東方覚醒録〜Don't exist originally 作:tora@812
玄武の沢 side 小傘
『分が悪い戦い』
この勝負を一言でいったら、そうなるだろうと思う。私は付喪神だ。物に霊が宿り力を持ったもの。しかも、人に大事にされた物が付喪神化したならともかく、私は捨てられたもの。元から妖怪として産まれた者より弱い。対して相手は河童。広く名の知れた種族だ。付喪神のように数が多いから、知られているのではない。純粋に名を知らせるだけの力があるから有名なのだ。最近は外界の科学に目を付けたので、『力』そのものは前より落ちているだろう。でも、『知能』や『器用さ』は上がっている可能性が高い。
「大丈夫、いける。」
確かに不利だ。でも、一対一だ。
「一応名乗ろうか。さっきも言ったが河城にとり。谷カッパのにとりだよ。」
『命名決闘』は『始めるときに、互いに名乗る』という規約がある。これには、『あくまでも不正をせず、正々堂々と戦うことをこの名に誓う』という意味がある。日常生活で『いただきます』を言うのと似たようなものだ。あくまでも『決闘』なのだ、『ごっこ』ではない。別の言い方をすると、弾幕戦の時に名乗るのは『命名決闘』の申し込みと同じ意味がある。
私も名乗ろう。
「捨てられつ・・・・・」
ここまで言って口をふさぐ。
私は今まで名乗るときは『捨てられ続けた傘の怪』と言っていた。
「・・・・・違う。」
確かに今も私に所有者は居ない。今更人間の持ち物に成りたいなんて思ってもいない。でも・・・・・今の私には大切な人間の友達が二人もいる。『所有』はされていないが、『
笑みを浮かべる。
「さっき名乗りかけたの・・・・間違いでした。訂正します。」
「ん??」
分からないだろう。分からなくてもいい。通称なんてただの飾りだ。それでも今の私を示すものを名乗りたい。
深呼吸をし、ゆっくりと丁寧に言葉を発する。
―――――『今の私の関係性を生み出してくれた感謝を』―――――
そんな意味を込めて。
―――――『一人ぼっちじゃない。友達が居て・・・・・とても愉しい時間を過ごせる。』――――――
そんな意味を込めて。
「『虎傘錠前店 加工・技術開発職 職長』 そして 『愉快な忘れ傘』 多々良小傘です!!!」
この名に誓おう。必ず勝つことを、
「・・・・・何だか知らないが、急にいい面構えに成ったね。まぁ・・・・・それでも手加減する気は無いけど・・・・ね!!!」
カードをこちらに向けて投げつけてくる。
「スペルカード・・・・発動!!!」
カードが光の粒となり、左右に散る。
────洪水『デリューヴィアルメア』────
青みを帯びた妖力弾が波に
「私は傘、水なら得意分野ですよ!」
カードを構え、宣言する。
「スペルカード」
光の礫が私の本体にまとわり付く。その力を解き放つように、周囲にまく。
――――大輪『からかさ後光』――――
私の放った妖力弾が、相手の弾幕にぶつかる。
「付喪神程度の弾幕で打ち消そうなんて甘いよ!」
確かに、純粋な私の妖力では、相手の力には敵わない。だから、発射の時に遠心力で加速させる。また、幾つかの弾をセットでぶつけるようにする。そうすれば・・・・・
「な!!」
力の弱い私でも十分対応出来る。
「別に手加減してくれても良いんですよ。・・・・・それでも勝てるんでしたらね!!!」
まだ私の宣言は活きている。もう一度傘をふるい、弾幕を打ち出す。
「なめるな!!!」
河城にとりが後ろに飛び、水面に触れた。それを合図に水柱が上がり、弾幕を打ち消した。
「『水を操る程度の能力』それが私の能力だ。触れた水を自在に操作出来る。こんな風にね!!」
手を振り払い、水を空中に浮かべる。
「行け!」
弾かれた水は矢のように此方を目指し、飛んでくる。だが、動きは直線的だ。右に飛びかわす。
「逃がさないよ、」
一撃一撃をかわすのは簡単だけど、こうも連射されるとその内追い付かれる。それに時間を取られるのも良くない。こうしてるうちに、他の妖怪に気付かれるかもしれない。
傘の裏に仕込んだホルダーから一枚カードを引き抜く。
――――傘符『パラソルスターメモリーズ』――――
妖力で無数の傘を生み出し、妖力弾を添えて打ち出す。
今の場所関係だと地の利は相手にある。せめて川から離さなければ。私は非力だ。力業で離そうとすればかなり加速をつける必要がある。
他の傘に紛れ、一気に近付く。傘同士が交差する動きを増やし、私がどれか確認しにくくする。
「くっ、さっきから面倒な真似を、」
――――水符『河童のフラッシュフラッド』――――
下から大量の水が弾幕と化し立ち上ってくる。だが、妖力の傘の位置を調整し盾にする。また、一つだけ弾幕を避けるような動きをさせる。そうすれば、
「そこか!!」
相手に自分の位置を誤認させることが出来る。虎之助さんの『相手の意表をつく技術』の活用だ。
河城にとりは、私だと思い込ませた傘に向け突進しつつ、弾幕を放つ。
擦れ違う瞬間、妖力傘のうち一つを固定。その傘の柄を軸に体の加速を殺さず方向転換。そのまま背後に回り込む。
「驚け!」
「な!」
加速、体の捻り、さらには飛行用の妖力を切ることで発生した重力の影響。それら考えられる総ての力をのせて妖力で強化した足でオーバーヘッド気味に地面に叩きつける。
ドカァァァァァン!!!
普通の人間なら絶対に死ぬような衝撃と共に、土埃が上がる。
砂ぼこりが晴れるか、出てきたら仕留めようと思いつつ、スペルカードを構える。化符『忘れ傘の夜行列車』。今の私が撃てる最高の技だ。これで決める。
その時後ろから声がした。
――――光学――――
いつの間に!!
急いで距離をとる。
―――『オピティカルカモフラージュ』―――
何も無いように見える空間から突然河童が姿を現して、弾幕を放ってきた。
上に向かって飛び上がり回避する。
「今だ!のびーるアーム!!」
弾幕ではない。金属製の手が鞄から現れ、こちらに延びてくる。
そして、私の本体を掴む。
「えっ!!」
「さっきからこれが邪魔なんだよ!!!」
「キャア!!!」
本体を引ったくられ、反動で川に墜落する。
高い水しぶきをあげる。
秋の川の水だ。服が水を吸ってしまい。寒いし、からだが重い。
「何で後ろに回り込まれたか知りたいかい?」
河童がニヤニヤしながら、此方に近づいてくる。
「これだよ。光学迷彩スーツ。これで一瞬姿を眩ました。1日トータル三十秒までしか使えないのが、こういうときに役に立つ。」
弾幕が放たれる。さっきの衝撃で構えていたカードは落としてしまっている。
「くっ、」
濡れた服のせいで体が上手く動かない。妖力弾を近くに撃ち、爆風に乗って被弾を防ぐ。いつもなら傘があるからかなり高速で動けるのだが、今は避けるのが精一杯だ。爆風を使うため、自分へのダメージも大きい。それでも、懸命に避ける。
「なかなかしぶといね。でも、段々動きのキレが無くなってきたよ。これで終わりだ。」
―――――河童『のびーるアーム』―――――
先ほどの腕と同じ名前。しかし、今度はスペルカードだ。緑の光が扇状に広がり飛んで来る。弾幕が視界を埋め尽くす。
避けられない!!!
―――――あぁ、駄目か。
―――――捨てられた傘が一度は河童を追い詰めたんだ。
―――――上出来では無いか。
―――――負けて当然の勝負だったんだ。
・・・・・嫌だ!
・・・・・嫌だ!
・・・・・嫌だ!負けたくない!
・・・・・相手に勝る力も無い、本体も無い、カードも無い。
・・・・・それでも、
――――――――勝ちたい!!!
カッと目を見開く。
私の能力は、気配を消し、気配を探り、隙を作り、隙をつく技術の集合体。
まず、気配を探る。
相手の弾幕の動きをよむ。
目で弾幕の軌跡を見る。
耳で弾幕の音を聴く。
肌で震える空気を感じる。
見切って、最低限の動きで、体の捻りだけで――――かわす。
次に、隙を作る。
弾幕の気配を見切れば、攻撃を通す隙間を見出だせる。勿論、直線上に相手がいる一瞬をつくなんて針に糸を通すような事は、まだまだ出来ない。だけど、この壁のような攻撃の反対側に、相手の警戒エリアに妖力弾を撃ち込むぐらいの事は――――出来る。
弾幕の密度が薄まった。ホントに短い時間だ。数秒程度の時間だ。でも、それだけあれば充分だ。
気配を消し、弾幕の合間を抜き、一気に正面に出る。
「なっ!!!」
「くらえ〜〜〜〜〜。」
右手から弾幕を撃ち出す。
相手の体の中心を目指して、真っ直ぐに、真っ直ぐに進む。
「そんなのくらうか!!」
鞄からのびーるアームと言ったか、手が飛び出し、弾を払い除けようとする。
「最後の抵抗、見事だったよ。でもそこまでだ。」
「いえ、これで決まりです。」
「寝言は寝てから言え!!」
のびーるアームが右手から撃ち出した妖力弾を払いのけた。
そう、右手から撃ち出した妖力弾を
払いのけた後にあったのは、
「隠し球だと!!!」
一球目を対処した後の――――隙をつく。
「くっそーー!!」
私の妖力弾が今度こそ、被弾した。
勝った・・・・勝ったんだ・・・・・
「ヤッターーーー!!!!」
捨てられた付喪神でも、覚悟さえすれば勝てるんだ!!
「私の勝利にみんな驚け!!!」
――――決着 WINNER 多々良小傘――――
「ははは、負けちまったよ。まさか付喪神に負けるなんてね。」
「負けるわけにはいかなかったから。今までの私なら、負けてましたよ。」
「それでも、お前さんの勝ちだよ。はい、これ。奪って悪かったね。」
そう言って、本体を手渡してきた。
「いえ、戦闘中に相手の戦力を奪うのは基本ですから、謝ることは無いですよ。」
「負けたからには仕方無い。あの人間への八つ当たり的な仕返しは止めにするよ。」
八つ当たりって自覚あったんだ・・・・
私が苦笑していると、にとりさんが肩に手をかけた。
「びしょ濡れにして悪かった。今乾かすよ。」
能力を発動したのだろう、服から水が抜け落ち、川に返って行った。
「急いで行きな。すぐに暖かくしたほうがいい。」
「はい、それでは、」
守矢神社に向けて飛び立つ。
行こう、居るだけで温かいあの場所へ
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その頃 妖怪の山の麓では、
――――豊符「オヲトシハーベスター」――――
――――葉符「狂いの落葉」――――
二柱の八百万の神が放った弾幕は紅白の巫女を目指す。が、
――――夢符「封魔陣」――――
いとも簡単にいなされる。
「魔理沙、さっさと仕留めなさい」
上に向かって叫ぶ。
「分かったぜ」
――――星符「ドラゴンメテオ」――――
はるか上空から放たれた光線が二柱の秋の象徴を飲み込んだ。
「お前たちみたいなのがゴロゴロいるのか。あんまり期待出来ないな。」
―――――Stage1 Clear―――――
被弾禁止の戦いって難しい。二、三回被弾で負けにしたほうが楽だったかな?
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能力解説 鍵の開閉を操る程度の能力
栂峰虎之助の能力。別名「封印と解放の能力」、「覚醒させうる程度の能力」
鍵や錠の操作が本来の能力だが、比喩的な鍵にも対応する。
可能性のカギを閉じる技『施錠「進歩の拒絶」』は格上の相手に効かないのは、格上の連中は自身の成長過程の扉の鍵ぐらい直ぐに見つけて、無意識的に開錠するから。なので厳密にいうと、ほんとに僅かな時間だが格上にも効く。格下の鍵は隠してしまえるため長期間効く。
ただし、封印と言っても所詮は鍵。努力次第で開けることができる。鍵は開かれるから鍵なのだ。
努力型の人間と仲間としての組み合わせ的に相性が良いが、敵対するなら努力型の人間と相性の悪い能力である。
また、この能力は霊力を消費するため、使いすぎると「room」張れないトラファルガー・ローみたいなことになる。
よって、応用の幅は広いがチートは出来ない能力である。
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感想、評価、批評、誤字報告、『よろず店』への依頼、あとがきで解説してほしいこと等々、お待ちしています。