忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第50話 想い

 大戦が終わったと安心してから三年、また戦争が始まった……それも前回よりも厄介な疲弊するだけの戦争が。

 上層部も引くに引けない状況にあるのか、各国は廃れていくばかりの状況にも関わらず戦闘の数だけが増えていく。

 平和の象徴とも言える文化の発展はなされず、兵器開発や戦闘技術の向上だけが発展する。

 戦争は後の世に様々な恩恵をもたらすこともあるが、一般人にとって未来の発展よりも今日の平穏の方が大事で、今の状況は決して良いとは言えない。

 実際俺の店の売り上げも激減している……元からそんなに売り上げが良いというわけではないが、良く来る客が任務とかで来れなくなったのは痛手になっている。

 偶に店に来ていた未来の四代目もさっぱり来れなくなり、その生徒も任務が増えて忙しくなり足を運ばなくなった。

 みたらし父子も暫く来ていないし、綱手や三代目なんてもっと来ていない。

 最近唯一来た客と言えば任務で遠征すると報告に来たシズネ位だ。

 俺は思わず開店当初の閑古鳥の鳴く店内を思い出し、ため息を吐く。

 

 

「どうかしましたか?」

「いや、綱手が初めて店に来た頃の事を思い出していてね。

 あの頃も客が来なかったから」

「しょうがないですよ……戦争中ですから」

「しょうがないか……ところで今綱手は何をしているのかな?

 戦闘中とかだったら君を還した方が良いと思うんだけど」

「大丈夫ですよ、今綱手様は偵察任務中ですから」

「偵察って何を?」

 

 

 そう俺が聞くとカツユは俺の眼をジッと覗き込んで、「誰にも話してはいけませんよ?」と最初に告げてから任務の内容を説明してくれた。

 その内容は二尾の人柱力に関する調査らしい。

 尾獣である二尾は猫又であり炎を操ることが出来るのだが、人柱力の情報は殆ど無いらしく、今後戦争に出てくる可能性を考えて実力がある忍を偵察に行かせることになったのだとか。

 尾獣についての知識は一般レベル+α(九尾については若干)位しかない俺は二尾が猫又だって事すら知らなかったわけだが、知らなくても別段困る事なんてない。

 会う可能性なんて皆無だし、色々と忘れ始めているとはいえ俺が覚えてないってことは大筋に関わっているわけじゃないはずだから、へぇそうなんだ位の感想しかない。

 むしろこの間シズネが話していた霧隠れで受験生皆殺しにした卒業生がいるって事の方が気になる。

 桃地再不斬……記憶に微かだけど残っている名前。

 原作の序盤に出てきた敵の一人であり、格好良く果てた男……NARUTOの格闘ゲームではよく彼を選んでいた。

 そんな彼もまだ小学生位の歳だと考えると原作までまだ結構あるんだなと改めて実感する……まぁだからどうなるってわけじゃないんだが。

 

 

「これ以上は流石に機密情報になるので言えませんが……」

「あ、うん、ありがとう。

 ところで一つ聞きたいことがあるのだけど、人柱力って何で避けられるのかな?

 尾獣が凄い危険な生物だって言うのは何かの本で読んだ事があるけど、封印された人は危険な生物を身の内に封じてるんだから褒められこそすれ、蛇蝎のごとく嫌われる理由が俺には思いつかない」

「人柱力が嫌われるのは、殆どの場合が力に呑まれ暴走するからです。

 一度暴走すれば周囲の人間を無差別に襲いかねない相手と仲良くなるのは決して簡単なことではありませんから」

「何時爆発するか分からない起爆札の様なものってことか……それは確かに付き合いが難しそうだ」

「ですが完全に御している状態ならば印象は反転します。

 例として木ノ葉の人柱力、うずまきクシナ様。

 かなり強力な封印術で封じているので引き出せる力が小さいですが、代わりに暴走の危険性は殆ど無く、優秀な忍と言うことで一目置かれています」

「そうなんだ……」

 

 

 出来ればそのままでいて欲しいけれど、何時かは分からないが九尾に木の葉を襲撃され、その際に新たな人柱力も生まれる。

 おそらくその時にクシナ様から新しい人柱力へと変わるのだろう。

 そしてその人物こそがこの世界の主人公であり、四代目の一人息子でもある‘うずまきナルト’なのだと思う……名字同じだし。

 まぁ彼は本とか読むタイプじゃないから俺と関わることはないだろうが。

 

 

「ところで私も一つ聞いていいですか?」

「ん、何かな? 色々教えてもらっているから俺に答えられることなら何でも答えるよ」

「シズネ様の事なんですが……お元気ですか?」

「シズネちゃんか……とりあえずこの間会ったときは元気だったけど」

「そ、そうですか! 良かった……」

 

 

 安堵のため息をつくカツユに俺は首を傾げる。

 この反応から見るになんかあったんだろう……何となく大事じゃなさそうだから特に聞かないけど。

 そう思っていた俺だったが、カツユはそうは思わなかったらしく、意見を聞くためにか俺にその時の状況を話し始めた。

 話はそう難しい事じゃなく、ただ綱手がシズネに説教してシズネが凹んだっていうだけだ。

 

 

「私はその後すぐ還されてしまったので、どのような顛末になったのか知らなくて不安だったのです。

 綱手様はシズネ様をとても可愛がっておられますから、もしお二人が仲違いしてしまう様なことがあれば私は……」

「心配しすぎだと思うよ、確かにシズネちゃんはまだ子供だけど分別の出来ない子じゃない。

 綱手が自分の事を思って叱るんだとわかっていると思うよ。

 それにあの二人が仲違いするわけがないだろう?

 綱手はシズネちゃんを妹の様に想っているし、シズネちゃんも姉の様に想っているんだから……血は繋がっていないけど、其程の縁っていうのはそう簡単に切れるものじゃないさ」

 

 

 まぁ将来的には姉妹って言うよりも主従に近い形になると思うけど……博打に精を出す主人と突飛なことに弱い従者にね。

 俺はその後もカツユと歓談を続け、戦時中とは思えないほど穏やかな日中を過ごした。

 


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