皆様、こんばんわ。
本日も時間があったのでシャッフルズ!の第10話に続いて二本目のアップとなりました(^^
今回はけっこうネタ回だったりしますが……原作のカガリこそ至宝という読者の皆様にはかなり違和感のあるエピソードかと思います(えっ?)
後に【ヘリオポリス事件】と呼ばれる一連の戦いで、戦場が用意されていたのは、当然のようにヘリオポリスの内側だけではなかった。
「全艦、前進! 最大戦速!!」
ラウ・ル・クルーゼの張りのある声の元、ナスカ級高速戦闘艦”ヴェサリウス”とローラシア級の2隻(ガモフ、ツィーグラー)で構成されたザフト艦隊が、一気にヘリオポリスに接近、警告を無視して国際ルールで決められた領海線をあっさり突破する頃にはもはやヘリオポリスからの警告が発せられることはなかった。
何のことは無い。
本命はGAT-X奪取を目的とする美琴達の部隊であったが、それをサポートする陽動部隊は何もアークエンジェルを襲撃した部隊だけじゃなかった。
宇宙港の管制室を襲った部隊もあれば(おそらく管制室が制圧されたか破壊されたかだろう)、基地の他の部分を強襲した部隊もある。
また混乱をいっそう激しく煽るためにテロリストばりにインフラ破壊を行った部隊もあるようだ。
もともと観光客や留学生のふりをしてヘリオポリスに先んじて潜り込んでいた”草(スィーパー)”とも呼べる部隊に、美琴たちのように直前になり紛れ込んだ部隊、更にはつい先ほどステルス処理が施されたランチ(宇宙内火艇)で、ヘリオポリスに直接接岸して奇襲上陸を行った部隊など、この作戦には多くの人員が有機的に動いたのだ。
一部撃退された部隊があるようだが、概ねタイムスケジュール通りに進んでる現状にクルーゼは満足を感じていた。
あまり周囲は気づいていないようだが、そこはかとなく機嫌がいいのはそのせいであろう。
「クルーゼ隊長、コロニー内部の狭さを考えると、支援で突入させるMSは半数の6機で十分だと思われますが」
眼鏡と巨乳がトレードマークの黒服のザフト将校、ヴェサリウスの艦長兼部隊副隊長の”固法美偉”がそう進言する。
ナスカ級にせよローラシア級にせよ、そのMS搭載数は通常6機。つまり3隻からなる艦隊での運用数は常用18機となる。
しかし、今回のミッションは5機のGAT-Xの奪取が目的であるため、通常より5機少ない3隻13機編成という布陣になっていた。
ただし1機はクルーゼのシグーであり、実質的に投入可能なMSは12機と考えていいだろう。
コロニーの破壊が目的ではなく、GAT-X奪取がメインなら過剰な支援はむしろ意図せぬ過度な破壊をもたらし逆効果……少なくとも美偉はそう判断していた。
「残る6機は艦隊防空に振り分けようと思います」
クルーゼは特に感心したような顔をするわけでもなくただ一言、
「宜しいやりたまえ。存分にな」
とシンプルな命令を下したのだった。
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CE71年1月25日、中立国オーブのスペースコロニー【ヘリオポリス】は、ザフトより事前通告や宣戦布告無き急襲を食らっていた。
その戦力は巨大であり、外部には3隻の戦闘艦とそれらに搭載された2桁のMS。
更にコロニー内部にも多数の特殊任務部隊の潜伏や潜入を許していたようで、特に地球連合に貸し出していた機密軍事区画を中心にあらゆる破壊工作が行われていた。
内側と外側から蒸し焼きにされるオーブンじみた”愉快な場所(じごく)”へと今のヘリオポリスは姿を変えていたが、その中に本来はいるべきではない人間が最低でも二人は存在していた。
一人はオーブ代表首長のウズミ・ナラ・アスハの娘、”カガリ・ユラ・アスハ”。
もう一人はその護衛役、ユニウス・セヴンの生き残りで酸素欠乏症による記憶喪失のコーディネイター”上条当麻(トーマ・カミジョー)”だ。
この二人がいるのは、カガリがサハク姉弟から預かった特使権限をちらつかせて入り込んだ【GAT-X105】専用の研究開発ハンガーだった。
GAT-X105を含むGAT-Xシリーズは全5機が同時建造されているが中でも二人の並ぶキャットウォークの下にあるX105、通称【ストライク・ガンダム】は別格の扱いを受けていた。
詳細は不明だが、集中開発されている他の4機との扱いの差異は、別個の開発ハンガーを与えらていることからも明らかだろう。
それぞれ特化単能型として開発された他のシリーズ機と違い、X105はバックパックを中心とする【ストライカーパック・システム】を換装することにより極限の汎用性を狙った、まったくコンセプトの違うMSであり、その多種のストライカーパックを平行開発するために、専用のハンガーが必要だった……というのは、一応納得できる理由ではあるが。
「トーマ、ワタシはオーブのハンガーへと向かうゾ!!」
「カガリ、お前はいきなり何を言ってるんだ?」
先刻より小刻みに続く大小強弱の振動に苦虫を噛み潰したような顔をしながら、当麻がカガリの正気を確かめるように聞き返すと、
「うむ。実はワタシ、ギナ兄(ロンド・ギナ・サハク)より密命を預かっててな。有事の際にはここに近い敷地で開発が行われてるオーブの”MBF-P”シリーズ、通称【アストレイ(非王道)】シリーズを回収するように言われてるんだ」
しれっと言い切るカガリに、当麻は目を剥かんばかりに、
「何だよソレっ!? そんなの聞いてねーぞっ!!」
「それはそうだ。密命なんだから当然言ってないゾ。トーマが知らなくて当たり前だから、別に気に病む必要はないかたな?」
「そういう問題じゃねーだろ!?」
するとカガリは不思議そうな顔をして、
「? トーマ、じゃあどういう問題なんだ?」
その無垢な視線に、つい当麻は思考を停止させてしまう。
(え~と……カガリとは主従関係(?)みたいなもんだし、別に国家機密や高度な政治的判断に触れられるような立ち位置じゃないし、というかむしろ記憶喪失で保護されただけの宇宙漂流してた元プラント人だし……)
ここで詰まってしまうあたり、まだまだ当麻も甘いと言えよう。
「……なあ、俺はどうしてこんなに怒ってるんだ?」
「ワタシに聞くなよ」
ここで、『カガリの事が心配だから真剣に怒ってるんだ!!』くらい真顔で言えれば、いかに天然という名の鉄壁を持つカガリも揺らいだかもしれないが、そこはそれ。
どうやらこの世界の当麻は、まだ”フラグ一級建築士”と呼ぶには色々と足りない要素がありそうだ。
それは今後の成長に期待するとして、
「じゃあ俺も……」
「いや、トーマはここに残れ」
さらりと言い切るカガリをトーマはジロリと見ながら、
「なんでだよっ!! 俺は一応、お前の護衛だぞ!?」
だが、カガリは少し考え込むようにしてから、
「簡単な引き算さ。いいかトーマ、連合もプラントもヘリオポリスを襲撃する理由も意味ない。だとすれば、隠蔽された軍事基地を正確に割り出し、的確に大規模に攻撃してくる相手のいの一番はプラント……いやザフトだ。少なくとも場末のテロリストや海賊風情が出来ることじゃないのは確かだろ?」
「……確かにな」
「しかもさっきから聞こえる爆発音は別々の方向から、ほぼ複数同時……この手際の良さは突発的なそれじゃなくて、前から入念に準備されていたんだろう。そして、そこまで用意周到な作戦を、しかも今のところは体面的には”中立”を貫いてるオーブに仕掛ける意味はなんだ?」
流石は五大氏族の特権を振りかざしたとはいえ、飛び級で士官学校を出ただけのことはあると言うべきか?
彼女は、論理的に素早く仮説を構築しながら、
「この先、ほぼ間違いなくオーブはプラントの敵に回る。例え連合とMSを共同開発していようが、宣戦布告無しにザフトは中立宣言を無視してヘリオポリスを攻撃したんだ。【卑怯なだまし討ち】を国民感情的に許すとは思えない」
(多分、ヘリオポリスの防衛に失敗した父様の退陣は確実……次の代表首長は大西洋連邦に強いコネがあるセイランあたりが妥当かな?)
意外なほど冷静に父親の失脚を納得するカガリだったが、セイランの名を思う浮かべたとき……
”ぶるっ”
一瞬、悪寒に近い感覚が背筋を駆け抜ける。具体的には、自分が得意ではない青い髪でピアスを入れた、おかしな訛でしゃべる軽薄な若い男だ。
カガリはそのイメージを振り払うように努めて真剣な顔をすると、
「それにヘリオポリスはオーブの宇宙産業の要、”アメノミハシラ(軌道エレベーターとオービタル・ステーション)”に並ぶ重要宇宙拠点だ。破壊されれば損害は計り知れない。それにこれだけの規模の攻撃だ……民間人に死傷者が出てないと思うか?」
「それは……」
当麻は再び言葉に詰まった。
そう、ヘリオポリスは一つのコロニーの中に軍事拠点も公民問わない大小様々な研究開発拠点も、更には平和な時代に建造されたコロニーらしく観光客を対象にした大規模な商業区画さえも完備されているのだ。
当麻も例え民間人居住区が直接的なターゲットでなかったとしても、流石に流れ弾一つ街に飛ばないと思うほど能天気ではない。
「宣戦布告無き侵攻に加え、国民としては最も納得しがたい【民間人への無差別攻撃】。これで敵対しないほうがどうかしてるさ。だから、敵の敵は味方って理屈で、オーブは中立を撤回して連合と手を握る可能性は高くても、ザフトに対する敵対意識が当分は止まることはないだろうな。国民も今回のザフトの襲撃を聞いたら、『連合とプラント、今はどちらと手を握りたい?』と聞けば、八割がたの国民は連合を選ぶさ。例え、連合が能力者(コーディネイター)を毛嫌いしてるとしても、な」
カガリは真っ直ぐにトーマを見ると、
「そんなリスク……オーブと完全敵対してまで手に入れる価値があるものはなんだ? しかも、このヘリオポリスにある中で」
「GAT-Xシリーズ、もしくは例の”新型戦艦”か?」
カガリは当麻の回答に頷き、
「おそらくGAT-Xの方だ。戦艦の強奪は運航に必要な人員数や追尾のしやすさ、隠蔽のやりにくさから考えてもあまり現実的じゃないしな。少なくともワタシがザフトなら、どうせ強奪するならまだ低リスクでハイリターンなMSを狙うさ」
何やら平行世界の”ピンクの歌姫”に聞かせたら、どう反応するか楽しみな台詞を言い放つカガリだった。
それはともかく……カガリはキャットウォークから未だ警備システムのダウンと敵襲かどうかの把握するできてないような眼下を見ながら、
「見ろ。今のこのハンガーには、まともに緊急事態に対応できてる人間はほとんどいない。大体、鉄砲慣れしてない技術兵達に銃が手渡されてること自体、もはや救いようのない状況ってことだ」
カガリの視線の先に捉えていたのは、どうやらここでは最先任らしい大尉の階級章をつけた胸の大きな女流技術将校が、四苦八苦しながらなんとか”にわか防衛隊”を編成しようと躍起になっていたのだった。
「トーマ、教練やら年間ノルマやらでしか銃を撃ったことのないような連中がザフトの突入部隊相手にここを守れると思うか?」
「しかしだな……」
それでもなお心配そうな当麻に、
「確かにワタシにはお前の右手みたいな”特別なチカラ”は無いさ。だがな、」
カガリは懐に手を忍ばせると、両脇の下に吊るした二つのホルスターから左右対称の全く同じ形の自動拳銃(オートマチック)を抜き出した!!
おそらく6インチ級の銃身を内蔵したステンレス・シルバーのフレーム&スライドに、”獅子に百合”のメダリオンをはめ込んだアイボリーのグリップ……
デザイン的には名銃"M92"系列に代表される西暦時代末期のオーソドックス・ベレッタ・オートマチックの延長線上のようだが、CE世紀にはこの手のデザインはトレンドから外れていて、マニア向けの復興版以外はほとんど市販されてない。
もしかしたらオーダー品かもしれない。
カガリは銀に輝く銃口にキスしながら、
「”オーブ・カトラス”……コイツを使った撃ち合いなら、並みのコーディネイター相手でもそう引けをとらない筈だゾ? なんせ付き合いだけならトーマより長いからな」
彼女が左右の手に1丁ずつ握る二丁一対の拳銃は、どうやら【オーブ・カトラス】という名でやはりカガリのフルオーダーのようだ。
いずれ語られるかもしれないが……かなりワイルドな育ち方をしたカガリにとって、銃器だの刃物類だのは物心付く前から身近にあった当たり前の品々だった。
獅子の子はやはり獅子ということだろうか?
カガリの戦闘力と意志の強さ(あるいは頑固さ)を良く知る当麻は頭を振り、半ば諦めたように、
「一度言い出したら、お前は聞かないもんなぁ~」
「その通りだ。良くわかってるじゃないか♪」
にっこりと笑うカガリに当麻は苦笑で応え、
「この一年、ずっと一緒だったから流石にな。仕方ないか……ただし、」
当麻はやおら真剣な表情になると、
「無茶をするなとは言わないけどさ、頼むから無理はするなよ?」
「わかってるさ。ワタシの命は安くは無いって自覚はある。なんせ下手すると国際問題だ」
「莫迦。単に俺がカガリを心配なだけだ。国際政治なんて一市民の上条さんには知ったことじゃないですから」
当麻が考えずに口から出た”素”の言葉に、いつものように飄々とした表情だがどことなく嬉しそうな雰囲気を漂わせるカガリである。
***
「ハウメアの加護があらんことを」
似合わないと自覚しながらも、そんな台詞と同時に当麻はカガリを送り出す。
「トーマもなっ! お前はワタシ以上にそれが必要な気がするゾ!」
カガリの背中を見送りつつ当麻は、
「違いねぇな」
と一人ごちながら、当麻も懐と後ろ腰に装着したホルスターに手を入れ、その中で眠る紛れも無い凶器の感触を確かめた。
すでに戦場音楽がフルオーケストラで演奏されつつあるヘリオポリスで、主従(?)の二人は無事に再会することができるのだろうか……?
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一方、第一次襲撃を撃退したアークエンジェルだったが、
「一難さってまた一難とはこのことですねぇ……」
そのブリッジでは、計画通りならアークエンジェルと共に運行試験が行われる筈だったGAT-Xのテスト責任者兼艦長の”月詠小萌”地球連合准将が立体投影された各種戦況表示板を見ながら難しい顔をしていた。
そこに映し出される情報から、オーブの領海を思い切り侵犯してきたザフト艦3隻から、多くの高速熱源体……状況から考えて、間違いなくMSが出撃したと判断できる。
ヘリオポリスはともかく、GAT-Xを開発していた隠蔽地球連合の基地には、万が一に備えて中隊編成のXGT-01”プロト・ダガー”を中核とする迎撃部隊があったが、それは本来小萌の指揮下にある部隊ではない。
小萌の指揮下にあるのは、あくまでアークエンジェルに搭載されてる部隊とGAT-Xシリーズの5機だけなのだ。
この非常時にセクト主義?と思われるかもしれないが、軍隊というのは紛れも無く官僚組織の一つであり、可能な限り指揮命令系統は固持しようとするものだ。
仮に非常時故に小萌が強引に指揮を奪おうとしても、おそらく……
(基地各所と通信途絶……基地守備隊が全滅していても驚きませんねぇ)
そう、寸断された基地のイントラネットを中心とする警備システムや通信網は未だ回復しておらず、アークエンジェルから通常通信で再三にわたり呼びかけているが返答が返ってきたのはごく少数……アークエンジェル直轄部隊を除けば、戦闘可能状態にあると返信してきたのは同連合大尉の”土御門元春”だけだった。
「大丈夫……ではないかもしれないけど基地の守備隊MSが独自の判断で出撃したみたい。定数ではないけど」
レーダーディスプレイを覗いていた姫神秋沙は、混沌した状況からも可能な限り有益な情報を読み取り、小萌に報告する。
言葉遣いこそ軍人としては問題あるが、純粋なオペレーターあるいは戦術士官としては有能らしい。
「これはおそらく後方からの管制やバックアップを受けてませんねぇ……姫神ちゃん、向こうの現場レベルの判断でこっちの指揮下&管制下に入る是非を通信して欲しいですぅ。管制下に入るなら、データリンクを構築して管制をお願いしますよぉ」
「アイ・ショーティ(了解)。ザフトの通信妨害が激しいけどなんとかやってみる」
「よろしくですぅ」
そう返しながら小萌は手元のコンソールを操作し土御門元春、正確には【TS-MA2mod00MX”メビウス・ゼロ・マギウス”】を呼び出すのだった。
皆様、ご愛読ありがとうございました。
カガリの二丁拳銃の元ネタは言うまでもなく某『黒い珊瑚礁』の”トゥーハンド”ってです。
東南アジアないし南太平洋つながりってことで(^^
タグにもある”魔改造☆かがりん”の片鱗がようやく見えてきましたが、うちのカガリはピンチになればなるほど力を発揮するタイプかもしれません。
それでは皆様、また次回お会いしましょう♪