忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第86話 刺客

 中忍試験も順調(色々あったらしいが)に進み、残すは最終試験のみとなった。

 三次試験の後に最終試験まで残ったことを伝えに来たナルトの話を聞くと、最後まで残ったメンバーは奈良家の嫡男・砂隠れの三兄弟・うちはの生き残り・日向分家の天才・油目一族の子……そしてナルトの計8人。

 この話を聞いて少し驚いたのが、砂隠れの三兄弟の容姿を教えてもらうと、少し前に店に来た黒子装束のカラクリ好きの子に合致した事。

 店で話していた最後まで残るという自信は自惚れ等じゃなく、実力の元の確信に近いものだったことが明らかになったわけだが……正直多少驚きはしたものの俺はそれどころじゃない。

 アンコの見舞いに行ったあの日から、ずっと俺の頭の中にはどうやって身を守るかの案が回り続けている。

 三代目と話をした後にカツユにも事情を話して、最終試験の日に呼び出す事をOKして貰えたことは凄く心強い……カツユは俺に気を使って綱手やシズネにこの事を伝えようかとも思ったらしいのだが、今は遠くに出ているらしく、それまでに木の葉に戻ってくることは不可能らしいので、不安にさせるだけの情報は彼女たちに伝えなかったのだと聞いたので、俺は「ありがとう、カツユが手を貸してくれるだけでも十分心強いよ」と少し沈んだ様子のカツユに礼を告げた。

 

 

 その後ナルトの少し誇張気味の中忍試験での出来事を聞き、これからの最終試験までの一ヶ月は忍術の修行に専念するからしばらく店に来られないという報告を聞いたりしていたが、カカシがナルトを迎えに来て話はそこで終了。

 彼は俺と軽く挨拶を交わし、店の外で一瞬どこかに視線を向けて眼を細めてからナルトを連れて店を出て行った。

 俺も二人を見送るため店の外に出たが、カカシの見た方には何の気配も感じない。

 しかし前に一度差し入れとして自分用におやつとして買ったクルミを小皿に分けて置いておいたら、トイレに行っている間に無くなっていた事から近くに……おそらくカカシが見た方向には三代目が言っていた暗部の人がいるのだろう。

 俺はこれからもよろしくという意味を込めて、その方向に深く頭を下げてから店の中へと戻った。

 

 

 それから最終試験の日までの一ヶ月はとても密度の濃い時間を過ごす……修行の時間は普段の倍近くまで伸び、カツユの俺に対する指導も厳しさを増す。

 店を営業している間もいざという時のため常に膝の上にカツユを載せて仕事をし、客がいない時はカツユと作戦会議をする。

 偶に息抜きとしてカツユに手皿でお菓子を分けたりすることで心の安らぎをとったりもしていたが、そこは常に張り詰めていては疲れてしまうからであって、何の下心もない……本当だよ?

 能力に関しても暗部の人が見ているので除外ゾーンでの修行は行うことが出来なかったが、今まで調べてきた魔法や罠の効果を考慮しつつ、常に三種類の罠を伏せた状態にする位の備えは行っていた。

 そして遂に中忍試験の最終試験当日を迎えることになる。

 

 

 その日もいつも通り……いや、今回の中忍試験が始まってから一番活気があるように感じる。

 俺は店の中という狭く、援護を受けにくい場所で襲われることを恐れ、三代目と話した日から時間を見つけては演習場へと通っていた。

 広い場所では多人数と戦う場合不利になる可能性もあるが、たかが俺一人のためにそんなに多い人数を送ってくるとは思えない上、狭い場所に動きが制限された状態で周囲への影響を気にしないで大きな忍術を使ってこられたら一溜りもない。

 それらを考慮した上で演習場という場所を選んだわけだが、このことに絶対の自信があるわけでもなく、不安から心臓の鼓動が普段よりも早いビートを刻む。

 特に目立つ物が何もない演習場を神経を尖らせながら散歩を装って歩く。

 懐には手のひらサイズのカツユの分体がスタンバイしている。

 事が起こったのは俺が演習場の真ん中辺りに来た時だった。

 最終試験会場の方で大きな音が聞こえたと思ったら、里のいたるところで悲鳴や怒号が上がり、時折巨大な蛇のようなものも見ることも出来る。

 内心遂に始まったと思い、一気に警戒レベルを引き上げる……すると演習場の入り口から、普通に三人の忍が歩いてきた。

 

 

「全く……大蛇丸様も何でこんな簡単な仕事を俺たちに任せたんだかね」

「確かにな、俺もぶっ壊し組の方がよかったぜ」

「ホントだよ……アンタもう変化解いちゃっていいんだぜ? 俺たちもう知ってんだからよ」

 

 

 見た目18歳位の男三人組はごく自然に俺の前方10数メートルの所で立ち止まり、そう言った。

 俺は一瞬躊躇したが、既に暗部の人には事情が知られているのだろうし、チャクラの消費を少しでも抑えた方が良いと判断して変化を解く。

 男たちは別段驚くこともなく、一様に面倒臭そうに此方を見ている。

 

 

「歳誤魔化し過ぎでしょコイツ」

「でも若く見せるんじゃなくて老けて見せるんだから別にいいんじゃね?」

「そろそろ無駄話ばっかしてないで仕事に掛かろうぜ」

「「それもそうだな」」

「と言うわけでアンタをボコって大蛇丸様のとこまで連れて行かせてもらうわ。

 ちょい痛いかもしれないが、まぁ殺しはしないから安心しな」

 

 

 どうやらかなり侮ってくれているようだ……これはやり易い。

 油断してくれている内に一人位は如何にかしておきたい所だな。

 

 

「とてもじゃないけど安心できる内容ではないね……だから抗わせてもらうよ」

「いいねぇ、少し位歯ごたえが無くちゃ面白くねぇ」

「精々楽しませてくれよ偽爺」

「さぁこっちもパーティを始めようぜ!」

 

 

 その言葉を皮切りに三人がそれぞれ別の方向へと跳び、印を結び始める。

 互いが射線に重ならないように動いている所を見ると、即席のチームではなく其れなりに組んでいる仲間であることが分かった。

 今は少しでも相手の情報が欲しい……出来ることなら得意な性質位は知っておかないと動き難いからな。

 先ずはこの三人の術を一旦避けないと!

 俺が足にチャクラを集め機動力を確保していると、三人がほぼ同時に術を発動させる。

 

 

「土遁・土流壁」「水遁・大砲弾の術」「火遁・豪火球の術」

 

 

 俺の背後に岩で出来た壁を隆起させ退路を断ち、左右から挟みこむ様に火遁と水遁を放つことで逃げ道を上だけに残す……これは何も考えずに跳んだら狙い撃ちにされるだろう。

 そこで俺は急いで服の袖からチャクラ糸を伸ばし、手に握りこむと同時に向かってくる巨大な火の玉と水の玉を跳んで避けた。

 しかし先ほど土遁を放った男が既に新たな術の印を結び終えており、地面から無数の石礫が空中の俺目掛けて飛来しようとしている。

 男の口元には薄らと笑みが浮かんでおり、おそらく手足を打ち抜かれて地面に転がる俺でも想像しているのだろう。

 俺は手に握ったチャクラ糸を全力で後方の木に飛ばして結びつけると、力一杯その糸を引っ張ることで強引に空中で軌道を変えた。

 それを見た三人は少し感心するような顔をした後、嗜虐的な表情を此方へと向ける。

 

 

「これはこれは……思いのほか楽しい狩りになりそうじゃねぇか」

「この連携を避けたことは褒めてやるよ」

「だがまぁアンタが無残な姿で俺たちに連れて行かれるのは変わらねぇがな」

 

 

 先ほどよりも楽しそうに改めて新たな術の印を結び始めた三人だったが、既に相手の使う主な性質は把握した。

 次は俺が攻める番だ……と気合をいれ、術が発動する前に接近しようと前傾姿勢になった瞬間、敵の火遁使いが凄まじい勢いの水流に吹き飛ばされた。

 突然仲間が吹き飛ばされたのを見て、敵の二人は咄嗟に術の飛んできた方へとクナイを投げる。

 しかしそのクナイは何にも刺さることなく、面をした男に掴み取られていた。

 突然そんな人物が現れて警戒しないわけが無く、敵は俺よりもその男の方を警戒している。

 男はそんなことを気にしていないかのように俺の方へと歩いてくると、少しだけ頭を下げた。

 

 

「すぐに助けに入らなくて申し訳ありません。

 ヨミトさんの戦闘能力に関してはこの一ヶ月である程度分かっていましたので、先ほどの術位でしたらどうにかできると思い、不意打ちを優先させていただきました」

「それは別にいいですけど、貴方が三代目様の言っていた暗部の方ですか?」

「えぇ……暗部故に名を名乗ることは出来ませんが、火影様の命によりこの場において貴方を守護させていただきます。

 では挨拶はこれ位にして後の二人を如何にかするとしましょうか」

 

 

 そう言って俺の前に立った彼の背中は凄く頼もしく感じた。

 


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