東方覚醒録〜Don't exist originally   作:tora@812

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 初の弾幕戦、結構難しいですね。お見苦しいところあったらすいません。


第十八話 覚醒~小傘~

玄武の沢 side 小傘

 

 『分が悪い戦い』

 

 この勝負を一言でいったら、そうなるだろうと思う。私は付喪神だ。物に霊が宿り力を持ったもの。しかも、人に大事にされた物が付喪神化したならともかく、私は捨てられたもの。元から妖怪として産まれた者より弱い。対して相手は河童。広く名の知れた種族だ。付喪神のように数が多いから、知られているのではない。純粋に名を知らせるだけの力があるから有名なのだ。最近は外界の科学に目を付けたので、『力』そのものは前より落ちているだろう。でも、『知能』や『器用さ』は上がっている可能性が高い。

 

 「大丈夫、いける。」

 

 確かに不利だ。でも、一対一だ。

 

 「一応名乗ろうか。さっきも言ったが河城にとり。谷カッパのにとりだよ。」

 

 『命名決闘』は『始めるときに、互いに名乗る』という規約がある。これには、『あくまでも不正をせず、正々堂々と戦うことをこの名に誓う』という意味がある。日常生活で『いただきます』を言うのと似たようなものだ。あくまでも『決闘』なのだ、『ごっこ』ではない。別の言い方をすると、弾幕戦の時に名乗るのは『命名決闘』の申し込みと同じ意味がある。

 

 私も名乗ろう。

 

 「捨てられつ・・・・・」

 

 ここまで言って口をふさぐ。

 

 私は今まで名乗るときは『捨てられ続けた傘の怪』と言っていた。

 

 「・・・・・違う。」

 

 確かに今も私に所有者は居ない。今更人間の持ち物に成りたいなんて思ってもいない。でも・・・・・今の私には大切な人間の友達が二人もいる。『所有』はされていないが、『捨てられた(一人ぼっち)』だとは思っていない。

 

 笑みを浮かべる。

 

 「さっき名乗りかけたの・・・・間違いでした。訂正します。」

 

 「ん??」

 

 分からないだろう。分からなくてもいい。通称なんてただの飾りだ。それでも今の私を示すものを名乗りたい。

 

 深呼吸をし、ゆっくりと丁寧に言葉を発する。

 

 

 

 

 

 ―――――『今の私の関係性を生み出してくれた感謝を』―――――

 

 そんな意味を込めて。

 

 

 

 

 

 ―――――『一人ぼっちじゃない。友達が居て・・・・・とても愉しい時間を過ごせる。』――――――

 

 そんな意味を込めて。

 

 

 

 

 

 「『虎傘錠前店 加工・技術開発職 職長』 そして 『愉快な忘れ傘』 多々良小傘です!!!」

 

 

 

 

 

 この名に誓おう。必ず勝つことを、

 

 

 

 

 

 「・・・・・何だか知らないが、急にいい面構えに成ったね。まぁ・・・・・それでも手加減する気は無いけど・・・・ね!!!」

 

 カードをこちらに向けて投げつけてくる。

 

 「スペルカード・・・・発動!!!」

 

 カードが光の粒となり、左右に散る。

 

 ────洪水『デリューヴィアルメア』────

 

 青みを帯びた妖力弾が波に揺蕩(たゆた)う様にしながら近付いてくる。でも、

 

 「私は傘、水なら得意分野ですよ!」

 

 カードを構え、宣言する。

 

 「スペルカード」

 

 光の礫が私の本体にまとわり付く。その力を解き放つように、周囲にまく。

 

 ――――大輪『からかさ後光』――――

 

 私の放った妖力弾が、相手の弾幕にぶつかる。

 

 「付喪神程度の弾幕で打ち消そうなんて甘いよ!」

 

 確かに、純粋な私の妖力では、相手の力には敵わない。だから、発射の時に遠心力で加速させる。また、幾つかの弾をセットでぶつけるようにする。そうすれば・・・・・

 

 「な!!」

 

 力の弱い私でも十分対応出来る。

 

 「別に手加減してくれても良いんですよ。・・・・・それでも勝てるんでしたらね!!!」

 

 まだ私の宣言は活きている。もう一度傘をふるい、弾幕を打ち出す。

 

 「なめるな!!!」

 

 河城にとりが後ろに飛び、水面に触れた。それを合図に水柱が上がり、弾幕を打ち消した。

 

 「『水を操る程度の能力』それが私の能力だ。触れた水を自在に操作出来る。こんな風にね!!」

 

 手を振り払い、水を空中に浮かべる。

 

 「行け!」

 

 弾かれた水は矢のように此方を目指し、飛んでくる。だが、動きは直線的だ。右に飛びかわす。

 

 「逃がさないよ、」

 

 一撃一撃をかわすのは簡単だけど、こうも連射されるとその内追い付かれる。それに時間を取られるのも良くない。こうしてるうちに、他の妖怪に気付かれるかもしれない。

 

 傘の裏に仕込んだホルダーから一枚カードを引き抜く。

 

 ――――傘符『パラソルスターメモリーズ』――――

 

 妖力で無数の傘を生み出し、妖力弾を添えて打ち出す。

 

 今の場所関係だと地の利は相手にある。せめて川から離さなければ。私は非力だ。力業で離そうとすればかなり加速をつける必要がある。

 

 他の傘に紛れ、一気に近付く。傘同士が交差する動きを増やし、私がどれか確認しにくくする。

 

 「くっ、さっきから面倒な真似を、」

 

 ――――水符『河童のフラッシュフラッド』――――

 

 下から大量の水が弾幕と化し立ち上ってくる。だが、妖力の傘の位置を調整し盾にする。また、一つだけ弾幕を避けるような動きをさせる。そうすれば、

 

 「そこか!!」

 

 相手に自分の位置を誤認させることが出来る。虎之助さんの『相手の意表をつく技術』の活用だ。

 

 河城にとりは、私だと思い込ませた傘に向け突進しつつ、弾幕を放つ。

 

 擦れ違う瞬間、妖力傘のうち一つを固定。その傘の柄を軸に体の加速を殺さず方向転換。そのまま背後に回り込む。

 

 「驚け!」

 

 「な!」

 

 加速、体の捻り、さらには飛行用の妖力を切ることで発生した重力の影響。それら考えられる総ての力をのせて妖力で強化した足でオーバーヘッド気味に地面に叩きつける。

 

 ドカァァァァァン!!!

 

 普通の人間なら絶対に死ぬような衝撃と共に、土埃が上がる。

 

 砂ぼこりが晴れるか、出てきたら仕留めようと思いつつ、スペルカードを構える。化符『忘れ傘の夜行列車』。今の私が撃てる最高の技だ。これで決める。

 

 その時後ろから声がした。

 

 ――――光学――――

 

 いつの間に!!

 

 急いで距離をとる。

 

 ―――『オピティカルカモフラージュ』―――

 

 何も無いように見える空間から突然河童が姿を現して、弾幕を放ってきた。

 

 上に向かって飛び上がり回避する。

 

 「今だ!のびーるアーム!!」

 

 弾幕ではない。金属製の手が鞄から現れ、こちらに延びてくる。

 

 そして、私の本体を掴む。

 

 「えっ!!」

 

 「さっきからこれが邪魔なんだよ!!!」

 

 「キャア!!!」

 

 本体を引ったくられ、反動で川に墜落する。

 

 高い水しぶきをあげる。

 秋の川の水だ。服が水を吸ってしまい。寒いし、からだが重い。

 

 「何で後ろに回り込まれたか知りたいかい?」

 

 河童がニヤニヤしながら、此方に近づいてくる。

 

 「これだよ。光学迷彩スーツ。これで一瞬姿を眩ました。1日トータル三十秒までしか使えないのが、こういうときに役に立つ。」

 

 弾幕が放たれる。さっきの衝撃で構えていたカードは落としてしまっている。

 

 「くっ、」

 

 濡れた服のせいで体が上手く動かない。妖力弾を近くに撃ち、爆風に乗って被弾を防ぐ。いつもなら傘があるからかなり高速で動けるのだが、今は避けるのが精一杯だ。爆風を使うため、自分へのダメージも大きい。それでも、懸命に避ける。

 

 「なかなかしぶといね。でも、段々動きのキレが無くなってきたよ。これで終わりだ。」

 

 ―――――河童『のびーるアーム』―――――

 

 先ほどの腕と同じ名前。しかし、今度はスペルカードだ。緑の光が扇状に広がり飛んで来る。弾幕が視界を埋め尽くす。

 

 

 避けられない!!!

 

 

 

 

 ―――――あぁ、駄目か。

 

 

 

 

 

 ―――――捨てられた傘が一度は河童を追い詰めたんだ。

 

 

 

 

 

 ―――――上出来では無いか。

 

 

 

 

 

 ―――――負けて当然の勝負だったんだ。

 

 

 

 

 ・・・・・嫌だ!

 

 

 

 

 

 ・・・・・嫌だ!

 

 

 

 

 ・・・・・嫌だ!負けたくない!

 

 

 

 

 ・・・・・相手に勝る力も無い、本体も無い、カードも無い。

 

 

 

 

 ・・・・・それでも、

 

 

 

 

 ――――――――勝ちたい!!!

 

 

 

 

 

 カッと目を見開く。

 

 私の能力は、気配を消し、気配を探り、隙を作り、隙をつく技術の集合体。

 

 まず、気配を探る。

 

 相手の弾幕の動きをよむ。

 

 目で弾幕の軌跡を見る。

 

 耳で弾幕の音を聴く。

 

 肌で震える空気を感じる。

 

 見切って、最低限の動きで、体の捻りだけで――――かわす。

 

 

 

 次に、隙を作る。

 

 弾幕の気配を見切れば、攻撃を通す隙間を見出だせる。勿論、直線上に相手がいる一瞬をつくなんて針に糸を通すような事は、まだまだ出来ない。だけど、この壁のような攻撃の反対側に、相手の警戒エリアに妖力弾を撃ち込むぐらいの事は――――出来る。

 

 

 

 弾幕の密度が薄まった。ホントに短い時間だ。数秒程度の時間だ。でも、それだけあれば充分だ。

 

 

 

 気配を消し、弾幕の合間を抜き、一気に正面に出る。

 

 

 

 「なっ!!!」

 

 

 「くらえ〜〜〜〜〜。」

 

 

 

 右手から弾幕を撃ち出す。

 

 

 相手の体の中心を目指して、真っ直ぐに、真っ直ぐに進む。

 

 

 「そんなのくらうか!!」

 

 

 鞄からのびーるアームと言ったか、手が飛び出し、弾を払い除けようとする。

 

 

 「最後の抵抗、見事だったよ。でもそこまでだ。」

 

 

 「いえ、これで決まりです。」

 

 

 「寝言は寝てから言え!!」

 

 

 のびーるアームが右手から撃ち出した妖力弾を払いのけた。

 

 

 

 そう、右手から撃ち出した妖力弾を

 

 

 

 払いのけた後にあったのは、

 

 

 

 「隠し球だと!!!」

 

 

 

 一球目(右手の妖力弾)の死角に成るように撃ち出した二球目(左手の妖力弾)

 

 

 一球目を対処した後の――――隙をつく。

 

 

 

 「くっそーー!!」

 

 

 

 私の妖力弾が今度こそ、被弾した。

 

 

 

 勝った・・・・勝ったんだ・・・・・

 

 「ヤッターーーー!!!!」

 

 捨てられた付喪神でも、覚悟さえすれば勝てるんだ!!

 

 「私の勝利にみんな驚け!!!」

 

 

 ――――決着 WINNER 多々良小傘――――

 

 

 「ははは、負けちまったよ。まさか付喪神に負けるなんてね。」

 

 「負けるわけにはいかなかったから。今までの私なら、負けてましたよ。」

 

 「それでも、お前さんの勝ちだよ。はい、これ。奪って悪かったね。」

 

 そう言って、本体を手渡してきた。

 

 「いえ、戦闘中に相手の戦力を奪うのは基本ですから、謝ることは無いですよ。」

 

 「負けたからには仕方無い。あの人間への八つ当たり的な仕返しは止めにするよ。」

 

 八つ当たりって自覚あったんだ・・・・

 

 私が苦笑していると、にとりさんが肩に手をかけた。

 

 「びしょ濡れにして悪かった。今乾かすよ。」

 

 能力を発動したのだろう、服から水が抜け落ち、川に返って行った。

 

 「急いで行きな。すぐに暖かくしたほうがいい。」

 

 「はい、それでは、」

 

 守矢神社に向けて飛び立つ。

 

 行こう、居るだけで温かいあの場所へ

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その頃 妖怪の山の麓では、

 

 ――――豊符「オヲトシハーベスター」――――

 

 ――――葉符「狂いの落葉」――――

 

 二柱の八百万の神が放った弾幕は紅白の巫女を目指す。が、

 

 ――――夢符「封魔陣」――――

 

 いとも簡単にいなされる。

 

 「魔理沙、さっさと仕留めなさい」

 

 上に向かって叫ぶ。

 

 「分かったぜ」

 

 ――――星符「ドラゴンメテオ」――――

 

 はるか上空から放たれた光線が二柱の秋の象徴を飲み込んだ。

 

 「お前たちみたいなのがゴロゴロいるのか。あんまり期待出来ないな。」

 

 ―――――Stage1 Clear―――――

 




 被弾禁止の戦いって難しい。二、三回被弾で負けにしたほうが楽だったかな?

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能力解説 鍵の開閉を操る程度の能力

 栂峰虎之助の能力。別名「封印と解放の能力」、「覚醒させうる程度の能力」

 鍵や錠の操作が本来の能力だが、比喩的な鍵にも対応する。

 可能性のカギを閉じる技『施錠「進歩の拒絶」』は格上の相手に効かないのは、格上の連中は自身の成長過程の扉の鍵ぐらい直ぐに見つけて、無意識的に開錠するから。なので厳密にいうと、ほんとに僅かな時間だが格上にも効く。格下の鍵は隠してしまえるため長期間効く。

 ただし、封印と言っても所詮は鍵。努力次第で開けることができる。鍵は開かれるから鍵なのだ。

 努力型の人間と仲間としての組み合わせ的に相性が良いが、敵対するなら努力型の人間と相性の悪い能力である。

 また、この能力は霊力を消費するため、使いすぎると「room」張れないトラファルガー・ローみたいなことになる。

 よって、応用の幅は広いがチートは出来ない能力である。

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 感想、評価、批評、誤字報告、『よろず店』への依頼、あとがきで解説してほしいこと等々、お待ちしています。
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