忍者の世界で生き残る   作:アヤカシ

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第91話 仲間想いの少年

 ナルトが綱手捜索に行ってから数日経った頃、里は相変わらず復興の真っ最中。

 殆ど元通りに戻っているのだが、道や森の整備等は流石に直ぐに終わるものでもなく、色々な人が忙しそうに動き回っている。

 因みに俺の店に付いていた幾つかの戦闘痕は無事に修復されて、すっかり元通りになった。

 ただし人の怪我はそう簡単に治るものではない……この間退院してきたアンコも普通の怪我とは違う所為もあってまだ完治しているとは言いがたいし、中忍試験が始まってからパッタリと現れなくなったヒナタも実は結構大きな怪我をして入院していたと風の噂で聞く。

 何故ヒナタが怪我を負ったことを知るのがこれほど遅れたかというと、日向家が隠蔽していたためであり、その理由としては以前の様に誘拐される危険性を考え、彼女が弱っている今ならば大した抵抗もなく攫うことも出来なくないと危機感を覚え、その情報を拡げることは良くない結果を招くのではないかと考えたからだ。

 中忍試験に参加していた人達にもその件に関してはやんわりと戒厳令が敷かれたとのこと。

 その結果ある程度治った今になって漸くその情報を手に入れることが出来たということだ……まぁだからといって未だ常に誰かが側にいるらしいので見舞いに行けるワケではないのだが。

 あれから特に大蛇丸からの刺客もなく、日々閑古鳥が鳴き気味の店で店番という名の読書をする毎日……だったのだが一通の手紙が来て一つ用事が出来た。

 俺に手紙を送る人などシズネや綱手位だと思っていたのだが、二人はカツユを通じることで手紙など使わずとも此方と連絡が取れるので、彼女達が手紙を送ってくる確率は低い……俺は少し疑問に思いながら手紙の送り主の名前を見ると、そこには予想外の名前が書かれていたのだ。

 

 

「二位ユギト……雲隠れの里で出会ったあの()か」

 

 

 少し前に雲隠れへ行った時に偶々交友を結ぶ事になった女性であるわけだが、何となく彼女は手紙を書くイメージがない。

 それ故に何を書いてきたのか興味を惹き、直ぐに便箋を開けて手紙を取り出した。

 手紙に書いてあったことを簡単に纏めると、近い内に木の葉に行くから子供向けの本を五十冊ほど見繕っておいて欲しいとの事。

 子供向けの本を五十冊というこの店にとっては結構大きな商談になるので、手紙を読み終わった後は少しテンションが上がり、ズボンにお茶を零したりしたが、相手が知り合いである事を考慮してある程度の値引きをすることを前提とした場合あまり利益にならないことに気付き少しだけ熱が冷めた。

 だが利益云々は置いておいて、あの何処かナルトに似た雰囲気を持つ娘に会うことは少なからず楽しみだといえる……少し話をした程度でしかないが若い頃の綱手にも少し似ていた気がしてなんだか懐かしい気分にもなるしね。

 

 

「しかしあの綱手も今や火影最有力候補か……いや前からそうだったけか。

 何にしても時が流れるというのは早いものだ」

「店主」

「んぉっと!? 吃驚した……いつの間に入ってきたんだい?」

「今し方……全く気付かなかったのか?」

 

 

 少し物思いに耽っていて気が抜けていたけれど、人が入ってくるのを見逃す程気を抜いていたつもりはなかったのだが……油目一族の子だけあって影薄めだからか?

 常連の一人でもある男性が初めてこの子を連れてきた時も気付くの遅れたっけ……あの時は小さく「こういう部分も遺伝するものなのだな」と微かに聞こえたのが印象的だった。

 っとそんなことを思い出している場合じゃないか……どことなく不機嫌そうに見える目の前のお客さんをどうにかしないと。

 

 

「おほん、今日は何のご用かな? また虫に関わる本を探しに来たのかい?」

「いや……今日は薬草図鑑の様なものがないか探しに来た」

「薬草毒草図鑑なら、少し値は張るけれど置いているよ」

「ならばそれを売って欲しい」

「いいとも………コレだコレだ、300両になります」

 

 

 俺は本棚から結構な厚みを持つ一冊の図鑑引き抜き、カウンターの上に置く。

 ゆっくり置いたにも関わらずズシンという音と微かに舞う埃。

コレは確りと作られている本の為に中古でも少し値は張るが、買って損は絶対にしない一冊だ。

 事実昔綱手もコレを買っていったことがある位には役に立つ本である……ただし彼女が医療忍者になる前の話だが。

 他にも医療忍者を目指す者や山菜採りが趣味の等が偶に買うのだが、売りに来る人は割と少ないので満足できる内容なのだろう。

 彼は図鑑を手に取りパラパラと軽く目を通すと、満足したかの様に一度首を縦に振るとカウンターの上に代金を置いた。

 その表情を見て、ふと何に使うのか気になり尋ねてみる。

 

 

「任務で使うのかい?」

「いや、そうではない……何故ならコレは班の仲間のために使うからだ」

「それじゃあ誰か怪我でもしたのかな?」

「詳しくは言えないがそれに近い」

「そうですか……そういうことなら」

 

 

 俺はカウンターに置かれたお金を三分の一残して受け取った。

 代金丁度置いたにも関わらずカウンターの上に残る代金を見て彼は不思議そうに俺を見る。

 受け取った代金をレジの中に仕舞い終えると、何故代金300両の内の200両しか受け取らなかったのか理由を聞きたそうにしている彼に俺は答えを教えた。

 

 

「もしそのお仲間さんが入院でもしているのなら、そのお金はお見舞い品を買う足しにすればいい。

 本当なら無料であげれれば良いのだけど……一応商売だからね。

 一度例外を作ってしまうと俺の中の基準が甘くなってしまうからコレで勘弁してくれるかい?」

「いや……助かる。 何故なら今俺は金欠気味だからだ。

 今の俺にとって100両は決して小さな額ではない」

 

 

 そう言って彼は軽く頭を下げると、カウンターの上に残った金銭を財布の中へ戻した……その際に財布の中がチラリと見えたが、申し訳程度の小銭と何かの紙しか入っていなかったので彼が言っていることが嘘ではないのが分かった。

 俺の視線が彼の財布に向かっていることに気付いた彼は素早く財布を仕舞うと、羞恥からか少しだけ頬を紅く染め、「失礼した」と一言残して足早に店を出ていく。

 その姿は何時もの冷静然とした姿からかけ離れており、一瞬反応しかねたが直ぐに口角が上がり、堪えきれない笑いが微かに口から漏れた。

 


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