忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第61話 本格戦闘

 最初の一手はリーダーと思わしき男の牽制、俺は静電気の様な音を聴きそこから飛び退くと男は手から電撃を放ち俺の立っていた辺りを雷でなぎ払う。

 しかし飛び退いた先に一人立っており、手に刀を構えて俺を出迎えた。

 真っ正面から大上段での斬り下ろし……「雲流表斬り」という声と共に高速の斬撃が俺の頭目掛けて放たれる。

 空中故に回避も難しいため、やむを得ずクナイで剣線を逸らし難を逃れた俺だったが、着地と同時に背中に視線を感じて振り返ると、そこには今にも仕掛けてきそうな最後の一人がこちらに向けて水遁・大砲弾を放つ。

 口から放たれた圧縮された水の塊は途中にあった木の枝をへし折りながら俺に迫ってくる。

 障害物にぶつかりながらも全く勢いが衰えない所を見ると、質量が尋常じゃないのだろう……当たればミンチになってしまうかもしれない。

 かといって先程の様に躱すのも、逸らすのも不可能となれば俺に取れる対抗策は限られてくる。

 

 

「(速攻魔法‘突進’発動)しっかり掴まっててくれよ」

「何だ、こいつ急に速度が!?」

 

 

 ‘突進’はエンドフェイズまでモンスター一体の攻撃力を700ポイントアップさせる効果を持つ魔法……攻撃力が上がるといってもこの魔法で上がるのはスピードであり、腕力が増すわけではない。

 攻撃力や防御力と一概に言ってもそれぞれ強化されるポイントがあり、単純に腕力が増えることもあれば、身体能力が総合的に上がる場合もあるのだ。

 俺は地面を全力で蹴りつけて砲弾の様な加速をすると、三人の包囲の隙間へと身体を潜り込ませて、その場から逃走を試みる。

 突然の急加速に背中の幼女が小さく悲鳴を上げるが、此処でスピードを緩めることは出来ないので我慢してもらうしかない。

 三人もすかさず追いかけようとするが、彼らが俺に追いつく前に足止めを発動させてもらう。

 

 

「(通常魔法‘光の護封剣’発動)」

「なんだコレは!」

「結界術……いつの間にこんなものを」

 

 

 魔法の発動と同時に彼らを取り囲むように光で出来た剣が降り注ぎ、剣と剣の間に通過不可能の結界が発生している。

 この魔法は3ターン……15分の間結界内の行動を阻害するもので、彼らに囲まれている状態であれば範囲に俺自身が巻き込まれてしまうために使えなかったが、包囲を抜けることで使用可能になったのだ。

 彼らがしっかりと拘束されているのを見て、一安心して急ぎ木の葉へと戻ろうとするが、結界内の人影が二人しかいないことに気付いた俺は、突然悪寒を感じて右に飛び退く。

 すると次の瞬間俺が跳び移る予定だった木に雷が落ち、木がゆっくりと倒れる

 

 

「外れたか……勘が良いな。

 それにあの見たことの無い結界術に高い身体能力……随分手練れの忍の様だ」

「(よりによってリーダー格が残ったのかよ……勘弁してくれ)」

「未だに姿も見えなければ、喋りもしない。 とことん自分の存在を隠したいんだな……だがそんなことはどうでもいい。

 馬鹿一人と使えん部下二人がいなくなったところで状況は対して変わらん。

 俺はお前を殺して餓鬼を連れていく……これは既に決まっていることだ。

 ただ餓鬼も無傷じゃいられんだろうがな」

「(これは逃げられそうにないな)」

 

 

 俺がこの男を倒す覚悟を決めて、男の方へ向き直ると男がとてつもない速さで印を組んでいるのが見て、急いで速攻魔法‘サイクロン’を発動し術を中断させる。

 ‘サイクロン’は魔法や罠を一つ破壊する効果を持つが、忍術は魔法にカウントされるものが多いためにこの魔法が巻き起こす小規模の竜巻で包み込めば強制的に忍術を解くことが出来るのだ。

 ただし幾つか例外もあるのでそこまで万能という訳でもないが……今は問題ない。

 術を中断させられた男は忌々しげに舌打ちをすると、腰に差していた刀を抜く。

 何の変哲もない刀に見えるが、男は10メートル以上離れた場所にも関わらず俺に剣の切っ先を向ける。

 

 

「(何をする気だ……ホームラン予告でもあるまいし)」

「雷撃」

「づぁっ!?」「ぃゃ!」

「注意力が足りんな、相手が何をするのか分からないのだから常に警戒しておかねば直ぐに死んでしまうぞ?

 まぁ分かっていたところで簡単には躱せんがな」

 

 

 俺の左足を何かが貫いた……どうやら刀の切っ先から雷で出来た刃を飛ばしたらしい。

 刀を注視すると時折紫電が走っているのが分かる。

 傷口からは焦げた匂いがしており、激痛と共に痺れるような感覚が俺を襲う。

 しかも穴が空いてしまったせいか怪我の箇所はステルスが解けてしまったようだ。

 このままでは痛みと痺れで逃げるどころか動くこともままならないと考え、‘ご隠居の猛毒薬’を発動し、手元に現れた緑色の薬を傷口にぶっかける。

 まるで水に焼け石を放り込んだ様な音がした後、一瞬で肉が盛り上がり傷口が塞がった。

 痛みは完全に抜けたわけではないが、これで動くことに支障はないだろう。

 だがこれを見た男の表情は露骨に変化した。

 

 

「薬を掛けただけで一瞬で傷が治っただと……そんなものは有り得ん!

 どこでそんなものを手に入れた!?」

「(カードの効果で出しましたって言っても納得しないんだろうなぁ)」

「答えないのか……なら予定は変更だ、手足を切り落としてでも貴様も里へ連れて行く。

 里でじっくり拷問して吐かせてやるから覚悟しろ」

 

 

 男が刀へ更にチャクラを送り込み、刀は紫電を発するだけではなく、眩しい位に発光を始める。

 その刀と男の気迫に強い危機感を感じ、自分も出し惜しみしている場合じゃないと考え直し、装備魔法‘魔導師の力’を発動。

 現在自分が使用している魔法は二枚……よって現状三つの魔法が使用されることになる。

 ‘魔導師の力’は自分の場に存在する魔法・罠一枚に付き攻撃力と防御力が500上がる効果を持つ極力使いたくなかった魔法だ。

 しかしこのままではもしかしたら殺されてしまうかも知れないという恐怖がこの選択肢を取らせた。

 うっかり相手を殺しかねない力を得るという選択肢を……。

 


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