ちょっと間が開いしまいすみませんでした。
今回のエピソードは前半の主役は小萌てんてー、後半の主役は我らがカミジョーさんとなっています(^^
そして、もしかした当麻の意外な一面が見れるかも……?
オーブのコロニー【ヘリオポリス】の内外でめまぐるしく変わる戦況。
連合の基地の警備/警戒システムはあちこちで寸断あるいは敵に掌握され、アークエンジェルのブリッジで確認できるのは、自らの各種搭載センサーで確認できる範囲のみと言っても過言ではない。
元々アークエンジェルは、GAT-Xシリーズと同時並行に規格/計画されていた戦闘艦であり、同シリーズの実戦を想定した運用試験における母艦として機能できるよう調整されていた。
その為、センサー類もまたその他の装備と同じく採算度外視に近い最新高性能なそれらが搭載されている。
少なくとも、隠蔽建造ドックの中でもコンバット・ステータスで起動させれば外部の状況をある程度をトレースし、戦況把握が可能となっていた。
更にアークエンジェル副長兼警備主任(艦付憲兵隊隊長)の黄泉川秋穂の進言や、予め予備命令を出しつつ素早く自分の持つ権限の中で最大限の対応した月詠小萌のレスポンスのよさもあり、先ほどコーディネイターの奇襲部隊を撃退した警備隊一同を見てもわかるように、アークエンジェルに限っては混乱極めるヘリオポリスの中で最も人員充足率が高い部署になっていた。
(これでGAT-X開発チームが無事なら申し分ないんですけどぉ……)
だが混乱と闘争と殺意が支配したこの現状では、安否の確認もままならない。
パイロットは既に音信不通……おそらく爆発物で壊滅もしくは全滅したと思われる。
(この状況で無事だと思う方がおかしいですねぇ)
黄泉川の読みでは、アークエンジェルに押し寄せた敵兵は戦艦を奪取するにせよ制圧するにせよ数が少なすぎ、陽動である降参が大きい……おそらく本命はGAT-Xシリーズだと推察している。
小萌もそれには完全に同意だった。
***
ザフトはこの作戦に一切の手抜きをするつもりはないようだ。
おそらくはGAT-Xシリーズの強奪もしくは破壊を行うミッションのさなかだろう現在において、側面支援のつもりだろうか? 3隻の戦闘艦が国際法に定められたヘリオポリスの領海を侵犯し、二桁に達するMSを発艦させたのだ。
半数はコロニーにさらに接近、行動から予測されるのは、コロニー内への突入/内部からの強襲だろう。
(基地防衛部隊の”プロト・ダガー”は出撃しましたが……)
だが例え量産機としては最もザフトに拮抗できるだろう連合製MSとはいえ、配備されていたのは中隊規模の機数だけだ。
隠蔽基地である以上は仕方の無いところではあるが、十全の状態でも正直劣勢だろう。
オマケに基地の指揮系統はどうやら壊滅的な打撃を追ってるらしく、現在はオペレーター兼副官のような立ち位置で動いている姫神秋沙の分析によれば、おそらくは現場の判断ですぐに動ける機数(スクランブル待機中だったのか?)だけで出撃し、さらに悪いことに満足なデータリンクやバックアップは行われていないようだ。
そのためまともに戦えるとは思えない。
小萌は素早く頭の中で【使えるかもしれない戦力】と【確定してる戦力】を振り分け、前者……何もしなければ数でも性能でも勝る敵にすりつぶされるだろうヘリオポリス防衛隊への連絡とアークエンジェル、いや小萌の統制化に入るように要請するという対応を決めた。
後は確定した戦力。
ザフトの広域ジャミングをかいくぐりMS隊に連絡を取ろうと奮戦する姫神の手を煩わせるわけにはいかないので、小萌は自らコンソールを操作し、
「土御門ちゃん、状況はもう把握していると思いますが……準備いいですか?」
どんな緊迫した状態でも、あえて平常運転を行うのが小萌のスタイルだ。
そのノリを気に入ってる通信機の向こう側にいる人物、【TS-MA2mod00MX "メビウス・ゼロ・マギウス"】に座乗する土御門元春は、
『いつでもバッチコイだにゃあ!』
そうパイロットスーツにいつものグラサンを組み合わせるといういでたちでサムズアップを返した。
「土御門ちゃんの任務は、外の守備隊を援護しながら水際での迎撃ですぅ。可能な限り敵MSのヘリオポリス侵入を防いでくださぁい!」
『了解! 新人達はテメェのケツ拭く前に黄泉比良坂(よもつひらさか)を駆け上ったみたいだからな……せいぜい、送り火代わりにいいとこ魅せてやるぜぇ~!!』
小萌は満足そうに頷くと今度はアークエンジェル副艦長兼警備主任の”黄泉川愛穂”少佐と彼女の部下で艦付警備隊副長の”鉄装綴里”中尉に通信を繋いだ。
「黄泉川たいちょお、鉄装ふくちょお、歩兵部隊の迎撃を終えたばかりで悪いんですけど、お二人は至急【ロングエッジ・ダガー】で出てもらえないですかぁ?」
前に出てきたが、黄泉川と綴里の二人は警備隊(憲兵)であると同時に、MSパイロットとしての資格も持っていた。
『私らも
黄泉川は、オーダー自体は是非も無いという表情で、ただ自分と後輩のやるべきことだけをいた。
「いいえ。コロニー内部での
『了解。アークエンジェルの防備はどうするよ?』
「最低でも状況の把握が終わるまで、今のドックで待ち構えて迎撃しますよぉ。ここはコマンド部隊の侵入とかの奇襲ならともかく、敵艦攻撃なら簡易シェルターとして使えますから」
小萌の判断に黄泉川は納得し、
『賢明な判断じゃん。内でも外でも不用意に動くと敵の思う壺ってのはよくある話じゃんよ』
「一度襲撃が失敗してる以上、敵MSがドックに襲撃をかけてくる確率は低いですが、向こうも時間も人員も制限はあるはずですし……かといって何もせずにGAT-Xを強奪させるわけにもいかないですからぁ」
『私と鉄装が抜けると、対歩兵防御は手薄なるじゃん?』
「かまいません。現状だとより脅威度が高いのはMSですから」
小萌は黄泉川の言葉を少し考え、
「最悪の場合を考えて、船の
***
参考までに書いておくと、アークエンジェルは平行世界のそれに比べると計画段階から関わっていた小萌の影響もあり色々と強化されてる……実験艦であることは変わらないが、より”実戦的な仕様”へと変更されていた。
その仕様変更は多岐に渡り、大は陽電子砲自体の改良やポジトロン・チェンバーの増設にゴッドフリートの改造+搭載位置の変更/増設、小は各種アメニティや食堂メニューの改善まで含まれる。
その中の一つが、近接防御火器群の改良や増設だ。
この当時は一般的なイーゲルシュテルン75mm防御機関砲を初期計画通りの16基装備したのに加え、40mmに小口径化すると同時に弾丸の高速化と装弾数の増加/発射速度の増加で1発あたりの威力の維持と単位時間あたりの相対的な破壊力向上を狙った【イーゲルシュテルンII】搭載のCIWSを12基、更には【M2トーデスシュレッケン】から発展した12.5mm6銃身2連装ガトリング型CIWS(通称"ガトリング・シュレッケン")を同じく12基を増設していた。
ちなみにシュレッケン系の12.5mm×108弾は、メタルイーター系の対物/対軽装甲ライフルと同じ銃弾である。
「12.5mmはともかく40mmや75mmは対人用としては普通オーバーキルですが……対人榴散弾でも用意して対応しましょう」
『
現実の一端を切り取った黄泉川の言葉に思わず苦笑する小萌。
確かに高位能力者(一般に強度Lv3以上の能力者)では、例え75mmクラスの強化高速徹甲弾(APVS)の直撃を食らってもノーダメージでいられる者が少なからず存在するのだ。
「それもそうですねぇ。時間が出来次第、製作してみましょう」
そして小萌は将来的な課題を切り上げ、
「それでは各自、迎撃をお願いしますぅ!!」
『『『了解!!』』』
小萌の号令に土御門元春、黄泉川愛穂、鉄装綴里の小気味いい返答が響く。
双方の機動兵器が投入されることが決定的となり、戦いはいよいよ苛烈にそして容赦なく拡大しつつあった……
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オプション……”ストライカーパック”と呼ばれる豊富なアタッチメント・ウエポンシステムと同時開発されてるせいだろうか?
【GAT-X105】は、他のGAT-Xシリーズと別の専用開発ハンガーを与えられていた。
普段なら理路整然とした作業が行われているだろうそこは、今がザフト襲撃中……程なくここが弾丸や爆発物が飛び交う戦場になることがほぼ確定しているために、殺伐と焦燥の濃度が上昇した慌しい空気に変容していた。
そんな空気に不思議な心地よさを感じながら、上条当麻はキャットウォークからゆっくりとフロアに下りた。
「誰だ!?」
声を荒げて殺気と共に拳銃を向けてきたのは、巨大な胸を黄色いツナギに無理やり押し込めたようなウェーブがかった栗毛色の髪の女性だった。
ツナギに付いた簡易階級章を見る限り連合の大尉、服装から察するなら技術将校というところだろう。
(拳銃のグリッピングがそこそこサマになってるな……俄か拵えの急造陸兵にしちゃあ上等な部類か?)
そう当麻は内心で思いながら、
「ザフトじゃない。身分証を出したいんだが、いいか?」
「ゆっくりとだ」
当麻は女性の指示通り緩慢な動きで懐からIDカードを取り出し、それを見せながら、
「オーブ特務機関【アマクサ】の上条当麻。いや、君達風に言うなら”トーマ・カミジョー”となるかな?」
***
「オーブの特務? このタイミングで?」
怪訝な顔をする女性に当麻は頷き、
「ああ。実態はしがない”五大氏族の私兵集団”の一人だけどな。軍や警察の範疇にない仕事を色々とやってる」
(嘘はついてないぞ、嘘は。本式の護衛はともかくカガリの”付き人”は警察や軍人の仕事じゃないしな)
等と当麻は『物は言い様』という言葉を実践する。
要するに当麻の本来の役割はSPではなく軽いお目付け役、広義な意味では遊び仲間だ。
そもそもカガリはアスハ家の養子という立場から、純粋な意味で同年代の友人というものは存在しない。
どんな人間関係を築くにしても、必ず”代表主張の一人娘”やら”次期代表首長候補筆頭”などの政治的立ち位置が先に来て、多かれ少なかれ生臭いものになるのだ。
そんな立場だからこそ彼女が本当に心を許せるのは残念ながら、現在モルゲンレーテの本国地下ラボに三人娘ともども絶賛引きこもり(?)中であるはずの、別姓を名乗る”双子の弟”くらいなものだろう。
そういう意味では当麻の存在はありがたいものだった。
何しろ拾ってきた場所がユニウス7の崩壊で出来た真新しい暗礁(デブリ・クラウド)の中で、記憶喪失のコーディネイター……背後関係や真意を疑う必要が無いだけでも手間がかからない。
仮に記憶が断片的に残っていてユニウス7の崩壊で大事な人物が死んでいたとしても、恨まれるのは地球連合だ。
彼の性格から判断してもオーブが逆恨みされる可能性は極めて低いと診断できる。
おまけに当麻にはある”特別なチカラ”があり、こと最も警戒すべき暗殺者……能力者(コーディネイター)や魔術師相手には、ある種の”最強の盾”になることもできた。
彼の断片的な過去情報や現状、更に特異な異能を知ったとき、ウズミ・ナラ・アスハは好々爺的な癖のある笑みを浮かべ、
『思った以上に良い拾い物だったな。実に重畳』
と呟いたという。
確かに当麻は愛娘の側付きとするには、あまりに都合のいい存在だった。
抜け目のなさやあざとさには一定以上の評価を得るウズミが当麻を手放す筈も無い。
護衛の真似事をやらせるには少々戦闘技能や経験が足りなかったが、そんなものは訓練でどうにでもなる。
幸いオーブには国是の関係で優秀なコーディネイターや魔術師の当ては十分にある。
かくて元プラントの一市民(?)だった上条当麻は、今やオーブでもVIPの側に居るに足る人物として確固たる居場所を築いていた。
例えばそれは、
「一応、軍の階級に換算すれば”特務三尉”、連合風に言うなら”特務少尉”相当の権限があることになってる」
ちなみに特務と付くと実際の階級より二つ上、ちょうど彼女の階級である大尉と同等(場合によってはそれ以上)というのが一般的……なのだが、あくまで当麻は”相当”であり、その権限は必要である場合のみでなおかつ原則としてオーブの中でしか通用しない(オーブ領ヘリオポリスの内部でもGAT-X開発基地は連合領扱い。日本における米軍基地と同じ)。
認識互換性のある正規の士官階級ではないので当然ではあるが。
(だが、誤認するのは相手の勝手だな。うん)
上条当麻は確信犯という単語が嫌いではなかった。
***
「そんなわけで、この場の先任(最高階級)と話がしたいんだけど?」
当麻が意図的に軽薄な調子でたずねると、
「おそらく私です。私は技術将校で連合大尉、【マリュー・ラミアス】と申します」
「よろしくラミアス大尉」
そうオーブ式の敬礼を当麻が見せると、マリューは連合式の敬礼で返礼した。
敬礼は基本、階級が下の者からするのが慣わしだが、ここはオーブ領ではあるが連合の基地。
同等の階級であるならオーブ側から紹介と敬礼するのが正道であるが、祖国の威信と国防を担う軍人のプライドが邪魔してそこで足踏みし、最初の接触からギクシャクする場合も少なくない。
そんな具合だからこそ、古来より国籍の異なる軍隊が戦場で邂逅したとき、敵同士でなくともややこしくなるのは自明の理だ。
(だが、この少年将校はそのあたりの事情を柔軟に対応できる器があるみたいね……)
マリューはそう好意的に解釈したが、実のところ当麻はといえば……
(相手は正規軍人な上に明らかに年上のお姉様だもんな~。ここはこっちから敬礼した方が無難だろうなぁ)
言い方は悪いがかなり事勿れ的、あるいは俗物的判断に基づき行動していたのだった。
無論そんなことはおくびにも出さないが、そろそろ年齢が気になるお年頃の妙齢の女性士官が当麻の内心が聞こえたらどんな反応をするのか興味がわくところではある。
「大尉、周囲の状況から察するに、既にザフトの破壊工作部隊が強襲してきてることは気づいているね?」
あえて年上ぶった落ち着きのある、もしくは上から目線的な言い回しで状況を確認する。
交渉術は相手より優位に立つことが目的なのだから、言い回しや身振り手振りも大きなアドバンテージになることは当麻は熟知していた。
カガリをはじめとする”政治的肉食獣の巣”に一年近く厄介になってたのだから、この程度の腹芸的テクニックは自然に身に付くのだろう。
「もちろんです」
「なら話は早い。些少ながら小官もGAT-X防衛に助太刀しようと思うんだが?」
「えっ!?」
当麻の申し出に、最初マリューは処理が追いつかず思考が軽くフリーズした。
「ここは連合の基地である以前にオーブ領ヘリオポリスだ。”他国の侵略を許さず”の祖国防衛理念に一致するさ」
「しかし貴国は建前的には中立国では……」
今となっては根拠の乏しい反論をするマリューだが、
「それこそ今更だろ? それとも大尉には敵の敵は味方という発想は、非常事態といえどもないのかい?」
(そろそろイニシアチブを握るとしますかね~)
当麻は表情には出さず内心だけでそうつぶやくと、
「なにより見たところここには本職の歩兵はいない。ましてや【ACT(アンチ・コーディネイター・タクティクス:対能力者戦術)】の訓練を受けた
当麻は一度言葉を区切り、
「銃を持っただけの技術将校や整備兵じゃ、とても戦闘訓練を受けたコーディネイターに太刀打ちできるとは思えないんだが?」
「うっ……」
図星を突かれたマリューは思わず言葉を詰まらせる。
「こう見えても、小官のACTは中々だと自負していますが? なんせ本職ですし」
その台詞におどけた調子だが嘘はない。確かに彼、上条当麻にはあらゆる異能の天敵ともいえる能力が備わっていた……
彼の言葉の意味をどうとらえるかは、先ほどと同じく当麻の勝手という意味だろう。
どうやら上条当麻という人物は、『嘘は言わないが真実を全て話すわけでもなく、また誤解や誤認を必要なくば是正しない』タイプの交渉スキルを使うようだ。
「特尉(特務尉官の略称)……色々な意味で本当によろしいのですか?」
苦渋の決断……後に必ず政治的な問題を引き起こしそうな状況に、ただでさえプレッシャーで弱った胃が更にキリキリと痛み、マリューは苦しげな表情で改めて聞き返す。
「かまわないさ。というよりここを守れってのは上司直々の命令でね。
(守ってみせるさ……)
彼はGAT-X105、ペットネーム【ストライク・ガンダム】のまだ火が入ってない灰色のボディを見上げ、
「【
皆様、ご愛読ありがとうございました。
意外と容赦ない小萌ちゃん+魔改造AAに、実は頭が良かった当麻という異色の前後半は楽しんでいかがだったでしょうか?(^^
当麻がマリューさんを口説いてるように見えるのは仕様です(キリッ!
カガリの付き人なんてやってるくらいですから、このシリーズの当麻はオーブでの教育の賜物で相手が本職の交渉人でもない限り、腹芸の真似事くらいはできるようです。
カミジョーさんらしくはないかもしれませんが(苦笑)
それにしても……このシリーズのウズミさんは抜け目ないなぁ~と。
そして、土御門だけでなくじゃんの姐御とメガネ後輩もいよいよMSで出陣とあいなりました。自分で書いておいてなんですが……大丈夫なんだろうか?
ちょっと不定期更新気味になってしまうかもしれませんが、次回を楽しみにお待ちいただければ幸いです。