ガンダムSEED・クルセイド・イラ   作:ボストーク

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ハーメルン投稿第2弾は、ガンダムSEEDのクロスオーバーに決めました。
原本をかなり書き直すことになると思うのでゆっくり投稿になるかと思いますが、楽しんでいただければ嬉しいです。


第01話 ”とある魔術の統一歴(コズミック・イラ)”

 

 

かつて地球には様々な宗教があった。

そしてその相違こそが、長い年月の間に幾多の闘争を繰り返す火種となり、法衣を己と”異端者”と称する者達の血で染め上げる事実を積み上げた。

 

結果から言うならば……最終的な地球における宗教対立の勝者は、大雑把にくくると”十字教”ということになった。

しかし、その勝者が決定するまでにあまりに時間がかかりすぎた。

そう……世界はすでに宗教的世界観を基調とする古典世界から、科学技術を基幹とするする物質文明に移行していたのだ。

であるが故に、宗教もまた変質せざるえなかった。

 

物質(科学)文明と理想的な共生する宗教の成立……

 

一見すると難題だが、だが意外なところに解決の糸口があった。

そう、[第三次世界大戦]である。

 

 

 

ある意味、物質文明の破綻といえる核まで用いられた巨大戦争において、文明だけでなく人々の精神も荒廃し、そうであるが故に人々はすがるように救済を求めた。

それこそが……救済を求める願いこそが、”十字教”が空前の躍進、【歴史の勝者】に押し上げる原動力であった。

 

 

だからこそ、口のさがない輩は第三次世界大戦の後に生まれた世界で新たに使われるようになった”統一暦”こと[コズミック・イラ(CE)]暦を

 

【クルセイド・イラ(十字教の時代)】

 

と揶揄したのだった。

それは旧来の国家に勝者は存在せず、『誰の手によって時代が統一されたか?』を示唆する強烈な皮肉だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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人によっては宗教観が科学の正常な発展を歪める【第二の宗教的暗黒時代】と呼ぶコズミック・イラ初頭に一人の男……異能の天才が登場する。

その男は【アレイスター・クロウリー】という名だった。

 

 

当時の資料によれば、アレイスターはあらゆる意味で”規格外”の存在だったらしい。

十字教各宗派が秘密裏に延々脈々と改良を重ね受け継いできた科学とは異なる秘術……”魔法”を若くして極め、最年少の【魔導書の書き手】として名を馳せただけにとどまらず、秘匿された情報が多く宗派/流派ごとに違いすぎた”魔力の術式制御法”、いわゆる【魔術】を数学的な解釈を中心に編纂、【一つの学術体系】として昇華させたのだった。

このアレイスターの手により近代的な解釈が導入され、より科学との親和性が高められた体系化された魔術が【現代魔術】と呼ばれる。

 

 

 

だが、これほどの偉業を成し遂げたのにもかかわらず、アレイスターには不十分な充足感しかなかったようだ。

言い方を変えるなら、十字教的な倫理観が浸透した大地は、彼が理想を追い求めるには思想的な意味で窮屈すぎたのだろう。

 

だからこそ、地表で”己が望み可能なこと全て”をやりつくしたアレイスターは、あっさりと地球を捨てる決意をする。

いや、そもそも彼の欲望と探究心を重力程度で縛りつけること自体、最初から不可能であったのかもしれない。

 

規格外の異才にして天才は、その異能ともいえる極端な異才を軽々と大気圏の彼方まで天元突破させ、CE世紀に入ってからあまり活発に行われていなかった人類のフロンティア、宇宙(そら)に新天地を求めた。

そして彼はCE15年、ラグランジュ・ポイント(重力均衡点)に自らの理想を実現させる”最初の理想郷”を構築することに成功した。

そう、アレイスター本人が考案した【砂時計型コロニー群】をだ。

 

 

 

***

 

 

 

最初アレイスターは、公然と干渉をかけてくるだろう各十字教系勢力に対し、欺瞞工作の一環として最初のコロニー群(後の”アプリリウス”)を

 

「魔法と科学の更なる発展を促す研究を行う為」

 

という名目で【学園都市】と名づけた。

当初は、アレイスターを慕う魔術師や魔導師、さらには彼の理想に共鳴した錬金術師や科学者とその家族の合計230万人ほどが住むコロニー群に過ぎなかった為に、そのような言い訳も十分な説得力があった。

いかに第三次世界大戦で人口が半減していたとはいえ、復興を果たした地球の人口は50億人を突破しようとしていた。

それと比較するなら、学園都市など芥子粒程度の組織であり、天才だが風変わりな魔法使いが経営する【宇宙に浮かぶ実験施設】以上の意味など、誰も考えもしなかった。

 

 

 

だが、【学園都市】と地球の蜜月は、唐突に終わりを告げる。

【学園都市】が10のコロニー群まで拡大したCE53年、すべての準備を終えたアレイスター・クロウリーは”宇宙に適応した新たな能力と可能性を秘めた人類”として、【遺伝子調整(コーディネイト)によって特殊な能力を持つヒューマノイド】を発表する。

 

そう……【遺伝子調整/強化型能力者(コーディネイター)】の誕生である。

 

 

 

***

 

 

 

だが、遺伝子操作……特に人間に対するそれは、神の暗号を解き明かすことと同義であり、十字教徒にしてみれば最大の禁忌(タブー)の一つであった。

故に十字教徒たちが彼ら、宇宙に住むアレイスターが生み出した【神の摂理に逆らい生み出された者(コーディネイター)】を危険視するのは当然であろう。

 

 

かくて対立の土壌は整った。

どれほど科学が進んだとしても、無理解や齟齬から生まれる対立……特に宗教的あるいは思想的な倫理観や道徳観の相違から生まれる感情や生理的嫌悪は、その理屈無用の単純さ故に根深くなりやすい。

それだからだろうか?

 

コーディネイター(能力者)の存在が、アレイスター自身により公表されてからほどなく、地球ではアレイスターが統治する10のコロニー群を【学園都市】ではなく、【アレイスターのモルモット培養地】という皮肉をこめて

 

【プラント】

 

と呼ぶようになったのは……

 

 

 

それからの歴史を大雑把な事象のみを記すなら、実質的な地球の支配階層である十字教は宗派の壁を超え、アレイスターと彼の生み出したコーディネーター、彼らの住処であるプラントと対立するために表では【地球連合(オムニ:O.M.N.I=Oppose Militancy and Neutralize Invasion)】、裏では【ブルー・コスモス(=神聖十字教同盟)】として結束することになる。

 

 

 

そしてC.E.70年2月5日、当時の事務総長以下首脳陣がテロにより爆殺された「コペルニクスの悲劇」が起きた。

CE70年2月14日、テロをプラントによるものだと断定した地球連合は即座に「懲罰的行動」を開始、”ユニウス・セヴン”に炸裂した核により人類史上稀に見る悲劇が始まるのだった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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CE71年1月24日 

 

ユニウス・セヴンへの核攻撃の報復としてプラントから地球全土に打ち込まれたニュートロン・ジャマー(中性子線阻害装置)、それによるエネルギー不足から凍死や飢饉が誘発され経済的混乱もあいまって地球人口の10%が死滅したとされる”エイプリルフール・クライシス”から約1年が経とうとしていた。

 

プラントとその軍事組織(厳密には民兵による自警団あるいは義勇兵団)である”Z.A.F.T(ザフト:Zodiac Alliance of Freedom Treaty=自由条約黄道同盟)”と、地球連合軍の戦いは徐々に戦線を膠着させつつある。

 

最初はニュートロンジャマー制限下における有視界戦闘において最大限の効力を発揮するプラント版人型決戦兵器である【MS(モビルスーツ)】を前面に押し立て、乾いた草地を焼き払う猛火のようなザフトの攻勢だったが、人口的あるいは資源的限界からその地球攻略の限界が見え始めていたのだ。

 

 

 

ちょうどその頃、オーブのコロニー【ヘリオポリス】に、軌道エレベーター【アメノミハシラ】を出航した1隻の定期旅客船が到着しようとしていた。

その船の一室、平均的所得の庶民なら清水の舞台から飛び降りるような覚悟がいりそうな特等船室(スィート・キャビン)から物語は始まるようだ。

 

 

「また”ソレ”を見ていたのか?」

 

濡れた女性にしては短くそろえた金色の髪を拭きながら部屋に備え付けのシャワールームから出てきたどこかボーイッシュな少女は、そう応接セットのソファに座るなんとなくハリネズミを連想させるツンツン頭の黒髪の少年に声をかける。

 

「まあね」

 

少年は短く返すと、純銀の台座にはめ込みペンダントヘッドにしている【一枚のコイン】に視線を戻した。

コインといってもプレミア価格がつきそうな立派なものじゃない。むしろその逆で、おそらくニッケル合金製らしい見るからに安っぽい……そう、まるでゲームセンターのコインゲームで使われているような代物だった。

 

どう考えてもコインをはめ込んだ台座や同じく銀製の繊細なペンダントチェーンのほうが高そうだが、そのコインを見つめる少年の視線から察するに値段に関係なくよほど大切な物のようだ。

 

「なんせ、”上条さん”の過去につながる数少ない手がかりだしな」

 

「ふぅ~ん……」

 

少女のリアクションは関心があるのかないのか判断しづらい。

それも無理はないだろう。

”上条さん”こと【上条当麻(トーマ・カミジョー)】という名の少年が”救助”されて以来、彼女は一年近く同じ時間を過ごしているのだから最初の台詞とおりに何度もこんな少年の姿を見ていたのだから。

 

「せっかく宇宙に来られたんだ。お前の記憶、少しでも戻るきっかけになればいいな」

 

「サンキュ、”カガリ”」

 

 

 

***

 

 

 

上条当麻とオーブ五大氏族の一人、【カガリ・ユラ・アスハ】の出会いは、禍福を問わず多くの偶然に導かれた結果だった。

いや、そもそも上条当麻という少年自体、簡単に幸不幸を言い表せない数奇な人生を現在進行形で歩んでいるのだ。

 

そもそも当麻がオーブに文字通り【流れ着いた】きっかけは、CE70年2月14日に起きた地球連合軍によるプラントの農業コロニー”ユニウス・セヴン”に対する核攻撃事件……世に言う【血のバレンタイン】がきっかけだった。

より詳細に言うなら、上条当麻は数少ない【惨劇の生き残り】だった。

 

憶測も交えてしまうが……

どうやら当麻が助かったのは、核ミサイルの直撃時に命中面の反対のもっとも離れた場所の、しかも”外側”にいたらしいのだ。

状況から察するに、当麻はちょうどコロニーの隅っこかミラーの周辺で補修や修理、もしくは清掃などの真空中作業をしていたようだ。

そのために彼はコロニー外作業用のちょっとやそっとのデブリの衝突なら防げる頑強さと宇宙線、地表とは比べ物にならないほど強烈な放射線に対する幾重も防護機能を持つ重厚な機動宇宙服(オービタル・スーツ)を着ていたらしい。

また、その宇宙作業においての万が一を想定し、その宇宙服にはエマージェンシー・モードでビーコンと連動して機能する簡易式のソフト・スリープ(擬似冬眠)機能が搭載されていたことも当麻の生存率を引き上げたのだろう。

 

核爆発に巻き込まれながらもコロニーの破片や爆風に刻まれることなく、彼は惨劇から生き延びた。

それは奇跡と言っていいかもしれない。

だが、まったく代償がなかったわけではない。

ユニウス・セヴンの残骸を拾いにきたジャンク屋が当麻のエマージェンシー・ビーコンを受信したときは既に、宇宙服の保障する生命維持時間をとっくに過ぎていたのだ。

 

たとえソフト・スリープしていたとはいえ、新陳代謝を抑制して消耗を抑えるだけでまったく酸素を必要としなくなるわけではない。

そう、漂流を経て救出されたと上条当麻の脳内では、緩慢ながら酸素欠乏症が進行していたのだ。

 

ジャンク屋の船にあった医療施設では意識不明重体だった当麻に満足な治療は施せず、彼らは回収したデブリを売却するついでに商取引のあるオーブの宇宙ステーションに当麻を預けた。

 

宇宙服と一緒に回収された彼のIDカードは何らかの原因で情報破損が激しく、ほとんど情報を引き出せなかった。

だが、それでもサルベージされたデータから【上条当麻(トーマ・カミジョー)】という名とプラント在住のコーディネイターであることは疑いようもなく、彼が目の覚まさぬ間に起きた【エイプリルフール・クライシス】のせいで加速度的に反コーディネイター思想に傾いた地球連合に預けるわけにはいかなかった。

 

しかし、ジャンク屋で彼を預かるには危険すぎた。

そこで彼らが考えたのが、昵懇でありまた国内にコーディネイターが比較的に多いため、開戦後も中立を貫いている【オーブ】であった。

 

 

 

やがて当麻は搬送されたオノゴロ島のとある病院の集中治療室で目を覚ますが、その時……

 

『知らない天井だ……』

 

そう呟いた彼の記憶は、儚い夢よりもなおおぼろげなものになっていた。

そう、宇宙漂流の末の酸素欠乏症は、彼の脳……とりわけ、記憶を司る部位に重大なダメージを残していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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カガリとの出会いも、彼の【特殊な能力(いや、”体質”か?)】に起因するそれなりのドラマだかエピソードだかはあるのだが、今は割愛させていただく。

しかし、ひょうんなことから二人は出会い、当麻はそのユニークな能力からカガリの”色々な意味を含め”側近として生計を立てるようになった。

もちろん、なんの苦労もなかったわけではなく日々「不幸だぁぁぁぁーーーっ!」を連呼する羽目、【とりあえず死にはしない程度に加減された訓練】を包帯やら絆創膏を相棒に経たのであるが……

 

とにもかくにもその甲斐あり、こうやって今も当麻とカガリは同じ船室で宇宙の船旅が出来る程度には近しい関係と腕っ節を持つに至っていた。

メタ的な発言をするなら、この世界においてもフラグ構築能力は健在のようである。

 

「ところでカガリ……」

 

「なんだ?」

 

当麻は視線をコインからカガリに修正すると、

 

「いい加減、服を着てもらえないでせうか!? いかに紳士な上条さんとはいえ、目のやり場にこまるのですが……」

 

するとカガリはきょとんとした顔をして、

 

「おいおい。初対面で人を押し倒して乳を鷲掴みにしたヤツが何を今更?」

 

「いや、あれは不幸な事故ですから!」

 

当麻の台詞にカガリは少し頬を膨らませ、

 

「なんだ? お前にとってワタシの乳を揉むのは不幸なのか? 確かに大きくはないがそれなりに膨らんでるし、何より形は悪くないと思うゾ?」

 

「確かに小ぶりながらしっかりと弾力と柔らかさが……ってそういう問題じゃないからっ!!」

 

カガリは満足そうな笑みを浮かべると、

 

「ならいいじゃないか? ワタシは今更お前に裸を見られたところで気にしない。お前も気にするな。大体、今まで何度同じ風呂に入ったと思ってるんだ?」

 

「それもお前ン家の温泉に使ってたらカガリが闖入してきたんだろうが!」

 

事実である。

当麻は退院した後、どんな理由からかカガリやカガリの父である”ウズミ”に気に入られ、アスハの家に引き取られた。

その際、療養(湯治)のために源泉かけ流しの天然温泉を利用した家風呂をよく利用したのだ。

ただその湯治はリハビリ段階よりも比喩でなく”血のにじむ訓練”の後に多用されていたことを記載しておく。

 

「わざわざ男湯と女湯に分けた家風呂があるもんか。それに、あれだけ広い風呂だゾ? どうしてお前が入ってるからといって、ワタシが自分の家の風呂に入るのに遠慮する必要があるんだ?」

 

「ああ、何をどう間違えて育ったたらこんな漢らしい娘に……」

 

「知らん。まあでも、元々お父様は息子が欲しかったらしいから、勘定は合うんじゃないのか?」

 

「合わないからっ! ウズミさん、泣くぞ……? 割とマヂに」

 

 

 

かくもにぎやかに二人はヘリオポリスに着こうとしていた。

だが、一枚のコインが導く絆は、はたして当麻に何をみせるのだろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




皆様、ご愛読ありがとうございました。
この第1話は、旧作の1&2話をまとめ加筆修正したリメイク版となります。

色々とモチベーションが下がり過去にエタった作品ですが、当時のネタ帳も無事に発掘できましたし、心機一転して完結を目指そうと思っています。

読者の皆様に受け入れてもらえれば幸いです。
またご意見ご感想をいただければ大変嬉しく思います。
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