東方覚醒録〜Don't exist originally   作:tora@812

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戦闘パートです。

初めて書くので至らぬところ多いでしょうが(処女作だから当たり前か)。お楽しみください。


第七話 覚醒〜早苗&虎之助〜

夕刻 廃工場の敷地 side 虎之助

 

 さてと、どうしよう。さっき大見得を切ったお陰でこっちに全員の注意が向いている。早苗だけでも逃がすなら今がチャンスなのだが、しばらく立ち上がれそうじゃ無いな。

 

 こちらの手駒は、「鍵の開閉を操る程度の能力」という謎能力、鞄と携帯、それと僕自身。暴行してたのは確かだから警察呼んでもいいけど、事情聴取とかしてたら今日中に諏訪大社に行けない。それになにより、目の前のこいつらが電話とか許してくれないだろう。そういえばこいつらの正確な人数把握してないや、・・・・・十三人・・・・・・縁起悪いな。

 

 あー、先にこっちの存在がばれたのがイタいな。ばれてなければ、奇襲なり何なり出来ただろうに、

 

 こういう明らかに不利な戦いの定石は、素の体力差が影響しづらい短期決戦でけりを付ける事だが、さすがに一対十三でそれは出来ない。

 早苗の回復を待って逃げてもいいが、引っ越したばかりでこの辺の地理に詳しく無い。対して奴らは地元民だ。逃げきれるはずもない。

 

 地道に少しずつ戦力削いでいくしか無いか。とりあえず、動きの邪魔になる鞄は捨てておこう。

 

 そんなことを考えていると奴らが口を開いた。

 

 「そうか、潰すか」

 

 「こっちもお前を潰してやりたかったよ、お前が一度守ったおかげでもっと痛めつけられるこいつの写真でも見せ付けて心から潰そうと思ってたんだがな」

 

 「貴様からこっちに来たなら、まず貴様からいたぶってやる。」

 

 あーなるほど、早苗のボロボロの写真見せ付けて、「お前の言うとおり、口でどうにかするのはやめたよ。その代わり体のほうから痛めつけた。お前が邪魔しなきゃ、俺たちも口で終わらせるつもりだったんだがな」とかなんとか言ってショック負わせてからボコろうということか。下種が。まあ、さっきの言葉だけでここまで思いつくのだから、僕も大層な下種だよ。だからこそ、人の為に何かできるような人間じゃないと自称してるわけだが、

 

でも、その情報は使()()()

 

 「ふ〜ん、そんなので僕がショック受けると思ってんの?」

 

 「!!!」

 

 「そいつがどうなろうと僕関係ないでしょ?試しにそいつに何かしてみれば?」

 

 全員の視線が早苗に向く。

 

 ーーー今だーーー

 

 素早く走り、早苗の方を向いた結果、此方の警戒が薄れている奴のを蹴りつける。

 

 「ガッ!!!」

 

 そいつが呻き声を上げたため、視線を此方に向ける為に振り返る。ようは自分から此方に首を向ける。そのタイミングを狙って殴れば蹴ったあとで踏み切りが甘いパンチでも

 

 「グッッッッ」

 

 充分な攻撃になる。

 

 相手全員が怯んでるうちに、次のパンチを想定して蹴った為に火力が足りなかったために転がっただけで仕留めきれてない奴の腹を蹴っておく。

 

 ーーー二人撃破、残り十一人ーーー

 

 「あっ、今の嘘、早苗に手を出さないでね」

 

 「卑怯者」

 

 「残念、奇襲は作戦の一種だ。非戦闘要員に攻撃したなら卑怯だと思うがな。それと一対十三仕掛けるのやつらに卑怯呼ばわりされても、全然こたえないよ」

 

 話しながら少しずつ工場によっていく、そして能力を使い建物の鍵を開ける。

 

 これだけの人数差があるから、乱闘は出来ない。まあ普通に殴りあったら、たとえタイマンでも勝てない。前世よりマシだが、はっきり言って体力はあんまり無い。

 

 「あっごめん。今は一対十一だったね。」

 

 「この、なめるな!」

 

 一人飛びかかってくる。いや、タイミングをあわせて更に二人、計三人だ。

 

 同時か、一人づつが良かったんだけどな、なんて考えつつ、転がった時に掴んでおいた土を目を狙い撒く。勢いが止まらずそのまま突っ込んでくるので建物の扉を開ける。結果二人建物内に突っ込む、一人は踏みとどまったが目が見えない者が僕の正確な位置はつかめない。蹴りつけて建物内に押し込む。

 

 「施錠」

 

 ーーー三人封印、残り八人ーーー

 

 色々試してみて判ったことだが、「鍵の開閉を操る程度の能力」で閉めた鍵は能力の術者が開放の意思を持たない限り開かれることはない。ようするに、この戦闘の間、中から鍵を開けることは不可能だ。

 

 「違った、一対八だ」

 

 誰も反応しない、流石に同じ手はくわないか。ここまでテンポ良く五人封じたが、実のところ、策はもう尽きていた。ほんとは、ここまでの動きの中で武器に成りそうなものを探して、携帯を投げつけて意識をそらし、あわよくばすれ違いざまに一人沈黙化させつつ武器を回収する予定だった。だが、武器に成りそうなものはなかった。最悪、こいつらがなんか出したら、それを奪う予定だったのだが、無いものねだりか。

 

 あとは、出来ることといえば・・・・

 

 「早苗、もう立てるだろ。逃げろ。神社にいってろ!」

 

 見失ったタイミングから考えて、そこまでダメージは受けてないはずだ、最悪歩けるぐらいには回復しているはずだ。もし駄目でも、この発言で早苗に意識が向けば一人は倒せる。案の定こちらへの注意がそれる。

 

 ーーーいまだーーー

 

 だが、早苗の発した言葉に思わずこちらも静止してしまう。

 

 「嫌です。そもそも助けてもらいたくもないです。」

 

 「早苗、何を言って、」

 

 「この人達は私がこれからされることを耐えきれば、信仰すると言いました。だから、邪魔しないで下さい。」

 

 「そんなの嘘に決まってるだろ。仮に本当でも、いざとなったら、お前を殺すとはいかなくても、人格変えればそんな約束意味がなくなる。」

 

 「そんなの関係ないですよ。少しでも信仰を得る機会があるのなら、それを捨てる訳にはいかないです。それくらいの事しないと、あの時、死なずに済んだ恩を返せません。」

 

 奴らの一人が下卑た笑みを浮かべ、口を開く。

 

 「そういう事だ、分かったら帰れ」

 

 「・・・・・・ざけるな」

 

 「??」

 

 「ふざけるな、早苗!お前は二柱がお前を助けるとき、そうすればお前が信仰を得る手助けになると思って助けたとでも思ってるのか?こうやってその身を犠牲にして自分の為に働いてほしくて助けたとでも思ってるのか?ふざけんな!そんなつもりで助けたんじゃない!そんなことで信仰を得るのは、恩返しじゃない!」

 

 「なら、どうしたらいいって言うんですか!」

 

 「そんなこと知るか!ただひとつ言えることがあるとすれば・・・・・・、恩返しに囚われるな、生きたいように生きろ、信仰を得たいならそれでもいいが、嫌なことを我慢して・・・・・、自分の心に鍵をかけてするぐらいならやめろ!かえって迷惑だ!心の中にその身を助けられたら、その身を持って恩を返さなくてはならないって『常識』があるなら、そんな『常識』捨てろ!」

 

 「おまえ、せっかく話がまとまってるのに、茶々いれるな」

 

 奴らの一人が飛びかかってくる。しまった、早苗に気をとられて警戒を怠っていた。

 

 グハッッッ

 

 この闘争始まってから初となるダメージを負う。

 

 「さっきからうるさいんだよ。」

 

 「とっとと帰れって言ったよな!」

 

 「鬱陶しいんだよ、消えろ」

 

 連中に囲まれて殴られる。蹴られる。意識が遠のいてくる。

 

 ああ、二度目の人生、こんな感じで決着かよ。

 

 ・・・・・そういえば、つい最近も二度目の人生云々って考えたな、いつだっけ?

 

 今そんなこと考えても仕方ないのにそんなことが頭に浮かぶ。

 

 たしか、ここに来ることをつげられた日だったな。

 

 二度目の人生と人間が持ちうる二つの人生を比較してたんだ。

 

 相変わらず、無駄なことして過ごしてるな僕、

 

 ん?もうひとつの人生?

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

同刻 同所 side 早苗

 

 自分の生きたいように生きろ・・・・か・・・・・、私は確かに信仰を得たいと思っています。時の流れさえ気だるく感じるほど絶望していた私を救って下さった二柱のために。それは変わらない事実です。でもそのときの二柱の気持ちなんて考えたこともなかった。なんであの時私は助けられたのだろう。

 

 信仰を得るため?違う、何かが欲しくて助けるような方たちじゃない。

 

 私が諏訪子様の生み出した人の末裔だから?違う、私が赤の他人でも今とは違うかたちで助けてくださったはずです。

 

 ただ救いたくて・・・・・・・そうだ、ただ救いたくて助けたんだ。自殺なんてバカな真似をやめさせたくて助けたんだ。

 

 なら、私が身を犠牲にして信仰を得ようとするのは、二柱のために成らないんだ。

 

 力を振り絞って立ち上がる。

 

 私が生きたいように生きること、それが二柱への最大の恩返しなんだ。

 

 今私がしたいこと、それは

 

 真っ直ぐ前を見つめる。

 

 虎之助くんを助けること、

 

 でも、私は力が無い。だから一瞬隙を作る。そうすれば、どうにかしてくれるはずだ。何故か、そう信用できる。

 

 ゆっくりと口を開く。

 

 「全てのものの生の礎にして、全てを死に(いた)らしめる力ーーー」

 

 唱えるのは雨乞いの術式

 

 「ーーー(あま)断ち()きてこの地に落ちよ、流れ水の果ての名よ!」

 

 雲が湧き、雨が降り始める。

 

 本来なら、私の出来るのはただの雨乞いだ。

 

 ここが限界。

 

 でも、今は何故か体が軽い、

 

 ーーー次の舞台に上がれる気がする。ーーー

 

 「豊穣という名の創造、燃焼という名の破壊、万象の始まりを告げる一閃よ、(きら)めきて轟けーーー」

 

 雷鳴が鳴り響く、

 

 「ーーーこの地を別つ刃と成れ!」

 

 雷がーーー落ちる。

 

 威嚇射撃にしては強すぎる威力だ。勿論直接狙うわけにはいかない。私とあの人達の中間地点に接地するように落とす。直接攻撃が狙いではない。本当の狙いは、

 

 目と耳を閉じる

 

 ピカッゴロゴロゴロゴロ

 

 ほぼ真上から落ちた雷はほぼタイムラグ無く、電光と雷鳴で辺りを支配する。その光と音が擬似的な閃光弾と化す。

 

 いきなり落ちた雷は地に伏していた者と雷に背を向けていた者以外の意識を強制的に奪う。

 

 ーーー五人失神、残り三人ーーー

 そして、残りの三人は、

 

 「施錠!!」

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

数秒前 同所 side 虎之助

 

 くそ、能力の使い方思い付いたけど殴られっぱなしで攻撃に転じる隙がない。せめて、一瞬でも攻撃が止めば、

 

 ピカッゴロゴロゴロゴロ

 

 轟音が鳴り響く、後ろの方で人が倒れる音がする。前の方にいた奴らが音のした方に目を向ける。僕も確認をしたいところだが、今を逃したら次のチャンスは無い。

 

 手を伸ばし順に相手を触れていく。

 

 ーーー『もうひとつの人生』ーーー

 

 それは努力により、今まで限界であったことを越えた先にある世界、とはいえ、努力して次のステージに上がることは人生においてよくあることだ。

 

 歩くこと、言語を習得すること。忘れているだけで皆努力し身に付けた力だ。

 

 本当は努力すれば、新たな世界が見えるのに、新たな世界にいくには、越えられない壁があるように感じる。本当は、それは壁では無く、押せば開けることのできる扉なのに、

 

 人は、努力しその扉の鍵を探し、努力しその扉を押し開ける。人は努力の連続で成長する。天才と呼ばれる人達は最初から扉の鍵を持っていて、扉を開く努力だけで成長できるだけだ。

 

 なら、その扉に鍵をかける!

 

 「施錠「進歩の拒絶」!!」

 

 「立つことを習得した努力に鍵をかけた。」

 

 残りの三人が崩れ落ちる。

 

 ーーー三人施錠、残り零人ーーー

 

 そういえば、さっきの音は何だったんだろう?立ち上がり音のした方を見る。いつの間にか雨が降っていた。地面には焦げたような跡がある。

 

 ひょっとしてさっきのって。

 

 「虎之助くん!ありがとうございました。」

 

 「早苗、ひょっとしてさっきのって・・・・・」

 

 「はい、私がやりました。」

 

 「そう、ありがとう。でも、二柱に少し聞いてたんだけど、早苗って雨乞いが精一杯なんじゃ・・・・・」

 

 「はい、でもなんだかできる気がして、それより、私、虎之助くんに謝らないといけないことがあって・・・・」

 

 「何?」

 

 「私、虎之助くんの信仰が欲しくて声をかけたんです。名前で呼びあうようにしたのも親しくすれば、その分信仰を得やすいと思ったからです。心から友達に成りたいなんて思っていませんでした。ごめんなさい。・・・・・・それともし許してくれるなら、・・・・・・本当の友達になってくれませんか。」

 

 「・・・・・・僕は生まれた時から、この世界のものが信用出来なかった。神が居ても可笑しくないと言っていじめられたこともあった。そうなるぐらいなら、友達なんて要らないとも思った。・・・・・でも、ここに引っ越してきて、早苗にあって、諏訪大社に行くとき、少し話したよね。・・・・・楽しかった。・・・・・友達っていいなって思えた。だから、・・・・・友達になってくれませんか?」

 

 早苗は笑顔で答えた。

 

 「・・・・・はい!」

 

 すごくいい笑顔だった。この笑顔を守れたのかな。・・・・・まったく、かっこつける役とかがらじゃないのに。まあ、今ぐらいこういう役回りでもいいかな。

 

 気付けば雨があがっていた。




 早苗は呪文詠唱の能力なのに具体的な詠唱シーンが無いな、って思ったのでこうなりました。受けが悪かったらやめます。

 施錠「進歩の拒絶」は、封じうる可能性の幅は実質無制限なチート技ですが、格下か同格の相手にしか発動しない。触れないと発動しない。などの欠点のある技です。少なくとも、今のところは、
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