皆様、こんばんわ。
ストックがあるからこそできる荒業というわけで、本日二度目の投稿となりました。
今回は魔術サイドの当麻に続いてサブタイ通りに科学サイドからキャラが登場します。
CE71年1月25日、オーブ宇宙コロニー【ヘリオポリス】、市街地
オーブは一連のプラントと地球連合との戦争において、開戦以来中立を維持していた。
【遺伝子操作型能力者(コーディネイター)】と【非無遺伝子操作者(ナチュラル)】の平和裏な共存を国是とするオーブには、他に選択肢はなかったのだろう。
しかしオーブはあくまで地球上に存在する一カ国であり、日に日に地球連合の圧力は強まっていた。
であるならば国家の理想や理念の一部が形骸化し、また国是が”建前”と化すのもある意味、必然といえた。
政治とは古来より、どれほど美辞麗句を並べ立てたところで基本的に生臭く悪辣なものである。
「つまりは”お姉様”、このような繁栄は所詮は虚栄の一形態。中立という建前を押し出し、外に広がる戦禍から目をそむけ続けるが故に築けた……いわば”悪徳の都”のようなものですの」
基本的に成り立ちから必然的に無宗教が主流のコーディネイターなのに、妙に聖書的な説明をするツインテールの少女に、
「わおっ! 【ヘリオポリス限定ゲコ太コレクション】だって!! さすがゲコ太の生まれ故郷”オーブ”のコロニー♪ 品添えが半端じゃないわ!!」
声をかけられたはずの茶色い髪を清潔感あふれたショートヘアーにした少女は、どうやらゲームセンターのウインドディスプレイに陳列されたカエルをモチーフにしたキャラクターグッズに夢中でまったく話を聞いてないようだった。
「み、御坂さん…」
「いやぁ~。こういう展開は予想してたけど、まさかそのとおりになるとはねぇ~」
困ったような顔をしているのは頭に盛大に花飾りを乗っけたおかっぱっぽいショートヘアーの黒髪少女で、苦笑しているのは”相棒”とは対照的に純白の花一輪の髪留めを添えた姫カットに揃えた長い黒髪が印象的な少女だった。
「ねね、入ってみようよ?」
今にもゲーセンに飛び込みそうなショートカットの少女……花飾りの少女によれば”御坂”というらしいが、
「お姉様ったらまたそんな子供っぽいものを……」
そんな姿にツインテールの少女は少し……いやかなり呆れたようにため息を突いた。
「い、いいじゃないっ! 私が何を好きだって! それに”予備の弾”の補充もできるし」
「お願いですから”赤服”が誇る最強の【電撃姫(エレクトロン・マスター)】としての自覚をもう少しおもちくださいませ」
「うっさい! アンタは私の上官かっ!!」
「まあまあ白井さん。まだ”作戦”の実行まで時間がありますし、準備は万端。装備の点検も予定より早く終わってますし、少しぐらいの寄り道はスケジュールの補正範囲内ですよ?」
そう花飾りの少女が甘ったるい声でフォローすると、
「そうそう♪ なんせ、アタシ達にとっても”こんな工作”は初めてだし、ちょっとぐらいの寄り道は肩の力が抜けてちょうどいいですって!」
と長い黒髪の少女が援護射撃の相槌を打った。
「……まあ、初春と佐天さんがそうおっしゃるのなら」
不承不承という感じに合意する白井という苗字らしきツインテールの少女に、
「な~んか釈然としないわね」
何やら不満たらたらの雰囲気がにじみ出る短髪の少女だったが、これ以上文句を言うより【ヘリオポリス限定ゲコ太】グッズの入手を優先すべしと思い直し、いざゲーセンに突貫するのだった。
ある意味において御坂という少女の判断は正しい。
なぜなら今やり数時間後には、他の誰でもない彼女達自身が実行する作戦によって、ヘリオポリス限定ゲコ太はひどく入手し辛いものになってしまうのだから……
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時間を少し巻き戻し……
一方、こちらはヘリオポリスの宇宙港に到着した上条当麻(トーマ・カミジョー)とカガリ・ユラ・アスハ。
カガリがあまり少女らしからぬ”個人的な趣味”の関係で昵懇にしているサハク家からの根回しがあったせいか手続き自体はスムーズに進み、主に要人が非公式来訪の際に案内される貴賓室の機能も持つ特別室にて形ばかりの入港審査が行われただけだった。
「これはお返しいたします」
一時的に預けた係官より当麻の手に返却されたのは2丁の拳銃だった。
1丁は左手用にカスタムした小口径高速弾がウリのオーブ軍正式軍用自動拳銃(オートマティック)、そして色々と”いわく”のある右手で握っても簡単には故障しそうもない44マグナム級の大きさのボディに太めの5インチ銃身を合わせた回転式拳銃(リボルバー)だ。
「ども」
当麻は短く言葉を返すと同時にオートマチックを右肩に吊るしたショルダーホルスター、リボルバーを腰の後ろに下げたバックホルスターにそれぞれ戻し、軽く具合を確かめる。
使わないなら使わないに越したことはないが、逆に使うならそれこそ命がけのシチュエーションになるだけに扱いには細心の注意を払っているようだった。
「そんな重そうな拳銃を四六時中持ち歩くとは、要人護衛というのも楽ではないようですな? いやはや、その若さでカガリ様のボディガードを任されるとは大したものです」
気遣うような係員の言葉に当麻は苦笑で返した。
実際は当麻のオーブにおける立ち位置はカガリのボディガードなどと勇ましいポジションではなく、せいぜい”お目付け役”や”従者”程度のものだ。
現実に、オーブの法や力が及ばぬ地域にカガリが行く場合はキサカという当麻より明らかに見た目が厳つく強そうなマッチョの【本職のボディガード】が付くのが原則だった。
言うなればヘリオポリスがオーブの宇宙領土だからこそ、当麻のみを護衛につけた来訪が許されたのだ。
「トーマ、そっちは終わったのか?」
ちょうどいい頃合でひょっこり顔を出したのはカガリだった。
変装のつもりだろうか?
ついでに着替えてきたらしく、チョコレートブラウンのPコートに黒いハンティング・キャップを組み合わせた……男装というより、ボーイッシュ(あるいはマニッシュ)ないでたちとなっての再登場だ。
両脇の下がかすかに膨らんでいるところを見ると、カガリももしかしたら帯銃してるのかもしれないが……
「中々似合ってるぜ?」
「ありがとな」
服をほめられたのだからここで乙女らしい仕草の一つでもすれば、当麻の心に少しは揺らぎをおこせたのかもしれないが、生憎とカガリもそのあたりの部分が妙に鈍いというか未発達だった。
何を言ってるかといえば、照れもせずに額面どおりに素直に受け取ってしまったのだ。
考えようによっては当麻とカガリは存外にいいコンビなのかもしれない。
「ところで今日はホテルに一泊、明日は午前中にカトー教授に会いに……でいいのか?」
スケジュールを確認するような口ぶりの当麻にカガリはうなずき、
「ああ。明日はいよいよ【愛しの人形達】にようやくご対面だ♪」
と眩しいほどの笑顔でサムズアップする。
一枚のコインで結ばれた縁が再び結ばれる時は、もう目の前まで来ていた……
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時間は再び現在に戻り……
CE71年1月25日、ヘリオポリス中心街、とある高級ホテルの正面ロビー
「トーマ、はやくしろよ」
「そう焦らすなって。上条さんは本日わりと寝不足なんですから」
「? なんだ? 枕が変わってとよく眠れなかったとかか?」
不思議な顔をするカガリに当麻は半ば呆れるようにため息を突くと、
「……人のベッドに寝ぼけてもぐりこんできた挙句、一晩中人を抱き枕にしたのは誰だよ?」
「ワタシだが? 家ではいつも抱き枕を愛用してるし……もしかしてトーマ、ワタシが抱きついたから眠れなかったのか?」
「あのな……いくら上条さんでも、女の子に抱きつかれて全身に密着した柔らかい感触や耳元にかかる寝息を感じながら熟睡できるほど、枯れてもなければ図太くもできてませんのでっ!」
だが、カガリはきょとんとした顔をして、
「ふ~ん。その程度でワタシに女を感じるなんて意外にウブなんだな」
しかしカガリは理解していない。
アスハの屋敷、一つ屋根の下で暮らすようになってから、女としての自覚が致命的に足りずにやたらと無頓着で無防備なカガリのせいで、当麻が日々SAN値をすり減らしながら理性を武器に本能と戦っていることを……
「まあそんなことはどうでもいい。ほら、急ぐぞ。カトー教授をあまり待たせるとソロモン諸島に核バズーカを撃ち込まれそうだ」
ちなみの二人の母国である【オーブ連合首長国】の本土は、ソロモン諸島にある。
「いや、それはカトーじゃなくてガトーだしっ! しかも撃つのは宇宙のほうのソロモンだ!」
「おかしなことを言うな? 宇宙にソロモンなんてないだろ」
とのたまいながら、カガリは当麻の手を握ると引っ張るようにして歩き出してしまったのだった。
***
「な、生BLを見ちゃいました!」
ゲーセンから出てしばらく歩き、散策や暇つぶしではなく観光客のふりをして街の構造を確認している中、何気なく周囲を見回していた”初春飾利”は唐突に素っ頓狂な声をあげた。
「生ビール? そんなものPXにいけばいくらでもあるんじゃない?」
大量のヘリオポリス限定ゲコ太グッズをゲットしてホクホク顔の”御坂美琴”は大した興味もなさそうに返すが、
「ビールじゃなくてビー・エル、ボーイズ・ラブですよぉ! 気の強そうな金髪で小柄な男の子に手を引かれるツンツン頭の人のよさそうな男の子……」
初春は妙にうっとりした表情になり、
「しかも二人が出てきたのはいかにも高級そうなホテル……きっと二人にとって昨日は特別な日、特別な夜……昨晩はお楽しみですね?とかフロントマンに生暖かい目で言われながら、ちょっと気恥ずかしいけど幸せそうな二人……」
小さな体をクネクネさせながら、
「金髪の子攻めが王道ですけど、ツンツン頭の子のヘタレ攻めっていうのもそれはそれで……」
何やら初春的妄想世界に沈没していたが、
”ばさぁ!”
「おーい、初春そろそろリアルワールドに戻っておいでー」
そんあ初春の唐突にしかも盛大にスカートをめくったのは黒髪姫カットの”佐天涙子”だ。
「さささ佐天さんっ!? な、なんて場所でなんてことをするんですかぁ!!」
慌ててへそまでめくりあげられたスカートを押さえつける初春に、佐天は大して悪びれた様子もなく、
「なーんか”アッチの世界”へ逝ったまんま帰ってこないみたいだったからさぁ」
そんな二人の様子を呆れながら見ていた”白井黒子”は、
「初春の”病気”は相変わらずですわね……男同士の恋愛なんて、想像するだけでおぞましいことこの上ないですのに」
「女同士の恋愛しか念頭にない白井さんには言われたくないです!!」
すると黒子はいかにも心外という顔で、
「まぁ! 酷い誤解ですの! わたくし、女なら誰でも良いなどという尻軽な感性は持ち合わせてませんのよ? わたくしが愛しているのはお姉様だけですの♪」
「だからことあるごとに抱きつくなあっ!!」
白井黒子、たとえ敵地であっても一切のブレは無いようだ。
***
さてさてそんな和やか(?)なコミュニケーションを終えた四人の少女達が入ったのはどこにでもあるような雑居ビルの一室だった。
その部屋には誰もおらず、ただ少女達の荷物にしては無骨すぎるトランクやスーツケースがいくつも置かれていた。
四人は慣れた手つきでそれらをあける。するとそこから出てきたのは……
「問題ないようですわね」
さっきの学生然とした顔から”本職の顔”に変えた黒子が確認するようにつぶやいた。
彼女の視線の先、簡素なつくりだが大きなテーブルに広げていたのは、狭義な意味でもまぎれもない武器の数々……自動小銃や拳銃、各種爆発物にナイフなどの個人携行の出来る破壊と殺戮を目的に製造された”商売道具”だった。
いやそれだけではない。
四人分の防弾処理の施された特殊作戦用のパイロットスーツや通信機、更には何に使うのか判然としない機器や器具も多数あるようだ。
それぞれの装備を確認し装着。
どうやら隊長格らしい美琴は、なぜかプラントでチェーン展開しているゲーセンのコイン数枚をポケットにしまいこみ、
「さて、それじゃあナチュラル(無能力者)達の度肝を抜く、【サプライズ・パーティー】をはじめましょうか!!」
その数時間後、ヘリオポリスはその長くはない歴史の幕を半ば閉じることになるのを、この時はまだ誰も知らなかった。
皆様、ご愛読ありがとうございました。
今回はもう一方の主役と言える【超電磁砲の四人娘】の登場となりました。
トーマ共々彼女達にも相応の役割が与えられています。
もっとも、既に読んでくださった皆様は、その役割を察していられると思いますが(^^