、ところでヨミト! カツユと遂に契約したんだって?」

「カツユに聞いたのかい?

 まぁ偶に話し相手になって貰っているくらいで他に何もしていないんだけどね」

「別に口寄せは戦うためだけのものじゃないから別に問題はないさ。

 それにカツユ自身もヨミトと話すことを楽しんでいる様だしね」

「それは良かった」

 

 

 正直気になっていたんだよね。

 いくらカツユが好戦的な性格じゃないからといって、ただ話すためだけに呼び出すのが良いことなのかどうか。

 より効率よく口寄せを行うために試行錯誤していたっていうのもあるんだけど、それでも特に用事のない時に呼び出すことでカツユがどう思うか分からなかったから結構不安はあったのだ。

 その後も暫くカツユについて話していたが、段々話題が無くなり口数が少なくなってくる。

 途中でシズネ父は新しく来た客に挨拶に行くとかで席を立って、今は俺と綱手だけだ……これは気になっていたことを聞くチャンスかも知れない。

 

 

「綱手……血液恐怖症は克服できそうかい?」

「………今の所出来そうに無い。

 少しはマシになったが、それでも血を見ると身体は震えるし、息もし難くなる」

「そっか……でも戦争も終わったことだしゆっくりと時間を掛けて治していくことも出来るだろうし、何も焦る必要はないさ」

「そうできたら一番なんだが、そうもゆっくり出来そうに無いんだ。

 確かに終戦宣言はされたが、戦争が終わったことに納得していない里も幾つかあるから小競り合いは無くならないだろうし、何か企んでいる様な里もある。

 故に多分だが近い内にまた大きな戦いが起こると私は考えている」

「また戦争が起こるか……あまり考えたくないね。

 でも綱手は戦争になったらどうするんだい?

 血液恐怖症をどうにかしないと戦場には出られないだろう?」

 

 

 戦場なんて見渡す限り血の海といっても過言ではない状況なってもおかしくないのだから血液恐怖症は正直致命的だ。

 というか今まで受けてきた任務はどうしてたんだ?

 忍者の任務なんて血生臭いものも少なくないっていうのに……だがそんな俺の疑問が分かったのか綱手は苦笑した。

 

 

「私は前線には出ずにサポートに回ることになるだろう。

 医療忍者は絶対数が少ないし、血が駄目でも治療の指示くらいは出来るからな」

「だけど敵が攻めてくるときもあるんじゃないかい?」

「ヨミト、私が血液恐怖症になってからも任務を受けてきたことは知っているだろう?

 血を出さないように倒すことも出来無い訳じゃないのさ。

 殴り飛ばしても良いし、チャクラメスで筋繊維だけを切っても良い……方法なんて幾らでもある」

「なら戦場にも出されるんじゃないかい?」

「いくら私が血を出さない様に倒しても、他の忍者は違うだろう?

 それに先生も私のことは知ってるから特に何も言わないさ……実際辛かったら辞めても良いって言ってたからね」

 

 

 三代目にとって綱手は大事な生徒であると同時に大恩ある初代火影の孫娘だから、かなり気に掛けてる。

 故にその言葉はすぐに納得できた。

 本当に自分の娘みたいに可愛がってるからな……昔手出したら分かってんだろうな的な事も言われたし。

 

 

「あ、そう言えば先生が言っていたんだけど、ヨミトってカツユ以外に口寄せ契約した奴がいるんだろ? 紹介してはくれないのか?」

「あぁ、レムのことかい?

 別に構わない……って言いたいところだけど、アレは特殊なものだから呼び出すのに代償がいるんだ」

「代償っていうのは?」

 

 

 俺は前に三代目に説明した内容をそのまま説明したが、説明を聞き終わった綱手は額に皺を寄せ、見るからに不機嫌になってしまった。

 まぁそりゃそうだよね、医療忍者が命を代償にするなんていうものに良い顔するわけないよね。

 

 

「ヨミトの父親って忍者じゃないんだったな……なら何故そんな危険な代物と契約したんだ?」

「俺には分からないけれど、親父は俺と違って本を収集するために色々な里へ出歩いていたみたいだから、ちゃんとした護衛手段が欲しかったんじゃないかい?

 多少行き過ぎだとも思うけど、攻撃は最大の防御なりって言うくらいだからね」

「そうか……だがヨミト、それは出来る限り呼び出さない方が良い。

 私はそれを実際に見たわけではないけれど、先生が警戒するっていうのは余程のものということだ。

 本当にギリギリな状況……それこそ自分の命に関わる様な時にしか使わない方が良い」

「わかっているさ、俺だって本当に危ないときにしか喚ぶ気は無いよ」

「ならいいが……さてと、話し込んでしまったがヨミトはこれからどうする?

 私は夕飯をごちそうになりに行くが」

「俺も行くよ、さっきからこの匂いが気になっていたんだ」

 

 

 暗い雰囲気を打ち消して、二人で食事会場へと歩き始める。

 だけど俺の頭には一つの疑問が湧いていた。

 それは‘死者への手向け’で三代目が警戒するというのなら、広範囲に破壊をもたらす雷‘ライトニング・ボルテックス’や、敵味方の区別なく全てを吸い込んでしまう‘ブラックホール’を俺が使えると知ればどうなるだろうかというもの。

 後者に関しては一度も試していないが発動自体は可能だし、自分が巻き込まれないようにする方法もない訳じゃない。

 前者に至っては殆どデメリットが存在しない。

 まさに理不尽と言っていい程の効果だ。

 この事を三代目が知れば俺を利用しようとするだろうか? 殺そうとするだろうか?

 それとも………あぁ頭の中がぐちゃぐちゃになりそうだ。

 俺はそこで思考停止し、この件について今は考えないようにしようと心に決めて、食事に集中した。

 


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